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2024-06
2024夏を走る・5
- 2024-06-28 (金)
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【2024夏を走る・5】今年も半年が過ぎ、来週から7月に入ります。今月から9月8日のパリパラマラソンに向けた本格的な走り込みを開始していますが、ひと月が過ぎました……。また、6月は長野県上田市菅平高原で走り込んできましたが、7月は北海道北見市に場所を移します。
あらためて、オリパラは夏に開催され、どの競技も記録よりも順位が重視されます。したがって、冬マラソンを目指す取り組みとは目標設定の考え方が異なります。もちろん、冬マラソンでも優勝を目標にすることは同じですが……。
まず、冬マラソンと夏マラソンを目標にした場合、どちらも目標タイムの設定が最初になります。しかし、ここで大きく異なる点として、冬マラソンは「自己記録の更新」が最大の目標となり、自己記録の更新がそのまま優勝を狙えるタイムなら、目標設定は「自己新記録で優勝」にもなります。
ところが、夏に開催されるパラマラソンの場合、そもそも夏マラソンで自己記録を更新することはかなり難しく、暑い中で冬マラソンのようなトレーニングを積んでいくこと自体も難しい。したがって、目標タイムは「メダル獲得(入賞)」をターゲットにした設定タイムになります。
もちろん、夏マラソンでも自己記録更新を目標にすることは可能ですが、冬マラソンのような量と質の両面から追い込むトレーニング自体が相当難しい。仮に涼しい場所でトレーニングを消化できても、どこかのタイミングで必ず暑さに慣れる必要があり、そのタイミングの見極めが難しく、直前に暑さで調子を崩すケースは多いのです。
参考までに、2021年9月5日に開催された東京パラマラソンにおいてもメダル獲得ターゲットタイム(※)を計算し、そのタイムを狙える走り込みの量と質を見極めながら取り組みました。ところが、大会数日前の天気予報は当日の天候が雨(低温)……。したがって、最後の全体ミーティングにおいて、男女ともメダル獲得ターゲットタイムを上方修正し、各選手とも共有しました。
具体的には、女子は「3時間00分59秒」を金メダル獲得ターゲットタイムとし、道下選手が「3時間00分50秒」で金メダルを獲得。男子は「2時間28分10秒」をメダル獲得ターゲットタイムとし、堀越選手が「2時間28分1秒」で銅メダルを獲得。
今回のパリパラマラソンに向けたメダル獲得ターゲットタイムはすでに計算しており、そのタイムを目標に走り込みを開始しています。もちろん、前述したとおり、そのタイムは自己記録更新ではありません。つまり、メダル獲得に自己記録更新が必須であるなら、パリパラマラソン(夏マラソン)でのメダル獲得は極めて難しいことになります。
要は、いわゆる冬マラソンと夏マラソンの攻略方法が異なる点をよく理解(経験)していないと、夏マラソンは単に疲労を残すだけのトレーニングに陥ってしまうリスクが高いのです。至極当然のことながら、選手は少しでも良いタイムを出したいので、暑くても寒くても自身を追い込みます。そこをいかにしてコントロールしていけるかが……。
※メダル獲得を確約した設定タイムではありません。
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2024夏を走る・4
- 2024-06-21 (金)
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【2024夏を走る・4】長野県上田市の菅平高原において実施していた強化合宿は終了し、計画どおりに距離走を2回実施。しかし、2回目の距離走はあいにくの雨模様となりました。
一般的には、6月に入ると気温も高くなってくるので、逆に雨の中は走り易いと感じます。ところが、菅平高原のように標高が高い場所では、天候が悪化すると平地以上に気温が下がります。つまり、冬の冷雨に近い状況になることがあります。
今回、2回目の距離走はまさにそんなコンディションとなり、スタート前に懸念していた低体温症に陥る選手もいました。実は、平地の暑さを避け、涼しい高原でしっかりと走り込むことが目的なのに、涼しくなり過ぎて逆に走れなくなることもあるのです。
そして、7月の強化合宿は北海道北見市で実施しますが、やはり同じようなことが過去にありました……。
今や北海道と言っても温暖化の影響でしょうか、日中の気温が30度を超える日は普通です。それどころか、北海道北見市での合宿中に気温が38度に達したこともあり、もはや国内の夏はどこでも平等に暑い。
ところが、天候が崩れて雨になると、気温が極端に下がるときがあります。数年前の北海道北見市での強化合宿中(8月)、天候が雨で気温も10度前後だったことがありました。そして、その日の練習がたまたま距離走。案の定、低体温症に陥る選手がいました。
このように、一般的に涼しいと言われている場所ほど、逆に寒暖の差が激しくなってきているのかもしれません。つまり、体調管理がこれまで以上に難しくなってきているとも言えます。
さて、2021年9月5日に開催された東京パラマラソン当日の天候は雨でした。我々は気温が30度をはるかに超える中での勝負を想定し、暑熱対策に重点を置いて強化してきました。ところが、当日の天候は雨。そして、気温はたったの20度でした……。
今年の9月8日に開催予定のパリパラマラソン当日の天候は誰にもわかりません。もちろん、暑い中での勝負を想定しながら強化していきますが……。真夏の走り込み中に経験した低体温症も決して無駄にならないほど、先の読めない異常気象なのかもしれません……。
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2024夏を走る・3
- 2024-06-15 (土)
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【2024夏を走る・3】今月2回目の菅平合宿(長野県上田市)のため、昨日から現地入りしました。また、今回も実業団チームが各地からここ菅平高原に上がってきており、同地で唯一の陸上競技場においては、チームの垣根をこえたトップ選手同士が切磋琢磨していました。
さて、我々は今回も5泊6日の日程ですが、その間に「42k走」を2本走る計画で、前回の菅平合宿とほぼ同じ内容を繰り返す予定です。そして、最終目標のパリパラマラソンは9月8日なので、そこに調子のピークが合うように調整していきますが、今月はそこに向けた強化合宿の1丁目1番地にあたります。
いわゆるマラソントレーニングで言うところの「脚つくり(土台つくり)」に相当するところです。したがって、じっくりと長い距離を走るトレーニングがメインとなります。また、菅平高原は標高が千メートル以上あるので、平地のような速いスピードで走らなくても心肺には、それなりの負荷もかかります。
しかし、変化の少ない楽なロードコースを走り込んでも強化の目的を達成できないので、42k走は全て起伏の激しいコースで実施します。このコースは2016年リオパラ、2021年東京パラに向けた走り込みでも使用してきたコースなので、パラマラソンのメダル獲得に向けた我々のノウハウがつまっています。
具体的には、片道2kの山岳道路を往復するコースです(1往復で4k)。つまり、40k走の場合は10往復になります。しかし、パリパラマラソンに向けた今月からの強化合宿で、このコースを約10年振りにリニューアルしました。と言っても場所を変更した訳ではありません。折り返し地点(2k)を500m先にのばし、1往復を5kにしただけです。
同コースは、折り返しにしていた2k地点から先はさらに急な下り坂です。そして、その下り切った地点までを計測すると、ちょうど500m。つまり、折り返し地点を500m先にずらすことによって「500mの下り坂と500mの上り坂」をあらたに追加することができます。
実は、パリパラマラソンコースを視察したあと、菅平高原の山岳コースでは物足りないと考えていたので、まさに「灯台下暗し」「目からウロコ」。と言っても走るのは選手たちであり、いたずらにコースを厳しくしていっても、ケガや故障をしては元も子もありません。この点は、どこで合宿を実施しようが、共通の最重要課題になります。まさにマラソントレーニングのコース選定は「命」です。
幸い、今月最初の菅平合宿で実施した同コースでの距離走は、特に大きなトラブルもなく終えることができたので……。もちろん、トラブルの意味はひとつではなく、走ったあとの体へのダメージや設定タイム(強度)が適切だったか否かなど、判断するのは簡単そうにみえますが、確認するポイントは多岐にわたります。
引き続き、緊張感を持ってパリパラマラソンの強化を継続していく所存です。
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2024夏を走る・2
- 2024-06-06 (木)
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【2024夏を走る・2】長野県菅平高原での強化合宿は無事に終了しました。この時期の菅平高原は朝晩の気温はかなり下がり、早朝の気温は連日ひとケタでしたが、体調を崩すような選手を出すこともなく、計画どおりに走り込めたのは何よりでした。このまま、順調に9月のパリパラマラソンまで走り込んでほしいと願うばかりです。
さて、視覚障がいランナーの高齢化については、何度か記載してきましたが、パリパラマラソンの日本代表候補選手たちも例外なく高齢化が進んでおります。もちろん、パラマラソンに年齢制限などは存在しないので、何歳になっても挑戦することは可能です。したがって、自分自身で「もう歳だから……」と勝手に判断し、悲観する必要は全くありません。
そんな中、ある選手の伴走者として弓削田眞理子氏が、我々の強化合宿に参加してくれることに(今回で2回目)……。弓削田氏は、60歳以上女子マラソンの元世界記録保持者(2時間52分13秒)で、65歳を過ぎた現在もバリバリにマラソン(3時間前後で)を走っている方です。
弓削田氏の活躍は多くのメディアなどでも取り上げられています。年齢を重ねてもマラソンに挑戦するポジティブな考え方とその生き方は、個人的にも共感することが多く、是非ともお会いしてみたい方でした。
「負けて悔しくないのか?」「なんでもっと走らないのか?」など、合宿中は選手たちに直球で語りかけていました。特に、女子はベテラン選手が多いのですが、年齢的にも走力的にもその上を行く弓削田氏の問いかけに若い選手も含め、答えるすべもありません。
今、我々にとって最大の課題であり、選手たちに最も欠けている部分を、弓削田氏はひと言で、しかもど真中の直球で様々な指摘をしてくれました。弓削田氏は、私が思っていた以上の方でした……。
あらためて、科学的トレーニングやそれにともなうトレーニング器具や測定器具などは、もの凄いスピードで進化しています(シューズも)。その恩恵もあって、かつては30歳前後で引退する選手が多かったマラソンの選手寿命も確実にのびており、世界のトップで活躍しているキプチョゲ選手やベケレ選手も40歳になります。
一方、若くして燃え尽きる選手は今も確実に量産されており、科学的なトレーニング以上に個々の肉体を制御できるメンタル面の強化が重要視されています。もちろん、メンタルトレーニングも進化していますが、フィジカルトレーニングのような目に見える成果を誰もが得られるかと言えば、そうではないと感じます(強化現場で安田が見てきた感想)。
専門的なことは割愛しますが、今のこんな時代だからこそ、逆に弓削田氏のような方からのひと言は……。
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2024夏を走る・1
- 2024-06-01 (土)
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【2024夏を走る・1】6月に入りました。いよいよこれから本格的な暑さとの戦いに入っていきます。そして、暑くなっていくこのタイミングで、パリパラマラソンで戦うための本格的な走り込みを開始します。まずは、長野県上田市菅平高原での走り込みからです。
また、この菅平高原での強化合宿は、毎年実施しており、特にパラマラソンに向けた本格的な走り込みは、必ずこの菅平高原からスタートしてきました。もちろん、パリパラに向けても同じです。そして、昨日から菅平高原に上がってきましたが、昨日の気温が13度、今朝は7度(手元)でした……。
今月はこの菅平高原で、強化合宿を2回実施します。起伏の激しいコースでの距離走がメインになります。特に、パリパラマラソンのコースが厳しいコースであることは、既に確認しているので、そこで勝負するための脚力強化になります。
さて、マラソン(長距離全般)は、いわゆる「厚底カーボン(バネ)入りシューズ」が登場してからは、記録が一変しました。それまでは、修行僧のような摂生と走り込みを繰り返し、強靭なスタミナと精神力を身につけることが活躍するための条件でしたが、そのシューズが登場してからは、マラソンがスマートなイメージに変わってきたと感じます(マラソンは誰でも気楽に走れる)。
ところが、目指すマラソン大会が真夏に開催。そして、そのコースはアップダウンが激しく、路面は荒れた石畳が多く、おまけに鋭角に曲がる箇所も多い……と、なった場合、果たして最新のシューズに頼る戦術で、メダルをかけた勝負をすることは可能なのか否か? 実は、今回のパリパラマラソンコースです(オリはもっと厳しい)。
2021年9月5日、東京パラマラソンが開催されました。そこで、我々は金メダルと銅メダルを獲得する結果を残しました。その東京パラのマラソンコースは、35k以降に上り坂が待っている厳しいコースでした。その対策として、2021年6月から東京パラマラソンに向けた強化合宿を開始し、8月第1週までの間に「40k走を9本」実施しました。
もちろん、出場した選手たちは最新のシューズを履いて、当日は挑みました。しかし、「35k以降の上り坂からペースアップ」の戦術を見事に実戦し、メダルを獲得できたのは苦しい走り込みで身につけた「強靭なスタミナと精神力」のおかげでした。
果たして、パリパラマラソンコースは、東京パラマラソンコースよりもはるかに厳しい。したがって、持ちタイムの「速さ」ではなく、最後までしっかりと粘り倒せるか否かの「強さ」が勝敗を左右する展開が予想されます。
今更ながら、選手が持っている腕時計は走った距離やペースも自動計測できるものや、シューズはカーボン入りなど、最新のテクノロジーがどんどん導入されています。しかし、オリパラのマラソンは真夏に実施され、さらにより厳しいコースを設定するなど、最先端とは真逆のことを意図的に操作している節があります。
思うに、オリパラのマラソンは、「世界で一番タフな男女」を決める目的(責任)があるからなのでしょう。したがって、パリパラマラソンに向けての走り込みは、「東京パラ以上の走り込みを積み上げることで勝負できる」とも言えます。それは、忍耐や我慢する力が試されることにもなり、我々にとっては最も得意とする「泥臭い練習」に他ならない……。
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