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4.マラソントレーニング(理論) Archive

2026冬を走る・4

【2026冬を走る・4】先日は、大阪国際女子マラソン大会をはじめ、各地で多くのマラソン大会が開催されました。そして、ここから3月上旬あたりまでの間、大きなマラソン大会が全国で続きます。

いつも富津合同マラソン練習会で切磋琢磨している市民ランナーの皆様も、それらのマラソン大会に出走し、自己の記録に挑戦します。もちろん、毎年のことですが、同練習会で切磋琢磨している全員が自己記録を更新できるとは限りません。確率的には、自己記録(目標記録)に到達できなかった人の方が、むしろ多いのかもしれません……。

事実上のプロランナーとしてマラソンに挑んでいる実業団選手や学生選手(箱根駅伝常連大学など)をもってしても、常に日本新記録や自己新記録を達成することは相当難しいのが現実です。したがって、マラソンを走ったあとの振り返り(反省)において、不必要に落ち込むことはないとも言えます。

特に、マラソンの記録は、当日のコンディション(天候)とコース(起伏など)に最も影響を受ける特性があるので、まずはそこをしっかりと振り返ることが不可欠になります。ところが、レース後に市民ランナーの方と振り返りをすると、「とにかくダメだった」に終始する人が本当に多いと感じます。

よくよく話を聞くと、「小雪が舞って、北風が5メートル以上あった」など、実はまともに走れる天候ではなかった……。同様に、「何としてもサブフォーを」と意気込んで参加したにもかかわらず、申し込んだ大会は起伏に富んだ山岳コースなど、実は攻略することが難しいコースだった……。このように、自分自身でコントロールできない問題(※)に該当する振り返りが、意外と多いのです。※そもそも自己記録を狙える大会ではない。

次に、振り返りでよく聞く内容が、練習が途中で途切れてしまった話です。具体的には、概ね3ヶ月前あたりから走り込みを開始しますが、途中で1週間以上もそれが途切れてしまったことが複数回あることです。もちろん、市民ランナーの皆様は上記したプロランナーとは違うので、仕事や家庭をはじめ、付き合い(飲み会)などが、走り込みと同時進行です。

ところが、どんな理由(仕事の残業や家族サービスなど)であろうと、走り込みが1週間以上も途切れると、プロランナーを持ってしても記録達成は難しい状況に陥っていきます。もちろん、市民ランナーの皆様が、マラソンを最優先にした生活を送ることは相当難しいのは事実です。しかし、そこをどのように工夫していくかが、マラソン攻略のポイントだと考えます(走れない日を回避する工夫など)。

また、ランニング経験の浅い市民ランナーの方ほど、ランニングの継続よりもランニングフォームやトレーニング計画などにこだわる傾向が強いと感じます。つまり、目標記録を達成するためのポイント(原因)は、実は自分自身のもっと日常にあることかもしれません……。

2025秋を走る・13

【2025秋を走る・13】12月7日に開催予定の防府読売マラソン大会に向けた最後の強化合宿を実施しました。大会当日から逆算すると、ちょうど2週間前になります。具体的なトレーニング内容は割愛しますが、調整期の真っ只中に位置する強化合宿でした。

あらためて、目標のマラソンに向けたトレーニング計画の要に位置するのは、2~3週間前のいわゆる調整期でしょうか。もちろん、3~4ヵ月前からはじめたマラソントレーニング全てが重要なのは言うまでもありませんが、マラソン後の反省点として語られるのは、「調整期の失敗」に集中しているのも確かです(私の経験上も)。

既に、何度も記載してきましたが、その調整期のポイントは「量を落としながら質を上げていく」になります。もちろん、今回の強化合宿もその流れに沿ったトレーニングになりました。

ところが、この調整期を一括りにすることができない点が、調整の難しいところとも言えます。具体的には、トレーニング量(走行距離)を落として行っているにもかかわらず、「疲労が抜けず、調子が上がってこない」とか、「逆に、一気に調子が上がり、そのピークが早く来た」などなど……。

要は、「走り込み期(たくさん走る)=頑張る」から「調整期(疲れを抜いていく)=頑張らない」へシフトしていく方が、実は自分自身の調子をコントロールしていくのは難しとも言えるのでしょうか。

ここで、車の運転に例えて考えてみます。具体的には、走り込み期を上り坂の運転、調整期を下り坂の運転に見立てて比較していきます。まずは、上り坂を運転する場合、アクセルから足を離すと車は上れなくなるので、ほとんどアクセルを踏みっぱなしです。

一方、下り坂の場合、出過ぎるスピードをコントロールするため、アクセルよりもブレーキを踏む回数が多くなります。しかし、ブレーキを踏み過ぎると、ブレーキそのものが故障するリスクも高まります。したがって、エンジンブレーキも使いながら出過ぎるスピードをコントロールしていく必要があります。

つまり、一般的には上り坂(走り込み期)よりも、下り坂(調整期)の方が、運転技術はより高度になります。さらに、下り坂(調整期)の方が、ブレーキなどへの悪影響(調整期の場合は風邪をひくなど)を考慮しながら運転する必要もあります。

このような見立てで考えると、調整期の捉え方やそのポイントにつながるヒントを、見つけることができるかもしれません……。

2025秋を走る・11

【2025秋を走る・11】いつもの千葉県富津市富津公園において、11月8日から4泊5日の日程で強化合宿を実施しました。また、今回の強化合宿は、来月7日に開催される「防府読売マラソン大会」のちょうど1ヵ月前に当たります。

あらためて、あるマラソン大会を目標にした場合、多くの選手は3~4ヵ月前から準備(走り込み)に入ります。そして、我々もその流れを基準に年間トレーニングを計画し、多くのマラソン大会にトライしています。

もちろん、このトレーニング方法が絶対ということはありません。何度も話してきましたが、トレーニングの目的で重要なポイントのひとつは、「レースでの再現性」です。特に、マラソンは競技の特性上、当日の天候(コンディション)やライバル(レース展開)などに記録や成績は大きな影響を受けます。したがって、無欲で挑んだ初マラソンでの好記録や優勝など、最初から好成績を残す選手もいます。ところが、2回目以降のマラソンでその再現を、コンスタントにできている選手は驚くほど少ないとも感じます……。

さて、話を元に戻すと、我々は「防府読売マラソン大会」を目標に走り込んでいます。そして、その大会のちょうど1ヵ月前の強化合宿を実施しました。内容的には、走行距離にこだわる最後の強化合宿になります(我々のトレーニング計画上においては)。そして、この先は走行距離を落としながらトレーニングの質を上げていき、調子を上げていく段階に入ります。いわゆる調整期に入っていきますが、キチンとした設定タイムというよりも、これまでの経験とそのときの調子や感覚を重視していくことが、ひとつのポイントになります(数値に表せない部分)。

具体例として、サブスリーを達成するためには、1kを「4分16秒ペース」で走り切る必要があります。しかし、疲労が残っている中で走った距離走が「4分30秒ペース」だったとしても、調整(疲労を抜く)していけば、「4分16秒ペース」で走れる。つまり、疲労が残っている状態での「4分30秒ペース」と、疲労が抜けた状態での「4分16秒ペース」は同じペース感覚であると、自らが理解しているか否かがポイントになります(その経験をしているか否か)。

また、この感覚をつかめていないと、疲労が残っているにもかかわらず、常に目標の「4分16秒ペース」が設定タイムの絶対条件となり、どこかで練習を継続できなくなっていくリスクが高まります(ケガや故障もする)。これは「ゆとりを持って走り込む」にも通じることですが、この疲労の有無を正確に把握できるか否かの感覚(経験)は、走力に関係なく、調整期の重要なポイントになると考えます……。

2025秋を走る・9

【2025秋を走る・9】季節が秋を飛び越え、一気に冬よりへ移ってきた感じでしょうか。まさに風邪やインフルエンザが猛威を振るう季節にも入ってきました。至極当然のことですが、体調管理には十分注意していきましょう。

さて、いつもの千葉県富津市富津公園において強化合宿を実施しましたが、次のターゲットとなる大会は12月の「防府読売マラソン」です。そして、その大会から逆算すると、今回と11月上旬の強化合宿までは最も走り込む時期に該当します。

あらためて、シューズ革命(カーボン入りシューズの登場)の後は、マラソンの記録は一気に速くなり、そのシューズを履きこなすためのノウハウも蓄積されてきました。したがって、マラソンを攻略するために、月間走行距離を増やしていくような走り込みを否定していくような時期もありました。

ところが、シューズの恩恵も一巡(?)すると、逆にカーボン入りシューズ特有の故障やケガに悩まされるランナーたちも増えてきました。すると、今度は再び「走り込み論」が台頭してきた感もあり、「しっかりと走り込んでマラソンに挑む」従来のスタイルへ回帰しているような……。

要は、カーボン入りシューズに負けない脚力などは、補強運動(筋トレなど)や動きつくり(ドリルなど)でもある程度補えますが、マラソンを走り切るために必要な脚力は走り込んで鍛えていくのが最も効果的だと……。

また、スタミナ(持久力)をアップさせるには、長時間動き続けるしかその攻略方法が見当たらないのも、マラソンの難しいところとも言えるでしょうか(技術的ではない)。つまり、上記したような動きづくりや補強運動を毎日継続し、フォームが改善されたとしても、スタミナが無ければマラソンを走り切ることすらできないのです。

そして、この考え方はいつの時代も変わらず、マラソンを目指した走り込みは「手間と時間」がかかります。また、一度身につけたスタミナも、サボればすぐに抜けていきます。つまり、どんなに速いランナーも、コンスタントに走り込みを継続していないと、マラソンの安定したパフォーマンスは残せないのです。

そこがマラソン競技の残酷な部分でもあり、「誰もが平等にチャレンジできる魅力」でもあるのでしょうか……。

2025秋を走る・5

【2025秋を走る・5】10月に入り、朝晩が涼しくなってきました。少しずつですが、マラソンシーズンに相応しい季節に移ってきたでしょうか。そんな中、千葉県富津市富津公園において「富津合同マラソン練習会」を、いつものように開催しております。

あらためて、同練習会の走り方としては、走力別にいくつかのグループにわかれます。そして、グループごとに設定タイムを変えて、距離走を実施するスタイルです。もちろん、個別の設定タイムに細かく対応できれば良いのですが、そこが難しい課題でもあります。

しかし、このスタイルでの練習会を20年以上も継続していると、それなりに実績やノウハウが蓄積されてきたのも確かです。特に、多くの名コーチと呼ばれた方々のコメントなどにも出てくる、「ゆとりを持って走り込む」。このフレーズがいかに重要で正しいかを証明してきたような練習会でもありました。

もちろん、マラソントレーニングは多岐に渡り、ランナーの数だけ攻略方法は存在すると言っても過言ではありません。しかし、「ゆとりを持って走り込む」ことがどれだけ重要な要素なのかは、繰り返し継続していかないと理解できない点でもあります。

さて、富津合同マラソン練習会において、最も速いグループの設定タイムは原則として「4分30秒/k」としています。そして、確実に言えることは、その設定タイムはかなり遅いことです。しかし、マラソンに向けた「強固な土台をつくる」ためには、その設定タイムで繰り返し「30kから40kの距離走」を集団で確実に繰り返していく流れにたどり着いたのです。

そして、そのポイントは「ゆとりを持って走り、途中でペースを上げない」ことになります。この設定タイムの距離走が定着するようになってから、富津合同マラソン練習会で走り込む市民ランナーたちのマラソンタイムは確実に短縮されるようになっていきました。具体的な過去のマラソン実績タイムを振り返ると、男女とも2時間40分突破までは確実にこの設定タイムの距離走で到達しています。

「えっ!そんなわけない!」と、信じられないかもしれませんが、この遅い設定タイムの距離走を週末ごとに継続することで、いわゆるスタミナが雪だるま式に蓄積されていくイメージでしょうか。まさに「ゆとりを持って走り込む」。同時に、「どんなコンディション下でも確実に走り切る(走り切れる)」をコンスタントに繰り返す。

至極当然のことですが、マラソントレーニングにおいては、「継続(積み重ね)が最大のポイント」になるのは間違いありません。少なくともこの富津合同マラソン練習会の経験と実績から学んだ、「古くて新しいノウハウ」でもあるのです。

2025夏を走る・10

【2025夏を走る・10】今週の火曜日から2回目の北海道北見強化合宿を実施しております。先月の同強化合宿時は記録的猛暑の中でしたが、今回はかなり涼しく感じます。また、天候も幸い雨や曇りが多く、走り込むには最適なコンディションです(今日時点までは)。

あらためて、8月は実業団選手や箱根駅伝を目指す学生選手たちにとっても、最も走り込む月になるでしょうか。そして、この8月に走った距離は秋以降の駅伝やマラソンの記録や成績に対し、大きな影響を与えることは、実は今も昔も変わりません。

特に、ここ数年は「シューズ革命(カーボン入りシューズの登場)」により、長距離・マラソンの記録が飛躍的にのびました。また、カーボン入りシューズ(バネ入り)を履きこなすために必要な体幹の筋力強化やランニングフォームの矯正に特化したトレーニングもどんどん進化し、老若男女問わずに普及しています。

一方、カーボン入りシューズが登場した当時の勢いは落ち着き、逆にマラソンでは以前のように後半失速する選手たちが増えてきたような気がします。同様に、トラックレースでも何となく記録が頭打ちになってきており、特にコンディションが悪くなったときに失速する選手も多くなってきたような(私の主観)……。もちろん、どの選手もカーボン入りシューズを履いているにもかかわらず……。

そんな中、学生選手たちの記録はどんどん飛躍しており、箱根駅伝をはじめとする各種駅伝の記録はもちろん、冬のマラソンにおいても好記録を叩き出す選手が続出しています。その要因としては、上記したような体幹の筋力強化やランニングフォームを矯正するためのドリルなどを日々徹底しているのも確かですが、特に夏の走り込みが充実しているからではないでしょうか(もちろん、年間を通じても)。

具体的には、純粋に走行距離が飛躍的にのびているのでしょう。カーボン入りシューズを履きこなすためには、それ相応の筋力やランニングフォームは必要ですが、筋力や技術だけで長距離・マラソンを走り切ることはできません。また、体幹の筋力強化やドリル(動きつくり)では、スタミナはつきません。つまり、ランニングフォームが矯正されても長い距離を速く走るには、まずはその距離を完走するためのスタミナが必要なのはいつの時代も変わらないのです。

もちろん、やみくもに「たくさん走れ!」ではありません。実は、スピード練習を科学的に効率よく走ることよりも故障やケガをしないように、走行距離を増やしてスタミナ(体力)をつけていく方が、ノウハウや根気(我慢や継続)がより必要です。

また、長距離・マラソンを走った方なら誰でも感じますが、特に肉体的な苦痛よりも精神的な苦痛が大きく、長い距離(時間)に対する絶望感を感じて途中で挫折するのです。つまり、精神面のスタミナをどのように鍛錬していくかが肉体面のスタミナ強化同様、長距離・マラソンを攻略していく上での大きなカギになるのです。

そして、精神面のスタミナ(肉体面のスタミナも)を強化する最も効率的な方法のひとつが、「その距離(マラソンなど)を繰り返し走ること」と、専門家の話を見聞しても、今も昔も本質は変わらないのです(時代が変わっても長距離・マラソンに必要なスタミナ養成は手間と時間がかかる)。

2025夏を走る・9

【2025夏を走る・9】千葉県も厳しい暑さが続いておりますが、水曜練習会と富津合同マラソン練習会は実施しております。特に、富津合同マラソン練習会は、休日の午前中に実施するので、暑い中での練習会となります。

至極当然のことですが、暑い中で走ることは最も危険な行為のひとつと言っても過言ではありません。ところが、マラソンを目標に走り込んでいるランナーたちにとっては、走らないわけにもいきません。

もちろん、暑さ対策は様々なことを実践していますが、最終的に暑い中でのランニングは個々の暑熱純化(しょねつじゅんか)ができているか否かになります。そこで、暑熱純化についてもう一度簡単にふれておきます。

まずは「暑熱順化」とは、体が暑さに慣れて、熱中症になりにくくなるための生理的適応反応のことを指します(多くの文献や専門家の回答)。たとえば、急に気温が高くなった日や、梅雨明け直後の猛暑日に体調を崩す人が多いのは、この「暑熱順化」がまだ十分にできていないからと言われています(これも多くの文献や専門家の回答)。

次に、暑熱順化ができている体の変化としては、「汗をかきやすくなる(体温調節が効率化)」「汗の中の塩分が減る(ミネラルの損失が減少)」「心拍数の上昇が抑えられる」「体温が上がりにくくなる」「疲れにくくなる」など……。

要は、暑さに慣れることで体の負担が軽減された結果、夏バテや熱中症の予防につながることです。つまり、炎天下の中においてもランニングなどの運動にも耐え得る状態に体が順化することでもあります。

では、暑熱順化の具体的な方法についてですが、これも多くの文献や専門家が回答しているとおり、「軽い有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・自転車など)を、気温が高めの日中または夕方に行うこと(暑い中で運動する)」。

もちろん、個々の体調や体力に合わせることが最優先ですが、「暑さになれるには暑い中で動け(郷に入っては郷に従え)」なのです。この点は、毎年夏合宿を実施している経験からも合致します。また、人の体は過酷な状況に追い込まれても、それに順応していく能力は相当高いと思います(私の経験上)。

先日の富津合同マラソン練習会も、スタート時の気温はすでに30度を超えていましたが、参加者全員が元気に完走していました。あらためて、人の順化能力はすごいと、感じた次第です……。

2025夏を走る・4

【2025夏を走る・4】長野県上田市菅平高原における強化合宿は無事に終了しました。今回は、さすがに前回のような低温になることはなく、日中は逆に平地と変わらないような暑さの中でのトレーニングになりました。

あらためて、ブラインドマラソンの強化合宿拠点は千葉県富津市をメインに、長野県上田市菅平高原と北海道北見市の3ヶ所になります。特に、暑さが厳しくなる5月から8月の間は、比較的涼しい長野県と北海道において走り込みを実施しています。

ところが、いわゆる温暖化の影響なのか、長野県も北海道も気温が30度を超える日が、当たり前になっているのが現状でしょうか。また、朝晩もかつてのような涼しい感じも薄れており、国内ならどこへ行っても同じような暑さになっているとも感じます……。

さて、そんな状況下の強化合宿中でも欠かさないのが、毎朝実施する選手のコンディションチェックがあります。同様に合宿中は、必ず1回は採血をして血液状態を確認しています(長距離・マラソン選手にとって、最も重要な体調管理の目安となる指標が血液検査)。

かくいう私も現役時代、毎月2回は必ず、J大学のT先生(故人)から血液検査を受けていました。もちろん、検査結果を元にT先生のご指導を受けますが、私も現役時代は例外なく貧血気味だったので、いろいろとご指摘を受けました。

そんな中、とても印象に残っていることがあります。それは、私の血液状態が改善された結果を見てのことでした。「安田は、この2週間は練習をさぼっていただろう(落としていただろう)?」と私を問い詰めるのです。

つまり、スポーツ性貧血なので、その貧血が改善されたと言うことは、「逆にトレーニングをさぼっていたから血液状態が良くなった」。別の例えを言うなら、アル中の患者が酒を断つことができれば、アル中は改善されるのと同じ理屈です。

そして、T先生が私によく話していたのは、「科学的トレーニングは数値だけに目が向いて、楽な方へ進んでしまうことが多々ある」。また、本来の科学的トレーニングとは、「科学的な裏付け(数値など)を元に、もっとハードなトレーニングに移行していくことだ」とも話していました。

当時の私はT先生の話を聞いて、まさにぐうの音も出ない状況でした。そして、現役を引退した現在、T先生のご指摘通り、貧血はすっかり改善されています。一方、逆に他の数値は年齢を重ねるごと、順調に悪化しております。

T先生、ありがとう。そして、ごめんなさい……。

2025夏を走る・1

【2025夏を走る・1】いよいよ初夏と言われる季節に入ってきました。毎年のことながら長距離・マラソン選手にとっては、最も過酷な季節に突入していくことにもなります。そして、これも毎年のことですが、個々の体調に合わせた暑熱対策で、これからの暑さを乗り切ってほしいと思います。

さて、あらためて6月に入りましたが、多くの長距離・マラソン選手にとっては「スピード強化」と位置付け、積極的にトラックレースなどを走っていることでしょう。もちろん、ロスパラリンピックを目指しているブラインド選手たちも5月から本格的なトラックシーズンに入りました。

そして、今月7日から宮城県仙台市において「ジャパンパラ陸上競技大会」が開催されます。同大会には、上記したブラインド選手たちも出場し、トラック種目を走ることでマラソンに必要なスピード強化をします。特に、5000mの記録はマラソンの具体的な目標タイムを設定していく上での指針となる重要な記録になります。

詳細は割愛しますが、今大会と来月に出場する5000mで達成した記録を選手ごとに解析していくと、秋以降のマラソンでどの程度の記録が狙えそうなのかを、予測タイム(仮説)として考えることができます。そして、その予測タイム(仮説)をベースに、夏合宿で実施する距離走(30k~40k)などの設定タイムも考えていきます(もちろん、練習中の調子などを加味しながら再検証し、設定タイムなどは都度修正もしますが……)。

すでに何度かこのブログにも記載してきましたが、5000mの記録とマラソンの記録はとても密接な関連性があり、「マラソンで〇時間〇〇分〇〇秒を目指すなら、5000mの記録は〇〇分〇〇秒が必要」と言った記録の方程式も、ほぼ決まっています(それも高い確率で)。

したがって、トラックでのスピード強化と言うのは、マラソンで「〇時間〇〇分〇〇秒」を達成するために不可欠な「5000mの〇〇分〇〇秒」に到達するための強化を指します。つまり、日々実施しているスピード練習(インターバル走やペース走など)も、その5000mの必須タイムに到達するための設定タイム(疾走距離に対する)や、その疾走本数になるのです。

また、「長距離・マラソン選手は年間を通じてオフがない」と言われている理由のひとつが、マラソンは上記したような距離間の密接な関連性もあり、季節ごとにそれぞれの強化をしているからなのです。同時に、秋からのマラソンシーズンに向け、どんなランナーも自己記録を更新したいと考えますが、その目標を達成するためには、「年間計画(期分け)が必要」と言われるゆえんでもあるのです。

あらためて、市民ランナーの皆様もこの時期はトラック(陸上競技場)で実施される競技会や記録会への挑戦を強く推奨します。もちろん、今までトラックを走った経験のないランナーでも気楽に参加できる記録会もあります。また、仲間との定例練習会の中で、トラック記録会(3000mや5000mなど)を実施してみてはいかがでしょうか。秋以降のマラソンで、自己記録を更新できるヒントが必ず見つかります。

2025春を走る・9

【2025春を走る・9】今年もゴールデンウィークに突入しました。そして、今年もこの連休を活用した強化合宿を長野県上田市菅平高原で実施しています。初日の5月2日はあいにくの雨。また、標高も高いので、気温は10度を下回り、真冬に逆戻りしたような悪コンディション下での練習となりました。

そんな中、箱根駅伝に出場している大学チームがペース走を実施していました。冷雨の厳しいコンディションの中でしたが、最後まで集団が大きく崩れることもなく、全員が設定タイム通りに走り切っていました。至極当然のことですが、駅伝やマラソンで勝つためには肉体面のスタミナやスピード強化は不可欠です。

しかし、結果を左右するのは、むしろ精神面(メンタル面)のスタミナや忍耐力などから強い影響を受けているのは今も昔も変わりません。と言いながら冷雨などの厳しいコンディション下での練習をたった1回実施したからと言って、精神力や忍耐力がすぐにアップすることはありません。

したがって、良い体調や良いコンディション下で、質の高い練習を継続するために、あえて悪コンディション下での練習を回避している選手やチームを見かけることもあります。その結果、狙い通りの走力に導いていける確率は高まるかもしれません。

ところが、1年にたった1回しか開催されない箱根駅伝当日に、大雪や台風なみの北風が吹き荒れる最悪のコンディションだったとしたなら、そのレースをあきらめるでしょうか。同様に、オリンピックやパラリンピックは4年に1回しか開催されません。その当日、気温が40度を超える猛暑に見舞われたなら、戦う前にあきらめるでしょうか……。

もちろん、答えは否です。一方、どんな人でも経験のない厳しい状況に立ち向かっていくことは簡単ではないことも、また事実。だからこそ、それを少しでも克服できる方向にもっていく対策も必要です。昨日のような悪天候でも、あえて計画どおりの練習を実施していくことは、実はムダではないとも言えるでしょう。

今の時代、情報が氾濫しており、自分自身では効率的だと信じながら進んできた道が、実は間違っていたと言う事例は枚挙にいとまがありません(特に若い世代?)。だからこそ日々の練習(生活も)では逆に「ムリ、ムラ、ムダ」を経験しておくことも、ときには必要なのかもしれません。

また、「ムリ、ムラ、ムダ」を伴う練習は、特に精神的な苦痛を伴うことが多いのも確かです。そのため、若い選手が自ら進んでそこに飛び込んでいくことは相当難しいとも感じます。だからこそ、ときには厳しい言葉で背中を押してくれるコーチやスタッフ陣も不可欠でしょうか。

そして、そんなことも理由のひとつなのか、箱根駅伝出場チームに30代の監督はほとんどいません。今の時代、SNSなどを駆使して若い世代の心をつかむのは、世代の近い指導者だと考えますが、特に苦しみを伴う長距離やマラソン競技の場合、実はそうでないことが多い……。

もちろん、パワハラやセクハラなどはご法度ですが、時代が変わっても精神的な苦しみを克服していく手段は、あまり変わっていないのかもしれません……。

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