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マラソントレーニング Archive

冬を走る・2

【冬を走る・2】12月20日に開催される防府読売マラソン大会まで3週間を切りました。出場する選手たちは、いよいよ最終調整に入っていきます。引き続きコロナ対策を継続していくことは当然ですが、風邪やインフルエンザなどにも注意です。

と、言いながら身近に風邪をひく人や、インフルエンザにかかる人は例年に比べて少ないのは間違いありません。いわゆる手洗いや、うがいなどをより徹底している効果とも言われていますが、まさにそんな感じでしょうか。

さて、最終調整のポイントは「質をキープしながら量を落としていく」ことになります。この点はほとんどの人が知っていることですが、実際はうまく実行できていないケースの方が多いと感じます。

もちろん、単純に量を落としていけば疲労は回復していきます。このカラクリもほとんどの人が知っていることです。しかし、量を落としていけば、そこに費やしていた時間も余ることにもなります。具体例として、日曜日に40k走を実施していたのを20k以下の距離に落とすと、至極当然のことながら走行時間も半分程度になります。

同時に質をキープしていくので、同じ距離を走るなら短い時間で終わるようにもなります。また、ポイント練習以外のいわゆる「ジョグ」も短く切り上げるようになっていきます。その結果、毎日苦労して捻出していた練習時間が余るようになります。

実は、ここに見えない「すき間」が生じてきます。時間に追われながら何とか走っていた人も、少し周りを見渡したり、情報収集できる「すき間」ができます。それ自体は悪いことではありませんが、周りと自分自身を比較できる「ゆとり」にもなります。

しかし、周りと自分自身を比較したとき、「私の方が圧倒的に有利だ!」と思える人はほとんどいないと思います。逆に「みんなすごい!」と不安な気持ちになる人が多いのでは。そして、経験したことのないその情報をすぐに取り入れようとする人も……。

その結果がどうなるかは想像できると思いますが、上記したようなパターンに陥る人が多いのは、今も昔も変わりません。逆に情報化社会が進むにしたがって、増えてきているような気がします。

情報を全て遮断することはできませんが、今の時代は「知ることで安心する」よりも「知ることで不安になる」ことの方が多いのかもしれません。特に、最終調整に入るこの時期こそ、そのことを自覚しておくことは無駄ではないと感じます。

秋を走る・10

【秋を走る・10】毎年のことですが、11月に入ってくると、12月の全国高校駅伝や正月のニューイヤー駅伝、箱根駅伝を意識した記録会が佳境に入ってきます。特に、今月末まではいわゆる「厚底シューズ」でのトラック出走が事実上認められていることもあり、各記録会のリザルトを拝見すると驚異的な記録ラッシュです。まさに「駆け込み乗車」と言ったら言い過ぎでしょうか。

しかし、それぞれのリザルトをよく拝見すると、厚底シューズを使用していない選手でもしっかりと好記録をマークしています。厚底シューズが好記録ラッシュのきっかけになったのは間違いありませんが、記録に対する「心の壁」を取り除くことにも大きく貢献しているのでしょう。

また、高校生や大学生の記録ラッシュばかりに目がいきますが、30代の実業団選手や40才以上のいわゆるマスターズ選手たちの頑張りも驚異的です。こうなってくると、厚底シューズが合う合わないではなく、そのシューズを乗りこなすテクニックを身につけ、その上でそれ以外のシューズを履き分けていくことになるのでしょうか。

さて、10月の富津合同マラソン練習会で実施した「タイムトライアル」を今月も実施しました。このタイムトライアルはトレーニングの中においては最も過酷な方に位置します。そのため、スタート前から自らの可能性を自らの心がブロックしてしまう人がいます。と言うか、必ずいます。

実際のレースと違うので、「行けるところまで行く」と、自らを試すのが目的なのにも関わらず、スタートからゴールまで自重してしまう人は多いのです。今回もそのようになりそうな人たちが相当数いましたが、積極モードに心が向かうよう、何とか仕向けたつもりです。

結果、先月以上に自己記録を更新したり、目標記録をクリアする人を多数輩出できました。特に、今回のタイムトライアルにも参加した50代女性ランナーは、前日に出場したトラック記録会の3000mで、若い高校生たちとデッドヒートの末、「11分11秒」の自己新記録を達成しました。そして、翌日もこのタイムトライアルに挑戦。

この女性は、ハーフマラソンで1時間30分の壁を突破できないと悩んでいました。しかし、トラック記録会のように思い切って4分ペースの集団についていき、一気に「1時間26分台」を達成しました。昔から「速いペースでも『速くない』と思い込んで走れ」と言いますが、間違いなく厚底シューズは、この「心の壁」も見事に崩したと言えるでしょう。

秋を走る・9

【秋を走る・8】暦の上では立冬が過ぎ、季節も冬に入ってきましたが、比較的温暖な千葉県富津市でも朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。そんな中、11月最初の強化合宿も無事に終了。

ブラインド選手たちは、12月20日に山口県で開催される防府読売マラソン大会を目標に走り込んでいるので、概ね今月末までのトレーニングは走り込みになります。今回の合宿も40k走をメインとし、26kビルドアップ走と3kのインターバルを実施しました。

夏の走り込みを終え、9月以降の強化合宿は千葉県富津市富津公園で実施していますが、各合宿で実施している走り込みの内容(トレーニングパターン)は、ほとんど変えずにたんたんと積み重ねています。

さて、マラソンを目標にした走り込みについては何度も取り上げてきましたが、「これが正しい」と言った正解がありません。それぞれのチームや選手ごとに積み上げてきた成功体験などをベースとしたノウハウによって走り込んでいるからです。

特に、秋からの走り込みは、季節的には夏から秋、更に冬へと気温が下がっていく方向に向かっていくコンディションになります。そのため、同じ距離を同じ設定タイムで走り込んでいても、季節が冬に向かっていくにしたがって「ゆとり」を感じるようになります。

この時、気温が下がって走り易いコンディションに向かっていくごとに、距離走などの設定タイムを引き上げていくチームや選手もいます。もちろん、更に質の高い内容にシフトしていくことになるので、走力アップを期待できる可能性も高くなります。

また、どの選手も狙っている目標タイムがあるので、最後はその目標タイムで走れる状態に仕上げる必要があります。つまり、どこかのタイミングで目標タイムを達成するための対応策を組み込むことが必須となります。それは、単に距離走などの設定タイムを引き上げることなのか、スピード練習などを増やしていくことなのかは、「あなた次第」になります。

9月から富津公園で走り込んできたブラインド選手たちは、同じ40k走を同じ設定で繰り返し走り込んできましたが、どの選手もゆとりを持って走れるようになってきました。また、ビルドアップ走については、同じ距離を同じ設定タイムでスタートしても、ラスト1kのタイムは確実に速くなってきました。

「これは楽しみだ」と久々に手応えを感じる立冬でした。

秋を走る・8

【秋を走る・8】この1週間は、全日本大学駅伝大会をはじめ各地区の実業団駅伝大会などが開催され、いよいよ本格的な駅伝シーズンが到来しました。また、12月開催予定の福岡国際マラソン大会や防府読売マラソン大会の当選発表(?)もあり、マラソンシーズンに向けても動き出してきました。

同様に、大学関係が主催するトラックでの長距離記録会も例年並みに戻りつつあるでしょうか。また、それぞれのリザルトを拝見すると、特に学生選手(男子)たちの記録躍進は驚異的と感じるのは私だけでしょうか。

いわゆる「厚底シューズ」の使用ルールが決まりましたが、国内に限っては11月末までのトラック競技使用も事実上認められている状態です。その影響は間違いなく好記録に結び付いていると感じます。

一方、それぞれの大学や選手たちが厚底シューズを上手に乗りこなす技術や、厚底シューズを着用したトレーニング時の設定タイムなどのノウハウが確立されつつあるとも感じます。これからはじまる本格的な駅伝・マラソンシーズンで、驚異的な記録を目の当たりにする可能性が高まっているのは事実であり、駅伝・マラソンファンとしてはとても楽しみです。

また、この厚底シューズはトップ選手だけでなく、市民ランナーや高校生、中学生にも深く浸透しています。特に、市民ランナーの方々は学生選手や実業団選手たち並みに普及している印象です。

厚底シューズの記録への影響について、正確なデータや報告を私は見たことがありません。しかし、マラソンを目標にしている市民ランナーの場合、厚底シューズに変えたことで5分以上の記録短縮を達成した方もいるでしょうか。特に、走力が3時間20分程度以内の市民ランナーの方々は、トップ選手以上に厚底シューズの恩恵を受けている方も多いと感じます。

ランニングは道具を使わないスポーツとして広く知られているので、誰でも気楽にはじめることができます。一方、シンプルなだけに「上手い、下手」ではなく、まじめに努力した人が結果を残せるスポーツとしても広く知られていると思います。

しかし、まさかの厚底シューズの登場で、記録はもちろん、トレーニング理論などにも大きな影響を与えるかもしれません。その昔、トラックはアンツーカー(土)でしたが、1968年のメキシコ五輪あたりから今の原型となるタータントラック(全天候型)に移行し、記録が大躍進しました。

厚底シューズを着用し、トラックで驚異的なスピードを出せるノウハウをつかんだランナーたちが、ロードの駅伝やマラソンでどんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみです。

秋を走る・6

【秋を走る・6】10月18日の富津合同マラソン練習会は、ハーフマラソンのトライアルを実施しました。もちろん、個々の判断で5kや10kのトライアルとし、途中でゴールしても大丈夫なルールです。

さて、コロナ禍の影響で全国各地のマラソン大会が中止や延期となっており、モチベーションが上がらないランナーも多いと思います。また、何とかランニングを継続してきた方でも、毎年目標にしてきた大会が無くなったことで、この先のトレーニング計画やその内容も見えなくなった方もいることでしょう。

毎年10月の第3日曜日は「高島平ロードレース大会(東京)」が開催されていました。同大会へは、富津合同マラソン練習会に参加している方々も、ほぼ全員が出場していましたが、今年は中止となりました。そのため、10月18日に富津でハーフマラソンのタイムトライアルを実施することにしました。

もちろん、実際のレースと違うので、参加した多くの方がこのタイムトライアルに向けて調整など実施せず、いつもの距離走感覚で参加していました。と、言いながら参加者の多くはかなり緊張しており、久々にレースペースで走ることに不安を抱いている様子でした。

毎年のことですが、夏にある程度走り込んできた方は、特にスピード練習を実施していない状況でも涼しくなってきた分、ある程度のスピードも出せる状態になっているものです。それを経験的にも理解している方は積極的に記録を狙います。

今回は、1kあたり4分00秒と5分00秒で走るペーサーを付けてスタートしました。いつもは5分30秒ペースで走っている方々は5分00秒ペース。5分00秒から4分30秒ペースで走っている方々は4分00秒ペースを目安にスタートです(参考までに先頭は3分20秒ペース)。

案の定、それぞれの集団から脱落する方はいません。特に、いつもは5分30秒ペースで走っていた方々も最後まで5分00秒ペースをキープし、ラスト2kは逆にスパートする余力もありました。4分00秒ペースのグループも最後まで集団が崩れず、同じくラスト2kから積極的にペースアップし、1時間23分台でゴールする女性もいました。

また、4分00秒ペースのグループに加わって10kトライアルとし、初めて40分を突破した50代の女性もいました。この他にも好記録続出のトライアルとなりました。秋も深まるこれからの季節は、更に記録更新を狙えます。特に、土台部分となる距離走を週末毎に重ねてきた方は、ハーフマラソン以下の距離でも十分に記録を狙えるのです。

11月もハーフマラソンのトライアルを実施予定です。

秋を走る・5

【秋を走る・5】マラソンを目標にした走り込みのメインは距離走ですが、距離走そのものについての定義はありません。もちろん、マラソントレーニングに出てくるインターバルなどの内容についても決まった定義はなく、実施する選手やチームなどによる経験や感覚的な部分が支配的です。

具体例として「ペース走と距離走の境界や違いは?」、「ショートインターバルとミドルやロングインターバルの境界や違いは?」、「ビルドアップ走のペースアップ方法は?」など、正式に決まっている点はひとつもありません。

また、個々の走力によってもその境界は変わります。初心者の方が10kの距離を走れば、ペース走と言うより、距離走に値することでしょう。同じく、400mのインターバルも初心者の方が走ると、ショートインターバルではなくなります。

このように、それぞれの走力によって同じトレーニングでも捉え方が微妙に違ってきます。したがって、個々の走力や目的に合わせた具体的な距離や設定タイムをスタート前に確認し、それに沿って走ることがポイントになります。至極当然のことです。

ところが、そうならないケースは多いのです。よくあるパターンとして、30kをゆとりある設定ペースで走り切る「距離走」としてスタート。ところが、出足から速めのペースになり、落とすことなくそのまま走り続けます。秋晴れの中、15kあたりから気温も上昇し、次第にゆとりもなくなります。しかし、そのペースを落とすこともできず、最後はほとんど全力でそのペースを死守して走り切ります。

この場合、「距離走」としてスタートしたのですが、出足から速くなり、結果的には「タイムトライアル」と、化してしまった例です。同様に、25kを5k毎にペースを上げていくビルドアップ走としてスタート。10kまでは設定タイムどおりでしたが、15k地点ではほとんど全力に近いペースに上ってしまい、最後の5kは逆にペースダウン。これも「タイムトライアル」と、化してしまった例です。

上記した2例とも強化合宿や練習会などで必ず拝見するパターンです。もちろん、目標のマラソンに向けてトレーニングを繰り返していくと、そんなこともあることでしょう。しかし、設定タイムを守れない人は、不思議と繰り返します。その結果がどうなるかは言うまでもありません。また、そのような人が同じグループで走ると、そのグループの練習は崩壊します。特に、駅伝を目標にしている場合、チームにも深刻なダメージを与えることになります。

自分自身が「グループで走れるタイプか否か?」、「単独で走る方が向いているタイプか否か?」など、予め把握してから各種トレーニングに挑むことは、走力アップにつなげる重要なポイントになります。

秋を走る・4

【秋を走る・4】私が主宰する富津合同マラソン練習会も10月から本格的な走り込みへと突入し、4日は最初の40k走を実施しました。また、先週同様、箱根駅伝や実業団駅伝を目指している選手たちも走り込んでいました。

毎年のことですが、10月に入るとテレビでも駅伝大会やマラソン大会の中継がはじまります。今年はコロナ禍の影響で中止や延期になった大会も多く、例年どおりにはいきませんが、富津公園で走り込んでいる選手たちのモチベーションは高まっています。

さて、本日からこの富津でいつものように強化合宿を実施します。内容は12月の防府読売マラソンに向けた走り込みになります。具体的には、距離走を2回、ビルドアップ走を1回の予定です。

12月のマラソンを目標にした場合、今は走り込みの入口に入ったあたりに相当するでしょうか。もちろん、夏の走り込みを土台にしているので、ある程度のペースでも押していけるスピード持久力は備わっています。

さて、夏の走り込みを家の建築に例えると、基礎部分の工事に相当します。しかし、今年の夏はもう少し掘り下げた地盤改良も実施しました。具体的には、単にゆっくり長く走るだけでなく、起伏の激しい周回コースでの走り込みも積極的に取り入れ、脚筋力の強化も実施しました。

10月からの走り込みは、完成する家をイメージしながら骨格となる柱や壁を組み上げていくトレーニングになります。基礎部分をより強固なものにするため、地盤改良も実施したので、より大きくて頑丈な家を建てることができるはずです。

しかし、基礎部分がしっかりしているから強固な家になるとは限りません。つまり、柱や壁を組み上げていく段階で、今は耐震構造も意識していかないといけないからです。もちろん、家の耐震構造がマラソントレーニングのどの部分に相当するかは、個々の考え方になります。

これまでの経験から思うのは、柱や壁を組み上げていく段階で、スピード系のトレーニングを重視し過ぎると、安定感の薄い仕上がり(地震や災害に弱い家)に陥り易くなると感じます。それを防止するには、耐震構造を意識した距離走がカギになります。

詳細は割愛しますが、10月は耐震構造を備えた強固な柱や壁を組み上げるイメージで走り込んでいきます。

秋を走る・2

【秋を走る・2】厳しい残暑が続いていましたが、一気に秋めいてきました。先日の19日からの強化合宿も暑さに苛まれることもなく、計画どおり順調に走り込むことができました。

さて、秋から冬にかけて開催されるマラソン大会の動向もかなり見えてきましたが、予想どおり厳しい状況です。既に年内のマラソン大会は全国的に自粛方向になっており、開催を表明している大会も参加基準を引き上げる傾向です。

また、年明けのマラソン大会についても、既に中止や延期を表明している大会が多いのも確かです。全国のマラソン大会もブームから定着へと移行していただけに、個人的には残念な気持ちです。と、言いながら今の状況が永久に続くこともないでしょう。月並みな言い方ですが、これまで同様、コツコツと走り込んでいくしかありません。

特に、マラソンに必要なスタミナ(持久力)は、身に付けるには年単位の地道な走り込みが必要ですが、手を抜き出すと目に見えて落ちていく傾向にあります(私の経験上)。そのため、「ここで休んだらもったいない」と思えるか否かは、大きなわかれ目になるかもしれません。

また、毎年目標にしてきたマラソン大会が無くなることは、走り込む目的やモチベーションを維持していくことすら難しくなっていくでしょう。つまり、落ちていく気持ちをどのように高めていくかの工夫も求められます。

マラソン大会を開催するか否かの判断は、最終的には主催者が大会当日に決めることもできます。しかし、そのマラソン大会で自己記録を更新するためには、計画的な走り込みの継続や心身ともに健康な状態を長期継続することが不可欠になります。つまり、マラソン大会に出場するための準備は手を抜けないのです。

先の見通しが立たないことに力を費やすことは確かに無駄なことかもしれませんが、マラソンは長期的な準備がないと結果を残すことはできません。また、この先のマラソン大会がどのようになっていくかは誰にも予想することはできませんが、自分自身の走力を維持・向上させられるか否かは自分自身で確実にコントロールできます。

いつも無視してきた弱い部分の自分自身と向き合える絶好の機会かもしれません。

夏の走り込み・6

【夏の走り込み・6】9月6日は東京パラリンピックのマラソン1年前でした(変更がなければ)。その日は千葉県富津市富津公園において、1年後と同じスタート時間でトライアルを実施しました。本来であるなら都内の同じコースでの試走が理想的でしたが、さすがにそれは難しいので、強化拠点にしている富津公園での実施としました。

もちろん、トライアル当日は起床時間からはじまり、各種暑熱対策やスペシャルドリンクの中身や摂取方法など、事細かい点まで実践的にしました。また、トライアルですが、やみくもに「がんばれ!」とは言いません。選手ごとの設定タイムについては、過去の各種データから導いた数値を個別に指示しました。そのため、スタートは一斉ですが、あとはバラバラの単独走になります。

スタート時間は早朝6時50分。そのときの天候は晴れ、気温28度、湿度80%と、まずまずの厳しいコンディションになりました。その後、願いどおりに気温は30度まで上昇し、より厳しいコンディションになったのは、まさに願ったりかなったりでした。しかし、そんな状況下でも選手たちは、ほぼ設定タイムどおりに走り続けていきました。

さて、夏マラソンを攻略する方法はそれぞれですが、最も重要な点のひとつは「ラスト2kは絶対に失速しない(ペースアップする)」ことです。冬マラソンの場合、前半を果敢に攻め、後半の失速を最小限に食い止めながらゴールすることができます。しかし、これが夏マラソンの場合、一度失速しだすとそれをくい止めることが、かなり難しい状況に追い込まれます。と、言うよりほぼ不可能と言ってよいでしょう。

つまり、夏マラソンを攻略する上で重要なポイントになるのは、前半に体力を温存し、ラストは一気にペースアップできる自分自身の設定タイムをつかんでおくことになります(私の経験上)。冬マラソンと違い、前半の突っ込みは中盤からの失速。そして、リタイヤへと直結していきます。要するに、何とかならないのが、夏マラソンの恐ろしいところなのです。

今回のトライアルで男女の主力選手たちは、ほぼ設定タイムどおりに走り切ることができました。単純に比較はできませんが、2016年のリオパラに当てはめると、男子のトップが銅メダル相当。女子のトップが金メダル相当、2位が銅メダル相当のタイムでした。また、同日に埼玉県熊谷市で開催された日本パラ陸上競技選手権大会に参加した他の主力選手たちもしっかりと走れていた様子でした。

この後、12月の防府読売マラソンを目指した冬マラソンに移行していきます。夏マラソンの攻略につながるもうひとつの重要な対策は、冬マラソンでしっかりと自己記録を更新しておくことです。冬マラソンでより高い次元にいくこと、すなわち夏マラソンのゆとりにもつながるからです。

夏の走り込み・5

【夏の走り込み・5】クラブチームの夏合宿を菅平高原で実施してきました。毎年恒例にしている夏合宿ですが、コロナ禍の影響で今年の夏はこの1回のみとなりました。

また、例年だとラグビー選手をはじめ、サッカー選手や中高生の合宿なども相まって、この菅平高原はたいへんな賑わいになっているのですが、今年は本当に静かな菅平高原でした。

そのため、毎年お世話になっている旅館も諸事情により、この夏は閉館するとの連絡が夏前にあったので、今年の夏合宿は宿泊先を探すことからでした。しかし、何とか受け入れていただける旅館を確保できたので、今年もクラブチームの夏合宿を実施することができました。

そして、例年どおり、この夏合宿のメイン練習は「40k走」。いつもの周回コースで早朝7時30分からグループごとにスタートするのも例年どおりです。そのスタート地点に7時ごろ到着すると、箱根駅伝の優勝を目指している東海大学の選手たちが「30k走」を実施していました。

スタート地点に置いてあった東海大学の伝言ボードには、その日の練習メニューや設定タイムなどが細かく記載されていました。スタート時間は5時50分だったので、我々がスタート地点についたときは30k走の後半でした。

この時、既に気温は30度をこえており、高原と言いながらかなり厳しいコンディション下での30k走でしたが、どの選手も最後までしっかりとした足取りでした。また、驚いたのは、ボードに記載されていた設定タイムです。

5千mを13分台、1万mを28分台で走る選手たちが揃っているグループでもかなり遅い設定タイムで走り込んでいたのです。もちろん、前後の練習計画がわからないので、その意図を知ることはできませんが、事実としてかなりゆとりを持った設定タイムで30k走を実施していました。

近年の東海大学と言えば、質の高いトレーニングをメインにしている「スピード集団」のイメージが強いのですが、そのベースとなるスタミナ強化は想像以上にじっくりと取り組んでいる様子でした。

まさに、「目からウロコ」。速さを極めようとしている学生選手たちでも土台つくりは時間と手間をかけているのです。今年最後の菅平合宿でしたが、とても良いものを拝見することができました。

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