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スピードトレーニング Archive

期分け・63

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【期分け・63】前回は、「脚つくり」に適したペースと強度について考えてみました。今回は、そのペースでどの程度の距離や時間を走り続けていくのが効果的かを考えていきます。

実は、「脚つくり」の中で「設定ペース」と比較した場合、距離や時間については最も意見の相違があるところでもあり、各コーチや各チームのノウハウが色濃く出てくる部分でもあります。これから私が記載していくことも、これが絶対とは言えず、私自身も現役時代に実施していた考えと、少しずつ変化しているのも事実です。はじめに、この点についてはご理解いただき、これが絶対と言ったことではなく、参考にしていただければと思います…。

では、早速ですが、どの程度の距離、もしくは時間を走り続ければマラソンに必要なスタミナが養成されるのでしょうか?

この答えこそが上記したとおり、百人いたら百とおりの答えが出てくる部分です。私も現役時代を含め、20年以上マラソンに関わってきた中で、様々な実例を見聞きしてきました。

例えば、かつて私のライバルだったランナーたちの中には、30kまでの距離走だけで常にマラソンの記録が安定していたランナーがいました。逆に、マラソンより長い60k走を取り入れることで、マラソンを攻略したランナーもいました。もちろん、運動生理学を専門にしている先生方でもそれらの見解は様々です。しかし、どれも納得できる理論ばかりなので、どの見解も信用できました。

何でもそうですが、難しく考えていくと堂々巡りとなります。その結果、答えが見つからず、走れなくなっていきます。もちろん、正しい答えを導き出すことが目的ではありませんが、自分自身に最も適した方法やノウハウを身につけていくことが重要です。

そこで、ヒントになることのひとつに、過去のマラソン経験者たちがマラソン後によく話していたことです。いくつかの実例をあげると、次のような話しが思い出されます。

◆実例1).マラソンは、どんなランナーでも35kの壁がある。◆実例2).初マラソンでも30kまでなら誰でも走れる。◆実例3).どんなランナーでも実力に見合った設定タイムで刻んでいくと、2時間前後でスタミナは枯渇してくる。

いかがでしょうか?皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?実は、これらの話しはこれまでにマラソンを走ってきたランナーたちの実体験から導き出された見解です。しかも、実際にマラソンを経験すると、見事に当てはまります。すなわち、これらの話しの中にマラソン攻略の重要なヒントが隠されているとは言えないでしょうか?

次回は、これらの話しを軸に、更に掘り下げていきます。

つづく。

第29回富里スイカロードレース大会

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6月24日、千葉県富里市において「第29回富里スイカロードレース大会」が、開催されました。この大会は、富里市の名産であるスイカを給水にするユニークなアイディアで、1万人以上のランナーが参加する大きな大会となりました。

また、この時期は気温や湿度も一気に高くなりますが、安全面も考慮してかメイン種目は10kまでとしてあるのも特徴です。同時にマラソンブームが高まり、ハーフマラソンをメインにする大会が増えている中、10kまでの距離で1万人以上のランナーが参加する大会は国内屈指ではないでしょうか。

さて、私がコーチする選手(市民ランナー)たちも毎年参加しておりますが、今年は参加申込が抽選となったため、涙をのんだ選手もいました。そんな中、なぜか、私の女子選手はほぼ全員が抽選に当たっていました(笑)。

このブログでも記載しておりますが、この時期は「スピード養成期」と位置付け、積極的にトラックや10k以下の短い距離のロードレースを走る期です。もちろん、私がコーチする選手(市民ランナー)たちもこの流れに沿って日々のトレーニングに励んでおります。

今回の富里スイカロードレース大会は、スピード養成期の後半にあたり、積極的に短い距離を走ってきたこれまでの成果を見極める意味でも重要視していました。

結果は下記のとおり、参加した選手全員がほぼ予定どおりの内容でした。また、ロンドンパラリンピック代表候補選手である弱視の岡村選手も40歳以上男子10kの部で大会新をマークし、断トツの優勝でした。

◆一般女子10kの部:優勝/H・Y選手/36分23秒(大会新)、2位/M・S選手/38分16秒、3位/M・S選手/38分56秒、5位/A・K選手/39分14秒、6位/M・K選手/39分33秒。◆40歳以上女子10kの部:優勝/M・Y選手/38分10秒(大会新)、2位/A・K選手/39分32秒。

この大会は毎年、気温や湿度が高くなるのも特徴で、今回もかなり厳しいコンディションとなりました。実は、スピード養成期と言って、インターバル系のトレーニングばかりでは、逆に思うような成果はでません。

それは、今回のような過酷なコンディション下では、スピードと同様にスタミナも要求されるからです。そのため、スピード養成期のトレーニングにおいても、ある程度の距離走やペース走を取り入れておかないと、実はスピードも効率よくアップしていかないのです。※この点の詳細については、あらためて、このブログにもアップしていく予定です。

今回、この点のバランスを見極めることができたことは、大きな収穫でした。そして、秋からのマラソンシーズンに向け、これから本格的な走り込みに入っていけそうです。

横浜駅伝大会

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先日の4月30日に横浜駅伝大会が開催されました。この駅伝大会は今回で24回目と、ランニングブーム以前から開催されている市民駅伝大会です。しかも区間数や距離は高校駅伝と同じ7区間42.195kと本格的です。したがって、ランニング経験の浅いランナーたちが、軽い気持ちで出場するには少しハードルが高い駅伝大会と感じます。

ところが、ここ数年のランニングブームは全国各地で開催されている各種駅伝大会にも波及し、この大会も今年は650チーム以上のエントリー数となりました。

大会は鶴見川にある河川敷のランニングコースで開催されます。具体的にはスタート及びゴール地点と各区間の中継点は全て同じ地点にし、その中継点をさかいに上流と下流に設置してあるそれぞれの折り返し地点を往復するコースです。そのため、応援する側にとっては、常に同じ場所で全区間を応援できるため、とても盛り上がります。

そして、私がコーチするチームも男女混合の部(奇数区間が男子、偶数区間が女子)に3チーム出場しました。結果は、3チームとも6位入賞をはたし、AC・KITAチームは7連覇を達成することができました。

もちろん公式な大会ではないので、特に何がある訳でもありません。しかし、同じ大会で連続して勝ち続けることは、選手(市民ランナー)やチームにとっても大きな自信につながります。特にこの駅伝大会は区間数が多く、区間毎の距離も長いので、チーム全員がそれぞれの区間をキッチリと走ることが必要不可欠となります。また、メンバーに起用した選手は7区間中4名が初出場と、来年以降につながる内容でした。

さて、この駅伝大会を毎年応援していると、様々なことを感じます。特に、チーム数が増加し、トップ争いのチームと楽しみながら走る下位チームとの差が年々大きくなってきている点です。その結果、同じコースを繰り返し走るため、コース上に区間違いのランナーが多数混在し、上位チームは常に下位チームを追い抜く展開となります。

そして、この展開こそがこの駅伝大会を攻略していく上で最も難しい点のひとつと感じます。それは、後ろからゴボウ抜きをしている展開なら誰でもスピードに乗っていけるように見えます。ところが、この駅伝大会ではゴボウ抜きに近い状況となる後半の区間に配置している選手ほど、設定タイムどおりに走れません。少なくとも7連覇の経験からそう感じます。

もちろん、いくつかの要因はありますが、大きな要因のひとつとしてゴボウ抜きをしているチームが、自チームより前を走るチームではなく、下位を走るチームである点です。その結果、本来のスピード感覚より遅い方に感覚がずれ、ゴボウ抜きをしているにも関わらずスピードは上がらない負の連鎖にはまるのです。

実は、正月の箱根駅伝やニューイヤー駅伝でも似たような展開があります。例として、1区からトップでタスキを受けた選手が2チームに抜かれて3位で次の3区につないだとします。一方、下位の方でタスキを受け、10チームを抜いて7位まで引き上げた選手がいたとします。

この2選手の区間順位を比較したとき、2チームに抜かれて3位に後退したにも関わらず区間順位も3位。ところが、10チームを抜いて7位に躍進したが区間順位は6位と、見た目の走りと実際の区間順位が違うケースは意外と多く、区間順位はタスキを受け取った順位に影響を受け易いのです。それだけに、後方からタスキを受け取って、区間上位に食い込むことは相当な走力と共に、自分自身を追い込める強い精神力も要求されるのです。

以上のように、横浜駅伝の後半区間の選手は、常に後方からタスキを受け取るような展開になり、自分自身の力を出し切ることが難しいと感じます。しかし、逆にそのことが選手のメンタル面を強化することにもつながり、目標のマラソンにも生きてくると…。

GWを走る

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今年もいよいよGWになりますが、旅行をはじめ様々な計画を立てていることと思います。また、ランニング愛好家の皆様にとっては、恒例のランニング三昧になる連休と思いますが、いかがでしょうか。そこで今回は、この連休を活用したトレーニングについて考えてみます。

はじめに、今月のマラソンまでしっかりと走り、連戦が続いてきたランナーについてです。

特に、マラソンを何本も走り疲労の自覚症状がある場合や既に故障や怪我をしているランナーです。もちろん、もっと以前から故障のためトレーニングを中断しているランナーも対象となります。

至極当然のことですが、痛みや疾患等がある場合は完全休養となり、絶対に無理をしてはいけません。しかし、そうでない場合、このGW期間は期分けで言うところの「移行期(回復期)」となります。すなわち、軽めのジョギングや水泳、あるいは長めのウォーキング等を軸に回復を優先したトレーニングが有効的になります。

次に、マラソンの疲労もある程度抜けて気持ちもリフレッシュできているランナーです。

このようなランナーはGWを活用したスピードトレーニングをおすすめします。また、せっかくの連休です。いつも一緒に切磋琢磨している仲間たちとのミニ合宿は更にトレーニング効果を高めます。もちろん、宿泊が難しいのならいつもトレーニング会場にしている近くの競技場や河川敷等を活用し、午前と午後の2回実施する2部トレーニングがおすすめです。

また、この時期は初夏を思わせるような気温に上がる日もありますが、身体は暑さに順化していません。したがって、秋から冬のように長い距離を走り込むより、距離を短くしてスピードを上げるインターバルのようなスピードトレーニングの方が逆に安全で効果的ともいえます。

では、実施するにあたり具体的なポイントをあげてみます。

◆ポイント1).インターバルのトータル距離を3000m~5000m程度におさめる。例として、200m×15本~20本、400m×8本~12本、1000m×3本~5本程度の本数が効果的。◆ポイント2).リカバリー(休息)は距離でなく時間で管理し、疾走時間と同じ時間(1対1)で実施する。◆ポイント3).トレーニング強度の調整は、疾走時間ではなくリカバリー時間で調整する。つまり、強度が楽に感じるならリカバリー時間を短くし、苦しく感じるなら長くする。

そして、全てのトレーニングに共通しますが、特にスピードトレーニングについては、ラストまで確実に走り切れる本数と強度で実施していくことが重要です。すなわち、まずは余裕を持った設定ペースで後半まで走り、ラスト数本をペースアップできるような流れにできれば精神的にもゆとりが持て、スピードトレーニングも意欲的に取り組めると考えます。

期分け・14

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今回でスピード養成期についての話しは一区切りとします。

最後は3kのタイムトライアルについて考えていきますが、この3kの距離は一般的に言うと、馴染みの薄い距離になると感じますが、いかがでしょうか?

しかし、この3kは陸上競技的に言うと長距離走の登竜門となる基礎的な距離になります。それは、全国の中学生が各地で開催している陸上競技大会において、男子の最も長い距離が3kです。また、同じく全国の高校生が各地で開催している陸上競技大会において、女子の最も長い距離がこの3kとなります。

なぜ、中学生男子と高校生女子の最長距離が3k(3000m)なのかについては、私も正しく把握しておりませんが、長距離を志す男女のジュニア選手は必ずこの3kからスタートすることは間違いありません。そして、この3kで長距離的なスピード感覚やペース配分等々を体得しながら年齢と共に距離をのばしていくのが、日本の伝統的なスタイルのひとつです。

もちろん、実業団選手(プロ)になり、ハーフマラソンやマラソンのような長い距離を走れるようになった選手でも各種競技会に出場し、この3k(3000m)を走っています。実は、マラソンの日本記録保持者である高岡選手は、3000mの日本記録保持者(7分41秒)でもあります。

そして、マラソンの基礎的なスピードの目安となる5kや10kのタイムを短縮するためには、この3kのスピードをアップすることが大きなカギとなります。具体例として10kを40分以内で走ることが目標とした場合、5kの目安は19分30秒前後となります。更に、トレーニングの段階において、そのペースで3kを走り切る走力が必要不可欠になってきます。即ち、3kの目標タイムとして「19分30秒×3/5=11分42秒」となり、3kのタイムトライアルではこの「11分42秒」を意識して走ります。

では、実際に3kのタイムトライアルを走る場合の注意点として、まずは1kのタイムトライアル同様、距離の正確なトラックで正確なラップタイムを計測しながら実施するのが原則となります。また、1kのタイムトライアル同様に200m毎にラップタイムを確認しながら走る方がより正確で確実です。但し、距離が長くなる分、ペース配分がより重要になります。特に、出足のオーバーペースは致命的になりますので、最初の200mから400mあたりまでをおさえるようにして走ります。

この出足を少しおさえる感覚は、3kのタイムトライアルを通じて体得してほしい大切なポイントのひとつになります。また、距離が長い分、逆に2kあたりまでペースをおさえ、残り1kからペースアップする走り方は、ラストスパートをするタイミングや残った力の出し切り方を覚えるにも最適です。

最後にこのスピード養成期をまとめると、◆1).1kのタイムトライアルを通じて自分自身のスピード限界を高める。※失速を怖がらず積極的に走れる度胸と粘り。◆2).3kのタイムトライアルを通じて速いスピードでのペース配分やスパートのタイミングを体得していく。※失速しないように体力の配分を考えながら最後まで一定に走れる冷静さと安定感。

以上のように1kと3kのタイムトライアルをセットで実施することは、単にスピードを身に付けるだけでなく、マラソンに必要不可欠な積極性や粘り強さを体得することにもつながっていきます。

つづく。

期分け・13

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1kのタイムトライアルについて考えていきますが、可能な限り途中のラップが計測できる距離の正確なトラックで実施することをおすすめします。(近くにある学校のグラウンドでもOK)

既に何度も記載していますが、正確な距離を走り、そのタイムを正確に記録していくことがタイムトライアルの原則となります。もちろん、距離表示のある公園や河川敷でもかませんが、200m~400m毎の細かいポイントがわかる場所を探しておきましょう。(自分自身で予め距離を測定したコースでもOK)

次に、大まかな目安となる目標タイムを決めておき、200m毎のラップタイムを走る前に書き出し確認しておきます。参考までに今回は、1kを4分00秒で走ることを例にして話しをすすめていきます。

それでは実際に1kを4分00秒のイーブンペースで走った場合、200m毎のラップタイムは、「48秒―1分36秒(48秒)-2分24秒(48秒)-3分12秒(48秒)-4分00秒(48秒)」となります。そして、このラップタイムを頭の中でイメージしながら実際に1kを走ります。

ところが、1kのタイムトライアルを実施すると、ほとんどのランナーが600mを過ぎたあたりから大きく失速し、ゴール直前の200mは止まりそうになります。その代表的なラップは、「39秒―1分25秒(46秒)-2分13秒(48秒)-3分8秒(55秒)-4分8秒(60秒)」となりますが、皆さんはいかがでしょうか?

実は、小中学生の地区陸上大会(市内大会レベル)を見ていると、ほとんどの選手がこれに近いパターンの走りをします。即ち、スタートからダッシュで飛び出し、ゴールに向かってどんどん失速していきながら、ゴール直前が最も遅いペースとなる走り方です。そのためレース中のかけひきやラストスパートはあまりなく、単にゴールに向かって消去法的なレース展開が多くなります。これは走歴が浅く、練習量の少ないランナーに多く見られる走り方です。

そして、この悪いパターンを修正していくためには、タイムトライアルを定期的に取り入れてペース感覚をつかんでいくことは、ひとつの打開策となります。特に、この1kのタイムトライアルは、5kや10kのように走行距離や走行時間も長くなく、誰でも手軽に挑戦できる距離でもあります。

また、スタートから飛ばすと上記のように最後は失速しますが、逆に最初の200mをコントロールできればラストスパートも出せるようになります。したがって、200m毎に様々なペース配分を試していくことで、自分自身の能力に合ったペース配分を見つけることもできます。そして、たったの1kだからこそ逆に、1回のトレーニングで何パターン(1k×3~5本)も試すことが可能となります。

このように、1kのタイムトライアルを活用し、様々なペース配分を想定しながら走ることは、頭の中でイメージしたスピードを手足に正しく伝達していく能力を高めることにもつながります。

つづく。

期分け・12

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あらためて皆さんは、1kの距離を全力疾走したことがあるでしょうか?

3kや5kの距離なら駅伝等で走った経験があるランナーでも、たったの1kを最初から本気で走ったことは意外と少ないかもしれません。しかし、5kや10kのスピードアップにとって、この1kを全力で走ることは重要なポイントになります。

また、5kや10kはマラソンの基礎になる距離と言っても、スタートから全力で走るには距離が長いと思っているランナーは、多いのではないでしょうか。その理由は様々だと思いますが、大きな要因のひとつが最初からスピードを出すと最後までもたないと考えるからです。

具体的には、運動会で走ったようにスタートからスピードを全開させるような感覚で5kや10kを走れないと、決め付けているからです。もう少し別の言い方をするならスタートから速く走ろうと手足を動かす前に、頭や気持ちの中でブレーキが掛かってしまうのです。

実はスピードを上げて長く走ることは心拍数が上がり苦しくなるとイメージしますが、初心者を中心に多くのランナーは手足を早く動かそうと頭で指令を出してもそれがうまく手足には伝わりません。その結果、5kを走るスピードもマラソンを走るスピードもあまり変わらないランナーが多くなります。

つまり、頭から手足に指令を伝える神経を発達させることができれば自身のスピードもコントロールできるはずです。そして、その手段がスピードトレーニングであり、タイムトライアルなのです。もちろん実際に速く走ろうと頭から指令を出し、そのとおりに手足が動くようになれば、自分自身が持っているスピードの上げ下げも思い通りになります。それは、マラソンでの「スピード的ゆとり(余裕)」にもつながっていくはずです。

このように、スピード養成期で1kや3kのタイムトライアルを積極的に実施した方が良い理由は、単に心肺機能を向上させるだけではありません。速く走ろうとする指令を手足に正しく伝える神経系を鍛えることで、自分自身のスピードを自在にコントロールするためでもあるのです。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、次回からはタイムトライアルの具体的な走り方を考えていきます。

つづく。

期分け・11

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今回から「タイムトライアル(1k&3k)」について考えていきますが、トレーニング内容はとてもシンプルです。具体的には、指定した距離を実際のレース同様に全力疾走し、そのタイムを計測するトレーニングです。インターバルトレーニングやペース走のような細かい設定タイム等はありません。単純に今の力を出し切ることが目的のトレーニングとなります。

ところが、このように説明すると、誰でも手軽に実施できるトレーニングになりますが、実際は前回話したように全力疾走する感覚をつかめていないランナーが多いのです。

そこで、最初にこのタイムトライアルを実施する主な目的や狙いをあげておきます。

◆目的1).最初からトップスピードを出していく走り方を身につける。

◆目的2).エネルギーが枯渇し、脚が動かなくなってから更に粘り抜く走り方を身につける。

以上のようにとてもシンプルな内容となりますが、ふたつともマラソンにつながるとても重要な目的となります。「目的1」については、自分自身の限界スピードを知ることによって、逆にマラソンペースを知る目安のポイントになります。同じく「目的2」については、まさにマラソンで35k以降の走り方に直結していきます。ますはこの2点についてしっかりと頭の中で理解しておきましょう。

次にタイムトライアルを実施する際の注意点をいくつかあげてみます。

◆注意1).場所(コース)について:タイムトライアルを実施する場所(コース)については、公園内や河川敷の距離表示を利用しても構いませんが、可能なら距離が正確で細かいラップタイムを計測できるトラックで実施しましょう。

◆注意2).タイムの計測について:タイムの計測については、ストップウォッチ機能の付いた腕時計を必ず利用するようにしましょう。この点については、基本中の基本的なことですが、時計すら持たずに走っているランナーは意外に多く見受けます・・・。

◆注意3).タイムの計測方法について:ランニング仲間と2人以上でタイムトライアルを実施できる場合はお互いにタイムを取り合う方法がより正確で確実です。※タイム計測をする担当者がいる場合は問題ありません。

よくランニングチームの仲間全員で競い合いながら走る光景を目にします。もちろん、とても効果的なトレーニングになりますが、人によっては頑張りすぎてラップタイムを見ることやラップボタンを押せない人もいます。そんなトラブルを防止する意味からも2人以上の場合はペアをつくり、先に走るグループと後に走るグループに分けます。

そして、先に走るグループのときは後に走るグループが、ラップタイムやゴールタイムを計測するようにすれば、より確実で正確なタイムをお互いに記録することが可能となります。この正確な記録を残していく点は常に意識し、雑であいまいな取り組みにならないよう注意していきましょう。また、このときお互いの走りをビデオ撮影しておくと、後でフォーム解析も可能となります。

つづく。

期分け・10

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前回までの話しで、スピード養成につながるひとつの目安となる距離は、5kであることがわかりました。そこで、5kのスピードをアップするためのトレーニングを考えていきますが、別の言い方をするなら5kの自己記録を短縮するためのトレーニングとも言えます。

もちろん、この時期に5kの記録更新を目指すことが、秋のマラソンにつながっていかなくては意味がありません。至極当然のことですが、最終的な目標はマラソンの記録更新であることは、常に意識していくようにしましょう。

では、早速5kの記録更新について考えていきますが、皆さんは5kを全力で走れるでしょうか?

このように問いかけると、ほとんどのランナーが首をかしげます。と、言うより5kを全力で走る感覚がよくわからないランナーが多いと思いますが、いかがでしょうか?

既に何度もこのブログで話していますが、5kを走るスピードもマラソンを走るスピードもほとんど変わらないランナーが多いのです。したがって、マラソンより長いウルトラマラソンに移行していくことは比較的簡単にできるが、より短い距離をより速く走る方にシフトしていくことは難しいと、自分自身で壁をつくっているランナーは意外に多いと感じます。

その大きな理由のひとつは、上記の問いかけのように5kを全力で走る感覚がわからないからなのです。だからこそ逆に、その5kの記録更新ができたなら、それより長い距離である10k以上の距離やマラソンの記録更新につながっていく可能性も高まることでしょう。

また、5kの記録を短縮していく上でポイントになる距離があります。私の経験上の話しになりますが、それは1kと3kです。

1kについては、比較的長い距離を全力疾走するときの目安となる最短の距離となります。3kについては、5kの距離を攻略していく上で重要なポイントとなる距離となります。つまり、この1kと3kの距離を全力疾走していけるようなトレーニングをつむことで、5kの記録更新につながっていきます。

そして、その具体的なトレーニングとして「タイムトライアル」は最も効果的なトレーニング方法のひとつとなります。

次回は、そのタイムトライアルについて考えていきます。

つづく。

期分け・9

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前回までのなかで、マラソンの記録を短縮していくためには10kの記録短縮がひとつのポイントになる話しをしてきました。今回もその10kの記録について考えていきます。

さて、皆さんは10kの距離をどのように感じるでしょうか?

ほとんどの人は、「マラソンの記録は10kのスピードが目安」と聞いても、10kは長いと感じるのではないでしょうか。また、10kを全力で走ったことがない人もいるのではないでしょうか。実際に、マラソンの記録が停滞している市民ランナーの多くは、マラソンを走るスピードも10kを走るスピードもそれほど変わらない人が意外と多いように感じます。

そんな視点から考えると、もう少し短い距離からスピードについて考えていく必要がありそうです。具体的には、10kの半分である5kのスピードから大きな影響を受けています。そこで前回と同じような視点から10kと5kの記録について考えますが、以前にこのブログで記載したとおり、10kと5kの記録には次のような関係があります。

◆10kの記録=5kの記録×2倍+1分。

もちろん、この公式は全てのランナーに当てはまりませんが、走歴を重ねていくと上記のような公式に近づいていきます。(私の経験上)

参考までに前回同様、マラソンの世界記録保持者であるゲブレセラシェ選手と日本記録保持者である高岡選手の1万mと5千mを見てみます。

◆ゲブレセラシェ選手:12分39秒(5千m自己記録)×2倍+1分=26分18秒≒26分22秒(1万m自己記録)。◆高岡選手:13分13秒(5千m自己記録)×2倍+1分=27分26秒≒27分35秒(1万m自己記録)。

このように若干の相違はありますが、ほぼ当てはまっています。つまり、10kの記録短縮を目指すには5kの記録が重要なポイントになります。したがって、スピード養成期でひとつの目安となる記録は5kも関係し、5kの記録を短縮していくことはマラソンの記録短縮につながる可能性も高まります。

次回からスピード養成期の具体的なトレーニングを考えていきます。

つづく。

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