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春を走る

2024春を走る・2

【2024春を走る・2】パリ五輪男女マラソンの日本代表選手が決まりました。マラソンファンのひとりとして、どの選手も万全の調子でスタートラインに立てることを祈念しております。

今回のパリ五輪のマラソン日本代表を決める選考方法は、前回の東京五輪から採用したMGC方式でした。いわゆるMGCで上位2選手を決定し、残り1枠は設定タイムを優先する選考方法です。つまり、強い2選手と速い1選手を選考するようなイメージでしょうか。

また、五輪は夏に開催されるので、特にマラソンは過酷を極めます。つまり、速さよりも強さや安定感が求められます。したがって、MGC方式によるマラソン代表選考は、理にかなっているとも言えます。

その結果、東京五輪の男子は大迫選手が6位、女子は一山選手が8位と、男女ともに入賞。ところが、入賞した両選手ともMGCでは選考されず、その後のタイムで選考された選手でした(大迫選手はMGCでも3位)。

パリ五輪に向けた今回のMGC方式による代表選考は、MGCから男子3選手、女子が2選手選考され、設定タイムによる選考からは女子1選手が選考されました。8月のパリ五輪マラソンでどんな走りを披露してくれるかは誰にもわかりませんが、あらためて万全の体調で当日を迎えてほしいと願っております。

さて、同じパリで開催されるパリパラのブラインドマラソン日本代表推薦選考についてです。実はWPAの不手際などもあり、要は世界ランキング上位者から選考されます(詳細に説明することは難しいので割愛します)。

もちろん、原則として一国からの出場は最大3名(3枠)と決まっていますが、前述したとおり、パリパラ出場枠は世界ランキング上位者から振り与えられます。したがって、日本人1位としても、世界ランキングが10位だった場合、パリパラへのキップを手にすることは難しく、日本人のマラソン代表は「0」になる可能性があります。

実は現時点において、パリパラのブラインドマラソンに出場できない可能性もあり、まさに崖っぷちの状況に追い込まれています。そして、残すチャンスは4月に開催される「かすみがうらマラソン大会」のみとなりました。

逆に言えば、誰にでも出場チャンスが残っている状況です。ここから最後の調整に入っていきますが、どの選手も万全の状態に仕上げ、果敢に挑んでほしいと願っております。

2024春を走る・1

【2024春を走る・1】先週の水曜日からパリパラリンピック・マラソンコース視察のため、フランスパリへ……。そして、本日無事に帰国しました。まずは、関係者のご支援とご協力に心より御礼申し上げます。

さて、羽田空港からフランスパリ・シャルルドゴール空港までは、14時間のフライトでした。時差は日本から見るとマイナス8時間となり、日本がお昼の12時だとすると、パリは朝の4時になります。

今回のパリ視察に参加したメンバーは、ブラインドマラソン男女の主力メンバーと、そのガイドランナー及びスタッフでした。また、コースの映像を記録して頂くために、その専門スタッフにも帯同頂き、万全の準備で現地入りしました。

もちろん、JTB様のご協力もあり、現地ではジャンボタクシーと現地スタッフ(日本人)の方にもコース案内などをお願いし、しっかりとコース視察を実施することができました(2日間かけてじっくりと)。さらに、3月3日の午後からは、凱旋門周辺道路の歩行者天国を活用し、最後の勝負どころとなる石畳のアップダウンも試走することができました。

また、その3月3日の午前中は現地で開催された「パリ2024ハーフマラソン大会(※)」に参加し、パリ市内の路面状況や雰囲気をそれぞれが実走しながら確認することもできました。(※このハーフマラソンとパリパラマラソンコースは被っていませんが、近くを走るので路面状況などは、ほとんど同じ。)

視察前は、「パリパラリンピックは9月なのに、2月から3月の渡航で意味があるのか?」など、不安視する声もありました。しかし、現地入りし、実際にコースをじっくりと確認することで、路面状況の確認はもちろん、パリパラリンピックに向けたトレーニング対策などもイメージすることができました。まさに「百聞は一見に如かず」でした。

個人的には、パリパラで8回目のパラリンピックになります。その都度、マラソンコースの下見や試走などは実施してきましたが、今回ほどクオリティが高く、充実した視察は初めてでした。もちろん、今回の視察で得た様々な情報と、これまでの経験などを掛け合わせ、パリパラマラソン当日までのトレーニングを立案していきます。

2023春を走る・13

【2023春を走る・13】第65回東日本実業団陸上選手権大会が栃木県の「カンセキスタジアムとちぎ」において開催されました。そして、今大会も男女視覚障がいの部(1500mと5000m)を実施いただきました。まずは大会関係者の皆様に御礼申し上げます。

視覚障がい男子5000mは、東京パラT12男子マラソン・銅メダリストの堀越選手と、東京パラT11男子5000m・銅メダリストの和田選手の直接対決となりました。結果は、3000mから先頭に立った堀越選手がそのまま大会新記録でゴール。

また、同じレースでT11クラスの米岡選手とT12クラスの大石選手が、それぞれセカンド記録をマーク。気温が高く、湿度も高い中での5000mでしたが、どの選手も暑さや湿度に負けることなく、最後までしっかりとしたフォームでゴールしていました。

引き続き、6月の「2023ジャパンパラ陸上」と、7月の「ホクレンディスタンス」でのトラックレースが残っているので、トラック種目での自己記録更新を目標に強化していきます。

さて、すでに何度も記載していますが、マラソンのスピード基準のひとつが「5000m」です。グラフに例えると、縦軸がスピードで横軸が持久力です。この時期は縦軸のスピード強化をメインにしているので、縦軸を可能な限り、上へのばそうとしているイメージです。

最終的には、上記した縦軸の到達点と横軸の到達点で囲った四角形の面積がマラソンに必要な走力(スピード持久力)になるイメージです。このように言葉で言うと簡単にイメージできますが、実際の練習ではそう簡単にいかないのがマラソンです。

人の体は、縦軸のスピードを上へのばしていくと、横軸のスタミナは右から左(0方向)へと縮んでいきます。逆に、横軸のスタミナを右へのばしていくと、縦軸のスピードは下(0方向)へ落ちていく傾向があるので、四角形の面積を簡単に広げることはできません。

つまり、スピード練習だけではマラソンに必要な走力は身につかない。逆に走り込みだけでもマラソンに必要な走力は身につかない。この縦軸と横軸の「いい塩梅」を、つかみながら四角形の面積を大きくしていけるか否かが、マラソン攻略のカギになると考えます(イメージとして)。

第65回 東日本実業団陸上競技選手権大会【トラック競技 5/21】 – YouTube

2023春を走る・12

【2023春を走る・12】福島県会津若松市において開催された伴走者養成研修会のお手伝いをしてきました。今回の研修会も伴走に関すること、視覚障がいに関することなどの講義と、視覚障がい者に対する介助や伴走の実技からなる2本立ての内容でした。また、今回は視覚障がいランナーの参加者も多く、どの参加者も熱心に受講していました。

あらためて、視覚障がい者が歩いたり、走ったりするには、横でエスコートする伴走者が必要になります(単独行動が可能な弱視の方は除く)。そして、その伴走者の役目は「安全の確保」であり、何よりもこれが最優先されます。

もちろん、伴走者は誰でも簡単にできるので、難しく考える必要はありません。実際に、各種マラソン大会では、視覚障がいランナーが伴走者と一緒に走っている姿を目にすることは一般的な光景になりました。それだけ全国各地にも普及し、視覚障がいランナーに対する垣根が無くなってきた点は、たいへん喜ばしいことです。

一方、正しい伴走ができていないケースを拝見することが多いのも確かです。よくあるケースのひとつとして、伴走者の方が記録や順位への気持ちが先行し、最後は「気合と根性」で視覚障がいランナーを強引に走らせている姿は、意外に多いと感じます。

また、そんな姿を拝見していると、単に「気合と根性」だけでなく、伴走者としての技術や知識が不足しているがゆえに、視覚障がいランナーは単に苦しいだけで、自身の力を出し切れていないことが多いのです。これは、パラリンピックなどの国際大会を目指している視覚障がいランナーの伴走者にも該当することです。

かくいう私も25年以上、ブラインドマラソン(パラ陸上)の国際大会などに帯同してきましたが、伴走者の要因で視覚障がい選手が失格や途中棄権に陥った事例は、私が把握しているだけでも両手では足りません。また、その要因を振り返っていくと、そのほとんどが伴走者の「技術と知識不足」に起因するのです。

今回の伴走者養成研修会で、誰よりも私自身が刺激を受けましたが、来年のパリパラを目指している視覚障がいランナーやその伴走者たちにも、伴走などに関する「知識と技術」の学びなおしが必須であると、強く感じた次第です……。

最後になりましたが、今回の伴走者養成研修会の開催にご尽力いただいた地元関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

2023春を走る・11

【2023春を走る・10】GW中に実施した菅平合宿は無事に終了しました。もちろん、計画していた練習はほぼ予定どおりに消化することができましたが、合宿後半は天候が崩れ、気温も著しく低下しました。

具体的には、合宿前半は平地と変わらないほど気温も上昇し、練習時の気温は手元で25度を超えていました。また、朝晩の冷え込みも例年ほどではなく、逆に快適な感じでした。しかし、週間天気予報どおり、合宿中盤から天気が下り坂に入り、練習時の気温も15度以下に……。

そして、最終日の練習時は、手元の気温は5度。更に強い寒風が吹き荒れ、体感温度は0度相当まで下がっていました。さすがに、ここまで下がると、練習にも支障をきたすことになり、実際の練習計画も修正しました。

このように、寒暖の差が大きい今年のGW合宿でしたが、途中で離脱する選手(故障やケガ)が皆無だった点は良かったです。また、新しくなった「きずな家」の皆様は、とても快適な環境を提供してくれました。

さて、毎年のことですが、GW中の菅平合宿は必ず実業団選手や学生選手たちの姿があります。案の定、トラックでは今年も国内トップ選手たちが揃って走り込んでいました。もちろん、これも毎年のことですが、とても参考になります。

最初は単に、洗礼されたそのフォームばかりに目がいきます。しかし、疾走タイムやリカバリータイムなどを確認しながら拝見していると、「理にかなった練習」の意味が見えてきます。

詳細は割愛しますが、「最初から最後まで決めた設定タイム(適正タイム)で走り切る」。これは誰もが意識してる基本中の基本に該当することですが、実はこれが練習の中では最も難しく、これをつかめていないがゆえに記録も停滞します。

毎年、菅平高原で拝見するトップ選手たちは、このシンプルなことを確実に実行し、継続しています。つまり、「量が多い練習は設定タイムを落とし、量が少ない練習は設定タイムを上げて、最後まで確実にやり遂げる」。実にシンプルなことです。

これから夏に向かって、気温や湿度が高くなっていきます。長距離やマラソンにとっては厳しい季節に移っていきますが、菅平合宿で拝見したトップ選手たちの練習を参考にしながら個々の適正タイムで走り込んでいきます。

2023春を走る・10

【2023春を走る・10】今年も長野県上田市菅平高原において強化合宿を実施することができます。また、同地の合宿拠点として20数年来お世話になってきた福美津屋旅館は、「きずな家」に引き継がれることに……。そして、来年のパリパラに向け、さらに強固なサポート体制が構築されることにもなりました。

今回の菅平合宿は、トラックでのトレーニングになります。つまり、スピード練習はもちろん、ペース走や距離走、ロングジョグに至るまでの全てをトラックにおいて実施します。また、菅平高原は準高地と呼ばれる標高もあるので、それぞれの設定タイムも抑え気味になります。

ところが、準高地と言っても呼吸が乱れ、思うような走りが難しくなる選手もおり、うまく順応できない選手もいます。このように、専門的な文献に掲載されているデータなどを参考にしても、実際の練習現場においてはそれらとの相違が多々発生するので、やはり経験を重ね、独自のデータを蓄積していくことが最重要です。

また、今回は強化指定女子選手がほぼ揃い、久々に活気のある強化合宿となります。もちろん、ガイドランナーや強化スタッフも揃っているので、単に走り込むだけでなく、大いに語り合える良い機会にもなります。至極当然のことですが、お互いを知ることで、そこに化学反応がおこります。

「そんな考え方があったのか!」

それぞれが地元で日々継続している練習の中において、何かうまくかみ合わないことは誰にでもあります。しかし、お互いをさらけ出し、様々な角度から語り合うことで、意外と腑に落ちる考え方のヒントを得ることがあります。

同じ目標を持った仲間同士が集い、切磋琢磨する最大のメリットは、まさにそこかもしれません。我々の強化合宿の目的のひとつに、「仲間意識の見える化」がありますが、新しい「きずな家」にふさわしい最初の強化合宿となります……。

2023春を走る・9

【2023春を走る・9】今年もGWがやってきます。そして、今年もGWは強化合宿を実施します。場所が長野県上田市菅平高原なのも、いつもと変わりません。また、すでにトラックシーズンに入っていますが、ブラインドマラソン選手の多くは4月までマラソンを走るので、この合宿からトラックシーズンにシフトしていくのも、例年通りです。

あらためて言うまでもありませんが、マラソンを目指す上でトラックレースを欠かすことはできません。いわゆるスピード強化と言われる部分に該当するからです。しかし、やみくもにスピード練習やトラックレースを走るだけでは、マラソンにはつながりません。

なぜならトラック種目の5000m(5k)や10000m(10k)と、マラソンのタイムには密接な関係があり、目標のマラソンタイムを達成するために必要なそれらの必須タイムが存在するからです。詳細は割愛しますが、マラソンで、あるタイムを目標にした場合、それに必要な5000mや10000mのタイムがあります。そして、その5000mや10000mのタイムに到達するためのトラック練習が、いわゆるマラソンに必要な個々のスピード練習に該当するのです。

そして、この5000mや10000mのタイムをクリアしているのに、目標のマラソンタイムに到達できない選手はスタミナが不足している(スピードタイプ)。逆に、目標のマラソンタイムを達成しているのに、トラックの必須タイムに到達していない選手は、スピードが不足しているとも言えます(スタミナタイプ)。もちろん、そう単純な話ではありませんが、ひとつの目安として捉えることはできます(私の経験上)。

しかし、この関係をよく理解していない選手は意外に多く、スピードがあるのにマラソンをうまく走れない。逆に、マラソンを走れるスタミナがあるのにトラックレースでは苦手意識が先行してしまう選手など、「もったいない」と感じるケースが多いのは確かです。

特に、5000mのタイムはマラソンに必要なスピード練習の基準となるので、それに該当するタイムを個々に確認しておくことは必須です。今回の菅平合宿においてはこの点も含め、個々の課題などを確認し、どの選手も7月前半までのトラックレースを、充実させてほしいと願っております……。

2023春を走る・8

【2023春を走る・8】かすみがうらマラソン大会は無事に実施されました。いわゆるコロナの影響がここ数年続きましたが、久々に本来の姿での開催となりました。まずは、大会開催にご尽力いただいた関係者の皆様に御礼申し上げます。

さて、大会当日の天候ですが、スタート時は曇っていました。しかし、晴れ間が出てくると、気温がグングン上昇し、男子の先頭が30kを過ぎたあたりに差し掛かると、手元で27度を超えていました。さらに湿度も60%前後。

そんな過酷なコンディションでしたが、ブラインドマラソンの主力選手たちは経験豊富なところを存分に発揮し、ほぼ予定どおりのタイムでゴール。これにより、来年開催されるパリパラへつながる道筋も見えてきたことが、大きな収穫となりました。

また、今回は期待の若手男子選手が初マラソンに挑戦し、設定タイムどおりにゴールすることができました。もちろん、今後の課題はたくさんありますが、今の力を誰よりも自分自身が理解し、それに見合ったラップタイムを最後まで刻めた点は次につながります。

特に初マラソンの場合、想定したタイムと大きく乖離すると、2回目以降のマラソンで苦労することになります。詳細は割愛しますが、これは予想よりも良過ぎたタイムにも言えます。最近はシューズの性能が格段にアップしたこともあり、初マラソンから好タイムをマークする選手が増えてきました。しかし、その選手たちの多くが2回目以降のマラソンでは……。

今回、初マラソンに挑んだその男子選手は、今月から社会人になったばかりでしたが、新しい環境にもうまく順応している様子だった点も成功につながった要因でした。しかし、マラソンを目標にした練習量とそれに伴う練習時間は想像以上に多く、目に見える成果を手にするまでには相応の期間が必須です。

したがって、逆により良い環境を求めて転職したり、チームを移籍する選手が比較的多い競技と感じます。しかし、良い環境と考えて移っても、その環境に自分自身が順応できなければ、記録や結果にはつながりません。

ここで言う環境と言うのは、単なる練習環境や待遇面ではありません。選手が最も影響を受けるのは「人間関係」と「生活環境(日常生活)」でしょうか(私の経験上)。今回、初マラソンに挑んだ男子選手も、じっくりと今の環境に溶け込ませながら根気よく走り込ませていきます。

2023春を走る・7

【2023春を走る・7】今年度最初のターゲットとなる「かすみがうらマラソン大会」が、明日となりました。昨年の夏以降、調子を落としていた主力選手たちもようやく底を打ち、その調子が戻ってきているところです。

さて、今大会は「国際クラス分け」を実施しております。その実施についての詳細は割愛しますが、視覚障がいマラソンはもちろん、パラスポーツの中において最も重要な決め事は、この「国際クラス分け」です。これは、障がいの程度が競技の成績に影響しないよう、障がいの程度ごとに区分しているものです。

特に、パラリンピックについては、予めこの国際クラス分けの判定を受けていないと、出場することはできません。もちろん、記録も公認にはなりません。また、クラス分けの規則は競技ごとに異なります。

パラリンピックで採用されている競技は、IPC(国際パラリンピック委員会)が決めた「国際クラス分け基準」に準じて、規則が定められています。そして、国際クラス分けの判定は、「クラシファイヤー」と呼ばれる資格(医師免許とは違う)を有している人が判定をします。

パラリンピックの場合、IPC公認の「国際クラシファイヤー」の資格を有した人しかクラス分けの判定をすることができません。したがって、国内のクラス分けを受けていても、パラリンピックに出場することはできないのです。

このように、パラスポーツはどんな障がいの方でもスポーツを楽しめる反面、公式な国際大会を目指すレベルに達してくると、この「国際クラス分け」の問題に必ず直面することになります。

参考までに視覚障がいマラソンの場合、障がいの重たい方から「T11、T12、T13」と3つのクラスに分かれています。また、障がいの軽いクラスの選手が、障がいの重いクラスで一緒に競技を競うこと(T12クラスの選手がT11クラスで競技するなど)は、原則としてできません。

しかし、逆のケースは許可されることがあり、パラリンピックにおいての視覚障がいマラソンは、T12クラスのみの実施となっていますが、T11クラスの選手も一緒に走ることができます(T13クラスはマラソンに出場できない)。

つまり、自分が得意としている種目(100mや砲丸投げなど)だったとしても、パラリンピックでは障がいのクラスによって実施されない種目であることも多々あります。

パラリンピックなどの国際大会を目指している選手たちは、この「国際クラス分け」を十分に理解し、自分自身の専門種目が実施されるか否かについても、予め確認しておく必要があるのです。

2023春を走る・6

【2023春を走る・6】新年度初日からいつもの千葉県富津市において強化合宿を実施しました。また、新年度最初の目標となる「かすみがうらマラソン大会」のちょうど2週間前と言うこともあり、練習内容も調整メイン(量を落として質を上げていく)で実施しました。

さて、昨年は東京パラ翌年となりましたが、代表選手たちはそのときの調子を維持したまま強化合宿を消化していきました。その結果、トラック種目での自己記録更新やマラソンでも好調をキープする選手が多く、逆に驚いていました。

ところが、昨年の夏を境に好調をキープしていた代表選手たちは、足並みを揃えるように調子を落としていきました(詳細は割愛します)。最初は「少し休めばよい」と、それぞれに話をしていましたが、まともに走れない状態のまま2023年を迎えてしまいました。

もちろん、調子が戻らない選手自身の焦る気持ちは手に取るように伝わってきますが、さすがに「これはまずい」と、私の方も焦っていきました……。

そんな状況下での強化合宿でしたが、久々に主力選手たちがほぼ揃い、懸念していた調子もようやく上向きに転じていることを確認することができました。至極当然のことですが、どんなに強い選手でも必ず好不調の波があり、ケガや故障もします。

「もっと速くなりたい!もっと強くなりたい!」

そして、どんな選手もその思いに突き動かされ、日々の苦しい練習を耐え抜きます。その結果、目標の記録や成績に到達したときの達成感は何物にも代えがたく、何よりも次の目標に向け、さらに苦しい練習に耐え得る動機付けにつながります。

また、人には欲があり、良かったときほど「もっと上を」と、どんな選手も指導者も前向きにコメントします。しかし、その瞬間から落とし穴があることが多く、練習の強度を少し上げただけなのに、疲労の抜け具合などが微妙に変化し、やがて大きなケガや故障に結び付くケースは多いのです。かくいう私も、同じような状況を繰り返してきました(コーチとしても)。

「迷ったら休養」

まずは今月の「かすみがうらマラソン大会」ですが、来年のパリパラに向けてもこの言葉を忘れないように……。

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