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マラソントレーニング

期分け・98

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【期分け・98】今回は、夏の走り込みについてのまとめとなります。いろいろと話しをしてきましたが、最後は週末を活用し、涼しい高原(高地)等で実施する短期合宿についてです。もちろん、思い付きで土地勘も無い場所へ出向いていくことはおすすめできませんが、諸問題を解決している場合は、是非とも実施してほしいと考えます。

しかし一方で、短期間で涼しい高原(高地)等を走っても効果が無いと考えるランナーもいるかもしれません。実際に、ひと昔前はそのように言われていましたが、最近の研究では短期間の高地トレーニングでもそれなりに効果があるとの報告もあります。詳細は割愛しますが、暑い場所で苦しむより、涼しい高原(高地)等で走り込む方が精神的にもリフレッシュできます。

では早速、高原(高地)等での短期合宿についての具体的なトレーニング計画を考えていきますが、はじめに何を目的にわざわざ遠い高原(高地)までいくかです。短期間と言いいながらも「走り込み」なのか、「スピード強化」なのか、それとも…。実は、この目的が曖昧になる市民ランナーが多いのと、現地入りしてからトレーニング計画をガラリと変更してしまう市民ランナーも意外に多いと感じます。

要は短期合宿の場合、あれもこれも実施する時間が無いのと、体力的にもハードになってしまうので、目的を明確に絞ってから現地入りするのが間違いありません。そして、夏の短期合宿は、「走り込み」がメインとなり、秋からのマラソンシーズンに向けても良い流れとなります。まさに、「スタミナ養成(土台づくり)」です。

そして、そのポイントは大きく3つです。

◆ポイント1).ゆっくり長く(LSD)。◆ポイント2).設定タイムを落とす(距離走&ペース走)。◆ポイント3).起伏を活用(クロカン)。

何と言ってもまずは「ゆっくり長く走る(LSD)」ことが、第一歩となります。高原と言っても標高が千メートルをこえてくるので、人によっては調子が上がらない場合も少なからずあります。そんな場合も、ゆっくり動き続けることができれば、短期合宿の目的は十分に果たすことができます。

次に、距離走やペース走ですが、どうしてもいつもと同じペースにしたり、仲間と競い合ってペースを上げ過ぎるケースは本当によく見かけます。その結果、一緒にスタートした仲間全員が失速し、「誰も最後まで走り切れなかった」何てパターンも意外と多いのです。これでは、何のための短期合宿なのか、目的すら分からなくなります。そこで、効果的な具体的方法として、普段実施している距離走やペース走の設定タイムから「30秒/k」程度遅くします。更に、仲間と一緒に最後までじっくりと、余裕を持って走り切るようにします。この時、スタート直後は「こんなに遅くて良いの?」と感じますが、後半はボディブローのように効いてきます。まさに、遅くても効果的なのです。

最後に高原(高地)は、どうしても平地部分が少なく、どこを走っても起伏があります。そこで、その環境をうまく活用し、積極的にその起伏を走るようにすることで、脚筋力の強化にもつながります。もちろん、クロカンコースがあれば積極活用し、登山道やハイキングコース等が設置されているなら、そのコースをゆっくり走ることも効果的と考えます。そして、このときも怪我や故障防止の視点からもペースを絶対に上げないことがポイントとなり、途中で苦しいと感じるなら歩いても十分に効果があります。

期分け・97

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【期分け・97】実業団選手や箱根駅伝選手たちとの相違点である、3つ目について考えていきます。まずは、3つ目の相違点を振り返ってみます。

◆相違点3).いつもと同じ環境の中で暑さ対策を考えていく必要がある。

少し、ネガティブな感じですが、多くの市民ランナーは、実際に涼しい高原等での長期合宿(短期も)を実施することは難しい環境です。したがって、今ある環境の中で何か対策を考えていく必要があります。もちろん、気温が35度をこえるような猛暑の中で走り込むことは、健康的ではありません。

しかし、暑いので何もしないでは、マラソンを目指すと言う意味では逆に「走力の衰え」にもつながっていきます。まさにこの矛盾との戦いが、暑さを克服していくポイントとも言えます。

そこで、具体的な暑さ対策をいくつかあげてみます。

◆対策1).涼しい時間帯を有効活用。

特に、涼しい早朝に走ることを強くおすすめします。なぜなら、早朝練習を実施するには起床時間を決める必要があります。同時に夜更かしができなくなります。そのため、ランナー的生活の基本である「規則正しい生活習慣」を身につけることにもつながります。実は、「規則正しい生活習慣(早朝練習)」を定着させる季節としては、逆に夏が最適なのです。

◆対策2).距離より時間で管理。

気温の高い中において、長距離を走ることは様々なリスクがあります。特に、暑い中において30kとか40kと、走る距離を決めてスタートすることはとても危険です。なぜなら、距離を決めるとペースが気になり、結果的には涼しい季節との比較になってしまい、肉体的にも精神的にもリスクが高くなるからです。そこで「何分走る」と、暑い夏は時間管理にシフトし、ゆっくり動き続けることを意識しながらマラソンに必要不可欠なスタミナの土台をつくることに主眼を置くようにします。もちろん、途中でウォーキングを取り入れ、ランニングと交互に繰り返すことも暑さ対策としては効果的です。

◆対策3).給水の確保。

何と言ってもこれが最重要ですね。特に、多くの市民ランナーは単独で走り込むことが多いので、給水対策も自分自身で考える必要があります。具体的な対策例として、予め給水を準備し、ランニングコース上に置いたり、人目につかない場所に置いたりしますが、肝心な時に準備していた給水が紛失していた話しは良く聞きます。そこで、夏は予めランニングコース上を下見し、自動販売機やコンビニがどこにあるかを確認しておき、小銭を持って走ることをおすすめします。これは、万が一体調不良になった時、助けを求める意味で予防対策にもつながります。

以上、駆け足で暑さ対策について話しをしてきましたが、年々暑さが厳しくなってきているようにも感じます。とてもランニングどころでは無いと言うのが本音ですね。しかし、夏は秋からのマラソンシーズンに向けた基礎体力(スタミナ)を養成する大切な時期でもあります。したがって、上記したことにこだわらず、水泳や山登り等、夏に相応しいスポーツを積極的に取り入れていくことも暑さ対策としては正解です。暑い夏だからこそ、ランニング以外のスポーツにも視野を広げてみることは大切かもしれませんね。

期分け・96

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【期分け・96】引き続き、夏の走り込みについてです。前回は、「夏の走り込み」と言っても実業団選手や箱根駅伝選手たちとは相違点があり、具体例を3つあげました。今回もこの点についてもう少し考えていきます。

◆相違点1).長期合宿のために休日取得が難しい。

一般的な見方になりますが、ほとんどの方は有給休暇と言え、勝手気ままに取得することは難しいと思います。したがって、夏季でも週末を活用した短期合宿や練習会が、走り込みのメインとなります。そして、重要なポイントのひとつとして、短期合宿の場合、合宿地までの移動時間をしっかりと計算しておく必要があります。具体的には、早朝に自宅を出発しても午前中には余裕を持って到着できる移動距離が短期合宿地への移動範囲と考えます。もちろん、夏休みを活用し、2泊以上の合宿を実施する方もいるでしょうが…。

◆相違点2).合宿をサポートしてくれる仲間や環境を確保することが難しい。

合宿地を決めたら、次に宿泊先や現地までの移動手段を確保する必要があります。同時に、うまく確保できた場合、現地に移動してからの動きが重要になります。具体的には仲間から合宿の話しだけ聞き、現地での土地勘が薄い方々だけでいくと、「どこをどのように走るのか」、「聞いていたクロカンコースまで遠すぎて移動できない」等々のトラブルが必ず発生します。同時に、現地練習での給水や備品等の段取りも意外と大変です。

以上の2点については、走り込み以前の話しになります。しかし、物事は何でもそうですが、段取りが大切です。実は、実業団チームや箱根駅伝を目指す大学チームには、優秀なマネジャや主務と言われる専門の裏方が必ず常駐しています。そして、合宿はもちろん、ありとあらゆる段取りやサポートを仕切っています。

したがって、選手たちは、常に「走ること」だけに没頭できます。コーチは、常に「選手を観察」することに没頭できます。このように、強くて安定しているチームには、必ず優秀な裏方がいるのです。

ところが、一般的な市民ランナーの短期合宿や練習会に、このようなサポートできる方を常駐させることは相当難しいと思います。そのため、短期合宿を企画する際はこの点を十分に吟味し、合宿地に精通した仲間の確保や現地での移動手段に必要な車や自転車、練習に必要な給水等の備品をどのように準備するかを、まずはじっくりと吟味することが短期合宿への第一歩となります。

つづく。

期分け・95

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【期分け・96】いよいよ8月に突入し、暑い日々もまだまだ続きそうです。ランニングにとっては過酷な季節が続きますが、走らない訳にはいきません。また、10月以降からはじまる秋のマラソンシーズンに向け、そろそろ走り込みを開始していく季節でもあります。

もちろん、本来なら運動を控えなくてはいけない季節でもあります…。また、これまでもこのブログで何度も取り上げてきましたが、あらためて今回から秋のマラソンに向けた「夏の走り込み」について考えていきます。

はじめに、「夏の走り込み」と聞くと、何をイメージするでしょうか。多くの方は涼しい高原や北海道等で走り込みをしている実業団選手や箱根駅伝選手の姿をイメージすると思いますが、いかがでしょうか。

実際に彼らは暑くなる夏の期間は涼しい場所で長期合宿をしながら走り込んでいきます。その月間走行距離は、箱根駅伝を目指す学生選手でも千キロを軽く超え、マラソンを目指している実業団選手に匹敵する距離を走り込んでいます。

そして、夏の走り込みで培ったスタミナを土台にし、涼しくなっていく季節に沿って量から質へとトレーニング内容を移行していきながら狙っている駅伝やマラソンに仕上げていきます。この大まかなトレーニングの流れや考え方は、市民ランナーも同じになります。

ところが、一般的な市民ランナーのほとんどは、仕事や家庭がメインとなり、ランニングは余暇となります。したがって、実業団選手や箱根駅伝選手たちのように、夏の間涼しい場所で長期間徹底的に走り込むことは、事実上不可能と言ってよいでしょう。

つまり、同じ「夏の走り込み」と言っても市民ランナーの場合、その内容や方法に相応の違いが出てきます。まずは、その相違点をいくつかあげてみます。

◆相違点1).長期合宿のための休日取得が難しい。◆相違点2).合宿をサポートしてくれる仲間や環境を確保することが難しい。◆相違点3).いつもと同じトレーニング環境の中で暑さ対策を考えていく必要がある。

皆さんは、いかがでしょうか。もちろん、上記した3つとは無縁の市民ランナーもいることでしょう。しかし、仮に長期合宿が可能となり、涼しい環境で走り込めたとしても、今度は逆に慣れない環境下で一気に走り込んだ結果、怪我や故障に直結するケースも意外と多いのも事実です。

次回は、この点も含めて更に考えていきます。

つづく。

期分け・94

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【期分け・94】ここまで「スピード養成期」としてトラックレースへ積極的に出場する話しをしてきました。具体的に何分何秒の設定タイムでどのように走るかの話しより、我慢とか忍耐と言ったような話しに終始してきた感はあります。

もちろん、トラックでしっかりと自己記録更新を目指していくためには、マラソン同様に綿密なトレーニング計画が必要不可欠である点は違いありません。しかし、今回に関しては、トラックレースの経験が少ない市民ランナーの方々がどのようにトラックレースを捉えるかに視点を置きました。

その結果、マラソンやロードレースとは違う「苦しさ」や「緊張感」を体感できることが分かりました。それは、単に苦しいと言った感覚だけでなく、ある一定のペースで長く走っていくマラソンの苦しさとは違いました。

特に、マラソンの記録が停滞気味になっている方や単に長く走るトレーニングを軸に走り込んできたランナーにとってその苦しさも、逆に新鮮だったのではと思いますが、いかがでしょうか。

さて、ランニングをはじめた当初のように、走り込んでもマラソンの記録が短縮できないとか、いくら走り込んでも目に見える成長を感じられなくなることを、「プラトー現象(停滞期)」とも言います。

実は、マラソンだけでなく物事がひたすら右肩上がりに成長していくことはほとんどありません。必ず、怪我や故障をしたり、それを通じて気持ちが萎えたりと、停滞する時期が必ず存在します。例えるなら階段の踊り場のような位置でしょうか。

このように、プラトー現象(停滞期)に陥ると、モチベーションが下がり、走ることへの意欲も低下して更に走れなくなる…等の悪循環にも陥り易くなります。これは、実業団選手や箱根駅伝選手にも見られる現象であり、休養や気分転換、あるいはトレーニング方法の見直しをすることによって、克服できることでもあります。

すなわち、トラックレースを積極的に走ることで、これまで経験したことのない苦しさや緊張感を体感することは、プラトー現象(停滞期)から抜け出すキッカケをつかんだり、陥らないための予防策にも活かせるのではないでしょうか。

単に、スピード養成するためにトラックレースを走るのではなく、走ることに対するマンネリ化やモチベーション低下を打開するヒントも、トラックレースにはあると考えます…。

つづく。

期分け・93

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【期分け・93】トラックレースが苦しい要因について少し専門的な話しをしてきました。そして、ひとつの大きな要因としてはオーバーペースでしたが、マラソンやロードレースにもオーバーペースはあります。

しかし、トラックレースの場合、スタート直後から全力に近いスピードになってしまう点が、マラソンやロードレースのオーバーペースとは若干異なります。したがって、トラックレースの方がより早い地点で失速し、後半の苦しさに直結していきます…。

先日の7月12日(土)に千葉県千葉市において、伝統の「第46回千葉県クラブ対抗陸上競技大会」が開催されました。今でこそ「クラブチーム」の言葉をよく耳にしますが、「千葉県実業団対抗陸上」と言わず、「千葉県クラブ対抗陸上」として同大会を40数年前から開催してきた点は、ある意味先見の目があり驚きです。もちろん、私自身も現役時代に何度も出場させていただいた思い出の大会でもあります。

そして、近年のランニングブームが同大会にも少しずつ影響してか、一般の市民ランナーたちもこの大会に出場するようになってきました。この大会は、とてもアットホーム的な雰囲気があり、初心者の方でも陸上競技を楽しめる大会なので、陸上競技の普及と言う意味からも参加者が更に増えていってほしいと願っております。

さて、この大会の大きな特徴として、毎年7月に開催されます。したがって、ほとんど真夏に近い炎天下での競技会となり、特に中長距離種目にとっては過酷を極めます。果たして、今年の大会も快晴となり、気温も33度以上、湿度60%前後と、厳しいコンディションとなりました。

また、4月から7月前半あたりまでを、「スピード養成期」と位置付け、積極的にトラックレースに出場する話しをしてきました。その結果、冒頭に記載したとおり、マラソンやロードレースとは違う苦しさを経験しました。更に、4月から7月前半のトラックシーズンは、一部のナイター競技会を除くと、ほとんどの競技会が炎天下での開催となります。

つまり、暑さの中で走る苦しさも、トラックレースを通じて経験することになります。実は、スピード強化と矛盾しているような感じですが、マラソンと比較すると5000mは距離も短く、厳しいコンディションの中でも前半からスピードを上げて走ることで、マラソンとは違う苦しさや我慢を身体が体感することになります。

このような厳しいコンディション下でも、短時間での苦しさや我慢を経験することは単にスピードを付けるとかだけでなく、逆にマラソンのような長時間耐える苦しさや我慢に対する余裕度としても効果を発揮してきます。(私の経験上)

この点は、短い距離のレースでもロードではなく、積極的にトラックレースを走る意味があると考えます。

つづく。

期分け・92

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【期分け・92】トラックレースが苦しいと感じる要因について考えていますが、前回はいきなり「AT値」が登場しました。今回もその続きになります。

前回、5000mを20分ちょうどで走れるランナーの場合、その平均スピードの90%に相当する4分27秒前後のペースで走ると理論上、乳酸が蓄積せずに(疲労せず)ランニングを長時間継続することが可能と、話しをしました。

もちろん、走歴の浅い市民ランナーの場合、5000mの速度に対して70%かもしれません。この点は、必ずしも全てのランナーに当てはまる訳ではありませんが、上記したランナーの場合、4分27秒前後のペースはマラソンペースとほぼ一致しています。つまり、乳酸が蓄積せずに(疲労せず)ランニングを長時間継続できる上限のペースがマラソンペースにもなります。

ところが、トラックレースで5000mを走る場合、自己記録を目指してスタートすると、至極当然ながらマラソンペースよりも速いペースになります。具体的には、5000mを20分ちょうどで走れるランナーの場合、自己記録を更新するためには、4分以内のペースが必要になります。

しかし、トラックレースの場合、スタート時の混雑等もないため、トップスピードでスタートすることが可能です。更に、最短で100m毎のペースを確認することも可能であり、正確なペースを保つことも可能です。したがって、スタートから4分切りペースを刻んでいくことは十分可能な状況が揃っています。

特に、トラックレースの経験が浅い市民ランナーは、このように考えスタートするケースが多いのですが、1000mを通過したあたりから急激に呼吸も苦しくなります。更に、手足も思うように動かなくなって、ほとんどのランナーはペースを保てなくなるだけでなく、大きく失速していくパターンに陥ります。

この時、体内では「AT値」を大きく上回るオーバーペースでスタートしたが故に乳酸を除去できる能力を発生量が上回り、過剰な酸素負債になっているのです。つまり、乳酸を除去するために必要な酸素量を取り込めない状況です。同時に、心拍数も頭打ちになり、酸素摂取量より酸素消費量が多くなるので、呼吸は苦しくなり、手足もうまく動かせない状況に陥っています。

これが、「トラックレースは苦しい」と、感じる大きな要因のひとつなのです。

つづく。

期分け・91

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【期分け・91】前回まで、ロードレースとトラックレースを比較してきましたが、どうもトラックレースの方が苦しいような感じです。同時に、その違いや感想をいくつかあげてきましたが、今回はもう少し掘り下げてみます。

特に、はじめてトラックレースを走った市民ランナーの多くが、走った後の感想として、「とにかく苦しかった」、「こんなに苦しい経験は初めて」とまで言う方もいます。では、その苦しさの要因を別の視点から考えてみます。

はじめに、考えられる最大の要因としては、以前にこのブログでも取り上げたトレーニング強度の指標となる「AT値」が、大きく影響していると考えられます。と、ここで久々に「AT値」が登場したので、もう一度簡単に説明しておきます。

ATとは、無酸素性作業閾値と言います。詳細については割愛しますが、簡単に説明すると、有酸素運動と無酸素運動の境界付近を指します。具体的には、遅いスピードで走っている段階では有酸素性エネルギーが供給され、乳酸を蓄積せずに(疲労せず)ランニングを継続していくことが理論上可能です。

ところが、スピードを上げていくと、無酸素的エネルギー供給機構が働き始め、乳酸がより多く産生(疲労してくる)されて、スピードを維持できなくなってきます。そして、その境界をAT値と言っています。しかし、その変換点はポイントと言うより閾値、つまり「ゾーン」と考えられています。

もちろん、正確なAT値を測定するには、専用の機器や血液検査等々、専門的なデータ分析が必要になります。しかし、ランニングペースの目安を導き出すため、簡易的な計算式でも、ある程度の目安を判断することは可能です。(個人差も大きいので目安として)

◆簡易計算式:5000mの記録を100%とした時の90%(5000mの記録/0.9)

例として、5000mを20分ちょうどで走れるランナーの場合、1000mの平均速度は4分ちょうどとなります。したがって、その90%なので、1000mを約4分27秒前後のスピードで走り続けると、理論上は乳酸が蓄積せずに(疲労せず)ランニングを長時間継続することが可能になります。また、そのペースの前後が閾値(ゾーン)となります。

さて、久々に難しい話しになりましたが、苦しさの要因となるヒントが何となく見えてきたでしょうか?

次回も引き続き考えていきます。

つづく。

期分け・90

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【期分け・90】前回は、ロードレースとトラックレースの相違点を3つあげました。更に、ロードレースから出場した市民ランナーの視点からまとめると、ロードレースと比較した場合、トラックレースの方がより厳格に実施される競技会であると言えます。

さて、今回もその違いについて、もう少し考えていきますが、実際にトラックレースの5,000mを初めて走った市民ランナー方に話しを聞くと、ほとんどの方が次のような感想を話します。

◆感想1).日本陸連の公認審判員からスタートまでの間、時間厳守で招集や腰ゼッケンの確認等を何度も受けるので、スタートまでに物凄く緊張した。◆感想2).スタート時の混雑が無いので、スタート直後から一気にスピードが上がってしまった。そして、1,000mを通過したあたりから今度は一気に苦しくなり、ゴールまでは経験したことのない苦しさだった。◆感想3).同じトラック上を12周半も走るのでコースを全て見渡せて変化が全くない。更に、ゴール地点に何度も戻ってくるので精神的に辛く、ゴールまでがとても長く感じた。また、仲間の応援にも全く反応できなかった…。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

実は、トラックレースを経験したことのある方なら誰もが経験していることなのです。もちろん、実業団選手(プロ)や箱根駅伝を目指している学生ランナーも同じような苦しみを常に味わっています。

では、こんなにつらく苦しいトラックレースが、どうしてスピード強化につながるのでしょうか?

誰もが単純に思うことですが、まずは上記したトラックレースの感想を元に、ロードレースに出場した場合と、感じ方の違いをいくつかあげてみます。

◆違い1).ロードレースは、スタート直後まで音楽を聞いたり、仲間と談笑したりと、自分のリズムで過ごすことが比較的可能なため、精神的にリラックスできる。◆違い2).ロードレースは参加人数も多く、同じ目標タイムのランナーと一緒にスタートすることも可能で、個々のペースでスタートできる。◆違い3).一部の周回コースを除いてゴールまでの間、景色や沿道の応援が変化し、途中で苦しくなってもゴールまでは何度でも立て直すキッカケをつかめる。

次回は、上記した違いを更に掘り下げていきます。

つづく。

期分け・89

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【期分け・89】今回からトラックレースを実際に走る視点から考えていきます。はじめに、ロードレースとトラックレースの大きな違いをいくつかあげてみますので、それぞれがイメージして下さい。

◆相違点1).開催会場の違い。

まさに、見たままのことになりますが、トラックレースは会場や受付等全てが陸上競技場になります。一方のマラソンや各種ロードレースは、ご存知のとおり様々です。大会によってはトラックレース同様、陸上競技場を発着点にする場合もありますが、多くの大会は体育館であったり、公園であったりと大会毎に違いがあります。

◆相違点2).受付(コール)の違い。

マラソン大会を含め、ほとんどのロードレース大会では会場に到着後、受付場所で自分自身のゼッケンを受け取ることで全てが完了します。すなわち、あとはスタート時間に合わせて、ゼッケン番号やチップを付けて並べば、スタート可能となります。

ところが、トラックレースは違います。会場において自分自身のゼッケンを受け取るまでは同じですが、ここから大きく異なります。スタート前にコールと呼ばれる点呼が必ずあり、これを忘れると失格となります。一般的なコールの例として、1次コールと2次コールがあり、1次コールは招集所に掲示してある自分自身の氏名にマークをします。2次コールは招集係にゼッケンを付けたユニフォーム姿でチェックを受けます。全ては時間厳守になっており、招集時間に遅れると失格になります。もちろん、このコールを代理人にさせても失格となります。

◆相違点3).スタートからゴールまでの違い。

マラソン大会やロードレース大会は、スタート時間に合わせ、各自がスタート地点に並びます。同時にスタート地点から後方に向かって長蛇の列となって参加者たちが並んでいきます。したがって、スタート地点を通過するまで相応のロスタイムが必ず発生します。特に、後方に並ぶことの多い市民ランナーは、スタート後も足踏み状態が続くケースも多く、出足からどんどん前にいくことは困難な状況です。しかし、順調に走り出すと、周りの景色を楽しんだり、途中の距離表示を確認しながら自分自身のペースでゴールを目指すことも可能です。

一方のトラックレースは、スタート地点に集まると言うより、出発係からゼッケン順に並ばされます。もちろん、時間に遅れると失格になります。また、このときゼッケン番号とは別に腰ゼッケンを渡され、それをパンツに付けます。更に、トラックレースはロードレースと違い、一緒にスタートできる人数は予めルールで決められており、多くても30名前後となります。そのため、スタートロスはほぼ皆無となり、スタートからどの選手も脱兎のごとく飛び出していきます。同時に、レース中はトラック内のため、景色は変わらず、応援も変わりません。また、ロードレースは「キロ表示」ですが、トラックは「周回表示」になります。つまり、400mトラックでの5千メートルは「12周半」となり、ゴール地点での表示は残りの周回表示となります。

上記以外にも違いはありますが、トラックレースを走ることで、市民ランナーの方はこれまでと違う緊張感や苦しみも体験することに…。

つづく。

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