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2008-06-10

北京へ・2

北京パラリンピック視覚障害者マラソンの日本代表選手が正式決定しました。あらためて紹介すると、高橋勇市選手(43歳)、加治佐博昭選手(34歳)、新野正仁選手(51歳)の3名。高橋選手は、前回のアテネパラリンピック金メダリスト(全盲の部)であり、今回の北京で前人未到の連覇を狙います。そして、昨年11月の福知山マラソンで、その高橋選手を終盤激しく追い上げた成長著しい加治佐選手。更に、4月のかすみがうらマラソンで自己記録を更新したばかりの新野選手。今回も史上最強の日本代表選手を選出することができました。そして、かくいう私は、視覚障害者マラソンのコーチとして北京に帯同し、代表選手及び伴走者達のサポートをさせて頂くことになりました。

早速、先日の6月7日(土)から1泊2日の日程で、千葉県富津市富津公園において、日本代表選手の第2回強化合宿を実施しました。この富津公園では、過去に何度も合宿を実施しているので、選手達もコースを熟知しており、今回も精力的に走りこんでいました(高橋選手は私用のため、今回は不参加)。

さて、視覚障害者マラソンの伴走は、どなたでも簡単にすることができます。しかし、日本代表選手の伴走はある意味特殊で、やはりそれなりの走力が必要となります。また、伴走者の走力が選手より高ければ高いほど伴走者自身のゆとりとなり、同時に選手のゆとりにもなります。これは、至極当然の話ですね。では、走力のある伴走者が選手をサポートすれば、どんな選手でも好成績をおさめることができるでしょうか?残念ながら答えは「No」です。実は、ここが視覚障害者マラソンの最も難しい点でもあります。

それは、選手と伴走者が歩調と同時に、「心」を合わせる必要があるからです。特に、国際大会となれば、何日間も行動を共にします(更に同じ部屋で、24時間全てを共にする)。また、選手は伴走者がいないと一歩も走れませんが、伴走者はその選手が走っていなければ根本的に必要ありません。このように、選手と伴走者は微妙な距離間を保っている関係でもあります。もっと言うと、些細なことで、選手と伴走者の関係は亀裂が入りやすく、コンビとして破綻してしまうこともあります(お互いが不信感を持つと、一歩も走れなくなる)。

北京パラリンピックまで3ヶ月弱となりました。それぞれの代表選手と伴走者の走るリズムは、しっかりと合ってきました。あとは「心」です。それには、選手と伴走者がお互いにもっともっと深く掘下げた部分で理解する必要があります。つまり合宿等で、お互いの生い立ち話も含め、何でも積極的に語り合うことが重要です(特に伴走者の方から)。すると、お互いの生々しい話も飛び出し、人の痛みや情けを知ることができます。そして、情に流されそうになる気持が、どんどん強くなって行きます。ところが、その気持が強くなってくるほど、過酷な状況下のレースや練習では逆に、的確な判断や伴走が可能になってくるから不思議です。そうやってお互いの「心」がひとつになった時、はじめて世界との勝負が可能となります。

だから、選手と伴走者を結んでいる伴走ロープを、「絆」と言うのです。

皆様の絶大なるご声援をお願い申し上げます!

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