10月10日(月・祝)、埼玉県上尾市において「第16回関東身体障害者陸上競技選手権大会」が開催されました。この大会はIPC公認大会となっており、来年開催されるロンドンパラリンピックに出場するための記録が公認される大会です。また、国内で開催されるロンドンパラリンピック参加標準記録を目指せる今年最後の大会となります。
既に何度かこのブログでも説明しておりますが、パラリンピックに出場するための参加標準記録を公認できる大会は国内はもちろん、世界的にも少ないのが現状です。そのため選手たちは少ないチャンスで記録を残す必要があります。したがって、どの選手にも求められるのは、狙った大会及びレースにしっかりと調子を合わせ、キッチリとパフォーマンスを発揮するための「ピーキング」となります。
もちろん、このピーキングを単に頭の中でイメージしたり、専門誌で勉強することは簡単なことですが、一般のオリンピックを目指している選手たちにとっても調子のピークを狙った大会に合わせることは至難の業です。
※参考までに10月22日から山口県で開催される全国障害者スポーツ大会はIPC公認大会ではないので、大会でのルールも記録もパラリンピックとは関係ありません。
今回、私はNTO(国内技術員)の研修員としてこの大会を細かく観察する機会を得ることができました。あらためて障害の種類や程度によって、同じ種目でもルールや技術的ポイントの違いが大きいことに驚きました。特に、これまで私自身が深く接してきた視覚障害者の競技については、フィールド種目を中心に多くのことを学びなおすことができました。
視覚障害者の走り幅跳びや走り高跳びである跳躍種目は、伴走者に相当するコーラーと呼ばれる人が、声や音で選手を踏切位置まで誘導します。例として視覚障害者の走り幅跳びは、コーラーが発する音の方向に単独で走っていき、そこにある踏切板(1m×1.22m)から空中に飛び出していきます。
至極当然のことですが、選手は目隠しをして音のする方向に走っていくため、暗闇の中へ単独で走っていく恐怖を感じます。そして、トップスピードで踏み切った後、目隠しのまま空中に飛び出す恐怖と見えない場所に着地する恐怖に打ち勝たなくてはいけません。同時にコーラーは、選手の不安や恐怖を取り除き、全ての安全を確保する重責を一手に背負います。このように、視覚障害者のフィールド種目は、トラック種目とは違うサポート方法や技術があり、伴走者と違った視点も必要となるのです・・・。
さて、今大会もロンドンパラリンピック参加A標準記録突破者が多数輩出され、私が強化担当している視覚障害者の中長距離種目でも好記録が誕生しました。◆男子5000m:W選手(T11クラス・全盲)/16分10秒26(日本新・A標準突破)、H選手(T12・弱視)/15分23秒79(日本新・A標準突破)、O選手(T12・弱視)/15分46秒94(A標準突破)。◆男子1500m:T選手(T11・全盲)/4分31秒68(自己新・A標準突破)。
この後、国内でロンドンパラリンピックへの挑戦が可能な大会は来年3月以降となりますが、各選手がそれぞれの課題と目標を意識しながら日々のトレーニングを積み重ねていってほしいと願っています。
引き続き、皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。
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