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マラソン練習会 Archive

期分け・25

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今回から「スピード持久力養成期」のソフト面にあたるペース走の距離と設定タイムについて考えていきますが、この期はゆっくり長く走り込むことではなく、ある距離を正確なペースで走り込んでいくことが最大の目的となります。この点はとても重要なポイントになるので、常に意識しながら走り込んでいきましょう。

では早速ですが、どんな距離でペース走を実施すればマラソンの攻略につながるのでしょうか?

最初からとても無責任な言い方になりますが、この点については様々な考え方や理論がある部分であり、判断や決断に最も迷う部分でもあります。実際に私が指導している選手たち(市民ランナー)の中には、30kまでのペース走でマラソンを攻略できたケースや、マラソンとほぼ同じ距離である40k走を取り入れることでマラソンの自己新記録を大幅に更新した選手もいます。

しかし、今回はマラソンを攻略していく上で多くのランナーに当てはあるトレーニング方法と言う意味で、40k走を取り入れる前提で話しをすすめていきます。

では次に、40k走の実施頻度として毎週1回は40k走を取り入れていく必要はあるのでしょうか?

実は、この40k走の本数や実施タイミングについても、経験や走力によって大きく異なります。例としてオリンピックを目指すような実業団選手(プロ)は、1回のマラソンを目指していく過程で40k走を10回前後は実施します。つまり、初マラソンと言ってもトレーニングの段階で既にマラソンの距離を10回以上は経験していることになります。

ところが、一般の市民ランナーが同じような回数を実施できたとしても、平日はしっかりと仕事や家事をしているが故に、計画的な身体の手入れや休養を取り入れることは思うようにいかないのが現実です。そのため、慢性的な疲労が蓄積して故障をしたり体調を崩す可能性が大幅に高まります。したがって、一般の市民ランナーが、毎週末毎に40k走を実施していく流れは逆に効率的とは言えません。

一方で、人の身体は一度スタミナ切れ等の壁を経験すると、身体の中でスタミナを蓄えようとする働きが大きくなります。そして、次に同じような壁に再びぶつかった場合、意外と簡単に乗り越えるケースを実際に多く見てきました。そのため、40k走を10回も実施することは負担が大き過ぎるとしても、何度か適正なスピードで実施することは、マラソンに必要な「スピード持久力」を向上させるための有効的な手段であると考えられます。

次回はどのタイミングで40k走を実施するかについてです。

つづく。

期分け・24

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「スピード持久力養成期」のハード面として、◆1).正確な距離を測定した練習コースを確保する。◆2).アップダウンのあるコースについては、走る前に必ず路面や傾斜の状況等を確認しておく。・・・以上のように、大きく2つのポイントについて考えました。

これらについては、実際にマラソントレーニングを実施する際、トレーニングの量や強度を導き出す上で必要不可欠な重要事項となります。また、ペース走を軸にマラソントレーニングを計画どおり積み重ねているにも関わらず、思うような記録や成績を残せないランナーの多くは、上記の2つが抜けている可能性があります。もう一度、トレーニングコースについてチェックしてほしいと思います。

さて、今回からは、「スピード持久力養成期」のソフト面を考えていきます。はじめに、ここで言うソフト面とは主にペース走の距離や設定タイムのことを指します。実は、どんなレベルのランナーでもまず最初に考えることは、「どんな距離をどんなペースで走り込めば、マラソンの記録につながるのか?」と思いますが、皆さんはいかがでしょうか?

つまり、このことがマラソンを成功させるための最も重要な部分であり、同時に様々な方法や考え方があるところでもあります。そして、ここで大切なことは、どのトレーニング方法が正しいとか正しくないとかではなく、自分自身に合っているか否かを見極めることです。具体的には、実際の走力や走歴はもちろん、トレーニング環境や生活環境を加味した上で、そのマラソントレーニング方法が自分自身に合うか否かを判断することが重要です。

と、言いながら多くのランナーは常に考えている部分であり、実際のマラソントレーニングを積み重ねていくと、逆に大きくブレてくる部分でもあります。そこで、スピード持久力養成期の具体的なトレーニング方法を考えていく前に、共通した注意事項を最初にあげておきます。

◆注意1).一気に走行距離を増加させない。→ 故障や怪我を防止する。◆注意2).必要以上に速いスピードで走り込まない。→ 気持ちと身体にゆとりを持って、短期間で燃え尽きないようにする。◆注意3).場当たり的に走り込んでいかない。→ 日々のトレーニングはメリハリを付け、慢性的な疲労を蓄積させないようにする。

他にも細かく注意することはありますが、少なくとも上記のことは常に意識してほしいところです。

次回からは、今回の注意事項も取り込みながら具体的なソフト面を考えていきます。

つづく。

期分け・23

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今回も「スピード持久力養成期」のハード面について考えていきます。前回は正確な距離についてでしたが、今回は練習コースのアップダウン(起伏)についてです。

はじめに、皆さんもこれまで何度となく耳にしたことのある話しとして、「上り下りのあるコースや起伏での走り込みはスタミナが付く」、「山道やクロカン(クロスカントリー)での走り込みは脚力や心肺機能を高める」・・・。こんな話しを雑誌や本で読んだり、聞いたことのある人は多いと思います。

実際に山道やクロカンでの走り込みについては、多くのランナーがその効果を体感しており、世界のマラソンを席巻しているアフリカ勢がこれを証明しています。また、国内においてもクロカンでの走り込みを積極的に取り入れている選手やチームの多くが活躍しています。

では、あらためて起伏やクロカンでの走り込みの主な効果を簡単にまとめてみます。◆効果1).路面が舗装されていないので自然とバランスの良い走りが身に付く。◆効果2).斜面を上り下りする時はペースを上げなくても心肺機能を高めることができる。◆効果3).下りを走る時は着地の衝撃が大きくなるので脚筋力のアップにつながる。・・・以上のような効果をはじめ他にもランナーに必要な様々な能力を高めることができます。

しかし、逆にクロカンや起伏のあるコースでの走り込みは相応のリスクも伴い、デメリットになる場合もあります。◆リスク1).路面が舗装されていないので怪我や故障をし易くなる。◆リスク2).斜面を上り下りすることで平地でのペース感覚が狂ってくる。◆リスク3).下りを走る時の着地衝撃が大きく、その分疲労回復が遅れる。・・・このようにクロカンや起伏を走ることの効果は、見方によってはリスクにもなるのです。

実は、「スピード持久力養成期」に移行してからのクロカンや起伏での走り込みは相応の注意が必要になってきます。なぜならこの期の重要なポイントは、「正確な距離を正確なペースで走り込んでいくこと」だからです。そのため、上りや下りでの「5分/kペース(それぞれの設定ペース)」が、平地では何分何秒に相当するのかをしっかりと体感できる能力が備わっていないと、逆にペース感覚が狂ってしまう可能性があります。※平地で本来のスピードが出せなくなったりします。特に走歴の浅いランナーは要注意です。

同じく上り下りでの走り込みは、身体へのダメージが平地より大きくなります。そのため、平地でペース走を実施した後の疲労回復期間に対し、どの程度のズレになるかを予め見越したトレーニング計画を作成していないと、疲労の蓄積により故障する可能性が高くなります。

このように、「アップダウンでの走り込み」と言っても平地との相違点は多々あります。そのため、起伏での走り込みは、少なくとも「ペース感覚のズレ」と「疲労回復期間」、そして、「故障&怪我防止」の3点は常に意識してほしいと思います。

つづく。

期分け・22

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「スピード持久力養成期」の軸となるトレーニングは、20k~40kの長い距離を走るペース走です。もちろん、マラソンを目標にしているランナーならこの点については、既に常識的とも言えます。

しかし、意外と盲点になっている点があります。それは、正確な距離を計測した正確なコースでペース走を実施しているランナーが意外と少ない点です。さて、皆さんはいかがでしょうか?

実はランニング経験の無い一般的な人の距離感覚は、実測距離より長く感じる傾向にあります(私の経験上)。具体例として、ランニング経験の無いAさんに最寄り駅までの距離を聞くと、「3k程度」と教えてくれました。ところが実際にゆっくり走って行くと、10分もかからず目的の駅に到着・・・。ランナーの距離感覚なら大目に見ても2k前後の距離です。

また、別の例ですが、Bさんはマラソンを目指すために近所にある公園でトレーニングをはじめました。その公園は1周まわると1kになる遊歩道があり、距離表示もあります。それは、マラソントレーニングにとっては願ったりかなったりのコースです。

早速Bさんは、その周回コースで30k走にも挑戦し、ペース感覚も体得していきました。そして、目標タイムである3時間30分も十分に狙える充実したトレーニングを積んで、本番のマラソン大会に挑みました。ところが、あんなに楽に走れた「5分/k」ペースが実際のマラソン大会では最初の5kから苦しく感じます。「もう少しで楽になる」と、自分自身に言い聞かせながらそのペースを何とか維持して行きましたが・・・。30k以降は大きく失速してしまい、目標の3時間30分には届きませんでした。

Bさんはマラソン大会が終わった後、練習コースである公園の1kコースを、距離計を用いて実測してみました。すると驚くことに「950m」だったのです。つまり、1k走ると50m短く走っている計算になり、実は間違ったペース感覚を体得していたのです。もちろん、ランニング経験が無ければたったの50mと思いますが、このコースで5kを走ると250mも短くなります。そして、これを時間に置き換えると「約1分」です。ところが、5kで1分の誤差になると、予定していた通過ラップに修正していくことは、走力のあるベテランランナーを持ってしても難しい大きな誤差に匹敵するのです。

このように、公共施設である公園や河川敷にある距離表示も厳密に言えば正確でない場合も多々あります。そのため、公園や河川敷にある遊歩道などを利用したがためにペース感覚が狂ってしまうケースも意外と多いのです。

つづく。

期分け・21

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今回から「第1次走り込み期」の後半にあたる「スピード持久力養成期」について考えていきます。前回までの「基礎体力養成期」は、マラソンを走るためのベースとなる基礎体力(スタミナ)を養成するトレーニングでした。そして、今回はその基礎体力の上にスピード持久力を積み上げていくトレーニングとなります。

これを家に例えると、基礎体力となる部分が家の土台部分(基礎)にあたります。そして、今回の「スピード持久力」は、土台部分の上に組み上げていく家の柱部分となります。もちろん、柱と言っても単に基礎から垂直に立ち上がっている部分もあれば、その柱と柱をつないでいる部分もあります。更に屋根の部分に相当する柱もあります。つまり、この柱が全て組み上がると、その家の大きさや間取り部分の全体像がほぼ決定します。

このように「スピード持久力養成期」は、家の建築同様、マラソンを目指していく上で具体的にどの程度の記録を目指せるかが、ほぼ見えてくる最も重要な期でもあります。具体的な前期との大きな相違点は、身体の感覚を頼りにゆっくり長くの走り込みから、ある設定タイムを守りながら目的の距離を走り込んでいく点です。つまり、同じ走り込みでもタイムと距離に拘束されていく感じになっていきます。

と、言いながら前期の「基礎体力養成期」で走り込みが不足気味のランナーが、この「スピード持久力養成期」で一気に走り込むと、怪我や故障に悩まされて思うような走り込みができなくなるケースも多々あります。この場合は、焦らずもう一度「ゆっくり長く」の走り込みに戻って基礎から積み上げていきましょう。

さて、それでは「スピード持久力養成期」のポイントを、ハード面とソフト面の2点から大きくまとめてみます。

はじめにハード面として、◆ポイント1).長い距離を安全かつ正確なスピードで走り込むための、正確なトレーニングコースの設定及び確保。(トラック含む)

次にソフト面として、◆ポイント2).目標のマラソンを目指したペース走の適切な距離と、そのペースの設定。(20k~40k程度のペース走)

次回からは、それぞれのポイントについて考えていきます。

つづく。

期分け・20

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今回も前回の続きで「長く」について考えていきますが、「基礎体力養成期」の最後となります。

はじめに、「長く」の目安は「2時間」と話しましたが、ひと口に2時間と言っても長時間です。実際にたったひとりで黙々と2時間走り続けることができるランナーなら間違いなくマラソンに対する適正はあると言えます。少なくとも私はそう判断します。

一方で、一度に2時間も走り続けることが可能だとしても、実際は日常生活の中でその時間を確保する方が難しいとも言えます。したがって、2時間を連続で走り続けるには一般的には週末等の休日になります。しかし、平日でも出勤前の早朝や仕事後のアフターファイブをうまく活用することで、1日のトータル走行時間として2時間を確保することは可能です。

このように何事も工夫していくことは大切ですが、はたして2時間を連続で走るのと、2時間を2回にわけ、トータル2時間とするのでは同じような効果を期待できるのでしょうか?

判断の難しいところですが、特に走歴の浅いランナーや比較的体重の重たいランナーにとっては、2回にわけることで身体や足腰等への負担を軽減することが可能になります。同時に、無理なく走行距離をのばしていくことが可能となるので、ダイエット効果も期待でき、同時に基礎体力をアップさせることが可能となります。

さて、私の経験ですが、実はスタミナが付くか否かの境目の時間は、2時間よりも少し短い「100分」前後になります。実際に走っていると感じますが、60分をこえて80分連続で走るのも90分連続で走るのも同じような疲労を感じます。しかし、あと10分足して100分をこえてくると、スタミナが枯渇してきたことを感じてきます。このように100分連続で走り続ければ2時間と同じような効果を期待できます。

あらためて基礎体力養成期は、「ゆっくり長く」走ることで、マラソンを完走するためのベースとなる体力(スタミナ)をじっくりと養成していきます。それは、仲間と雑談できるスピードで2時間(≒100分以上)走り続けることがひとつの目安となります。そして、このようにじっくり走ることで、マラソンを走るために必要不可欠な「忍耐力」も培われていきます。

既に何度か話していますが、マラソンは球技のように道具を使用せず、単純に長時間走り続けるスポーツです。そのため技術的な部分は極端に少なく、自分自身の「身体と心」だけで勝負していくシンプルなスポーツです。だからこそ、基礎体力養成期では「ゆっくり長く」走ることを通じて身体だけでなく、「心のスタミナ」も養成していくのです。

つづく。

期分け・19

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今回は、「ゆっくり長く」の「長く」を考えます。

実は、この「長く」は各自の走歴や体力、目標としているマラソンのタイム等によってかなりのバラツキがでる部分です。具体的には初心者の場合、「まずは30分以上走ってみよう」となりますが、マラソンの完走が目標なら「60分以上走り続ける」ことが最低限の目安とも言われています。

同様に、ある程度の走力や体力が身に付き、マラソンも何度か経験してより高い記録を目標にしてくると、1回で走る時間を更に増やしていく必要がでてきます。しかし、この「長く」のはっきりとした定義はなく、今言われている時間の多くは、これまで多くのマラソンランナーが試行錯誤してきた経験値が支配的と感じます。

もちろん、今回の「ゆっくり長く」だけでなく、多くのマラソントレーニングは長い歴史の中で、多くのマラソンランナーが試行錯誤してきた経験や自らの身体を駆使しながら新しいトレーニング方法に挑戦して後世に残してきたものです。そして、それらのトレーニング方法を裏付けるために運動生理学の研究等が・・・。

それでは話しを「長く」に戻し、具体的な時間を考えると、私の経験も含めて「2時間」あたりがひとつの目安となってきます。実は、各種国際マラソンに出場するエリートランナーたちが「30kの壁」とか「35kの壁」と言った表現をします。また、この距離を時間に換算すると、スタートしておよそ「2時間」に相当します。※例として2時間は、1kを4分00秒ペースで走ると30k地点となり、3分30秒ペースで走ると35k前後となります。

このように1年間365日すべてをマラソントレーニングに当てているようなエリートランナーでもスタミナが枯渇してくるひとつの目安が、2時間となるケースが多いと感じます。余談ですが、世界の男子マラソンは2時間の壁にかなり近づいてきたので、「スタミナ切れをおこす前にゴールできる?」。もちろん、今の常識ではあり得ない発想ですが、今後はそんな研究をする人も出てくるかもしれません・・・。

さて、皆さんの「長い」とは、どの程度でしょうか?

ゆっくり長く走ろうと、スタートしたところ90分をこえるあたりからスタミナが枯渇し、2時間前後で動けなくなった経験はないでしょうか?

また、2時間が基礎体力を養成するのに適切な時間か否かについては、様々な考えもありますが、次回はその2時間についてもう少し考えていきます。

つづく。

期分け・18

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今回から「ゆっくり長く走る」について考えていきます。

はじめに、「ゆっくり」とは、どの程度のスピードなのでしょうか?

また、「長く」とは、どの程度の時間なのでしょうか?

実は、この2点の明確な定義については、少なくとも私自身はこれまで見たことも聞いたこともありません。したがって、具体的な数値を示し、必ずこのペースでこの時間を走り続けなさいと、言い切ることもできません。

・・・と、最初から無責任な言い方になりましたが、実は速く走るより、ゆっくり長く走る方が難しい面もあります。そのため、マラソンに向いてるかの判断をする材料として、単独でゆっくり長く走れるか否かを判断基準にしている指導者は意外と多く、もちろん私もその点は目安のひとつにしています。

では、話しを元に戻し、「ゆっくり」のペースについてですが、上記したとおり、明確な定義はありません。また、心拍数で管理する方法もありますが、今回は私の経験から数値で表してみます。

◆ゆっくりペースの目安 ≒ マラソンペース×1.5倍以上

具体例として、マラソンをサブスリーで走れるランナーの場合、1kペースは4分15秒になります。そのペースを1.5倍すると6分22秒となり、このペースより遅いペースが「ゆっくり」の目安になります。そして、このペースはサブスリーランナーにとって、仲間と会話をしながら走れるペースとなります。つまり、ゆっくりの目安は、「楽しく会話ができるペース」とも言えます。

更に、もう少し初心者レベルのランナーを例にとり、マラソンのタイムが6時間をこえる場合で考えてみます。この場合、1kのペースは8分30秒前後になります。そして、そのペースを1.5倍すると、12分40秒以上となります・・・。お気付きになったと思いますが、このペースはウォーキングのペースと変わらなくなります。即ち、マラソンのタイムが6時間をこえるようなランナーがゆっくり長く走ることは、長く歩くことと同じであるとも言えます。

このように、各自のゆっくりペースを計算していくと、ランニングペースがウォーキングペースと交錯するランナーもいます。いずれにしろ「ゆっくり」とは「楽しく会話ができるペース」であることを、ひとつの目安にしてほしいと思います。

次回は、「長く」について考えていきます。

つづく。

期分け・17

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今回も「基礎体力養成期(8月~9月上旬)」についてです。

既に大まかな流れについては話していますが、この期は「ゆっくり長く」がキーワードになります。具体的には、距離より時間です。即ち、「何キロ走る」から「何時間(分)走る」へのシフトです。その大きな理由は、気温や湿度が高い中で走り込みを実施する場合、距離を目標に一定のペースを保ちながら走ることが難しいからです。

例として、私がコーチする市民ランナーの中にはサブスリー達成者が多数います。そのランナーたちが30k以上のペース走を実施する場合、設定ペースは1kあたり4分30秒からが標準的な設定ペースと位置付けています。

ところが、この暑い8月にその設定ペースでペース走を実施すると、至極当然のことながら中盤あたりからペースを保つことが難しくなってきます。原因は言うまでもなく、気温と湿度が高いからです。そこで、更に設定ペースを落として走ればと考えます。実際に1kあたり30秒落とし、5分00秒ペースで走ると何とか走り切ることができます。

しかし、ここで新たな問題が出てきます。それは、設定ペースを落とし過ぎることで、11月のマラソンで目標記録にしているペースと大きくかい離することです。具体的には、次の「スピード持久力養成期」に移行した際、狙った設定ペースで30k以上のペース走が難しくなるランナーが・・・。もちろん私の経験上の話しが主なので全てのランナーに当てはまりませんが、設定ペースを落とし過ぎてペース走を実施する場合、自分自身が持っているペース感覚が遅い方へぶれるランナーが意外と多くなるのです。

・・・と、長々と説明してきましたが、暑い中でキッチリと設定ペースを守り、計画どおりの距離を走り込んでいくことはとても難しいのです。そして何より、苦しんだ割には身体に疲労を蓄積させるだけになり、精神的なストレスをためこむ結果にもなります。

このように、8月の暑い中での無理なペース走は個人差もありますが、マイナス面の方が多いのです。

そこでこの基礎体力養成期では、自らを設定ペースや距離のストレスから解放させ、「ゆっくり長く」をモットーに走り込んでいきます。更に、ゆっくり長く走ることは、長距離ランナーに必要不可欠な毛細血管網の発達を促進させます。実は、長距離ランナーの速さや強さを決める要素のひとつが、肺から取り込んだ酸素を身体の隅々まで運ぶ毛細血管網にあります。※専門的な話しは割愛します。

それは、この基礎体力養成期でゆっくり長く走ることが、11月のマラソンに必要不可欠な長距離ランナーとしての身体つくりにつながるのです。

つづく。

期分け・16

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前回は、「第1次走り込み期」を大きく二つに分けました。そして、今回からはその前半にあたる「基礎体力養成期」について考えていきます。

既にこのブログでも何度か夏の走り込みについて考えてきましたが、今回の基礎体力養成期についても大きく変わることはありません。実は、1年で最も暑いこの時期と反対に最も寒い時期のことを陸上競技では鍛錬期とも呼んでいます。即ち、最も暑い8月とその前後の月と、最も寒い2月とその前後の月は自分の種目に必要な基礎体力を養成する期間と、多くの陸上選手は位置付けています。

そしてこの期間は、短距離選手も積極的な走り込みを重ね、同時に筋力をアップさせるようなトレーニングを集中的に実施します。もちろん、同じ走り込みでも長距離選手のような走り込みとは異なりますが・・・。そのため、8月の暑い時期は涼しい場所へ移動し、2月の寒い時期は暖かい場所へと移動しての合宿形式のトレーニングが多くなります。

ところが、マラソンを目指している選手にとって、2月はマラソンやロードレースのシーズンにあたります。そのため、基礎体力を養成できる期間は8月とその前後の月だけとなります。そして、マラソンを目指している選手にとっての基礎体力を養成するトレーニングは、もちろん走り込みが中心となります。

このように、基礎体力養成期にあたる8月とその前後の月は、単に11月のマラソンを目指した走り込みだけでなく、1年間をしっかりと走り切るための土台を構築する最も重要な期間とも言えます。

一方で、7月から8月は1年間で最も気温や湿度が高く、ランニングには最も適さない季節であることも違いありません。そのため、この暑い時期を逆に休養にあてる市民ランナーも多く見受けます。この考え方は、運動生理学的に言えば正しいのかもしれませんが、暑い季節を避けて9月から走り込みを開始した場合、はたして秋や冬のマラソンで狙った結果を残せるのでしょうか?

私の経験上の話しになりますが、答えは「NO」です。その理由はいくつかありますが、最も大きな理由のひとつは暑さを避けた結果、暑さや湿度に対する「暑熱順化」ができていない点です。詳細は割愛しますが、暑い時期にじっくりと汗をかくような走り込みを積み重ねてこなかった結果、9月以降の厳しい残暑で夏バテや脱水症状に・・・。

特に、ここ数年は温暖化の影響で11月のマラソン大会にも関わらず気温が20度をこえるケースも珍しくなくなりました。つまり、夏の暑い時期を休養にあてたランナーは、9月以降の走り込みやレースで残暑による暑さの影響を受け易くなります。

また、走力や出場する大会のレベルは全く違いますが、実業団選手(プロ)や箱根駅伝を目指す学生選手においても、実は同様のことが言えます。つまり、秋や冬の各種大会で不調な選手の原因を突き詰めていくと、その年の夏を計画どおりに走り込めなかったことが大きな要因となっている選手は多いのです。

このように、8月を軸にした基礎体力養成期は秋のマラソンに向け、とても重要な期であると・・・。

つづく。

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