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2022-09

秋を走る・5

【秋を走る・5】23日の3連休をはさんだ日程で強化合宿を、いつもの千葉県富津市富津公園において実施しました。ちょうど台風の接近と重なりましたが、トレーニングには影響ありませんでした……。

また、同じ3連休に岐阜県において全日本実業団対抗陸上競技選手権大会も開催されました。同大会には、強化合宿などでもガイドランナーをつとめている山口遥選手も出場したので、ちょうど23日に千葉県から岐阜県へ移動し、翌日の24日に千葉県へ戻る日程で遠征しました。しかし、こちらは台風の影響をもろに受けることになりました……。

さて、次のターゲットとなる12月の防府読売マラソン大会に向けた走り込みのピークは10月になります。今回の強化合宿は故障明けの選手もいたので、足慣らし的な位置付けにもなりました。内容も距離走を2本実施しましたが、特に具体的な設定タイムなども決めず、個々の体調や調子に合わせた感覚で走りました。

また、12月の防府読売マラソン大会に向けてどのように調子を合わせていくのかを、この段階でよく考えることは重要ですが、逆に12月の同大会に調子を合わせることが難しいと判断する選手もいるかもしれません。しかし、年明けの2月に実施予定の別府大分毎日マラソン大会に合わせることは十分可能です。その場合、12月の段階でどの程度の調子に戻しておくかの目安は必須になります。

よくあるパターンとして、現時点で調子が悪いからといって何も考えずに走り込みを重ねた結果、調子のピークが大きくずれてしまうことです。実際にあった例として、年末から年明けの1月前半に調子のピークが訪れてしまい、練習のつもりで出場したハーフマラソンで自己新を達成(無欲で出場)。しかし、2月の別府大分毎日マラソン大会で大失速(狙って出場)。

このように「練習のつもり」というのが曲者で、無欲とはプレッシャーを感じていない状態にもなります。一方、無欲で達成した記録に気分を良くし、本命のマラソン大会では自他ともに期待を寄せることになります。すると、これまで感じたことのないプレッシャーを背負うことにもなり、マラソン大会当日は高い確率で失速することにつながるのです。

あらためて、現時点における調子の良し悪しに関係なく、目標のマラソン大会に向けたトレーニング計画を考え、それに沿って走り込んでいくことがベースであり、重要です。その結果、自身の心と体の調子をコントロールしていくことにもつながり、いわゆるポイント練習ごとにプレッシャーを感じることにもなります。

そして、その計画的なプレッシャー(ポイント練習)を受け止めていくことが、本命のマラソン大会当日に力を発揮できる心と体の強化にもつながっていくと考えます。

秋を走る・4

【秋を走る・4】先日の17日からの3連休を活用し、長野県菅平高原において合宿を実施してきました。ちょうど台風が接近していましたが、幸い大きな影響もなく、無事に走り込むことができました。

さて、今合宿の目的は「40k走(距離走)」でした。もちろん、標高も高いので、それぞれの走力に合わせて距離や設定ペースを調整しましたが、全員が概ね予定どおりに走ることができました。

また、同じ周回コースにおいて、箱根駅伝を目指している大学チームも走り込んでいました。もちろん、我々とは別次元のペースですが、チーム状態の良い大学は最後まで集団が崩れることはほとんどありません。一方、チーム状態に不安がありそうな大学は、序盤から集団を維持することが難しくなっていました。

このように集団で距離走を実施している様子を拝見すると、そのチーム状態やその中で走っている個人の調子がよくわかります。マラソンや長距離種目は個人競技ですが、長い距離や長い時間走り続けるトレーニングがメインなので、常に単独走でそれを継続していくのは難しいのも確かです。

したがって、逆に「集団で長距離を走るトレーニング(距離走)」を組み込むことで、個々の走力を効果的に向上させることができます。特に、個人競技の究極ともいえるマラソンや長距離種目は、このような集団による効果があらわれ易い競技特性があると感じます。

しかし、その集団走(距離走)を効果的に継続していくにはいつくかの条件があります。まずは、適切な距離と設定ペースになります。そして、何よりもその集団走の先頭を走る司令塔の存在です。いわゆるペースメーカーの走力と能力になります。

具体的には、設定ペースを寸分の狂いなく、安定して最後まで走れることが第一条件になります。次に、集団全体やある個人が後方からあおってきたとき、それをおさえ切れる強いメンタルを持っていることもペースメーカーとしての重要な条件になります。

すなわち、そのチーム内においては、エース的存在ともいえるでしょうか。このような条件を兼ね備えたペースメーカーをになえる優秀な選手が、チーム内に複数存在するならそのチームは間違いなく成長していけます。

もちろん、それはクラブチームなどが主催している練習会などにも当てはまります。特に、思うような成果が出ていない場合、まずはペースメーカーの実力や適正を再確認してみることは必要です……。

秋を走る・3

【秋を走る・3】先月の北海道マラソン大会からちょうど2週間経過しましたが、次の目標となる12月の「防府読売マラソン大会」を目指した強化合宿を開始しました。もちろん、選手たちの回復状態を最優先しながらでしたが、主力選手たちは元気に走り込んでいました。

「マラソンを走ったあとの回復期間(練習量を落とす期間)は?」

ある意味、この問いに対する回答は永遠の課題でしょうか。専門的な文献や一般論などは多数ありますが、「あまり当てにならない」というのが現場での肌感覚になります。別の見方をするなら、「回復期間は個人差が大き過ぎる」とでもいいましょうか。

もちろん、選手個々の定期的な血液検査の結果や日々の体調チェックなど、ある程度科学的なデータを照らし合わせての判断にもなりますが、人の体は必ずデータどおりになりません。

マラソンのようなハードなトレーニングを日々継続している選手たちの血液結果が、異常値を示すことは珍しくありません。ところが、走ることなどせず、普通の健康的な生活をしている人は、そのような異常値はほとんどないと思います(病気などは別)。

したがって、マラソン後や合宿期間中に実施する血液検査で数値が改善された選手の場合、純粋に改善したことを評価するよりも、単に練習を休み過ぎたり、練習の強度不足を、まずは疑います。つまり、練習やレースで結果を残せていない選手ほど、逆に血液状態が良いケースも意外と多いからです(私の経験上)。

さて、話しが脱線しましたが、マラソン後の回復期間については、上記したように個人差が大きいことは間違いなく、その見極めは簡単ではありません。しかし、ひとついえるのは、計画的にしっかりとマラソントレーニングを積んでマラソンに挑んだ選手ほど、走った後も大きな故障やケガに陥ることなく、次の目標に移行している確率が高いのは確かです。

しかし、マラソンは競技の特性上、その記録は当日の天候などのコンディションに最も左右されます。したがって、特に走り込みをしていなかったとしても偶発的に好記録をマークする選手が存在するのもそのためです。ところが、そのような選手の中には、そのマラソン後に故障したり、次のマラソンでは大きく失速したりと、いわゆる「一発屋」で終わる確率も高いと感じます……。

まとまらない話しになりましたが、要はしっかりと走り込みをしてマラソンに挑んだ選手ほど、その結果の良し悪しに関係なく、マラソン後の回復期間は短い傾向になると感じます。すなわち、マラソンに向けた走り込みを計画的に実施することで、その後の故障やケガのリスクも軽減できるともいえるでしょう。

秋を走る・2

【秋を走る・2】9月に入り、秋からのマラソンや駅伝・ロードレースシーズンに向けた本格的な走り込みに突入していきます。そして、いつもお世話になっている千葉県富津市富津公園にも多くの学生選手や実業団選手たちが戻ってくる季節です。

先日の日曜日もその富津公園において30k走を実施しましたが、スタート時は曇っていたので、何とか走り切れると判断しました。ところが、逆に天候はどんどん回復し……、厳しい残暑との戦いになってしまいました……。

さて、9月に入ると、富津合同練習会に参加する方々からよく質問されることが、「距離走は何キロ走ればよいですか?」。実は、とてもシンプルで最も難しい質問になりますが、結論は「可能な限り長い距離(30kより40k)」と、なります。

マラソン競技の特性上、そのパフォーマンスに最も影響を与えるのは「月間走行距離」になります(私の経験上)。最近は、ランニングフォームや各種補助運動など、様々な情報があふれている時代になりましたが、単純にたくさん走り込めれば必ず記録に結びつきます。

しかし、多くのランナーはその道中でケガや故障に見舞われ、逆に走れなくなってしまうケースが多いのです。つまり、たくさん走るつもりが、逆に全く走れなくなってしまい、結果的にはマラソンの記録も停滞してしまう……。

実は、この矛盾を解消するには日々の積み重ねがより重要になります。要は、欲を出し過ぎず、毎日コツコツと確実に継続していくのです。具体的には、曜日ごとにトレーニング内容にメリハリをつけ、それを判で押したように何年も継続していくことです。

そして、この王道をいっているランナーが、いわゆる実業団選手や学生選手になるでしょうか。そのため、特にマラソン練習を積んでいなくても、初マラソンで快走する選手が散見されるのは、まさにコツコツと何年も積み重ねてきた土台があるからと考えます。

一方、市民ランナーの方々は、仕事や家族などの事情から平日の積み重ねが不安定に陥り易く、なおかつ継続も難しいケースが多いのも確かです。したがって、その積み重ね自体も極端に薄くなり、成果がみえるまでに時間がかかり過ぎてしまうのです(根負けし、道半ばであきらめてしまうケースも多い)。

説明が回りくどくなりましたが、日々の積み重ねが薄くなりがちな市民ランナーの方ほど、週末(休日)の距離走は重視すべきと考えます。具体的には、設定ペースを落としてでも、可能な限りマラソンの距離に近づく距離走(または3時間以上)の実践を強く推奨します。

秋を走る・1

【秋を走る・1】3年ぶりの開催となった北海道マラソン大会は大いに盛り上がりました。その大会当日の天候は曇りで気温も25度前後でしたが、湿度が60%を超えており、意外と厳しいコンディションだったと感じました……。あらためて、大会開催にご尽力いただいた関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

そんな中、ブラインドマラソンの選手たちも3年ぶりに出場し、男子は昨年の東京パラで銀メダルを獲得した和田伸也選手が大会新記録で優勝。女子も東京パラで金メダルを獲得した道下美里選手が自らの大会記録を更新する新記録で3連覇を達成しました。

しかし、今回の北海道マラソン大会に向け、強化合宿などを重ねてきたにもかかわらず、直前にコロナ感染する選手や故障する選手を複数出してしまった点。大会当日は途中棄権する選手も複数出してしまった点など、強化責任者としては猛省する大会となりました。

この後、12月の防府読売マラソン大会を目標に強化活動を継続していきますが、手綱を引き締め、しっかりと立て直していく所存です。引き続き、皆様の絶大なるご支援をお願い申し上げます。

一方、ブラインドマラソンの強化合宿などで選手をサポートしながら一緒に切磋琢磨してきたガイドランナーでもある山口遥選手が、女子の部で優勝し、目標のMGCを獲得しました。

特に、35k以降は上記したブラインドの和田伸也選手と競り合いながらゴールを目指す姿は、強化合宿などでいつも見ている映像そのものでした。彼女にとっても、いつもの練習と同じ感覚で最後まで粘り抜けたことが、最大の勝因だったことでしょう。

そんな彼女は、これまで厚底シューズを本格的に使用したことは、ほとんどありませんでした。しかし、この北海道マラソン大会に向け、走り込みの段階から厚底シューズを徹底的に履いて履きつぶし、履きこなせる段階まで持っていきました。

さらに、彼女は50回以上のマラソン経験があるにもかかわらず、スペシャルドリンクを置いたことは一度もありません。そもそも、真夏の距離走においてもほぼ給水を取りません。とにかく暑さには強く、炎天下の練習で彼女がつぶれた姿を見たことはありません。

ところが、この給水を適当に考えて一流になった選手はいません。マラソンでさらに飛躍するうえで、この給水問題は避けて通れないことも確かです。今回の北海道マラソン大会で、彼女は初めてスペシャルドリンクを置き、そのドリンクを取りながらゴールを目指しました。

あらためて、今回のレースは終盤にブラインドの和田伸也選手と競り合えたことは大きかったのですが、それを可能にしたのは厚底シューズとスペシャルドリンクだった点も確かです。このように、50回以上もマラソンを完走しているベテラン選手が、まるで初心者ランナーのような対策でMGCを獲得したのです。

しかし、どんなレベルに到達しても自分自身に不足している点を素直に認め、それを素直に修正(試みる)する気持ちと姿勢を持っている選手は確実に成長します。彼女が今後も飛躍する可能性がある最大の理由は、そこになります。

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