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2012-01

ロンドンパラリンピックへの道・5

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2012年の今年は、いよいよロンドンオリンピックの年となりました。そして、オリンピックの後は、パラリンピックが同地において開催されます。また、このイギリスはパラリンピック(障害者スポーツ)発祥の地でもあり、今回のロンドンパラリンピックはより素晴らしい大会になると期待されています。

さて、そのロンドンパラリンピック日本代表を目指す視覚障害者選手と共に1月27日(金)から1月29日(日)の日程で、千葉県富津市において強化合宿を実施しました。また、今回の強化合宿は日本身障陸連が主催し、参加した選手はT11クラス(全盲)の和田選手、T12クラス(弱視)から岡村選手と堀越選手の計3名です。

3選手とも既にロンドンパラリンピック参加A標準記録を突破しております。しかし、ロンドンパラリンピックの日本代表選手に選出されるか否かの決定は、今年の6月以降となります。したがって、日本代表争いはかつてない厳しさが予想され、単にA標準記録を突破しているだけでは日本代表に選出されるのは難しい状況と言えます。

具体的には各種目の世界ランキングを目安に、メダル獲得や上位入賞争いにより近い記録を残していくことが、重要なポイントになってくると考えます。今回の合宿に参加した3選手とも、その点は十分に理解しており、積極的な姿勢で合宿に挑んでいました。

また、今回の合宿は日本身障陸連トレーナー部会からトレーナーの全日程帯同が実現しました。そして、トレーナーには日々の体調管理をお願いしたのはもちろんですが、特に腹筋や背筋のある体幹部についての筋力測定や強化の方法やポイントを指導していただきました。

私も現役時代そうでしたが、ランナーの多くはただ単にまっすぐ一定のペースで走り続けることが多いので、柔軟性や筋力がかたよっていく傾向にあります。その結果、慢性的な疲労や故障を抱える選手が多くなり、トレーニングの量や質を上げてもパフォーマンスが逆に低下していく、負の連鎖に陥っていく選手は多いと感じます。

もちろん、今回の合宿で指導いただいた様々なことが、ストレートに記録や成績に結びつくことは難しいと思います。しかし、自分自身の身体を違う視点から考えたり、評価していくことで、記録を短縮するためのヒントを得たに違いありません。

ところが、一方で3選手とも競技歴を重ねており、初心者のように分単位で記録を短縮することは、現実的には難しくなってきています。だからこそ、「あと1秒を短縮する」ための工夫や新しいトレーニング方法を取り込んでいくことも選択肢のひとつになります。そして同時に、それらを柔軟に対応できる決断や勇気も重要になり、これからはメンタル的な部分を強化していくことも必要不可欠になっていきます。

ロンドンパラリンピックに向け、皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願いします。

つづく。

期分け・36

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今回から実際のマラソンを走る上で、目標タイムに対してどんな設定ラップタイムで走っていくかを考えていきます。

既にご存知のとおり、マラソンはスタートしたら単純にゴールを目指すシンプルなスポーツですが、ゴールを目指す走法についてはいくつかのパターンがあります。はじめにそのパターンをあげてみます。

◆パターン1).イーブンペース型:単純に1k毎の目標ラップタイムを守ってゴールまで淡々と一定ペースで走るパターン。◆パターン2).前半突っ込み型:前半のハーフを速めに通過し、後半は失速しながらも走り切るパターン。◆パターン3).後半ビルドアップ型:前半のハーフを抑え気味に通過し、後半のハーフをペースアップしながらゴールするパターン。

主なパターンは上記3つになりますが、どんなレベルの選手が走っても必ずどれかに当てはまる至極当然のパターンです。

ところが、どのパターンが自分自身に最も適しているかをしっかりと自己分析できているランナーは驚くほど少ないと感じます。もちろん、出場する大会毎にコンディションやレース展開は違います。そのため自分自身に合うパターンを見つけることは、難しいことでもあります。

さて、皆さんはどのパターンが得意でしょうか?

それでは上記パターンについて、それぞれを詳しく考えていきますが、はじめに最近の傾向について考えてみます。※但し、テレビ中継のあるエリートマラソンについてです。

この時期は、ほぼ週末毎にマラソンのテレビ中継があります。そして、どの大会もペースメーカーがレースを先導します。ペースの目安として男子は1kを3分、女子は3分25秒あたりでしょうか。

これを上記パターンに当てはめると、パターン1のイーブンペース型になります。しかし、ペースメーカーは25kから30kあたりで役目を終えます。したがって、そこからが本当の勝負です。つまり、そこからがマラソン競争となり、パターン3の後半ビルドアップ型へとなるはずですが、大会によってはそこから大きく失速してパターン2へと陥ることも多々あります。

特に国内の大会では、ペースメーカーが離れた後、ペースが上がらずパターン2となるマラソン大会の方が多いような感じさえ受けます。もちろん、その理由は様々ですが、レース展開が走っているランナーの走力や走法にマッチングしていないことが大きな原因と感じます。

しかし、最も効率のよさそうなイーブンペース型で走っているにも関わらず好記録ラッシュに結びつかないところが、マラソンの難しさでもあります。そして同時に、目標の記録をどのような走法で攻略していくかは、とても重要なポイントであると考えます。

つづく。

期分け・35

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今回も「マラソン期」で実際にマラソンを走る際の目標タイムやそれに伴う数字(タイム)について考えていきます。

前回もふれましたが、マラソンを走る前にほとんどのランナーは目標タイムを設定します。そして同時に、目標タイムに対し、1k毎の通過設定タイムや5k毎の通過設定タイムに関しては、ほとんどのランナーが確認します。ところが、10kや15kの通過設定タイム、更には25kや35kの通過設定タイムになると、逆にほとんどのランナーは確認及び把握していないケースの方が多いと感じます。

もちろん、1k毎の目標ペースをスタートからゴールまでキッチリと刻める走力やペース感覚の優れたランナーなら全く問題ありません。ところが、実際のマラソンレースでそれを実行するのは簡単なことではありません。

なぜなら、実際のマラソンレースでは、走力や目標タイムの違う数千人から数万人のランナーが一斉にスタートします。その結果、他のランナーに惑わされる可能性が高くなるからです。特に、スタート直後から10k前後あたりまでは人波が凄く、自分自身のペースを維持していくことは事実上困難な状況と言えます。※マラソンは「1対1」の勝負ではなく、「1対他」の勝負となります。

同様に、大会主催者側が準備しているペースメーカーのいるグループについたとしても、そのペースメーカーを務めているランナーがペースを一定に刻める保障もありません。つまり、前半のペースが遅れた場合や速すぎた場合、ペースメーカーの判断でペースの上げ下げを必ず実施します。

そのため、目標タイムに対する5kの設定タイムはキープできたとしても、その間の1k毎にペースの上げ下げをするケースが多々あり、走力の伴っていないランナーはそのペースの変化で力を使い切ってしまいます。

ところが、このとき自分自身の目標タイムに対する各ポイントの通過設定タイムをしっかりと把握していたとします。すると、そのペースの変化を身体(感覚)だけでなく、自分自身の時計を目で見て確認し、実際の数字(タイム)として頭の中で正確な判断ができます。

このような話しをすると「そんなことは当たり前」と、誰もが言います。しかし、実際のマラソンレースではペースが速すぎたり遅すぎたりしていることを正確な数字(タイム)として把握できず、最終的には自滅するパターンが意外と多いのです。

つづく。

期分け・34

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ここまで長々と「期分けシリーズ」を連載してきましたが、いよいよ狙ったマラソンを走る「マラソン期」について考えていきます。

はじめに、ここまでの期分けを簡単に振り返っておきます。

◆スピード養成期:4月~7月 → ◆第1次走り込み期(基礎体力養成期):8月~9月 → ◆第1次走り込み期(スピード持久力養成期):10月~11月 → ◆調整期:11月~12月 → ◆マラソン期:11月~1月。・・・以上のような流れとなります。そして更に、それぞれの期について考えてきました。※期間(月)については目安です。

もちろん、毎度のことですが、上記の期分けが絶対ではありません。なぜなら、市民ランナーの多くは実業団選手(プロ)や学生選手のようにランニングを軸にした生活スタイルを継続していくことが難しいからです。したがって、それぞれがそれぞれの仕事や生活スタイルに合わせた流れ(期分け)を構築していくことが重要なポイントになります。

一方で、マラソンは球技のようなスポーツと違い道具を使いません。そのため、ランニングに上手い下手はありません。また、別の見方をすると、バッティングセンターで素人が140キロの速球を偶然打ち返すことはできても、マラソン4時間のランナーが運よく2時間10分で走れることは絶対にあり得ません。

つまり、いかなる理由があったとしても「走ること」を継続していかないと、マラソンを攻略していくことはできません。更に、目標のマラソンに向けて必要不可欠なことは、それぞれの走力やレベルに合ったトレーニング計画であり、期分けなのです。

さて、前置きが長くなりましたが、ここまで上記の期分けを通じて計画的なトレーニングを考えてきました。そして、いよいよ目標のマラソンに挑戦する「マラソン期」です。

今更言うことでもありませんが、狙ったマラソン前の睡眠時間や食事内容については、どんなレベルのランナーでも気を使います。また、当日のコンディションに合わせた暑さや寒さ対策、シューズ等についても考えます。同じく、レース中の給水対策に至っては、既にランナーにとって常識です。

ところが、意外と盲点になることがあります。それは、目標タイムの設定やペース配分についての数字です。具体的には、目標タイムが3時間突破のランナーなら、「4分15秒/kペース」で目標を達成できることは、どんなランナーでも把握しています。

しかし、3時間突破をするための15k通過予定タイムや25k通過予定タイムになると、ほとんどのランナーは答えることができません。そして、実際のマラソンでスタートから「4分15秒/kペース」が乱れると・・・。

次回はこの点を掘り下げていきます。

つづく。

期分け・33

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新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、毎年のことですが、お正月三が日は「駅伝観戦」と、決めつけている方々も多かったと思いますが、いかがだったでしょうか?かくいう私も駅伝三昧の三日間でした・・・。

今年のお正月三が日は天候にも恵まれ、「ニューイヤー駅伝」、「箱根駅伝」ともに好記録が続出し、見ごたえのある駅伝でした。特に、どちらの駅伝も優勝したチームの安定した走りが目をひきました。具体的には、各区間に配置された選手たちがブレーキも無くそれぞれの役割を見事に全うし、予定どおりの力を出し切ったその「調整力」に驚きました。

駅伝はマラソンと違いチームで競い合います。しかも、区間毎の距離やコースの起伏等が全て異なります。同時に、スタート時間も全区間異なるので、区間毎に起床時間から食事時間、更にはウォーミングアップ等の流れに至るまで全てが異なります。

このように駅伝は、区間毎にまるで違うレースが展開されます。更に、それらをチームの目標に向けてひとつに合わせていくことは、本当に至難の業です。今回、ふたつの駅伝では、その調整力の差がそのままチーム順位に現れ、あらためて調整(ピーキング)の重要性を見せつけられる思いがしました。

また、正月の駅伝を目指している選手たちも春にはトラックレースを走り、夏には走り込みを実施します。ところが、1万メートルの平均タイムを短縮したとしても、夏の走り込みが計画どおり積めたとしても、最後の調整期間で勝負の明暗が分かれます。

この点は、マラソンを目指している市民ランナーの人たちも全く同じです。

マラソンは駅伝のように区間毎にスタート時間が異なったり、同じ大会で別々なコースを走ることはありません。しかし、マラソンも大会毎によってスタート時間が異なります。同じくコースの特性も違います。それらの点は駅伝もマラソンも同じであり、駅伝からのノウハウをマラソンに活かすことは可能です。

例として、箱根駅伝の1区を走るランナーは8時のスタート時間に合わせて夜中の2時から3時には起床し、体調を整えます。同様に、早朝9時より早い時間にスタートするマラソン大会だったとしたなら起床時間や食事等のノウハウはもちろん、早朝に体調を合わせていく調整方法は参考になります。また、アップダウンの多い区間を走る選手のトレーニング方法や調整方法は、起伏の多いマラソンコース攻略にも応用できるはずです。

このように、正月の駅伝を攻略したチームや選手たちの調整方法については、マラソンを目指す市民ランナーにとっても参考になると考えます。また、これから新聞や雑誌、ネット等で正月の駅伝を制したチームや選手たちの記事を目にする機会が増えてきます。是非ともそのコメントを注視し、調整方法のヒントを学んでほしいと思います。

つづく。

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