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2012-08

ロンドンパラリンピック・2

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【ロンドンパラリンピック・2】ロンドン入りしてほぼ1週間が経過し、こちらの生活にも慣れてきました。おかげ様で、ここまでは選手及び伴走者共々大きなトラブルも無くほぼ順調です。また、マラソンの試走も数回実施し、路面状況やアップダウンやコーナー個所等も、ある程度把握することができました。もちろん、マラソンスタート当日までに、まだ何度か試走を予定しています。

さて、パラリンピックをはじめ国際大会に参加すると、日々刻々と新しい情報が入り、情報収集はとても大切になってきます。特に、選手に直結する競技のタイムテーブルについては、現地での最終調整に大きく影響するので、とても敏感になります。事実、選手村に入ってから競技のタイムテーブルに大きな変更がありました。

◆変更点1).T11クラス(全盲)/1500m:予選+準決勝+決勝=計3本 → 予選+決勝=計2本。◆変更点2).T11クラス(全盲)/5000m:予選+決勝=計2本 → 決勝=計1本。◆変更点3).T12クラス(弱視)/5000m:予選+決勝=計2本 → 決勝=計1本。

以上のように、それぞれの予選や準決勝が割愛され、レースの本数が減りました。これにより、全盲の和田選手、弱視の岡村選手と堀越選手のレースは少なくなり、タイムテーブルも変更になります。

一見すると、本数が減ることで身体への負担が軽減されるので良いように感じます。実際に全盲の和田選手と弱視の岡村選手にとっては、最終日にマラソンが控えているので、今回の変更はプラスに受け取ることができます。

ところが、トラック種目の5000mのみにエントリーを絞って勝負をかけている弱視の堀越選手にとっては、若干状況が違ってきます。具体的には、現地に入って10日程度の間に5000mを2本(予選+決勝)走る調整計画だったのを1本に修正するからです。

既にこのブログでも記載していますが、最終調整の原則は、「迷ったら休養」です。しかし、今回のように、10日間の短いスパンで調子のピークを2回合わせる流れを1回に変更することは、意外と難しい修正になります。特に今回は、予選を走ることで現地に入ってからの調子を正確に把握することと、大会の雰囲気やトラックの状態を確認し、決勝へ向けたピーキングの精度をより確実にしたかったからです。

また、今回のようにレースを組込んでのピーキングは、予定していたレースが無くなった場合の代替えとなるトレーニングの選択はとても難しく、今回もかなり悩み、選手自身も迷います。ところが、上記しているように「迷ったら休養」とはいきません。なぜなら、今回のように短期間の調整スパンでは、それ相応の負荷を身体にかけておかないと、調子のピークが大幅にズレ、修正が極めて難しくなる可能性が高いからです。

と、言いながら通常のトレーニング感覚で追い込み過ぎることはご法度です。ここのサジ加減は、どんな有名なコーチでも悩むところですが、最後は選手自身が自ら決断し、「大丈夫」と思い込むことが大切です。同時に、4年に1回のこの大舞台で、ここまで蓄えてきた力を全て出し切れるよう、選手及び伴走者をサポートしていきます。

つづく。

ロンドンパラリンピック・1

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【ロンドンパラリンピック・1】12時間の長いフライトを経て8月23日、ロンドンパラリンピックの選手村に無事到着しました。いよいよこの4年間の努力を試すときが訪れました。

あらためて皆様方のご声援をよろしくお願いします。

さて、一夜明けた24日から本格的な選手村での生活がスタートしました。パラリンピックのような長期遠征で重要なことは、いかにして日本にいるときと同じような生活リズムを崩さないようにしながら体調を維持、向上させていくかです。

そのためには、一日も早く選手村の環境に慣れることと、3度の食事を確実にとっていくことです。まずはこの2つが最も重要項目となり、入村して最初のハードルとなります。

24日の早朝6時30分から早速、立位長距離マラソンチーム全員で選手村内をゆっくりジョギングしました。実は、長距離選手はトレーニングの一環として選手村内をジョギングしながら様々な施設や住居地との位置関係等をどの選手や関係者よりも早く把握することができます。これは長距離選手の特権でもあります(笑)。

今回の選手村は、私の感覚的な比較となりますが、前回の北京パラリンピックの2/3程度の大きさで、コンパクトにまとまった印象です。そのため、選手村の様々な場所に移動する負担が少なく、逆に機能的です。今更ながら、どんどん規模や内容が拡大しているオリンピックやパラリンピックですが、今回のロンドンは様々な意味で本来の原点に戻していこうとする流れを感じます。

続いて、食事についてですが、これについても全く問題なく、素晴らしい内容です。ロンドンの皆様方にはたいへん失礼な言い方ですが、ロンドンの食事については、悪い方のイメージを持っていましたので、とても安心しました。

さて、本日は早速、スタッフのみでマラソンコースの試走に行ってきました。特に、今回のように早い段階での試走が可能になったのも、私の知人で現地に留学している木島氏のご理解とご協力によるものです。彼女には、我々がロンドン入りする前から何度もコースのチェックをお願いし、マラソンコースを熟知していただきました。そのため本日の試走はとてもスムーズに実施することができました。あらためて感謝申し上げます。

そのコースについてですが、残念ながらかなり厳しい印象です。これから選手及びガイドランナーたちも試走を実施しますが、試走の回数を増やす必要があり、本番までに不安を払拭していきます。

つづく。

期分け・49

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【期分け・49】前回は、スピードトレーニングとセットで実施していくことで、効果が期待できるトレーニングとして「LSD」を紹介しました。既に何度かこのブログでも取り上げていますが、あらためて「LSD」について説明します。

LSDとはどんなトレーニングか?

これについては、「ゆっくり長く走る」と、ランナーなら一度は耳にしたとがあり、誰もが知っていることと思います。※心拍数を上げずに長時間走り続ける。

LSDの目的は?

主に2つの目的があげられます。◆目的1).ゆっくり長く走ることで体内の毛細血管を発達させ、全身の筋持久力を向上させる。◆目的2).ゆっくり長く走ることで体脂肪を燃焼させ、マラソン向きのスリムな身体をつくる。

LSDの方法は?

これについても、「ゆっくり長く走る」ことは、誰もが理解しています。ところが、「ゆっくり」とはどんなペースなのかまでは、意外と把握していません。もちろん、このペースについては個々の走力や体力に大きく影響します。また、心拍数で管理する方法もあり、とらえ方は様々ですが、最もわかり易く誰もが実践しやすい目安としては、シンプルに「会話のできるペース」となります。

同時に、「長く」についても個々の走力によって様々で、30分程度の初心者から2時間以上走り続けることが可能なベテランまでと、かなり幅はあります。しかし、LSDで最も重要なポイントは、心拍数を上げ過ぎずに走り続けることです。これにより初心者や走力のないランナーでも長時間走り続ける(動き続ける)ことが可能となり、上記したような効果が期待できます。

さて、LSDについて簡単に説明しましたが、至極当然のことながら多くのランナーは上記のことを頭では理解できます。ところが、市民ランナーはもちろん、実業団ランナー(プロ)でもこの「ゆっくり長く」を実践することが苦手なランナーは、意外に多いと感じます。

その理由として、実は子供のころから「ゆっくり長く走る」経験や機会はほとんどないことが、ひとつの要因と感じます。特に、「ゆっくり走る」方法を学ぶ機会はほとんどなく、小学生の各種マラソン大会を見ていても、どんなに遅い子供でも「前半突っ込み型」の走りとなっています。※前回の「期分け・48」で記載した点もあります。

したがって、ランニングブームに伴いマラソンに挑戦した市民ランナーの多くは、小学生時代から経験してきた「前半突っ込み型」の走法が身についている傾向が強いと感じます。そのため、最初からゆっくり長く走る「LSD」がうまくできないランナーを多く見受けます。

更に、「前半突っ込み型」の走法が身についているためか、最初から飛ばしていく「スピードトレーニングを多く取り入れた方がマラソンのタイムも短縮できる」と、考えるランナーも多いと感じます。

ところが、スピードトレーニングを消化していくだけの体力や走力が不足しているため、逆に怪我や故障につながるケースが後を絶ちません。そこで、それを防止するためにも上記した「LSD」を組み合わせたトレーニングが必要不可欠になるのです。

話しが遠まわしになりましたが、皆さんはいかがでしょうか?

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・13

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【ロンドンパラリンピックへの道・13】先日の8月3日(金)から8月5日(日)にかけ長野県菅平高原において、ロンドンパラリンピック強化合宿を実施しました。今回の合宿はロンドンパラリンピックに向けた最後の合同合宿でした。

さて、現在開催中のロンドンオリンピックも後半に入ってきましたが、何よりも日本選手の活躍が目を引きます。それに対し、偉そうなコメントはできませんが、競技団体毎に長期展望に立った計画的な強化や最先端の技術を駆使した成果であることに違いありません。そして、それ以上に狙ったレースや対戦に調子を合わせる「ピーキング」の精度に驚きます。

過去のオリンピックを振り返ってみても、「自己新だったらメダルがとれた」とか、「怪我が無ければメダルだった」等、「タラ、レバ」のコメントに終始する姿が多かったように感じます。しかし、今回のオリンピックは逆に劣勢な下馬評を覆し、見事にメダルを獲得しているシーンが多く、たくさんの勇気や感動を与えています。

そして、そのオリンピック後に開幕するパラリンピックも1ヵ月弱に迫ってきました。オリンピックで熱戦を繰り広げている日本代表選手のように、素晴らしいパフォーマンスをあの大舞台で発揮するための重要な最終調整期に入っていきます。

同時に、狙ったところに調子を合わせるピーキングに移っていきますが、その難しさは誰もが感じているところであり、ここからが本当の勝負です。ピーキングについては、あらためて説明するまでもありませんが、肉体的な部分よりメンタル的な部分に大きく影響を受けると、少なくとも私は感じます。

その具体例として、大会1週間前に突然猛練習を実施したり、日ごろ受けたことのない新しい治療やサプリメントを試したりと、どんな種目の選手でも狙った大会が近づくにしたがって、大なり小なり精神的に不安定な状況に陥っていきます。その結果、調子や体調を崩し、あるいは大きな故障をしたりと、取り返しのつかない状況に追い込まれるケースは意外と多いのです。※私は「不安症候群」と呼んでいます。

そんなメンタル的には不安定な時期に入りましたが、今回の菅平合宿では選手毎にトレーニング内容や設定タイムに相違があり、それぞれが個々の調整時期に入っていきました。もちろん、この合宿そのものに参加せず、独自のトレーニング計画に沿って調整している選手もいます。

具体的な合宿の内容として、弱視の岡村選手は最後の40k走に挑み、全盲の和田選手は逆に質を重視した内容にシフトしていました。また、この合宿に参加しなかった代表選手たちもそれぞれの計画に沿ったトレーニングをキッチリと消化しております。

このように、それぞれが自分自身の調整計画に沿って淡々と消化していくことこそが重要です。これからロンドンパラリンピックに向け、周囲からの期待やプレッシャーをうまく受け流しつつ、いつもと変わらぬ調整を貫いてほしいと願っています。

そして、最終調整期のポイントは、「迷ったら休養」です。

最後になりましたが、あらためて皆様方の絶大なるご声援をお願い申し上げます。

おわり。

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