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別大マラソン
冬を走る・6
【冬を走る・6】第70回記念大会となった今年の別府大分毎日マラソン大会でしたが、大会当日はスタート前から強い寒風がふきつける悪コンディション。そのため、多くの関係者が、「記録を狙うのは難しいかな?」と思っていたに違いありません。
しかし、ゴールまで積極的に競い合う好レースが続き、西山選手が「2時間7分47秒」の大会新記録で初優勝。更に、上位6名全員が「MGC出場権」を獲得し、記念大会に相応しいレースとなりました。そして、今回も実施いただいた「IPC視覚障がいの部」においては、T11男子で世界記録を樹立するなど、こちらも素晴らしい結果を残してくれました。
まずは、あらためて大会関係者の皆様に御礼申し上げます。
さて、今大会のIPC視覚障がいの部は、昨年実施された東京パラ大会においてメダルを獲得した選手たち全員がエントリーするなど、記録への期待は高まっていました。特に、トラックでメダルを獲得したT11クラスの和田、唐澤両選手が世界記録(2時間31分59秒/T11男子)を更新するのはほぼ確実な調子に仕上がっていました。
同様に、マラソンでメダルを獲得したT12男子クラスの堀越選手と、T12女子クラスの道下選手にもその期待がありました。両選手とも昨年9月の東京パラマラソン後も調子を崩すことなく、記録を狙えるモチベーションと、それに向けたトレーニングもしっかりと継続していたからです。
結果は、上記したとおり、T11クラスの和田、唐澤両選手が見事な世界新記録。そして、T12男子クラスの堀越選手は強い向い風の中、新記録を狙って一般選手たちの集団に位置しながら10kを通過。ところが、11k付近にある給水地点で他選手との接触を避けようとしたところ、まさかの転倒。立ち上がって走り出したが、そのときに強打(かなり深い擦り傷も)した脚や臀部のダメージが大きく、15k過ぎにリタイヤ……。
自他ともに記録への期待も大きかっただけに、堀越選手自身が無念だったことでしょう……。その堀越選手ですが、左目が義眼です。したがって、左側にいる他選手の動きや給水テーブル(障害物など)を把握することは特に難しく、過去にも今回のようなアクシデントは経験してきました。
実は、レース中は伴走者のいる選手より、単独で出走する弱視選手の方が、「給水をうまくとれない」、「転倒のトラブルに巻き込まれる」などのリスクが高く、レース本番に限っては、伴走者の有無がそのまま有利不利には結びつかないのです。とても悩ましい点ですが、弱視選手に対するレース中のサポートなどについては、あらためて再徹底していきます。
そして、最も注目されていたT12女子クラスの道下選手は、目標どおりに世界新記録ペースでレースを進めていきました。ところが、35k以降の強い向い風にリズムを崩し、惜しくも記録更新には届きませんでした。しかし、ゴール後はレースを振り返り、謙虚に自身の課題を自ら指摘し、それに対する具体的な対策のイメージもできていました(振り返りが、たんなるグチになっている選手は多い)。
引き続き、パリパラ大会に向け、皆様のご声援をお願い申し上げます。
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別府大分毎日マラソン
【別府大分毎日マラソン】伝統の第67回別府大分毎日マラソン大会が2月4日に開催され、今年も第18回視覚障がい男子マラソン選手権を兼ねての大会となりました。
同部門には7名の男子選手がエントリーし、女子選手は2名、計9名の視覚障がい選手が伝統の別府大分毎日マラソンに挑みました。
果たして当日は、早朝より粉雪が舞い、気温も終日4度前後で寒風が強く、選手たちにとっては想定以上の過酷なコンディションとなりました。
また、スタートから最初の折り返しである10kまでは向い風。10kから次の折り返しである35kまでは追い風。そして、35kからゴールまでは強い寒風の吹荒れる向い風と、35k以降の失速が懸念される中でのスタートでした。
一般男子の部は「MGCシリーズ」で、サブテンを目指した設定タイムをペースメーカーが正確に刻んで行きました。レースが動いたのは30k過ぎからで、ここまで多くの日本人選手も残っており、サブテンランナーが複数誕生する期待が高まりました。
しかし、35kからの強い向い風と寒さに、2位に入った園田選手以外の日本人選手はほぼ全員が失速し、サブテンを達成した日本人選手は園田選手ただひとりと、厳しいコンディションでした。
一方、視覚障がい選手たちも一般男子選手同様、30k過ぎまでは日本新記録を狙えるラップを刻んで行きました。特に、T12クラスの熊谷選手と岡村選手の積極的な走りに期待は膨らみました。
案の定、30k過ぎからは、リオデジャネイロパラリンピック銅メダリストの岡村選手が独走態勢に持ち込み、「勝負あった」の展開になりました。ところが、岡村選手が先頭で競技場に戻ってきたその30m後方に熊谷選手も粘っていたのです。そして、残り200mから熊谷選手が猛スパートし、逆転のゴール。
記録的には35kからの向い風の影響を強く受け、両選手とも失速しましたが、両選手とも2時間30分を突破。惜しくも日本新記録達成はなりませんでしたが、国内大会において視覚障がい選手2名が同時に、2時間30分の壁を突破する「史上初の快挙」となりました。
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マラソンシーズン・3
【マラソンシーズン・3】前回に引き続き、別府大分毎日マラソン大会の話題です。
毎年のことですが、同大会には私がコーチする市民ランナー方も多数参加します。特に、女子の部が新設されてからは伝統の大会を目指す方も多くなりました。
そんな中、女子の部で堂々の優勝を果たした山口選手もその1人です。山口選手はこの大会での相性も良く、2014年大会においては自己新記録で優勝、昨年も2位と好成績を残しています。今大会も「2時間40分31秒の自己新記録」で、2度目の優勝と、本当によく頑張りました。
しかし、山口選手自身は、2時間40分突破を目標にしていたので、ゴール後は逆に悔し涙を流していました。ところが、男子選手の中でレースを進めていたので前後の状況が分からず、3年振りの優勝をあらためて確認すると、ようやく笑顔を取り戻していました。
さて、2年前の2015年、山口選手は同大会での連覇と2時間40分突破を目標に、トレーニングも順調に重ねていました。ところが、大会2週間前の練習中に後方から走ってきた車にひき逃げされ、首の骨を折る大怪我を負い、連覇どころか走れる身体に戻れるか否かのどん底に突き落とされました。
幸い折れた個所が運よく、後遺症もなく無事に退院し、マラソンにも復帰することができました。しかし退院後、何度マラソンを走っても本来の調子に戻らず、更に辛い期間を過ごすことになりました。
無責任な言い方ですが、こんな時ほどコーチは無力で、見守るしかできません。
もちろん、山口選手は誰のせいにする訳でもなく、誰に当たることもなく、だた黙々と走り込んでいきました。今回の優勝は、そんな山口選手の人としての成長が、最大の勝因だった点は誰もが認めるところです。
男子で優勝した中本選手の素晴らしい走りもそうでしたが、今年の別府大分毎日マラソン大会は、マラソンは「地道に腐らず、コツコツ走り込むこと」の大切さを、全国のランナーに示した素晴らしい大会でした。
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マラソンシーズン・2
【マラソンシーズン・2】2月の第1日曜日は、伝統の「別府大分毎日マラソン大会」の開催日です。今年も期待の若手選手から復活をかけるベテラン選手まで多くのランナーが別大国道をかけ抜けました。
また、昨年から伝統あるこの大会に「視覚障がいマラソンの部」を新設頂き、今大会からは男子の日本選手権を兼ねることになりました。まずは、ご尽力頂いた大会関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。
振り返ると、昨年の同大会においては、2016リオパラリンピックの日本代表選考レースと位置づけ、男女優勝選手が、それぞれ銅メダルと銀メダルを獲得することができました。まさに伝統の力が視覚障がい選手たちの後押しをして頂いたと、重ねて感謝申し上げます。
さて、今年の大会は2020東京を目指す次世代選手たちを軸に、伝統あるこの大会に挑みました。結果は、昨年の大会で3位に入った熊谷選手(T12クラス)が念願の初優勝。更に3位の山下選手(T12クラス)、4位に入った米岡選手(T11クラス)が自己記録を更新。
また、女子選手は2名の参加でしたが、1位の安部選手(T11クラス)、2位の青木選手(T12クラス)共に自己記録を更新。特に、1位の安部選手に至っては、自身が持つ日本記録を更新する激走でした。
昨年のリオ帰国後、直ちに2020東京を目指した強化をスタートしましたが、リオで獲得したメダルが共に切磋琢磨してきた仲間たちの意識改革にもつながりました。そして更に、その成果として今大会の記録にもあらわれました。
次の目標は、4月のワールドカップマラソン(ロンドン)においてメダル獲得と記録更新になりますが、引き続き全員で切磋琢磨しながら「チーム力」を高めて挑みます。
皆様方の絶大なるご声援をお願い申し上げます。
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別府大分毎日マラソン
【別府大分毎日マラソン】先日の2月1日(日)に開催された伝統の別大マラソンに、今年も応援に行くことができました。選手でもない私のような立場でも一緒に現地の雰囲気を味わえることは、本当に幸せと感じます。あらためて、選手たち(市民ランナー)に感謝です。
さて、伝統の別大マラソンは市民ランナーや女性ランナーにも間口を広げ、すっかり定着してきました。その結果、「新人の登竜門」と言われてきたこの大会に相応しいかたちで復活してきたと感じます。
この大会は、2010年大会の2時間20分以内完走者数は22名、2時間30分以内完走者数は39名、更に2時間40分以内完走者数は160名でした。ところが、女子の部が設定された翌年の2011年大会は13名、40名、147名と、それぞれの記録別完走者数は部分的に減少しました。
もちろん、マラソンの記録は当日のコンディションに最も左右されるので、各大会を単純に比較することはできません。しかし、上記の記録別完走者数で比較すると、2012年大会以降については、どの大会も2010年の実績を上回る成果を残しています。
特に、今年の大会は2時間40分以内の完走者数が、189名と2010年以降最高となっていました。これは一般市民ランナーも含め、本当の意味で日本男子マラソンの底辺拡大に貢献している大会に進化しているからと強く感じます。
日本の男子マラソンについては、公務員ランナーの川内優輝選手が登場したのをきっかけに、一般市民ランナーの中からもストイックに走り込むランナーが増えてきました。その結果、この数年の間に底辺の厚み(※)も一気に増してきました。それに伴い、サブテンランナーの数も増加に転じています。※2時間20分から2時間40分相当の男性市民ランナー
一方の女子マラソンについては、一般市民ランナーからの突き上げ(※)も薄く、この点は女子マラソンの低迷に多少なりとも影響していると感じます。今回の別大マラソンでも女子の部は盛り上がりに欠け、全国へテレビ中継しているにも関わらず、話題性もほとんどありませんでした。※2時間40分から3時間00分相当の女性市民ランナー
私は偉そうに言える立場ではありませんが、特に同じ練習会で切磋琢磨している市民ランナーたちのモチベーションがもっと上がればと、今回の別府大分毎日マラソンで強く感じました…。
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第63回別府大分毎日マラソン・下
【第63回別府大分毎日マラソン・下】当日のコンディションは、早朝から快晴となりました。また、予報では何と18度まで気温が上がるとのことで、2月にしては想定外の気温です。
ところが、10時30分頃だったでしょうか、霧が突然出てきました。結局、霧が晴れることなく選手たちはスタートしましたが、霧のおかげで気温もそれほど上がらず、風もほぼ無風と逆にコンディションは良くなったように感じました。
また、先頭集団のペースも、何が何でも「3分/kペース」と言うような感じではなく、2時間10分切りを目指したペースで終盤まで集団を形勢し、見ごたえのある内容でした。同様に、今回も2時間30分をはじめ、2時間40分、2時間50分…と、それぞれの目標タイムに見合った市民ランナーたちの集団も形勢され、応援する側としても力が入りました。
そんな中、私の選手たち(市民ランナー)も、それぞれの目標タイムに向かって快走しました。特に、女子の部にエントリーしたY選手とK選手の2選手については、自己記録更新と共に上位入賞も期待し、送り出しました。
結果は、2選手とも目標設定タイムどおりにレースをすすめ、後半ややペースが落ちましたが、Y選手が優勝、K選手が2位と、素晴らしい結果を残してくれました。また、他の選手たちも今の力を出し切る内容で、次のマラソンにつながる走りでした。
そして、全盲ランナーの和田伸也選手と谷口真大選手も、一般ランナーたちの胸をかりて快走しました。日本記録を狙った和田選手は、自身の持つ日本記録には惜しくも届きませんでしたが、谷口選手は自己記録を6分も更新する頑張りでした。
◆男性市民ランナー:H選手/2時間29分55秒(自己新)、T選手/2時間46分12秒(自己新)、K選手/2時間52分52秒(セカンド)、Y選手/3時間6分26秒(目標達成)。
◆女性市民ランナー:Y選手/2時間41分56秒(自己新)/優勝、K選手/2時間53分35秒(セカンド)/2位、N選手/3時間4分36秒、K選手/3時間5分00秒、E選手/3時間7分45秒(自己新)、K選手/3時間7分56秒、F選手/3時間24分52秒(目標達成)。
◆全盲ランナー(T11クラス):和田伸也選手/2時間37分28秒(セカンド)、谷口真大選手/2時間42分28秒(自己新)。
さて、今回の別大マラソンを沿道から応援していて、あらためてランニングブームの勢いを感じました。と、言うより、ブームではなく確実に定着しています。それに伴い、単に「マラソン完走や大会出場」を目的にしていた方々が、マラソンを完走することによって、記録を目標に次のマラソンに挑戦する姿も増えてきました。
一方で、最初は自己記録更新が大きな目標になり、日々の走り込みも精力的に取り組んでいきますが、走歴やマラソン回数を重ねることによって逆に記録更新が難しくなっていく面も出てきます。今回の別大マラソンに出場した上記ランナーの中にも、その点を不安に感じたり、焦りを強く感じる方々もいました。
マラソンは記録重視で評価される面が強く、自己記録更新にこだわる姿勢は大切です。しかし、永遠に記録更新を目指していくことは残念ながら不可能です。その点を理解し、更に身の丈に合った目標を掲げて次のマラソンに挑戦していく姿勢は更に重要と考えます。もちろん、この個々の目標設定が最も難しいのですが…。
次のマラソンに向け、どのランナーも更にモチベーションを高めながら挑戦していけるよう、今後も地道な練習会を継続していきます。
おわり。
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第63回別府大分毎日マラソン・上
【第63回別府大分毎日マラソン・上】第63回別府大分毎日マラソンが、2月2日(日)に開催されました。伝統あるこの大会に、今回も私の選手(市民ランナー)も多数出場しました。また、日本盲人マラソン協会(JBMA)からも全盲ランナーである和田伸也選手と谷口真大選手が出場し、一般ランナーたちの胸をかりて快走しました。
さて、この大会は、2011年大会から参加標準記録を「3時間30分以内」に緩和したため、世界を目指すトップランナーから男女の市民ランナーまでの幅広いランナーたちが集う、名実ともに日本マラソン界を支える大会にリニューアルしました。
その後、参加人数も右肩上がりで増えており、今大会は過去最多の約3200名のランナーが参加しました。同時に、底辺拡大をはかったことで、一時期低迷気味だった同大会も再び活況を呈してきました。参考までに、過去5大会の2時間20分と2時間30分突破人数、そして、3時間突破人数を調べてみました。
◆2010年大会/2時間20分突破:22名、2時間30分突破:39名、3時間00分突破:470名(ゴール関門が3時間以内)。◆2011年大会/2時間20分突破:13名、2時間30分突破:40名、3時間00分突破:836名。◆2012年大会/2時間20分突破:22名、2時間30分突破:48名、3時間00分突破:815名。◆2013年大会/2時間20分突破:22名、2時間30分突破:44名、3時間00分突破:959名。◆2014年大会/2時間20分突破:26名、2時間30分突破:66名、3時間00分突破:997名。※女性ランナーは除く。
もちろん、大会当日のコンディションに記録は大きく左右されるので、単純に数字を比較できませんが、大会が盛況になってきていることは間違いありません。ところが、参加標準記録を「3時間30分以内」に緩和したと言っても市民ランナー的には、別大マラソンのハードルはかなり高い設定と言えます。しかし、その結果、先頭から後方ランナーたちまでが、本気で記録と向き合って激走している姿が多く、逆に大会を引き締めているようにも感じました。
前置きが長くなりましたが、私がコーチする選手たち(市民ランナー)も、この1年間、伝統の別大マラソンで快走することを目標に地道な走り込みを継続してきました。特に、2011年から新設された女子の部を目標に走り込む女性市民ランナーが多くなり、今回も7名の女性が挑戦しました。
そして何より、日本盲人マラソン協会(JBMA)から全盲ランナーの和田伸也選手と谷口真大選手が初参加しました。両選手は昨年夏にフランスで開催されたIPC世界陸上に日本代表として出場し、和田伸也選手が銀メダル、谷口真大選手が自己新記録で5位入賞。その後も好調をキープしている日本人トップ2の全盲選手です。
また、今回の別大マラソンは、今井正人選手や前田和浩選手等、国内外トップクラスの選手が多数招待されており、個人的にもマラソンファンとして楽しみな大会となりました。
つづく。
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第62回別府大分毎日マラソン
【第62回別府大分毎日マラソン】2月3日に開催された伝統の別大マラソンは、期待どおりに川内選手と中本選手の一騎打ちとなり、川内選手が見事な大会新記録で優勝しました。
さて、「あの選手は勝負強いランナー」と、よく耳にします。その強さとは、一般的には勝負に勝つことを指します。ところが、どんなに小さな市民マラソン大会においても「優勝」することは、簡単ではありません。しかし、優勝すると、大会会場にいる大勢の前でインタビューを受けたり、表彰されます。また、大会によってはテレビ中継があり、翌日の新聞に名前や写真が掲載されたりもします。これは、誰もが本来持っている「認められたい」と言う欲求を見事に満たしてくれます。そして、一度でもこの経験(蜜の味)をしたランナーは、最も苦しい勝負どころでも最後まで優勝をあきらめません。すなわち、勝負強くなります。
川内選手は、2009年の別大マラソンでマラソンデビューをし、この4年間で実に21回もマラソンを走ってきました。特に、今回の別大マラソンを含め、この1年間だけで何と11回も走っております。そして、特筆すべきは、この1年間で優勝を7回も経験したことです。私が偉そうに言える立場ではありませんが、間違いなく現役日本人選手で最も勝負強いランナーのひとりであると言えます。
また、「あの選手は安定しているランナー」と、よく耳にします。その安定とは、一般的にはどんな大会でも上位でゴールしたり、記録にムラがないことを指します。その指標のひとつにマラソンを走った回数に対し、自己記録を何回達成したかを見ます。実は、実業団選手(プロ)をはじめ、市民ランナーの中でも既に10回以上マラソンを完走しているにも関わらず、自己記録更新を一度も経験したことのないランナーは意外と多くいます。つまり、初マラソンが生涯記録となっているケースです。もちろん、最初からレベルの高い記録をマークした場合、記録を更新することは簡単ではありません。
しかし、自己記録を達成したことの無いランナーは、一発狙いの雑なレース内容が多く、自分自身の力を出し切る能力やレース状況を的確に判断する能力が不足しているケースが多いとも感じます。
中本選手は、今回の別大マラソンで10回目のマラソンでした。そして、5回目の自己記録更新です。ハイレベルな記録を目指している実業団選手(プロ)の中において、自己記録達成率が5割と言うのは、驚異的な安定感とも言えます。その真骨頂が、昨年のロンドン五輪での6位入賞と、中本選手は歴史に名前を刻みました。
このようにタイプの異なる川内選手と中本選手の直接対決が実現した今回の別大マラソンは、様々な意味で歴史に残る大会だったと感じます。また、かつての別大マラソンは、エリートランナーのみの大会でしたが、数年前から参加資格を3時間30分まで広げ、女子の部も新設しました。その結果、今大会は3千名以上のランナーが伝統ある別大マラソンに挑戦し、あらためて「新人の登竜門」と呼ぶに相応しい大会へと進化しました。
そして、川内選手と中本選手の歴史に残る一騎打ちは、一緒に別大マラソンを走った多くの市民ランナーたちへ、勇気と希望のメッセージを残したに違いありません。
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