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2025夏を走る・7

【2025夏を走る・7】今週は毎年恒例の北海道北見市において強化合宿を実施しております。また、この合宿期間中に日本陸連が主催するホクレン・ディスタンスチャレンジ2025大会が開催されており、同大会の北見大会(第4戦)と網走大会(第5戦)に、「視覚障がい5000m」を実施頂いております(これも毎年恒例)。

まずは、毎年ご尽力頂いている北見市並びに大会関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

さて、今シーズンの前半は、特にスピード強化に重点を置いて取り組んできました。その総決算として上記した北見大会と網走大会の5000mをターゲットにしてきました。ところが、大会直前にパリパラリンピックにマラソンで出場した主力選手たちが次々と体調不良に陥るなどして離脱……。

そんな状況に陥りましたが、北見大会に出場した選手は3名(男子1、女子2)。幸い、強化指定選手の中においては、男女とも期待の若手選手は含まれています。特に、今シーズン自己記録を連発してきた男子若手の大石選手に期待していました。

視覚障がい5000mのスタート時間は、「18時00分(男女ミックスレース)」。天候は曇り、気温も28度と、この時期にしてはまずまずのコンディションと思われましたが……。そして、レースは我々の強化スタッフでもある中田氏が、ペースメーカーとして大石選手を先導しました。

ところが、1000mあたりから早くも発汗量が多くなり、2000mを通過するとかなり苦しい状況に……。そして、3000m以降は更に苦しい状況に陥りましたが、何とか粘り倒してゴール……。コンディション的には、「気温の割には曇っていたのでまずますかな」と思っていましたが、湿度が意外と高く、その影響があったようです(その後実施された一般男女5000mも苦戦していた)。

あらためて、今回の北見大会は、期待していた男女若手選手が自己記録を達成することはできませんでした……。そんな中、今年61歳になる藤井選手が快走しました。そんな書き方をすると、まるで期待していなかったように感じますが、今回もその快走に驚いたのは事実です。

藤井選手は、東京パラの視覚障がいマラソン女子で5位入賞を達成した実績のある大ベテラン選手です。しかし、同選手はいつもレース前は消極的で、「今回はあかん(関西人です)」を連発するのが口癖です。もちろん、今大会前もそうでした。

ところが、藤井選手はレース後半になると無類の強さを発揮します。具体的には、どんなコンディション下のレースにおいても、後半はビルドアップしてゴールします。つまり、苦しい状況に追い込まれるほど、強気な性格に豹変していく「生まれながらのファイター」なのです。今回も3000mから怒涛の追い上げを見せ、見事なセカンド記録を達成!

一方、我々の次世代選手に欠けている大切な部分でもあるこの「ファイター精神」。苦しさを伴う長距離・マラソン競技だからこそ、その精神が必須であり、藤井選手から学び取ってほしいところなのです。

2025夏を走る・6

【2025夏を走る・6】富津合同マラソン練習会の参加メンバーを中心にした仲間たちと長野県菅平高原において、夏合宿を実施してきました。この合宿は毎年恒例となっており、すでに20数年継続しております。

また、私がここで合宿をはじめた当時は、私自身もガイドランナーとして2004アテネパラリンピックを目指していたときでした。そのころは、今のように菅平高原まで足を運んで夏合宿をするような市民ランナーの方も少なかったと記憶しております(ほぼ皆無だった?)。

しかし、今では夏になると、市民ランナーの皆様が仲間たちと走り込んでいる姿も、すっかり定着しています。この間、空前のランニングブーム到来やコロナによる自粛など、時代の流れも様々でした。そして、何よりもシューズ革命(カーボン入り)がおこり、長距離・マラソンの記録が驚異的にのびたことが、最も衝撃的な出来事だったでしょうか。

そんな時代の変化においても、長距離・マラソン選手やチームにとって変わらないのが、この夏合宿です。そして、私が現役当時も今現在も、実業団選手や学生選手たちは暑い夏の到来とともに、涼しい高原や北海道などに移動し、積極的に走り込みを実施します。

ところが、ここ数年はいわゆる温暖化の影響も相まって、夏は涼しいはずの高原や北海道においても、気温が30度を大きく上回る日が多く、すでに常態化していると言っても過言ではありません。また、それに伴って、朝晩もそれほど気温が下がらない日も多くなり、日本国内ならどこでも暑い夏になっているのが現状でしょうか。

そんな中、特に市民ランナーの皆様は、週末の休日などを活用した短期合宿を実施する方がほとんどなので、涼しいと思って移動してきた合宿地での暑さは、想像以上にこたえます。また、その合宿地までの移動手段は電車やバスなどの公共交通機関を使う方が多いので、暑さ対策をするための道具などを持ち込むことにも限界があります。

もちろん、合宿地までの移動に自家用車を使う仲間が数名いれば、それらの問題を解消することは十分可能ですが……。また、別の対策方法のひとつとして、合宿の宿泊先になる旅館関係者とも事前に様々な情報交換をしておくことは、現地入りしてからの暑さ対策にはかなり有効です(旅館内の設備や周辺環境の確認など)。

あらためて、これから本格的な夏の到来です。特に、市民ランナーの皆様が安全で元気に走り込めることを、心より祈念しております。

2025夏を走る・5

【2025夏を走る・5】千葉県は、梅雨明け宣言をしていませんが、夏日が続いております。また、2025年も半年が経過。同時に、2025年度も3ヶ月が経過しました。まさに「月日が経つのは早い」と言いますが、そのことが身に染みているこの頃です。

そんな夏日が続く中においても、富津合同マラソン練習会をたんたんと継続しております。もちろん、給水の準備や走行距離を短くするなど、安全には注意いているのは言うまでもありませんが、同練習会に参加しているランナーたちは常連の方が多いので、この暑い時期の走り方も熟知しています。

さて、これも毎年のことですが、新年度になると新しいメンバーが同練習会に加わる季節にもなります。そして、今年度は70歳の女性ランナーが、仲間として一緒にランニングライフを楽しむことになりました。その方は、最初は君津の水曜練習会に参加したことがきっかけでした。

話しを聞くと、マラソン経験もあり、ランニング歴もそれなりにある方でしたが、インターバル練習のような苦しい経験はなかったようでした。案の定、参加当初は1本走ると、ゴール地点に倒れ込むような状況でした。

実は、多くの方は日常生活において、このように自らの身体を追い込んでいくような経験はほとんどありません。もちろん、軽いジョギングを日課にしているような方でも、インターバル練習のような苦しい経験は、ほとんど無いと言っても良いでしょう。

その70歳女性の方も同様、自分自身がどのようなペースで走れば、呼吸や身体がどの程度苦しくなるのかを把握できるような経験すらありませんでした。したがって、水曜練習会に毎週参加しても単に苦しいだけの状態が続いていました。

ところが、3ヵ月目の6月に入ると、「200m×8本(リカバリーを長めに)」を何とかやり遂げることができるようになり、1本ごとに倒れ込むようなこともなくなってきました。そして、今週の水曜練習会においては、50秒以内の設定タイムに対し、なんと「45秒平均」で走り切ったのです(路面が滑る土トラックで)。

その走りっぷりには、タイムを取っていた私自身も驚きました。同時に、「人に秘められた可能性の大きさ」をあらためて感じた次第です。振り返ると、4月のころは「この人は死んでしまうのでは?」と、思うような苦しみ方をしていました。ところが、3ヵ月間継続してきた結果、知らぬ間に速さを追求していけるレベルにまで成長していたのです。

また、「どうしても年齢を理由に気持ちにもブレーキがかかる」と、その方は話していました。ところがどうして、ひとたび自信が付いてくると、心のブレーキが解き放されるのと同時に、身体もどんどん前に進んでいくのです。「マラソンでサブフォーを達成したい」と、当初から口にしていましたが、そこに到達する条件のひとつを概ねクリアしたと言っても良いでしょう。

もちろん、私自身にとっても、各練習会をサポートする楽しみがひとつ増えた次第です。

2025夏を走る・4

【2025夏を走る・4】長野県上田市菅平高原における強化合宿は無事に終了しました。今回は、さすがに前回のような低温になることはなく、日中は逆に平地と変わらないような暑さの中でのトレーニングになりました。

あらためて、ブラインドマラソンの強化合宿拠点は千葉県富津市をメインに、長野県上田市菅平高原と北海道北見市の3ヶ所になります。特に、暑さが厳しくなる5月から8月の間は、比較的涼しい長野県と北海道において走り込みを実施しています。

ところが、いわゆる温暖化の影響なのか、長野県も北海道も気温が30度を超える日が、当たり前になっているのが現状でしょうか。また、朝晩もかつてのような涼しい感じも薄れており、国内ならどこへ行っても同じような暑さになっているとも感じます……。

さて、そんな状況下の強化合宿中でも欠かさないのが、毎朝実施する選手のコンディションチェックがあります。同様に合宿中は、必ず1回は採血をして血液状態を確認しています(長距離・マラソン選手にとって、最も重要な体調管理の目安となる指標が血液検査)。

かくいう私も現役時代、毎月2回は必ず、J大学のT先生(故人)から血液検査を受けていました。もちろん、検査結果を元にT先生のご指導を受けますが、私も現役時代は例外なく貧血気味だったので、いろいろとご指摘を受けました。

そんな中、とても印象に残っていることがあります。それは、私の血液状態が改善された結果を見てのことでした。「安田は、この2週間は練習をさぼっていただろう(落としていただろう)?」と私を問い詰めるのです。

つまり、スポーツ性貧血なので、その貧血が改善されたと言うことは、「逆にトレーニングをさぼっていたから血液状態が良くなった」。別の例えを言うなら、アル中の患者が酒を断つことができれば、アル中は改善されるのと同じ理屈です。

そして、T先生が私によく話していたのは、「科学的トレーニングは数値だけに目が向いて、楽な方へ進んでしまうことが多々ある」。また、本来の科学的トレーニングとは、「科学的な裏付け(数値など)を元に、もっとハードなトレーニングに移行していくことだ」とも話していました。

当時の私はT先生の話を聞いて、まさにぐうの音も出ない状況でした。そして、現役を引退した現在、T先生のご指摘通り、貧血はすっかり改善されています。一方、逆に他の数値は年齢を重ねるごと、順調に悪化しております。

T先生、ありがとう。そして、ごめんなさい……。

2025夏を走る・3

【2025夏を走る・3】愛知県豊田市において「伴走者養成講習会」が開催され、その講師としてお手伝いをしてきました。今回の講習会は、豊田ブラインド伴走協会のご支援とご尽力により、開催することができました。あらためて、感謝申し上げます。

特に、同協会の会長でもある山本氏の素晴らしいリーダーシップにより、今回の講習会はもちろん、年間を通じてとても熱心な活動が継続されています。また、山本氏はマラソンだけでなく、100mなどの短距離種目の伴走も手掛けるなど、本当に情熱的な人柄です。

何事にも共通していますが、情熱的なリーダーがいる活動には多くの人が集まります。今回の山本氏から話を伺うと、伴走活動以外にも様々なことを手掛けており、それぞれの活動が結びついて更に大きくなっていくような相乗効果を自ら仕掛け、自ら実践しているのです。

また、物事を長く継続できている人や、いわゆる「打たれ強い人」に共通していることのひとつに、「情熱的でよく動く」があります。つまり、よく動くので長く続く。また、よく動くので人よりも目立ち、その結果として批判もあびる。しかし、情熱的でよく動くので、いちいち立ち止まったり、クヨクヨしたりもしない……。

あらためて、全国各地からの依頼を受け、伴走者養成講習会のお手伝いもしていますが、どこの講習会においても必ず情熱的なリーダーが存在します。そして、その姿に我々講師の方が感銘を受け、学ぶ点や参考にすることが多いのも確かです。

特に、周りの人を焚きつける人間力には、毎回感銘を受けます。一方、その力を言葉や文字などであらわすことは意外と難しく、「なんで、あんなことができるのか?」と、今回の講習会もいろいろと考える機会になりました。

次回、山本氏とお会いできるときは、もっと掘り下げたお話を伺いたいと思います……。

2025夏を走る・2

【2025夏を走る・2】宮城県仙台市で開催されたジャパンパラ陸上大会の後、ブラインドマラソンチームはそのまま火曜日まで仙台市に残り、合宿を実施しました。幸い、ジャパンパラ陸上大会が開催されたトラックをそのまま使用することができたので、同トラックで充実したトレーニングを実施することができました。

さて、今回のジャパンパラ陸上大会において、視覚障がい中長距離種目において失格になった選手がいました。とても残念なことでしたが、パラ陸上競技には一般の陸上競技には存在しない特殊なルールがあります。それは同じ障がいのカテゴリー内で、公平に競い合うために必要なルールであり、パラ陸上大会に出場する選手や関係者はそれらを十分に理解しておくことが大前提になります。

特に、視覚障がい部門の場合、ガイドランナー(伴走者)を伴うカテゴリーにおいては、テザーと呼ばれる手錠型のロープ(形状も長さも厳格に指定)で、誘導しなくてはいけない絶対ルールがあります。かつては、ロープを持たなくても良いルールや、いわゆる伴走ロープと呼ばれる輪になったロープでの伴走も認められていましたが、今のWPA公認国際大会において、それらのルールは一切存在しません。

あらためて、WPA公認大会における国際ルールの一部を抜粋します。

7. 競技クラスT11-12の競技者のガイドランナーは認められており、助力やペースメーカーとは見なされない。競技クラスT11の競技者はすべての種目でガイドランナーとともに競技しなくてはならない。T12では、ガイドランナーを伴うか、一人で競技するかは競技者の選択である。大会組織委員会はガイドランナーであることが識別できるベストを提供する。

8. T11-12の競技者がガイドランナーを伴って競技を開始した場合、成績が承認されるためには、競技者とガイドランナーがともに規則を守り、誠実に努力し、当該種目を完走しなければならない。7.9.1 競技中、競技者と伴走するガイドランナーの誘導方法はテザー使用を必須とする。さらに、ガイドランナーから口頭で指示を受けてもよい。ガイドランナーは走行(または徒歩)によって任務を完了しなければならず、機械的移動手段の使用は認められない。

7.9.2 テザーによる結束は、競技者と伴走するガイドランナーの手または腕でのみでなされるものとする。競技者とガイドランナーは、テザーを緩みがあるようにして手、手首、その他身体の一部を持ってはいけない。7.9.3 競技者と伴走するガイドランナーは、スタートからレースを終えるまで常にテザーでつながっていなくてはならない。ガイド交代の時を除き、競技者と伴走するガイドランナーが共にフィニッシュライン手前側の垂直面の到達しフィニッシュするまでの間、テザーを離すことは認められない。

7.10.1 ガイドランナーは競技中のいかなる時点においても、レースを有利に進めるために競技者を押す、引っ張る等して前進を助けてはならない。以上が、主なルールになります(ほんの一部)。もちろん、これらのルールを順守しながら安全にレースを完走することが第一になりますが、それぞれに記載してある内容をよく理解しておくことも必須です。

例えば、上記のルール7.10.1は、ガイドランナーが押したり引いてはいけないと記載してありますが、「常に選手の真横で並走しなくてはいけない」とは記載してありません。つまり、ガイドランナーが給水を取ったり、トラックのコーナーを伴走する際、どうしても選手のやや前方に移動したり、後方に移動してしまうことが必ずあります。したがって、そこを審判からルール違反だと指摘されたとき、逆に自分たちの正当性を証明できる内容の抗議を考えておく必要もあると言うことです。

要は、何事もルールや規則は熟読し、なんと記載しているかの文言を確認しておくことも大切です。

2025夏を走る・1

【2025夏を走る・1】いよいよ初夏と言われる季節に入ってきました。毎年のことながら長距離・マラソン選手にとっては、最も過酷な季節に突入していくことにもなります。そして、これも毎年のことですが、個々の体調に合わせた暑熱対策で、これからの暑さを乗り切ってほしいと思います。

さて、あらためて6月に入りましたが、多くの長距離・マラソン選手にとっては「スピード強化」と位置付け、積極的にトラックレースなどを走っていることでしょう。もちろん、ロスパラリンピックを目指しているブラインド選手たちも5月から本格的なトラックシーズンに入りました。

そして、今月7日から宮城県仙台市において「ジャパンパラ陸上競技大会」が開催されます。同大会には、上記したブラインド選手たちも出場し、トラック種目を走ることでマラソンに必要なスピード強化をします。特に、5000mの記録はマラソンの具体的な目標タイムを設定していく上での指針となる重要な記録になります。

詳細は割愛しますが、今大会と来月に出場する5000mで達成した記録を選手ごとに解析していくと、秋以降のマラソンでどの程度の記録が狙えそうなのかを、予測タイム(仮説)として考えることができます。そして、その予測タイム(仮説)をベースに、夏合宿で実施する距離走(30k~40k)などの設定タイムも考えていきます(もちろん、練習中の調子などを加味しながら再検証し、設定タイムなどは都度修正もしますが……)。

すでに何度かこのブログにも記載してきましたが、5000mの記録とマラソンの記録はとても密接な関連性があり、「マラソンで〇時間〇〇分〇〇秒を目指すなら、5000mの記録は〇〇分〇〇秒が必要」と言った記録の方程式も、ほぼ決まっています(それも高い確率で)。

したがって、トラックでのスピード強化と言うのは、マラソンで「〇時間〇〇分〇〇秒」を達成するために不可欠な「5000mの〇〇分〇〇秒」に到達するための強化を指します。つまり、日々実施しているスピード練習(インターバル走やペース走など)も、その5000mの必須タイムに到達するための設定タイム(疾走距離に対する)や、その疾走本数になるのです。

また、「長距離・マラソン選手は年間を通じてオフがない」と言われている理由のひとつが、マラソンは上記したような距離間の密接な関連性もあり、季節ごとにそれぞれの強化をしているからなのです。同時に、秋からのマラソンシーズンに向け、どんなランナーも自己記録を更新したいと考えますが、その目標を達成するためには、「年間計画(期分け)が必要」と言われるゆえんでもあるのです。

あらためて、市民ランナーの皆様もこの時期はトラック(陸上競技場)で実施される競技会や記録会への挑戦を強く推奨します。もちろん、今までトラックを走った経験のないランナーでも気楽に参加できる記録会もあります。また、仲間との定例練習会の中で、トラック記録会(3000mや5000mなど)を実施してみてはいかがでしょうか。秋以降のマラソンで、自己記録を更新できるヒントが必ず見つかります。

2025春を走る・13

【2025春を走る・13】先日の東日本実業団陸上競技選手権大会において、視覚障がい男女の1500mと5000mも実施頂きました。ご存知のとおり、出場した選手の数は男女とも5名以下と少数でした。しかし、この人数は、当初からほぼ変わっていません。

また、出場している選手たちの顔ぶれも大きく変わっていないのが現状です。そんな中、貴重な若手男子選手のひとりである大石選手が、1500mと5000mの両種目で自己新記録を達成したことは、とても大きな収穫でした。

さて、語弊のある言い方になりますが、一般の陸上競技においては、素質(実績)のある選手を見出し、その選手を自分のチームにスカウトできるかが、チーム力向上のポイントになっています。特に、駅伝などについては、いかにして素質(実績)のある選手を勧誘できるか否か。つまり、スカウティングの長けているチームが、上位を独占していると言っても過言ではないでしょう。

また、素質(実績)のある選手の多くは、今の記録や成績を達成するためにたどってきた経験から、強くなっていくための練習方法(ノウハウ)をそれぞれが持っています。そして、素質(実績)のある選手たちを同じチームで切磋琢磨させていくと、相乗効果で記録をのばせる確率が飛躍的に高まります。

そうなっていくと、チーム躍進には指導力と言うよりも、切磋琢磨できる環境をいかに提供していけるか否かの方がより重要になってくると思われます。もはや、現場での指導力と言うよりも、スカウティングも含めたマネジメント力が勝敗を左右する時代に突入しているのかもしれません。

一方、視覚障がい長距離・マラソンを含めたパラ陸上競技については、競技人口そのもが極端に少ない。と言うよりも「ほぼいない(知的障がいを除く)」と言った方が正しいでしょうか。したがって、陸上競技を経験したことのない人にも声をかけ、仲間に引き込んでいく活動も不可欠になります(上記した大石選手も数年前まではサッカー選手)。

あらためて、我々は一般の強豪チームから強化のノウハウを学んでいかなくてはいけません。同時に、競技を取り巻く環境などの違いが大き過ぎる現状から目をそらすわけにもいきません(現実逃避はダメ)。要は、身の丈に合わせた強化方法を確実に継続していくことがベースにあり、何事も机上の空論に陥らないようにしていくことも重要なのです。

2025春を走る・12

【2025春を走る・12】埼玉県熊谷市において、東日本実業団陸上競技選手権大会が開催されました。同大会は、実業団登録をしている選手たちが出場する大会ですが、視覚障がい選手の「1500mと5000m」も実施頂くようになって、10年が過ぎました。

最近は、パラ種目を実施頂いているい陸上競技大会も増えてきましたが、その先駆けのひとつとなった大会が、この東日本実業団陸上競技選手権大会なのです。あらためて、大会関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

さて、実業団選手と言えば、多くの人が長距離・マラソン選手のことを指していると考えます。ところが、ここ数年の東日本実業団陸上競技選手権大会においては、かなり状況が変わってきています。参考までに、今年の同大会にエントリーしている種目別の人数を確認すると……。

実は、エントリー人数の最も多い種目は、「男子100m」なのです。そして、その人数はなんと「310名」。参考までに男子5000mのエントリー人数は、160名です。実業団陸上と言えば、5000mなどの長距離種目をイメージするのが一般的ですが、今や男子100mにエントリーしている選手の方が圧倒的に多いのです。

さらに、驚きなのは、この大会は選手権大会なので、単なる記録会ではありません。つまり、順番を決める大会です。ところが、310名もエントリーしている男子100mは、どのような予選をして、最後の決勝進出者8名に絞っていくのでしょうか。

大会プログラムには、「予選35組0着+8」と記載してあります。つまり、予選からガチンコ勝負をし、予選35組を走った上位8選手が決勝進出になるのです(但し、決勝以外の上位24名でB、C、D決勝を行う)。もちろん、私は長距離が専門ですが、こんな予選方法で決勝進出者を決める100mは見たことがありません。

その昔、1984年に開催されたロサンゼルス五輪で、カール・ルイス選手が4冠を達成しました。当時は、日本人が100mやリレー種目で世界と勝負することなど、全く考えられない時代でした。あれから40年、日本人は9秒台に突入し、400mリレーにおいては五輪でメダルを獲得。その記録もカール・ルイス選手たちが当時樹立した世界記録を上回るレベルにまで到達したのです。

そして、東日本実業団陸上競技選手権大会も今年で67回目になります。ついに、男子100mにエントリーしている選手数が、男子5000mのエントリー数を超える時代になったのです。まさに、「強化と普及の両輪がその競技の発展を左右する」と言われていますが、男子100m(短距離)はそれを体現したお手本です。

また、実業団選手以外のランナーを市民ランナーと呼びますが、短距離界も「市民スプリンター」が活躍する時代に……。

2025春を走る・11

【2025春を走る・11】長距離・マラソン選手たちも、トラックシーズンに入っております。もちろん、ロスパラリンピックを目標にしているブラインドマラソンの選手たちもトラックシーズンに入ります。そして、そのトラックレースに対応するための強化合宿をいつもの千葉県富津市富津公園で実施しております。

また、この時期になると、ここ富津では実業団選手や箱根駅伝を目指す学生選手たちの姿はほぼ見かけなくなりますが、どの選手たちも全国各地で開催される記録会などのトラックレースに出場していることでしょう。まずは、どの選手もケガや故障もなく、トラックレースに挑めることを祈念しております。

さて、トラックレースは、ロードレースや駅伝のような起伏のある長い道路を走るわけではないので、スピード練習の一環と捉え、短期間で複数のレースを走る選手が多数います。特に、記録会はその名のとおり、自己の記録に果敢に挑戦する場なので、積極的に出場してほしいと、個人的にも思います。

一方、たくさん出場できる反面、毎回同じような失速を繰り返したり、ライバル選手たちとの競り合いになると、毎回同じようなパターンで負け続ける選手たちがいます。つまり、勝ったり負けたりではなく、高確率で負けたり、失速したりするのです。いわゆる負けグセが付いている状態に陥る選手たちです。

もちろん、明らかに格上の選手に挑んでいる場合は別ですが、負けグセが身に付いてしまうと、レースでの失速や負けを繰り返し、レースそのものを楽しめなくなっていきます。至極当然のことですが、この状態が続くと、走ることそのものに対する意欲も低下していき、選手としての立ち位置も維持できなくなっていきます。

ところが、この負けグセが厄介と言われているのは、選手を引退した後も、その後の人生にも大きな悪影響を及ぼすとも言われているからです。具体的には、「すぐにあきらめる」、「やる前から否定的なことを言う」、「文句ばかりで自分はなにもしない」など、負けグセを放っておくことは、「これからの人生に大きなハンディを背負って生きていくのと同義」と、話している専門家は多数います。

では、負けグセが付いてしまう原因は何でしょうか?

かくいう私は専門家ではないので、正確に説明することはできませんが、多くの専門家が指摘している原因のひとつに、「負けても悔しがらない」があります。つまり、負けた相手に「強いですね」で、終わってしまい、負けを繰り返すパターンです(もちろん、謙虚な姿勢は大切ですが)。

このように、負けたことに関して無関心だと、勝つことに執着しなくなり、ここが勝負という状況でも「まあいいや」と考え、状況が好転せず負けてしまいます。まさに、駅伝での競り合いや、マラソンの35k以降で力を発揮できなくなるのです。つまり、悔しがらない選手は駅伝メンバーからも遠ざかっていくのです。

いろいろと話が長くなりましたが、要はこの時期に記録会などのトラックレースを多く走ることで、「負けたら悔しい」を繰り返し、逆に「負けグセも克服できるチャンス」と、捉えてほしいのです。それが、秋以降の駅伝やマラソンにも必ずつながると信じております……。

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