ホーム > タグ > 富津合同練習会

富津合同練習会

2025秋を走る・10

【2025秋を走る・10】11月1日からの3連休は、全国各地でマラソン大会や駅伝大会が目白押しでした。そんな中、11月2日は大阪長居公園において、全国視覚障がい者駅伝大会も開催されました。また、同大会はブラインドランナーたちの駅伝に対する情熱や、関係者のご理解とご支援のおかげで、28回目を開催することができました。あらためて、御礼申し上げます。

さて、11月2日は全日本大学駅伝がテレビ中継されていました。同駅伝は8区間106.8kと、5時間以上も走り続ける駅伝です。しかし、駅伝ファンのひとりとしては、最初から最後まで見入ってしまいます。これが、まさに駅伝の魅力なのでしょう……。

優勝は駒澤大学でしたが、どの大学も力を出し切った素晴らしい駅伝でした。また、各区間においては、2区で区間タイ記録。そして、5区と7区で区間新、8区では日本人区間最高記録と、好記録の多かった駅伝大会だったでしょうか。

それでは、今回も勝手ながらそれらの区間を、1kと5kペースに換算して比較します。

2区は、帝京大学の楠岡選手が「11.1kを31分1秒」。1kと5k換算は「2分48秒と13分58秒」。5区は、駒澤大学の伊藤選手が「12.4kを35分1秒」で「2分49秒と14分7秒」。7区は、青学大の黒田選手が「17.6kを49分31秒」で「2分49秒と14分4秒(ハーフに換算すると59分21秒)」。8区は、早稲田大学の工藤選手が「19.7kを56分54秒」で「2分53秒と14分26秒」。

参考までに上記した4選手が、先月の出雲大学駅伝で残した成績も確認してみました。

楠岡選手は1区で区間3位、「8kを23分36秒」。1kと5k換算は「2分57秒と14分45秒(超スローペースだった)」。伊藤選手は2区で区間2位、「6.2kを17分29秒」で「2分49秒と14分6秒」。黒田選手は6区で区間1位、「10.2kを29分15秒」で「2分52秒と14分20秒」。工藤選手は6区で区間3位、「10.2kを29分48秒」で「2分55秒と14分36秒」。

4選手とも出雲大学駅伝から区間距離が長くなっているにもかかわらず、区間記録が速くなっているのは驚きです(伊藤選手は倍の距離をほぼ同じ)。また、このブログにも記載しましたが、「ひと区間の距離が5kから20k程度までの駅伝においては、その区間距離に関係なく選手の走っているスピードはそれほど変わらない」。

もちろん、一般の市民ランナーは距離が長くなるほど、走るペースは確実に遅くなっていきます。しかし、トレーニング方法によっては上記したような走力(能力)が備わってくる点は事実であり、そこに選手強化の蓄積されたノウハウなどがあるのでしょう……。

2025秋を走る・9

【2025秋を走る・9】季節が秋を飛び越え、一気に冬よりへ移ってきた感じでしょうか。まさに風邪やインフルエンザが猛威を振るう季節にも入ってきました。至極当然のことですが、体調管理には十分注意していきましょう。

さて、いつもの千葉県富津市富津公園において強化合宿を実施しましたが、次のターゲットとなる大会は12月の「防府読売マラソン」です。そして、その大会から逆算すると、今回と11月上旬の強化合宿までは最も走り込む時期に該当します。

あらためて、シューズ革命(カーボン入りシューズの登場)の後は、マラソンの記録は一気に速くなり、そのシューズを履きこなすためのノウハウも蓄積されてきました。したがって、マラソンを攻略するために、月間走行距離を増やしていくような走り込みを否定していくような時期もありました。

ところが、シューズの恩恵も一巡(?)すると、逆にカーボン入りシューズ特有の故障やケガに悩まされるランナーたちも増えてきました。すると、今度は再び「走り込み論」が台頭してきた感もあり、「しっかりと走り込んでマラソンに挑む」従来のスタイルへ回帰しているような……。

要は、カーボン入りシューズに負けない脚力などは、補強運動(筋トレなど)や動きつくり(ドリルなど)でもある程度補えますが、マラソンを走り切るために必要な脚力は走り込んで鍛えていくのが最も効果的だと……。

また、スタミナ(持久力)をアップさせるには、長時間動き続けるしかその攻略方法が見当たらないのも、マラソンの難しいところとも言えるでしょうか(技術的ではない)。つまり、上記したような動きづくりや補強運動を毎日継続し、フォームが改善されたとしても、スタミナが無ければマラソンを走り切ることすらできないのです。

そして、この考え方はいつの時代も変わらず、マラソンを目指した走り込みは「手間と時間」がかかります。また、一度身につけたスタミナも、サボればすぐに抜けていきます。つまり、どんなに速いランナーも、コンスタントに走り込みを継続していないと、マラソンの安定したパフォーマンスは残せないのです。

そこがマラソン競技の残酷な部分でもあり、「誰もが平等にチャレンジできる魅力」でもあるのでしょうか……。

2025秋を走る・8

【2025秋を走る・8】先日の土曜日は箱根駅伝予選会、日曜日はレガシーハーフマラソンと、注目の大会が開催されました。特に、箱根駅伝予選会は今年も天国と地獄が隣り合わせになった厳しいレースでした(安田の感想)。

そして、その箱根駅伝予選会のトップ通過は「中央学院大学」。一方、無念の11位となったのは「法政大学」でした。また、どちらの大学も千葉県富津市富津公園で最後の調整をしていたので、個人的にはどちらの大学も応援していました……。

さて、箱根駅伝予選会終了後、ネットニュースがたくさん掲載されていました。もちろん、中には興味深い内容の記事もありました。特に、中央学院大学の川崎監督のコメントはとても参考になりました(同監督のコメントはいつも参考にしております)。

具体的には、箱根駅伝予選会を攻略するためには必須とも言われている「集団走」を、川崎監督は「今回は選択しなかった」。また、「今の子たちはすきなようにやらせた方がのびのびできる」。同時に、「3番以内通過を目標にするならトップを取るつもりで走れ」とも言い続けていたようです。要は、好きなようにさせながらしっかりと手綱をしめていた。

一方、法政大学の坪田監督は、レース直後のテレビインタビューに対して「たぶん大丈夫」とコメントしてました(私もテレビ中継の中で耳にしました)。もちろん、ゴール地点の中継を拝見していると、そう感じた駅伝ファンの方も多かったのでは……。

川崎監督はご存知のとおり、1985年に順天堂大学を卒業するのと同時に、中央学院大学の常勤助手となり、駅伝部コーチに。そして、1992年監督に就任し、1994年に箱根駅伝へ初出場を果たす。今では同大学を箱根駅伝常連校にまで育て上げた名監督です(今の箱根駅伝においては、数少ない「たたき上げの監督」)。

あらためて、どの大学も箱根駅伝予選会通過を想定した戦略に沿った日々のトレーニングと、予選会通過を想定した当日の戦術で勝負します。その指揮を担う各大学の監督は、想像を絶するプレッシャーを背負いながら挑んでいるに違いありません。

「過去の実績に沿った戦術で挑むのか?」。川崎監督のように、「過去の成功体験を白紙に戻して挑むのか?」。もちろん、どちらの戦術が良し悪しかを決めることはできません。しかし、長く携わってきた人(監督)には、その判断(直感)を正しくできる何かがそなわっているのは確かなようです……。

2025秋を走る・7

【2025秋を走る・7】先日は出雲駅伝が開催され、いよいよ本格的な駅伝シーズンがはじまりました。同時に、マラソンをはじめとする本格的なロードシーズン到来でもあります。

その出雲駅伝ですが、優勝候補にも名を連ねていた國學院大學が安定したチーム力を発揮して優勝。一方、優勝候補の本命とも言われていた青山学院大学や中央大学はその力をうまく発揮することはできませんでしたが、見応えのあるレースでした。

さて、学生の三大駅伝と呼ばれている今回の出雲大学駅伝。そして、11月に開催される全日本大学駅伝。さらに、正月の箱根駅伝と続いていきますが、その全長距離はだんだん長くなっていきます。具体的な全長距離は、出雲大学駅伝が「45.1k」。そして、全日本大学駅伝が「106.8k」となり、箱根駅伝は「217.1k」です。言うまでもなく、まさに約2倍ずつ全長距離がのびていくイメージでしょうか。

では、実際に全長距離の違う出雲大学駅伝の区間記録と箱根駅伝の区間記録は、どの程度違うのでしょうか。もちろん、駅伝はロード競技なので大会ごとにコースやその距離が異なり、単純に比較することはできません。また、1区以外は一斉スタートではないので、2区以降の選手はタスキを受けた順位によっては、区間記録や区間順位にも大きな影響を受けます。

したがって、大会の異なる区間記録を単純に比較することはできません。しかし、区間距離の長さと記録との関係を確認するため、今回は三大駅伝の区間最高記録を比較してみました(各区間とも日本人最高記録を比較)。

まずは、各駅伝の4区にスポットを当ててみました。最初に出雲大学駅伝の4区ですが、その区間距離と区間最高記録は「6.2k=17分20秒」。1kと5kの換算ペースは、「2分48秒と13分59秒」。続いて全日本大学駅伝は、「11.8k=33分3秒」。1kと5kの換算ペースは、「2分48秒と14分00秒」。そして、箱根駅伝は「20.9k=60分24秒」。1kと5kの換算ペースは「2分53秒と14分27秒」。

続いて3区も比較すると、出雲大学駅伝は「8.5k=23分46秒」で「2分48秒と13分59秒」。全日本大学駅伝は「11.9k=33分1秒」で「2分46秒と13分52秒」。箱根駅伝は「21.4k=59分47秒」で「2分48秒と13分58秒」。

あらためて、上記の比較した記録を見て最初に感じるのは、区間距離による記録の優劣差が意外と少ないことでしょうか。これは経験上の話になりますが、ひと区間の距離が5kから20k程度までの駅伝においては、その区間距離に関係なく選手の走っているスピードはそれほど変わらない……。

要は、ロードレース(駅伝など)の場合、距離が短いからと思って最初から突っ込んでも、やはり後半は失速するケースが多く、先日の出雲駅伝でもそんな理由から力を発揮できなかった選手が多かったような……。つまり、選手の心理としては、「距離が短いので最初からガンガン攻める」と強気の姿勢になりますが(最初から力みがある)……。

しかし、現実は最初から突っ込んでも、そのスピードを最後まで維持できる選手は、どの駅伝においてもほとんど見当たらないのが現状でしょうか(詳細は割愛)。昔から駅伝を攻略するポイントとしては、「前半はゆとりを持って入り、中盤は自分のリズムを守って最後にペースアップする」と言われています。実は、シューズ革命による高速化が進んでいる現在の駅伝も、この基本は変わらないと感じた先日の出雲駅伝でした……。

2025秋を走る・6

【2025秋を走る・6】10月も年間計画どおりに強化合宿を実施しておりますが、まだまだ暑ひ日が続いています。特に、ポイント練習を実施した先日の5日と6日は気温が30度前後まで上がり、ほとんど夏合宿に近いようなコンディション下での走り込みとなりました。

特に、5日は距離走、6日はスピード練習(インターバル)と、二日連続のセット練習だったので、どの選手も最後は「根性を見せる」ような状況でした。また、合宿中は毎朝5時30分からコンディションチェック(各種測定など)を実施していますが、セット練習の翌朝となった7日早朝の数値はどの選手も……。

そんなコンディションが続いている中、今回の強化合宿にはM高史さんが、かけつけてくれました。ご存知のとおり、M高史さんは川内優輝選手のモノマネなどで有名ですが、今では執筆活動や各種大会での実況担当(YouTube配信)など、その活躍は多岐にわたり、留まるところを知りません(伴走教室にも積極的)。

さて、そんなM高史さんですが、実は最も力を入れている活動のひとつは、ゲタを使ったエクササイズでしょうか。もちろん、ゲタとはあの履くゲタです。そのゲタを履くことによって、体の重心を体感(確認)しながら正しい姿勢に修正していくのです(簡単に言うと)。

しかし、ゲタと言っても、我々が知っているゲタとは似ているようでかなり違います。そのゲタの形状や種類は様々で、それぞれのゲタごとにエクササイズの目的やポイントが異なります。そして、初めてそれを目にする人にとっては、その種類の多さに驚かされます。

もちろん、M高史さんは、ゲタごとの特性や履き方のポイントなどを全て把握しています。また、今回の強化合宿に持参いただいたゲタ以外にも種類があるとのことでした。

早速、選手たちはそれらのゲタを履いて指導を受けました。特に、視覚障がい選手は「他人の動きを目で見て真似る」ことができません。それは、動きを伴うスポーツなどにとっては致命的なハンディとなります。しかし、ゲタを履くだけで、正しい重心の位置や体重の乗せ方などを把握できるのです。つまり、視覚障がい選手もそのゲタを履くだけで、簡単に重心の位置などを体感し、確認できるのです。

これまで、視覚障がい選手に様々なドリル(動き作りなど)も指導してきましたが、うまく伝わらないケースが多かったのは確かです。しかし今回、M高史さんが推奨する「ゲタのエクササイズ」は、ブラインドマラソン界にも大きな変化をもたらす可能性を秘めていると感じました。

2025秋を走る・5

【2025秋を走る・5】10月に入り、朝晩が涼しくなってきました。少しずつですが、マラソンシーズンに相応しい季節に移ってきたでしょうか。そんな中、千葉県富津市富津公園において「富津合同マラソン練習会」を、いつものように開催しております。

あらためて、同練習会の走り方としては、走力別にいくつかのグループにわかれます。そして、グループごとに設定タイムを変えて、距離走を実施するスタイルです。もちろん、個別の設定タイムに細かく対応できれば良いのですが、そこが難しい課題でもあります。

しかし、このスタイルでの練習会を20年以上も継続していると、それなりに実績やノウハウが蓄積されてきたのも確かです。特に、多くの名コーチと呼ばれた方々のコメントなどにも出てくる、「ゆとりを持って走り込む」。このフレーズがいかに重要で正しいかを証明してきたような練習会でもありました。

もちろん、マラソントレーニングは多岐に渡り、ランナーの数だけ攻略方法は存在すると言っても過言ではありません。しかし、「ゆとりを持って走り込む」ことがどれだけ重要な要素なのかは、繰り返し継続していかないと理解できない点でもあります。

さて、富津合同マラソン練習会において、最も速いグループの設定タイムは原則として「4分30秒/k」としています。そして、確実に言えることは、その設定タイムはかなり遅いことです。しかし、マラソンに向けた「強固な土台をつくる」ためには、その設定タイムで繰り返し「30kから40kの距離走」を集団で確実に繰り返していく流れにたどり着いたのです。

そして、そのポイントは「ゆとりを持って走り、途中でペースを上げない」ことになります。この設定タイムの距離走が定着するようになってから、富津合同マラソン練習会で走り込む市民ランナーたちのマラソンタイムは確実に短縮されるようになっていきました。具体的な過去のマラソン実績タイムを振り返ると、男女とも2時間40分突破までは確実にこの設定タイムの距離走で到達しています。

「えっ!そんなわけない!」と、信じられないかもしれませんが、この遅い設定タイムの距離走を週末ごとに継続することで、いわゆるスタミナが雪だるま式に蓄積されていくイメージでしょうか。まさに「ゆとりを持って走り込む」。同時に、「どんなコンディション下でも確実に走り切る(走り切れる)」をコンスタントに繰り返す。

至極当然のことですが、マラソントレーニングにおいては、「継続(積み重ね)が最大のポイント」になるのは間違いありません。少なくともこの富津合同マラソン練習会の経験と実績から学んだ、「古くて新しいノウハウ」でもあるのです。

2025秋を走る・4

【2025秋を走る・4】手元の温度計では、日中の気温は相変わらず30度前後まで上がりますが、湿度が50%以下に下がってきました。また、朝晩も涼しく感じられるようになってきたでしょうか。

そんな中、日本ブラインドマラソン協会主催の強化合宿を千葉県富津市富津公園において実施しました。そして、これも毎年恒例のことですが、今回の強化合宿から来年の3月までは、この富津で走り込んでいきます。

そしてこの間、12月の防府読売マラソン大会と、来年2月の別府大分毎日マラソン大会の2大会を目標に強化合宿を重ねていきます。まずは、12月の防府読売マラソン大会が最初のターゲットになり、11月前半までの強化合宿においては、距離走(30k~40k)が軸になっていく計画です。

一方、上記したように、多少は涼しくなってきましたが、日中の気温は30度前後と高いので、依然として厳しいコンディションが続いているのは確かです。また、気温が高い日がこの後も続く予報なので、暑熱対策も継続しながら走り込んでいく必要もあります。

もはや、「今年は異常だった」ではなく、暑い夏はずっと続くことが「常態化」していると考え、過去の経験にとらわれない対応も必要になっているとも言えるのでしょう。そして、確実に言えることは、いつの時代もその環境にいち早く順化した選手が、勝ち残っていくことでしょうか。

さて、我々と同じ来年の3月までの富津には、箱根駅伝を目指す学生選手や実業団選手たちが戻ってきます。今回の合宿中も来月の箱根駅伝予選会突破を目指す大学が走り込んでいました。これも毎年のことですが、箱根駅伝予選会までちょうど1ヵ月前後と迫っている時期なので、各大学の練習風景にも緊迫感が漂っています。

もはや箱根駅伝は大学の部活動の域に留まらず、大学としても少子化の中で生き残っていくための経営手段のひとつとして、大きな役割を担っている存在とも言えるでしょう(詳細は割愛)。そんな視点で走り込んでいる各大学を拝見していると、学生選手たちを指導しているスタッフ陣の数や顔ぶれが、年々手厚くなっていると感じます。

もちろん、パラリンピックを目指している我々としても、箱根駅伝の進化に食らい付いていく大学側の強化に対する取組姿勢は、参考にする点が……。

2025秋を走る・3

【2025秋を走る・3】先日の三連休を活用し、千葉県富津市富津公園において練習会のメンバーたちと合宿を実施しました。厳しい残暑の中でしたが、それぞれのペースでしっかりと走り込みができました。

さて、東京世界陸上も開幕し、ちょうど我々の合宿と同じ日程で男女のマラソンも実施され、女子の小林香菜選手が7位入賞と健闘しました。また、個人的にはもっと過酷なコンディションになると思っていましたが、そこまで気温も湿度も上がらなかったように感じました。

また、東京世界陸上で、日本代表選手としてマラソンを走った男女の選手たちは、どの国よりも科学的な最先端の暑熱対策を取り入れ、さらに地の利を生かした戦略と戦術で勝負しましたが……。

あらためて、今回の東京世界陸上はもちろん、オリンピックやパラリンピックなど、国際大会の多くは真夏に開催されることが多く、どの競技や選手たちにとっても「暑熱対策」は必須になります。かくいう私もパラリンピックの視覚障がいマラソン強化に深く関係しているので、夏の暑熱対策は年間スケジュールに必ず組み込んでいます。

近年は、科学的なデータをベースにした様々な対策を取り入れ、それらを試してきました。もちろん、一定の成果もあり、気温が35度を超えるような過酷なコンディション下においても、「40k走」などのハードトレーニングを安全に実施することも可能になりました。

一方、そもそも暑さが苦手な選手がいるのも事実で、どんな対策を講じても夏マラソンをうまく走れない選手がいるのも確かです。もちろん、それぞれが何とか克服しようと努力するのですが、そう簡単なことではありません。

しかし、単純に夏マラソンを無事に完走することが目的であるなら、今の暑熱対策は十分に機能していると言えます。しかし、世界と戦う選手たちは完走することに「速さと強さ」をプラスします。したがって、科学を超えた「我慢や忍耐」を伴う要素も重なってくるので、対策もより複雑です(安田の主観)……。

2028年開催予定のロスオリンピックやパラリンピックも暑い中での勝負は必至です。しかし、それに向けた暑熱対策を試せる夏もあと2回。これまで積み重ねてきた経験やデータをフル活用できるように準備していきます。

2025秋を走る・2

【2025秋を走る・2】日本ブラインドマラソン協会が主催する伴走養成研修会が滋賀県野洲市において開催され、私も講師として参加してきました。今回も多くの熱心な受講者にご参加いただき、充実した研修会を実施することができました。

そして何よりも、実技の会場となった希望が丘文化公園内には陸上競技もあり、視覚障がいランナーたちも安全に走れる環境が整っていました。また、この公園は、滋賀県内を主な活動拠点とし、ブラインドマラソンの普及と発展に大きな貢献をしてきた「びわこタイマーズ」も練習拠点にしています。

そんな素晴らしい環境下で、今回の伴走者養成研修会を無事に実施することができました。まずは厳しい残暑が続く中でしたが、ご参加いただいた皆様、たいへんお疲れさまでした。あらためて、御礼申し上げます。

同様に、研修会の講師として、アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんをはじめ、多くの方のお力添えもありました。重ねて御礼申し上げます。

さて、研修会の実技講習をしているときにいつも感じる点があります。特に、研修会に参加している視覚障がいランナーとその伴走者は、とても楽しそうに走るのですが、そのときに手足がしっかりと合っていない(シンクロしてない)コンビが実に多いことです。

もちろん、どの伴走者も視覚障がいランナーも伴走ロープ(絆)を持って走る際、最も大切なポイントは「手足を合わせる(シンクロさせる)」ことを、十分に理解しているはずなのですが……。

あらためて、人間の習性として「他人のリズムに合わせることが苦手」と、この研修会を通じていつも思ってしまいます。一方、一緒に二人で並走している以外の時間も実に仲が良く、とても楽しそうな時間を共有しているコンビが多いのも確かです。

これまで私が関係してきた視覚障がいランナーは、主にパラリンピックなどでメダル獲得を目標に走ることが何よりも優先されてきました。もちろん、伴走者も……。したがって、視覚障がいマラソンを速く走るための優先順位としては「伴走の技術(+走力)」が第一になります。つまり、まずはお互いがしっかりとシンクロして走っているか否かです。

ところが、今回のような研修会に参加される方の多くは、「楽しく生き生きと走る」ことが第一で、伴走の技術はほとんど気にしない(気の合う人と走りたい)。とても極端な見方になっていますが、要はどちらが良いか悪いかではなく、どんなスポーツも「強化と普及」は車の両輪として必ずセットで考えます。したがって、両方とも大切なことは確かなのですが……。

今回の伴走養成研修会も、私自身がいろいろと考える良い機会になったのも確かでした……。

2025秋を走る・1

【2025秋を走る・1】猛暑の中での開催も懸念されていた今年の「北海道マラソン」でしたが、当日の気温は30度を超えることなく、無事に終了しました。また、今年も視覚障がいの部を実施いただき、パラリンピックを目指す強化指定選手はもちろん、一般の視覚障がいランナーたちも多数出場することができました。

まずは、大会関係者のご理解とご尽力に対し、あらためて御礼申し上げます。

さて、今大会は「MGCシリーズ2025-26(男子G2/女子G2)」に指定された大会でした。したがって、「2時間12分00秒以内で日本人男子3位以内、2時間32分00秒以内で日本人女子3位以内」の選手には、ロサンゼルス五輪マラソンの最終選考会となる「MGC」の出場権が与えられます。

果たして結果は……。

男子は上位3選手が2時間12分を突破。女子は上位2選手が2時間32分を突破し、男女5名の選手が、MGCの出場権を獲得しました。そのレースは男女ともMGC出場設定タイムを突破できるか否か、ギリギリのタイムを維持しながらゴールまで競い合う展開となりました。

特に、男子の3位に入賞した選手は2時間11分59秒でゴールし、女子の2位に入賞した選手は2時間31分57秒でゴール。ともにあと数秒遅ければ、MGCを逃していた本当にギリギリのタイムでした。

また、同大会のコースは、ゴールに向かう最後の直線道路が数百メートル続きます。したがって、最後のゴールはトラックを走るコースよりもスパートのタイミングなどがつかみにくく、最後の数秒を押し込むのは難しい……(安田の主観)。

そんな中、最後のスパートで、その数秒を押し込んだ粘り強さは称賛に値します。そして、これも私の主観になりますが、42.195kを走ってきて「2時間59分59秒」でゴールするとか、自己記録を「1秒更新」するなど、最後の粘り(押し込む力)で、目の前の壁を突破できる選手は、本当に勝負強いと感じます。

今大会もゴール地点で選手たちの帰りを待っていましたが、その「数秒を押し込む力」は、久々に「手に汗握る」ゴールシーンでした。一方、視覚障がい選手たちもよく健闘しましたが、MGCを獲得した選手たちのような粘り強さは少し欠けていました……。

しかし、ロサンゼルスパラリンピックを目指す上で、最も重要な課題を確認することができた大会であった点は、逆に収穫でもありました。

※おかげさまで、今回の投稿でこのブログも900号となりました(1回/週の投稿)。

Home > Tags > 富津合同練習会

Search
Feeds

ページの先頭へ