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8.パラリンピック Archive

2025夏を走る・2

【2025夏を走る・2】宮城県仙台市で開催されたジャパンパラ陸上大会の後、ブラインドマラソンチームはそのまま火曜日まで仙台市に残り、合宿を実施しました。幸い、ジャパンパラ陸上大会が開催されたトラックをそのまま使用することができたので、同トラックで充実したトレーニングを実施することができました。

さて、今回のジャパンパラ陸上大会において、視覚障がい中長距離種目において失格になった選手がいました。とても残念なことでしたが、パラ陸上競技には一般の陸上競技には存在しない特殊なルールがあります。それは同じ障がいのカテゴリー内で、公平に競い合うために必要なルールであり、パラ陸上大会に出場する選手や関係者はそれらを十分に理解しておくことが大前提になります。

特に、視覚障がい部門の場合、ガイドランナー(伴走者)を伴うカテゴリーにおいては、テザーと呼ばれる手錠型のロープ(形状も長さも厳格に指定)で、誘導しなくてはいけない絶対ルールがあります。かつては、ロープを持たなくても良いルールや、いわゆる伴走ロープと呼ばれる輪になったロープでの伴走も認められていましたが、今のWPA公認国際大会において、それらのルールは一切存在しません。

あらためて、WPA公認大会における国際ルールの一部を抜粋します。

7. 競技クラスT11-12の競技者のガイドランナーは認められており、助力やペースメーカーとは見なされない。競技クラスT11の競技者はすべての種目でガイドランナーとともに競技しなくてはならない。T12では、ガイドランナーを伴うか、一人で競技するかは競技者の選択である。大会組織委員会はガイドランナーであることが識別できるベストを提供する。

8. T11-12の競技者がガイドランナーを伴って競技を開始した場合、成績が承認されるためには、競技者とガイドランナーがともに規則を守り、誠実に努力し、当該種目を完走しなければならない。7.9.1 競技中、競技者と伴走するガイドランナーの誘導方法はテザー使用を必須とする。さらに、ガイドランナーから口頭で指示を受けてもよい。ガイドランナーは走行(または徒歩)によって任務を完了しなければならず、機械的移動手段の使用は認められない。

7.9.2 テザーによる結束は、競技者と伴走するガイドランナーの手または腕でのみでなされるものとする。競技者とガイドランナーは、テザーを緩みがあるようにして手、手首、その他身体の一部を持ってはいけない。7.9.3 競技者と伴走するガイドランナーは、スタートからレースを終えるまで常にテザーでつながっていなくてはならない。ガイド交代の時を除き、競技者と伴走するガイドランナーが共にフィニッシュライン手前側の垂直面の到達しフィニッシュするまでの間、テザーを離すことは認められない。

7.10.1 ガイドランナーは競技中のいかなる時点においても、レースを有利に進めるために競技者を押す、引っ張る等して前進を助けてはならない。以上が、主なルールになります(ほんの一部)。もちろん、これらのルールを順守しながら安全にレースを完走することが第一になりますが、それぞれに記載してある内容をよく理解しておくことも必須です。

例えば、上記のルール7.10.1は、ガイドランナーが押したり引いてはいけないと記載してありますが、「常に選手の真横で並走しなくてはいけない」とは記載してありません。つまり、ガイドランナーが給水を取ったり、トラックのコーナーを伴走する際、どうしても選手のやや前方に移動したり、後方に移動してしまうことが必ずあります。したがって、そこを審判からルール違反だと指摘されたとき、逆に自分たちの正当性を証明できる内容の抗議を考えておく必要もあると言うことです。

要は、何事もルールや規則は熟読し、なんと記載しているかの文言を確認しておくことも大切です。

2024秋を走る・1

【2024秋を走る・1】パリパラは無事に閉幕し、昨日帰国しました。まずは、同大会に関係された様々な方に厚く御礼申し上げます。また、我々のマラソンは大会最終日でしたが、出場した男女4選手全員が無事にゴールすることができました。

男子は、堀越信司選手が7位入賞。女子は、道下美里選手が銅メダル。結果の詳細については割愛しますが、選手たちは力を出し切ってくれました。あらためて、選手たちへのご支援ご協力を惜しみなく注いで頂いた関係者の皆様に重ねて御礼申し上げます。

さて、銅メダルを獲得した道下選手のガイドライナーに対するメダル授与はありません。ルール上、スタートからゴールまで完全に単独伴走をした場合のみ、そのガイドランナーにもメダルが授与されます。

特に、女子選手の場合、男子選手よりも相対的に走力が低くなるので、単独伴走を選択する選手(国)が多い。しかし、各国のガイドランナーを拝見していると「単独伴走で本当に大丈夫かな?」と、思われるガイドランナーが見受けられるのも確かです。

しかし、ガイドランナーは、どんな過酷な状況下に陥っても選手をゴールまで確実に安全に導く役割があります。至極当然のことながら他国選手との駆け引きやペース配分、給水などなど、その役割は多岐にわたります。もちろん、ガイドランナーにかかるプレッシャーや重圧は想像に難くありません(だからこそ選手以上の圧倒的な走力が必須)。

それらを鑑みて、日本チームとしては選手のパフォーマンスを最大限に引き出すため、必ず2人体制を選択しています。つまり、ガイドランナーへのメダル授与は最初から放棄することになるので、その点はガイドランナーも納得した上でのことになります(個人的には2人伴走選択にもメダル授与することを強く望んでいます)。

今回、道下選手のガイドランナーの1人(前半予定)が、体調不良のため本来の調子に届いていませんでした。最終エントリー変更の締切日まで回復を待ちましたが、そのガイドランナーを外し、好調なガイドランナーと入れ替えました。まさに苦渋の選択でした。

果たしてパリパラマラソン当日、道下選手はスタートから4位を独走する苦しい流れに……。しかし、エントリー変更した前半のガイドランナーが、道下選手を好アシスト(4位の単独走になったが、道下選手を設定タイムどおりにキッチリと伴走)。実は、道下選手の後ろを走っていた中国選手は実力者でしたが、この選手の追撃を見事にかわしていたのです。

案の定、後半のガイドランナーにチェンジしたあと、中国チームは焦りからか一気にペースを上げ、道下選手を猛追してきました。しかし、30k以降は選手の方が力尽き、最後はフラフラの状態でゴール(5位でゴール後に失格)。さらに、3位でゴールしたスペイン選手は、そのガイドランナーが後半苦しくなり、最後はガイドランナー自ら潰れて選手が失格に……。その結果、道下選手は銅メダルを獲得。もちろん、道下選手のたゆまぬ努力が引き寄せた「銅メダル」でした。

一方、結果的にはレースの流れを読み間違えた中国のガイドランナー。そもそもの走力が不足していたスペインのガイドランナー。そして、ガイドランナーの人選や走力強化にも力を入れ、盤石の状態で挑んだ日本。ガイドランナーの実力と経験の差が、今大会の銅メダル争いを決着したとも言えるでしょう。

2024夏を走る・14

【2024夏を走る・14】パリパラが開幕しましたが、パリパラマラソンチームは千葉県富津市で最後の調整合宿中です。そして、9月8日がパリパラマラソン当日になります。その当日までに予定しているポイント練習は、あと2回。

さて、パラリンピックに出場する選手たちは、選手村に2週間程度滞在します。しかし、2021年の東京大会はコロナ感染防止対策のため、各選手の出場する競技日程に合わせ、競技当日の数日前に入村し、競技終了後は速やかに退村する方式がとられました。

そして、今回のパリ大会も原則として東京大会と同じ方式です。実は、マラソンはパラリンピック最終日の競技になるので、2016年のリオ大会までは、選手村で約2週間も調整していました(事実上の調整合宿)。

もちろん、現地のコンディションに体調を合わせたり、マラソンコースをじっくりと確認できるなど、選手村に長く滞在するメリットはありました。一方、大会最終日が近づくにつれ、競技を終えた選手や関係者は緊張感も解け、楽しむモードに突入していきます。

そのピークは、パラリンピック最終日の前夜。つまり、マラソン選手たちにとっては、出走前日の夜になります。最も体を休め、良質な睡眠が必要な出走前夜にもかかわらず、選手村はお祭り騒ぎになります。

海外の陽気な選手たちは、国境を越えた仲間たちとギターなどを手に歌ったり踊ったりと、選手村の広場などで大いに盛り上がります。まさにこれこそが真の国際交流、パラリンピックとも言えますが、明日に大勝負を控えているマラソン選手たちにとっては……。

もちろん、今となっては薄れゆく記憶の中に残る「思い出」のひとつですが、パリパラも東京パラのように、「静かな夜」になることを……。そして何よりも、出場する選手たちが最後までケガや故障なく、スタートラインに立てることを祈るばかりです。

2024夏を走る・11

【2024夏を走る・11】パリパラマラソン当日まであとひと月となり、再び北海道北見市において強化合宿を実施しております。3年前の東京パラも、同時期にこの北見市で強化合宿を実施し、男女のメダル獲得につなげることができました(2016年リオパラから)。

そして、今回のパリパラマラソン日本代表選手は、その3年前の東京パラマラソンと同じ顔ぶれとなりました。つまり、男子代表の堀越選手は2大会連続のメダル獲得。熊谷選手は2大会連続の入賞(初のメダル獲得)。さらに、女子代表の道下選手は2大会連続の金メダル獲得(3大会連続のメダル獲得)と、本人以上に周りの期待がふくらみます。

一方、日本代表選手に対して「楽しめば良い」「ベストを尽くせば良い」など、現地入りするまでは、比較的穏やかな言葉をかけられることが多いのは一般的です。ところが、試合結果に大きな乖離があったり、試合後の態度や発言によっては厳しいコメントやバッシングがいつの大会もあります。残念ながら……。

もちろん、どの代表選手も関係者も当初の目標を達成するため、日々の努力を重ねています(月並みですが)。

さて、今月6日から北海道北見市で強化合宿を実施していますが、厳しい暑さに負けないよう、最後の調整をしています。特に、4年に1回しか開催されないオリパラのような国際大会で力を発揮するために不可欠なことは多々ありますが、その中でも重要なことに「過去の経験とノウハウ」があります。

それは、同じ選手が何度も経験すると言う意味だけでなく、チームジャパンとして戦ってきた経験やノウハウも含まれ、むしろチームジャパンとしての経験やノウハウが大切になります。特に、マラソンは個人種目の極みのような扱いを受けますが、実際はかなり違います。

至極当然のことながら日々のマラソントレーニングには多くのサポートを必要とし、そのサポートをする側の経験やノウハウも問われることになります。また、ブラインドマラソンには伴走者(ガイドランナー)を必要とする選手もおり、日本代表選手の伴走者ともなれば、「誰でも簡単に」と言うわけにはいきません。

また、単独走が可能な弱視選手ほど、トレーニング時の給水やペース管理など、一般選手のようにはいきません。つまり、逆にトレーニングパートナー的な存在が不可欠にもなるのです。さらに、伴走者やトレーニングパートナーの走力を維持向上させるためには、強化合宿中も定期的に伴走者の個人練習を取り入れる必要があります(合宿中は伴走者の交代要員も必要になる)。

今回のパリパラマラソンに向けた強化合宿においては、正式なパリパラ伴走者2名以外にも、交代伴走者兼トレーニングパートナーとして6名を帯同させております。その中には箱根駅伝を目指す順天堂大学と帝京大学の学生選手も含まれます(あらためて感謝です)。

このように、パリパラマラソン日本代表選手たちは、多くの仲間に支えられることで、日々のトレーニングはもちろん、外部からの誹謗中傷などからも選手たちを守れることにもなるのです。

2024夏を走る・8

【2024夏を走る・8】関東地方も梅雨が明け、連日30度を超える猛暑です。いよいよ本格的な夏の到来でしょうか。そんな中、本日から千葉県富津市富津公園においてパリパラ強化合宿を実施します。

本来なら涼しい場所で合宿をしますが、あえて暑い千葉県で実施します。その目的は、暑さ対策になります。専門的な話は割愛しますが、一度は暑熱順化した身体も、長期間涼しい場所にいると、その効果はどんどん薄まっていくと言われています。

パリパラマラソン代表選手たちは、今月の前半は北海道北見市で強化合宿を実施しましたが、このタイミングでもう一度暑い中で走り込んで、身体を暑熱順化させます。もちろん、無理をして調子を崩すようなことはしませんが、暑さに慣れるためには、科学的と言うよりも根性論寄りのトレーニングが推奨されています(そもそも気温が30度を超える中で運動をしていはいけない)。

実際に暑熱対策の専門的な話を見聞しても、最終的には「気持ちの持ち方」「慣れるまで我慢」など、「そんなんで大丈夫かな?」と思ってしまう文献などが多いと感じます(繰り返しになりますが、気温が30度を超える中で運動をしてはいけない)。しかし、何年も夏マラソン対策のトレーニングを繰り返し、その経験を重ねてくると「確かにそのとおりだ」と、腑に落ちます。

また、8月から9月上旬のパリの気温は、日本ほど暑くなりません。少なくとも過去のデータ上では……。しかし、最近の異常気象を受け、パリをはじめヨーロッパは熱波の影響で40度を超える日があったりもします。要は、パリパラマラソン代表選手たちがパリ入りした時、「ここは涼しくて快適だ」と、思える状態に仕上がっていれば、個々の目標を達成できる確率は高くなります。

そして、今日からの千葉県富津市での強化合宿を終えると、8月は再び北海道北見市で合宿を実施します。そのあとは、長野県上田市菅平高原に移動し、8月下旬は、千葉県富津市で最後の調整合宿を……。そして、そのままパリへ飛ぶ予定です。

さて、9月8日のパリパラマラソン当日から逆算すると、ある程度の量(距離)を追える最後の強化期間に入ります。富津強化合宿2日目となる明日は、早朝6時スタートで「40k走」を予定しています。この期間に入って、パリパラ代表選手たちの走りを見るのは、いろいろな意味で緊張もします。

そんな中、上記したように身体が暑さに順化しているか否かよりも、気温が30度の中でも「たいした暑さではない」と、選手たちが心の中で思いながら走れる状態になっていれば合格です。そこを今日からの強化合宿で見ていきたい。

2024夏を走る・7

【2024夏を走る・7】パリパラマラソンのちょうど2ヵ月前に当たるこの日程で実施した北海道北見市での強化合宿は無事に終了しました。その合宿中の主なポイント練習は42k走を3本。さらに、ホクレンディスタンス北見大会と網走大会の5000mに出場。

毎年のことながら、この7月の北見合宿はかなりハードな内容になりました。特に、40k以上の長距離を短期間で3本走ることは、設定タイムを抑えて走ったとしても相応のダメージが蓄積されていきます。そのイメージとしては、まさに「じわじわと真綿でしめていく」。そんな感じでしょうか。

至極当然のことながら、マラソンに向けたトレーニング方法は様々で、どれが正しいかの判断がつかないのは、いつの時代も同じです。その中においても、特に夏マラソンに特化した的確なトレーニング方法や理論を目にすることは、ほとんどありません。

ましてや4年に1回しか開催されないオリパラマラソンに対する専門的なノウハウを見聞することなど、なおさら難しいことです。かくいう私は、4年に1回のパラマラソンにかかわるのは、今回のパリパラで8回目になります。

もちろん、私自身が夏マラソンに向けた確固たるトレーニング理論などを持っているわけではありません。しかし、長くかかわってきた分、暑い中で走り込むためには「どの程度の強度で、どの程度の距離を走るとどうなるのか?」は多少経験してきましたが……。

その中においてひとつ言えることは、指示している側(監督やコーチ)がどれだけ我慢できるか否か。つまり「こんなに暑い中で走らせて良いのか?」「こんなに遅い設定タイムで意味があるのか?」など、どうしても冬マラソンと比較し、選手のシャープな動きや速い設定タイムなどを追いかけてしまうからです。

また、「涼しい時間帯で走る方が身体への負担がすくない」「量より質を上げた方が良い」など夏のトレーニングにおいてはよく見聞しますが……。実は、これまでの経験から夏マラソン攻略にはあまり効果的ではないかもしれないと、個人的に思うトレーニング方法も多々あります……。

そもそも、気温が30度をこえる中で運動すること自体が命の危険にさらされます。ましてやマラソンなど……。しかし、そんな過酷な状況下で、日本代表選手として日の丸をつけ、メダル獲得を目指してマラソンを走るためには「何をどうするのか?」。

パリパラマラソンまであと2ヵ月。しっかりと取り組んでいきます。

2024夏を走る・6

【2024夏を走る・6】7月3日から北海道北見市で強化合宿を実施しております。毎年のことながら、北見市の皆様をはじめとする多くの方々のご理解とご支援により、今年も強化合宿を実施することができました。あらためて、厚く御礼申し上げます。

また、今回の強化合宿はパリパラマラソンに向けた最重点合宿のひとつでもあり、特に日本代表に選考された選手たちは、メダル獲得を目標に意欲的に走り込んでいます。具体的には、本日までの合宿前半で、40k走を2本。そして、ホクレンディスタンス北見大会の5000mに出場。

さて、今回のパリパラマラソン代表枠を獲得するための基準が、WPAの不手際により最後まで迷走しました。そのため、東京パラマラソンで金メダルを獲得した女子の道下選手と銅メダルを獲得した男子の堀越選手(他の選手も)は、パリパラマラソンの代表枠獲得のため、4月の「かすみがうらマラソン」も走らざるを得ない状況に追い込まれました。

大会当日は、想定どおりの暑さが選手たちを苦しめ、消耗戦となる激しいレースになりました。しかし、両選手ともパリパラマラソン日本代表につながる記録でフィニッシュ。ところが、懸念していたとおりのダメージが身体にも残り……。

結局6月から開始したパリパラマラソンに向けた走り込みにもその影響を引きずっていました。しかし、前述した3回のポイント練習は何とか無事に消化することができました。特に、パリパラマラソン代表に選考された選手たちは、パラマラソンの経験もあり、ここまで多くの困難を乗り越えてきた実績があります。

そのパラマラソンは、いわゆる夏マラソンであり、速さよりも強さが求められます。そして、その強さの裏付けは経験になります。その経験は、単に夏マラソンを走ったことだけでなく、その夏マラソンに向けたトレーニングの経験と実績が重要になります。

8月後半から9月前半に開催予定のマラソンを目標にした場合、多くは5月から6月に本格的なマラソントレーニングを開始します。つまり、夏マラソンで戦うためには、気温や湿度がどんどん高くなっていく春から夏に向かって、トレーニングの量と質を上げていく過酷な作業にもなります。

さらに、9月8日に開催予定のパリパラマラソンのコースは、鋭角に曲がる箇所や石畳の路面が多く、そのうえ小刻みなアップダウンが連続する難コース。それらの点を踏まえると、これまでのパラマラソン以上にスタミナ強化がメダル獲得へのカギとなります。

今回の強化合宿後半は、ホクレンディスタンス網走大会で5000mを走り、翌日に3本目の40k走を実施予定です。そして、夏マラソンを攻略する最大のポイントである「ナタの切れ味」を身につけるため、今回の強化合宿から8月14日までの間、さらに走り込む量を増やしていきます。

※写真:選手たちが走っている両端の雑草は我々の練習日程に合わせ、地元の関係者が除草作業など、コース整備を行っているのです(毎年)。感謝です!

2024夏を走る・5

【2024夏を走る・5】今年も半年が過ぎ、来週から7月に入ります。今月から9月8日のパリパラマラソンに向けた本格的な走り込みを開始していますが、ひと月が過ぎました……。また、6月は長野県上田市菅平高原で走り込んできましたが、7月は北海道北見市に場所を移します。

あらためて、オリパラは夏に開催され、どの競技も記録よりも順位が重視されます。したがって、冬マラソンを目指す取り組みとは目標設定の考え方が異なります。もちろん、冬マラソンでも優勝を目標にすることは同じですが……。

まず、冬マラソンと夏マラソンを目標にした場合、どちらも目標タイムの設定が最初になります。しかし、ここで大きく異なる点として、冬マラソンは「自己記録の更新」が最大の目標となり、自己記録の更新がそのまま優勝を狙えるタイムなら、目標設定は「自己新記録で優勝」にもなります。

ところが、夏に開催されるパラマラソンの場合、そもそも夏マラソンで自己記録を更新することはかなり難しく、暑い中で冬マラソンのようなトレーニングを積んでいくこと自体も難しい。したがって、目標タイムは「メダル獲得(入賞)」をターゲットにした設定タイムになります。

もちろん、夏マラソンでも自己記録更新を目標にすることは可能ですが、冬マラソンのような量と質の両面から追い込むトレーニング自体が相当難しい。仮に涼しい場所でトレーニングを消化できても、どこかのタイミングで必ず暑さに慣れる必要があり、そのタイミングの見極めが難しく、直前に暑さで調子を崩すケースは多いのです。

参考までに、2021年9月5日に開催された東京パラマラソンにおいてもメダル獲得ターゲットタイム(※)を計算し、そのタイムを狙える走り込みの量と質を見極めながら取り組みました。ところが、大会数日前の天気予報は当日の天候が雨(低温)……。したがって、最後の全体ミーティングにおいて、男女ともメダル獲得ターゲットタイムを上方修正し、各選手とも共有しました。

具体的には、女子は「3時間00分59秒」を金メダル獲得ターゲットタイムとし、道下選手が「3時間00分50秒」で金メダルを獲得。男子は「2時間28分10秒」をメダル獲得ターゲットタイムとし、堀越選手が「2時間28分1秒」で銅メダルを獲得。

今回のパリパラマラソンに向けたメダル獲得ターゲットタイムはすでに計算しており、そのタイムを目標に走り込みを開始しています。もちろん、前述したとおり、そのタイムは自己記録更新ではありません。つまり、メダル獲得に自己記録更新が必須であるなら、パリパラマラソン(夏マラソン)でのメダル獲得は極めて難しいことになります。

要は、いわゆる冬マラソンと夏マラソンの攻略方法が異なる点をよく理解(経験)していないと、夏マラソンは単に疲労を残すだけのトレーニングに陥ってしまうリスクが高いのです。至極当然のことながら、選手は少しでも良いタイムを出したいので、暑くても寒くても自身を追い込みます。そこをいかにしてコントロールしていけるかが……。

※メダル獲得を確約した設定タイムではありません。

2024夏を走る・1

【2024夏を走る・1】6月に入りました。いよいよこれから本格的な暑さとの戦いに入っていきます。そして、暑くなっていくこのタイミングで、パリパラマラソンで戦うための本格的な走り込みを開始します。まずは、長野県上田市菅平高原での走り込みからです。

また、この菅平高原での強化合宿は、毎年実施しており、特にパラマラソンに向けた本格的な走り込みは、必ずこの菅平高原からスタートしてきました。もちろん、パリパラに向けても同じです。そして、昨日から菅平高原に上がってきましたが、昨日の気温が13度、今朝は7度(手元)でした……。

今月はこの菅平高原で、強化合宿を2回実施します。起伏の激しいコースでの距離走がメインになります。特に、パリパラマラソンのコースが厳しいコースであることは、既に確認しているので、そこで勝負するための脚力強化になります。

さて、マラソン(長距離全般)は、いわゆる「厚底カーボン(バネ)入りシューズ」が登場してからは、記録が一変しました。それまでは、修行僧のような摂生と走り込みを繰り返し、強靭なスタミナと精神力を身につけることが活躍するための条件でしたが、そのシューズが登場してからは、マラソンがスマートなイメージに変わってきたと感じます(マラソンは誰でも気楽に走れる)。

ところが、目指すマラソン大会が真夏に開催。そして、そのコースはアップダウンが激しく、路面は荒れた石畳が多く、おまけに鋭角に曲がる箇所も多い……と、なった場合、果たして最新のシューズに頼る戦術で、メダルをかけた勝負をすることは可能なのか否か? 実は、今回のパリパラマラソンコースです(オリはもっと厳しい)。

2021年9月5日、東京パラマラソンが開催されました。そこで、我々は金メダルと銅メダルを獲得する結果を残しました。その東京パラのマラソンコースは、35k以降に上り坂が待っている厳しいコースでした。その対策として、2021年6月から東京パラマラソンに向けた強化合宿を開始し、8月第1週までの間に「40k走を9本」実施しました。

もちろん、出場した選手たちは最新のシューズを履いて、当日は挑みました。しかし、「35k以降の上り坂からペースアップ」の戦術を見事に実戦し、メダルを獲得できたのは苦しい走り込みで身につけた「強靭なスタミナと精神力」のおかげでした。

果たして、パリパラマラソンコースは、東京パラマラソンコースよりもはるかに厳しい。したがって、持ちタイムの「速さ」ではなく、最後までしっかりと粘り倒せるか否かの「強さ」が勝敗を左右する展開が予想されます。

今更ながら、選手が持っている腕時計は走った距離やペースも自動計測できるものや、シューズはカーボン入りなど、最新のテクノロジーがどんどん導入されています。しかし、オリパラのマラソンは真夏に実施され、さらにより厳しいコースを設定するなど、最先端とは真逆のことを意図的に操作している節があります。

思うに、オリパラのマラソンは、「世界で一番タフな男女」を決める目的(責任)があるからなのでしょう。したがって、パリパラマラソンに向けての走り込みは、「東京パラ以上の走り込みを積み上げることで勝負できる」とも言えます。それは、忍耐や我慢する力が試されることにもなり、我々にとっては最も得意とする「泥臭い練習」に他ならない……。

2024春を走る・10

【2024春を走る・10】恒例のGW菅平合宿(長野県上田市)は無事に終了しました。この時期の菅平高原は、気温が下がる日も多く、午前中の気温が10度以下の日もありました……。

今回の合宿は、マラソン後の調子などを確認することが最大の目的だったので、質も量も落とした内容でした。また、6月からは、パリパラに向けた本格的な走り込みを実施していくので、その準備をするような意味合いもありました。

幸い、主力選手たちの状態は問題なく、6月からは計画どおりの走り込みにシフトしていけそうです……。

さて、パラリンピックの開催はオリンピックの後になるので、開催期間は8月後半から9月前半の日程になります。そして、パラマラソンは、パリ大会も最終日に実施されることが決定しているので、それに向けた走り込みは、6月から8月になります。

したがって、最も暑い季節に最もたくさん走り込むことになるので、身体への負担が大きくなるのは言うまでもありません。もちろん、菅平高原など比較的涼しい場所での走り込みをメインにしていきますが、最終的には暑い中でもしっかりと走れる身体に仕上げていくことが不可欠になります。

また、冬のマラソンと違って、本番直前に練習を落としたからと言っても、簡単に疲労が抜けていくとは限らないのが、夏マラソンの最も難しいところです。もちろん、マラソンに向けた走り込みができていないと、本番でも走れないのは冬マラソンと同じです。

同時に、冬マラソンによくある「成功するための王道」のようなトレーニング方法は、夏マラソンには見当たらず、常に手探り状態のも確かです。まさに「過去の経験とカン」に頼る部分が多いのも「夏マラソン」とも言えるでしょうか。

そんな中、ひとつ言えるのは、トレーニングの量も質も冬マラソンのように追い込み過ぎると、最後は疲労を抜いていくのが困難な状況に追い込まれるリスクが高くなるのも夏マラソンの特徴です。

と、言いながら逆に落とし過ぎると、本番に勝負ができなくなるのは冬マラソンと同じなので、とても矛盾したバランスを保ちながら走り込んでいくことになります。

このようにパリパラに向け、いよいよ「難解なパズル」を組み合わせていく作業に挑む時期に入っていきます……。

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