絶好のコンディションに恵まれた「2012東京マラソン」でしたが、まさにそのとおりの素晴らしい大会となりました。特に、男子の部については、ロンドンオリンピックの代表選考レースのひとつになっており、藤原新選手が見事な走りで、代表切符の1枚をほぼ手中におさめました。
そして、公務員ランナーとして注目を集めている川内優希選手は惜しくも14位でしたが、その果敢な挑戦は今後も日本マラソン界を牽引していくに違いありません。
また、既にご存知のとおり、藤原新選手と川内優希選手に共通している点として、強いチームに所属せず、マラソンに向けた取組み全てをたったひとりで切り盛りしていることです。一見すると、市民ランナーの誰もがしていることなので、至極当然のような感じを受けます。しかし、あれだけの注目を一身に集め、応援される以上に批判も受けながら自身の目標に突き進んでいく精神力は、逆に「プロ選手」と言えるでしょう。
仕事や家庭を理由にマラソンの結果を振り返るランナーが圧倒的に多い中、藤原新選手と川内優希選手がマラソンで見せた走りや各会見でのメッセージは、マラソンを攻略していく上で何が最も大切なのかを問いかけているようにも感じます。(先日の別大マラソンで快走した猫ひろし選手も同様)
そして同時に、日本の男子マラソンは長期にわたり低迷していましたが、ふたりの取組み姿勢やその走りは、男子マラソンを再び上昇気流に乗せる風穴をあけました。もちろん、この良い流れが、更にロンドンオリンピックまで続いていくことを信じています。
さて、私がコーチする選手(市民ランナー)たちもこの東京マラソンに出場し、自己の記録に挑戦しました。主な記録は次のとおりです。
◆男性市民ランナー:M・K選手/2時間59分28秒(自己新記録)。◆女性市民ランナー:H・Y選手/2時間50分40秒(セカンド記録)、M・Y選手/2時間52分33秒、C・I選手/3時間12分57秒(セカンド記録)。
なかでもM・K選手(男性市民ランナー)は、数年前から何度もサブスリーに挑戦し、ことごとく3時間の壁に押し戻されていました。今回の東京マラソンでもサブスリーを目標に地道な走り込みを積み重ねてきましたが、ようなく念願のサブスリーを達成しました。
特に、東京マラソンのコースはスタートから5k過ぎまで下りが続きます。そして、35k以降はアップダウンが続きます。したがって、このコースは出足の5kをどのように走るかが最も重要なポイントのひとつになります。
今回、初のサブスリーを達成したM・K選手は、多少のスタートロス時間もありましたが、この出足の5kが全体の5k毎ラップタイムで最も遅いタイムと、力を温存しながらうまく下り切りました。そして、前半のハーフを1時間29分55秒で通過し、後半のハーフを1時間29分33秒と、スタートからゴールまで見事なイーブンペースを貫いての目標達成です。
マラソンは、一定のペースで最後まで走り切るのが最も効率的です。ところが、前半を抑えていくことは、かなりの勇気と我慢が必要になります。特に、東京マラソンのような数万人規模で走る大会は、周りに惑わされて自分の設定ペースを見失う確率が高くなります。しかし、M・K選手は自分自身のペース感覚と我慢を富津練習会等で体得し、東京マラソンの舞台で見事に発揮したのでした。
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