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ランニング

期分け・6

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今回から「スピード養成期/4月~7月」について考えていきます。

最初に、スピード養成期のスピードとは何を指すのかをある程度明確にしておきます。既に何度かこのブログでも記載してきましたが、最終的な目標はマラソンになります。従って、マラソンを速く走るためのスピードにならなくてはいけません。つまり、単に100mを速く走るためや運動会の徒競走で1番になるためのスピード養成ではありません。

では、あらためてマラソンを走るためのスピードとは何を指すのでしょうか?

そのヒントは持久係数にあります。この持久係数についても何度か記載してきましたが、10kやハーフマラソンの自己記録に対し、その何倍でマラソンを走れたかの係数です。具体例として、マラソンを2時間59分59秒で走るランナーが2名いたとします。Aさんは10kのベストタイムが39分00秒、Bさんの10kは38分00秒です。そこでふたりの持久係数を計算すると次のようになります。

◆Aさんの持久係数=2時間59分59秒÷39分00秒≒4.61

◆Bさんの持久係数=2時間59分59秒÷38分00秒≒4.73

これを簡単に説明すると、上記のようにマラソンの自己記録が同じ場合、持久係数の小さい方が持久力に優れていると一般的には判断します。つまり上記の例で言うと、Aさんの方が持久力が高いことになります。更に、Aさんが今の持久力を維持したままBさんと同じ10kの記録をマークしたなら次のようになります。

◆Aさんのタイム=4.61(Aさんの持久係数)×38分00秒(Bさんの10k)≒2時間55分10秒

このようにAさんが10kのタイムを1分短縮できたなら、理論上はマラソンの自己記録を4分50秒も更新することが可能となります。もちろん全てが理論どおりにはいきませんが、10kのタイムを短縮することはマラソンの記録短縮へとつながる重要なポイントのひとつであることは間違いありません。そして同時に、10kはマラソンを走るための指標になるスピードと位置付けることができます。

つづく。

期分け・5

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秋から冬のマラソンを目指していくランナーにとって4月から7月の時期は、自身のスピードを高めるトレーニングが効果的です。即ち、「スピード養成期」として短い距離のレースやスピードトレーニングを行い、マラソントレーニングでは難しい速い動きや刺激を積極的に取り入れていきます。

このように当初空白だった4月から7月のトレーニングが大まかに決まったことで、1年間の期分けも次のような流れとなります。※ここでは秋と冬のマラソンを軸に期分けしたパターンです。

◆年間計画(期分け):①スピード養成期:4月~7月→②第1次走り込み期:8月~10月→③調整期:11月上旬→④第1次マラソン期:11月中旬~12月上旬→⑤休養&回復期:12月中旬~12月下旬→⑥第2次走り込み期:12月下旬~2月上旬→⑦調整期:2月中旬→⑧第2次マラソン期:2月下旬~3月中旬→⑨休養&回復期:3月中旬~3月下旬。

少し込み入っていますが、このように1年間を期分けすることができます。もちろん、それぞれの期については更に細分化し都度微調整が必要になりますが、このように自分自身の目標に対し予め期分けをしておくことで1年間をより効率的な流れにすることが可能となります。

しかし、最初から細かいトレーニング内容や出場するレースばかりに目がいくと、全体的な流れに無理が生じてきます。同時に、あれもこれもと目標を欲張りすぎても計画倒れになってしまいます。

今更ながら腹八分目の計画を心掛けることが重要です。そして何より、1年間を終えたとき、ひとつでも自己記録を更新する種目があったならその1年間は成功です。また、逆に故障や怪我に悩まされた1年間だったとしても経験として次に活かすことで少しずつスパイラルアップしていくことができます。

何度も記載していますが、トレーニング計画や期分け、方法論に絶対はありません。大切なことは実行に移し経験を積み重ねていくことです。

次回からは、それぞれの期について考えていきます。まずは「スピード養成期」からです。

つづく。

期分け・4

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マラソンを軸に1年間を期分けしていくと、ちょうど今の季節にあたる4月から7月の期間が空白になってしまいます。なぜなら、前回も記載したとおり、淡々とマラソントレーニングを継続していくには、コンディション的にも厳しくなっていく季節だからです。・・・と、言いながらこの期間全てを「休養&回復期」にするには、あまりにも長過ぎます。

しかし、少し別の角度から見ると、長い距離を走り込んだり、長時間走り続けることは難しくなりますが、その逆ならどうでしょうか?

即ち、比較的短い距離のレースに出場したり、トレーニングも量より質を重視した内容にシフトしていくことで、トレーニングの継続も可能になるのでは?

具体的には、出場するレースは10k前後以下の短い距離へとシフトし、トレーニング内容も量から質へと転換していきます。このように、マラソンを目指した期分けから少し頭を切り離し、「スピード養成期」として量より質へと思い切ってシフトするのです。

実は、人の身体はスピードとスタミナの両方を同時に高めていくことは難しいと言われており、私の経験からもそのように感じます。もちろん個人差もありますが、一般的にはスピードとスタミナは相反しており、スタミナが付くとスピードが出にくくなります。逆に、スピードが付くと、スタミナが落ちていきます。

これを期分けに置き換えてみると、1年中マラソンを目指すサイクルで期分けしていった場合、スタミナは確実にアップしていきますが、スピードは少しずつ落ちていくことになります。もう少し具体的な表現をすると、短期間で何度もマラソンを完走できるスタミナは付いてくるが、自己記録を更新するためのスピードは出にくくなってくるのです。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

以上のように、1年間のどこかで自己のスピードを高める時期がないと、マラソンの記録もすぐに頭打ちになってしまう可能性が極めて高くなると言えます。つまり、マラソンで自己記録を更新するためには、自己のスピードを高める時期が必ず必要になってくるはずです。

従って、4月から7月は「スピード養成期」と位置づけ、マラソントレーニングから一度離れることは、マラソンを目指す上で逆に効果的と言えます。そして、トレーニング内容も量から質へとシフトさせ、気持ちや身体にいつもと違う刺激を与えることは、走ることに対する「マンネリ化の防止」にもつながっていきます。

つづく。

期分け・3

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前回は、マラソンに向けたひとつのサイクルを大きく4つに期分けしました。今回からその期分けを年間計画に落とし込んでいきます。

はじめに、目標とするマラソン大会を決めますが、4月のこの時期に具体的なマラソン大会を決めることは難しいことです。そこで、何月のマラソン大会を目指していくのかだけでも、ある程度決めておきます。

今回は、11月中旬から12月上旬に開催されるマラソン大会(第1次マラソン期)と、翌年の2月下旬から3月中旬のマラソン大会(第2次マラソン期)を、軸に1年間を期分けしていきます。

では最初に、第1次マラソン期に向けた前後の流れを落とし込んでいきますが、このときのポイントは、可能な限りシンプルに考えていくことです。なぜなら、最初から細かいことばかりに目を向けると、理論ばかりが先行し、実行に移せなくなるからです。

具体的には、第1次マラソン期の「調整期」は、11月上旬となります。そして、「走り込み期」は、8月から10月・・・。更に、マラソン大会後の「休養&回復期」は、12月中旬から12月下旬となります。・・・以上の流れを整理すると、次のようになります。

◆①第1次走り込み期:8月~10月→②調整期:11月上旬→③第1次マラソン期:11月中旬~12月上旬→④休養&回復期:12月中旬~12月下旬。

このように最初から難しく考え過ぎず、目標となるマラソン大会に沿ったトレーニングの流れを決めていくことが、ひとつのポイントとなります。

続いて、第2次マラソン期に向けた具体的な流れを考えます。しかし、この場合、第1次マラソン期に向けて一度身体をつくっています。同時に、その時走った結果の良し悪しによって目標の修正が必要になってきます。但し、今回はその修正を加える前の大きなトレーニングの流れとして考えていきます。

◆①第2次走り込み期:12月中旬~2月上旬→②調整期:2月下旬~3月上旬→③第2次マラソン期:2月下旬~3月中旬→④休養&回復期:3月下旬~4月上旬。・・・以上のが、第2次マラソン期の流れとなります。

さて、これで1年間の流れを大まかに期分けすることができましたが、実は抜けている期間があります。それはまさに、これからの季節にあたる4月から7月までの期間です。もちろん、この期間を第3次マラソン期と位置づけ、再び同じ期分けを繰り返していく方法もあります。

しかし、既に何度も記載しているとおり、この期間は季節的にも寒から暖へと急激に変化していきます。従って、マラソンや長距離走にとっては、最も厳しい季節に移行していきます。もちろん、そんな厳しい条件下で、マラソントレーニングを継続していくこと自体が正しいのか否かの判断も難しくなっていきます。

また、気温や湿度の急激な上昇を考慮し、トレーニング内容を変更したとしても、選手の調子や体調を維持していくことが難しくなってくる季節でもあります。つまり、この4月から7月の期間は、マラソンを目標にした走り込み中心の内容や流れに対し、変化を付けていくことも必要になっていきます。

つづく。

期分け・2

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今回から改めて「期分け」について考えていきますが、難しく考える必要はありません。なぜなら、目標としているマラソン大会やその時期は各自がそれぞれ違い、それぞれの生活環境や練習環境が違うからです。まずはこの点を理解し、年間の流れを自分自身の生活環境に当てはめながら、期分けしていくようにしましょう。

では最初に、期分けを考えていく上で重要な注意点をあげておきます。それは、マラソン大会や長距離の大会は、全国のどこかで毎週日曜日に必ず開催されています。つまり、1年間を通じてオフシーズンが無いのです。このことは、他のスポーツには珍しい大きな特徴です。

別の見方をすれば、1年間を通じてマラソンシーズンとすることが可能であり、1年中レースに出場することも可能なのです。従って、そのような人は、レースを走ることが、「走り込み」であり、「調整」であり、「目標」となります。また、先に記載したように、期分けは各自の環境や目標に沿って考えていくことが基本となるので、毎週レースに出場しながら調整していく方法が良し悪しかの判断を決め付けることはできません。

しかし、場当たり的にレースを走っていくことは、単に故障や怪我の確率を高めることは間違いありません。また、わざわざ期分けをして、トレーニング計画を考えていく大きな目的のひとつに、「故障や怪我を防止」することと、「怪我や故障をしない身体づくり」が、あげられます。もちろん、これから考えていく期分けについては、この点を重視していきたいと思います。

では、最初にマラソンを目標にしていく場合の基本的なパターンを記載します。

◆基本パターン:①走り込み(走り込み期)→②調整(調整期)→③目標のマラソン(マラソン期)→④休養&回復(回復期)→①走り込み(走り込み期)・・・。

以上のように、①から④までをひとつのサイクルとし、目標のマラソンを目指していくパターンが期分けの基本形になります。そして、このパターンを繰り返しながら走力や自己の記録をスパイラルアップさせていきます。まずは、この流れが重要なポイントとなります。

※ここで考えていく「期分け」については、ひとつ考え方であり、絶対に成功する方法ではありませんので、予めご了承願います。

つづく。

期分け・1

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平成23年度もスタートしました。同時に、この4月からはプロ野球をはじめ様々なスポーツも本格的なシーズンに入りました。もちろん陸上競技もトラックレースを軸にシーズン突入です。しかし、年間目標をマラソンに置いているランナーは、大きなマラソン大会もほぼひと段落します。その結果、逆に気持ちが抜ける時期でもあります。そして、マラソンシーズンがほぼ終わるこれからの時期は、次の目標設定やトレーニング方法について悩む人が意外と多くなります。

また、逆に年間を通じてマラソンを走り続けたとしても、4月からは気温や湿度も高くなり、マラソントレーニングを継続していくには厳しいコンディションになっていきます。つまり、肉体的にも精神的にも苦しさや辛さが増していく割には、記録や成果を得にくい状況となります。

特に、経験の浅いランナーの多くは、1年間の目標をマラソンに設定すると、年間を通じて走り込みが中心になるパターンが、多く見受けられます。ところが、ちょうど暑くなっていくこれからの季節に対し、気持ちや身体がうまく順化できなくなってくる時期でもあります。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

実は、実業団選手(プロ)や学生選手でも、1年間を通じて高いモチベーションをキープしていくことは、かなり困難なことです。しかも多くの走り込みが必要となるマラソンを目標に、1年間を休まず走り続けることは、肉体的にも相当なリスクを伴うことは間違いありません。

では、どのようなトレーニング方法を実施していけば良いのでしょうか?

また、1年間をどのようなトレーニングパターンにしていけば良いのでしょうか?

それは、このブログでも何度か取り上げてきましたが、「期分け」の考え方が重要なポイントになってきます。これは、単に年間スケジュールを立てる方法でもありますが、まずは目標となるマラソン時期を決め、それに沿った流れを組み立てていくことがポイントとなる考え方です。

具体例として、秋のマラソンを目標にした場合、春先はどんなトレーニングやレースが良いのか?・・・暑くなってくる季節はどんな走り込みが良いのか?・・・マラソンに向けた具体的な距離走とは?・・・以上のように「期分け」し、それぞれの期に合ったトレーニングや出場するレースを選択しながら自分の目標に合わせていく方法です。

次回からは、その「期分け」について考えていきます。

つづく。

マラソンシーズン総括・下

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今回は、自己記録更新について少し考えていきます。

さて、マラソンの記録や成績を比較する指標は様々ですが、私が重視している指標のひとつに「自己記録更新回数」があります。もちろん、私が勝手につけた言葉です(笑)。

これは、まさに読んだ通りの指標です。つまり、マラソンを何回走り、何回自己記録を更新したかの回数です。実は、実業団選手(プロ)をはじめ市民ランナーの中には、自己記録を1度も更新することなくマラソンから身を引いていく人がいます。つまり、初マラソンの記録を生涯更新することができなかったケースです。

実は、個人差もありますが、「初マラソン」は初めての挑戦になるので、それほどプレッシャーはありません。しかし、未知への挑戦となるので、適度な緊張感を保ちつつ最後まで慎重に走ることもできます。その結果、思わぬ好記録でゴールする人が多いのも初マラソンなのです。

意外に思うかもしれませんが、私自身も「初マラソン」はプレッシャーもなく、適度な緊張感の中で走ったことを覚えています。同時に、初マラソンでのラスト「2.195k」は、生涯走ったマラソンで最も速かったラップタイムとなりました。もちろん、初マラソンでもスタートから10kを走るようなオーバーペースや途中の水分補給を全くしなかった人は、初マラソンから生地獄を見る結果になりますが・・・。

また、経験のない苦しみは、何とか我慢したり、無心になって向かっていくことができます。しかし、1度経験した苦しみに何度も挑戦することは簡単なことではありません。それは、マラソンも同じです。そして、マラソンの回数や経験を重ねる度に、マラソンを走るコツはつかめてきます。ところが、逆に苦しい経験も身体と心に蓄積され、その苦しさを乗り越えていくことが難しくなっていきます。これは、日々のトレーニングも同じです。

マラソンで自己記録を更新するため、これまで以上に多くの走り込みが実施できたなら、マラソンで自己記録を更新する可能性は高くなります。ところが、更なる記録更新を目指してよりハードなトレーニングを何年も継続していくことは簡単なことではありません。同様にレースでは、「マラソンが目標なので、短いレースを走っても意味がない」と、ハーフマラソン以上のレースに多く出場する人がいます。しかし、この場合も早い段階で記録の壁にぶつかり、気持ちまでもが燃え尽きてしまう人は意外と多いのです。

何度も記載していますが、マラソンは身体と気持ちだけで勝負していくシンプルなスポーツです。だからこそ1年間の「期分け」をしっかりと行い、トレーニング内容や出場するレースが偏らないようにしていくことは大切です。

新年度もはじまり、これからは気温や湿度も高くなっていきます。同時に、ランニングにとっては厳しいコンディションにもなっていきます。これからの季節は、10k以下のレースやトラックレースにも積極的に挑戦することが、秋からの「マラソン期」で自己記録を更新する道へつながると・・・。

おわり。

マラソンシーズン総括・上

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既にご存知のとおり、東日本大震災を境に開催予定だった大きなマラソン大会のほとんどは、開催自粛や中止となりました。そのため、私がコーチする選手たち(市民ランナー)のマラソンシーズンも3月末でひと段落することになりました。

さて、私は1年間を「期分け」し、トレーニングの内容や流れを組み立てています。特に、マラソンをメインに考えている選手に対しては、場当たり的なトレーニングやマラソン大会出場に陥らない様、期分けに沿った流れを重視しております。

従って、私がコーチする選手たちのマラソンシーズン(マラソン期)は、原則として秋から冬となります。もちろん平成22年度のマラソンシーズンも、昨年10月から今年の3月までと設定し、トレーニング計画や目標とするマラソン大会を決定してきました。

また、臨機応変にトレーニング方法や流れを変えていくことも大切ですが、1年間の流れを「期分け」し、同じ流れを何年も継続していくことも大切です。その結果、選手毎の様々なデータや持ち味等々が見えてくることは、私自身が経験から学んだ重要なポイントのひとつです。

では、実際に私がコーチしている選手たち(市民ランナー)のマラソンシーズンを、簡単に振り返ってまとめてみます。

◆平成22年度マラソン出場数(H22年10月~H23年3月):11大会(日本陸連公認大会)。◆延出場選手数:31名(男子7名+女子24名)。◆自己新記録達成回数:14回(男子4回+女子10回)。◆自己新記録達成率≒48%(初マラソン除く)。※初マラソン:2名(男子1名+女子1名)。

以上のような成績を残すことができました。もちろん、選手毎に課題はありますが、出場したマラソンの約半数で自己新記録を達成できた点は、大きな成果です。

次回は、その自己新記録についてもう少し考えていきます。

つづく。

※このブログもおかげ様で、スタートしてから丸3年間継続することができました。平成23年度も引き続きよろしくお願い申し上げます。

ロンドンパラリンピックへ!

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先日の3月20日(日)、障害者の陸上競技大会である「第14回九州チャレンジ選手権大会」が、熊本県で開催されました。この大会から来年に迫った「ロンドンパラリンピック」への挑戦が、事実上スタートしました。

このブログでも何度か記載していますが、パラリンピックへ出場するための参加標準記録を目指すには、一般の陸上競技とは違う条件がいくつかあります。もちろん、それらの条件を全てクリアした上での記録以外は、パラリンピックへの参加公認記録としては認められません。

参考までに主な条件は次のとおりです。

◆条件1).選手がIPC登録をしている。◆条件2).選手が国際クラス分け認定を受け、「R(Review)」または、「C(Confirmed)」と認定されている。◆条件3.出場する大会が、IPC公認である。※IPC:国際パラリンピック委員会

特に、条件2にあげた「国際クラス分け認定」を受けていない選手は、障害者選手として国際的に認められていないことになります。従って、障害者手帳を持っていたとしても、パラリンピックに出場することはできません。※原則として国内でのクラス分け認定は非公式扱いとなります。

さて、3月22日にロンドンパラリンピックで実施される正式種目が発表になりました。まずは、実施される障害クラスの数を記載します。

最初にトラック種目についてです。◆視覚障害:3クラス。◆脳原性麻痺:5クラス。◆切断・機能障害:3クラス。◆脊髄損傷/切断・機能障害:4クラス。◆知的障害:1クラス。・・・以上の16クラスです。

次にフィールド種目についてです。◆視覚障害:2クラス。◆脳原性麻痺:7クラス。◆切断・機能障害:4クラス。◆脊髄損傷/切断・機能障害:7クラス。◆知的障害:1クラス。・・・以上の21クラスです。

このように障害の種類や程度によって細かく分類されています。参考までに男子100mの金メダリストは、オリンピックではたったの1人です。ところが、パラリンピックの場合、男子100mはクラスが最も多い種目となり、その数は14クラスにもなります。つまり、パラリンピックの男子100mの金メダリストも14名となります。

そのため、「パラリンピックは障害のクラスが多すぎるので、メダルの価値が下がる」と、言った意見もあります。しかし、クラスが違えば、選手のパフォーマンスは男性と女性ほどの違いになったりもします。例として、視覚障害の場合、T13クラスは弱視となり伴走者を付けて走ってはいけない単独走行です。ところが、T11クラスは全盲となり伴走者が必ず必要となります。従って、同じ視覚障害クラスとしてクラスを統合すると、程度の軽い弱視の選手が有利になることは、誰の目から見ても明らかになります。

しかし、残念ながら世界の流れはパラリンピック種目やクラスを統廃合していく方向に向かっており、障害者の陸上競技は大きな転換期に差し掛かっています。それは同時に、選手たちにとっては大きな試練になる部分でもありますが、「新たな挑戦や夢を実行に移せるチャンス」と、私は信じています・・・。

ガンバレ!ニッポン!

東京マラソン2011・下

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今回は、先日開催された東京マラソンで、エリート女子の部に出場した3選手(市民ランナー)の記録をもう少し詳しく解析していきます。

はじめに、皆さんもマラソンに挑戦するとき、自分自身の走力や体力に合った設定ペースや、ペース配分を少なからず考えてからスタートすると思います。ところが、号砲と共にスタートすると、一緒にスタートした多くのランナーや大会の雰囲気にのまれてしまうケースが相変わらず後を絶ちません。

特に、スタート直後から自分自身の設定タイムよりもかなり速い集団やランナーに付いていくパターンは、どのマラソン大会でも多く見受けられます。そして、その結果として、後半の大失速へとつながり、最終的には目標タイムを大きく下回る結果へと・・・。

皆さんは、いかがでしょうか?

では、上記3選手(女性市民ランナー)の東京マラソンでの設定タイムと実績タイムを前半のハーフと後半のハーフに分けて解析します。

◆M・I女子選手:設定タイム/2時間37分50秒(1時間18分16秒+1時間19分34秒・▽1分18秒)→実績タイム/2時間37分34秒(1時間18分15秒+1時間19分19秒・▽1分4秒)。◆M・Y女子選手:設定タイム/2時間49分49秒(1時間23分53秒+1時間25分56秒・▽2分3秒)→実績タイム/2時間49分51秒(1時間24分22秒+1時間25分29秒・▽1分7秒)。◆M・S女子選手:設定タイム/2時間55分48秒(1時間27分54秒+1時間27分54秒・±0分0秒)→実績タイム/2時間54分18秒(1時間25分21秒+1時間28分57秒・▽3分36秒)。

このように前後半のハーフに分けて解析すると、設定タイムに対し、最も記録の良かったのはM・S女子選手ですが、実は後半の落ち込みが最も大きいことがわかります。また、自己記録を更新したM・I女子選手とM・Y女子選手については、40kの通過地点では、設定タイムに対し、「▽4秒と△10秒」でしたが、ゴールでは逆に、「△16秒と▽2秒」と逆転しました。特に、M・I女子選手のラスト2.195kは、「8分00秒」と、女子選手の中では何と5番目の速さとなる素晴らしいラストスパートでした。

また、自己記録を更新した2名の女子選手は、タイプ的にはどちらともスピードタイプであるが故に、スタミナが付きにくく、後半は失速するマラソンを繰り返してきました。しかし、マラソンに挑戦する毎に、5k毎の設定タイムと実績タイムを対比していくことで、自分自身の弱点や課題を明確にしていくことができました。そして更に、マラソントレーニングの中では永遠に変わることのない単調な日々の走り込みも、意欲的にかつ継続的な取り組みが可能になっていきました。

さて、マラソンを攻略するためのペース配分に絶対はありません。もちろん一定のイーブンペースで走り切ることは、最も効率的な走法のひとつであることは言うまでもありません。また、前半おさえて後半ビルドアップしていく走法は、マラソンの完走を目標にするならとても有効的な走り方です。しかし、どの走法を選んだとしても自分自身の走力や特徴に合っていなければ安定した記録や成績を残すことはできません。

そして、マラソンで最も重要な要素は、常に安定したパフォーマンスを発揮することと、私は考えます。そのためには、故障や怪我をしにくい「丈夫な身体」。更に、自分自身の感情をコントロールできる「強い精神力」のふたつを兼ね備える必要があります。

・・・と言いながら、理想と現実のギャップはまだまだ大きいですが、次のマラソンに向け、今回の経験とデータを選手と共有しながら地道な取り組みを継続していきます。

おわり。

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