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2011-08

期分け・19

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今回は、「ゆっくり長く」の「長く」を考えます。

実は、この「長く」は各自の走歴や体力、目標としているマラソンのタイム等によってかなりのバラツキがでる部分です。具体的には初心者の場合、「まずは30分以上走ってみよう」となりますが、マラソンの完走が目標なら「60分以上走り続ける」ことが最低限の目安とも言われています。

同様に、ある程度の走力や体力が身に付き、マラソンも何度か経験してより高い記録を目標にしてくると、1回で走る時間を更に増やしていく必要がでてきます。しかし、この「長く」のはっきりとした定義はなく、今言われている時間の多くは、これまで多くのマラソンランナーが試行錯誤してきた経験値が支配的と感じます。

もちろん、今回の「ゆっくり長く」だけでなく、多くのマラソントレーニングは長い歴史の中で、多くのマラソンランナーが試行錯誤してきた経験や自らの身体を駆使しながら新しいトレーニング方法に挑戦して後世に残してきたものです。そして、それらのトレーニング方法を裏付けるために運動生理学の研究等が・・・。

それでは話しを「長く」に戻し、具体的な時間を考えると、私の経験も含めて「2時間」あたりがひとつの目安となってきます。実は、各種国際マラソンに出場するエリートランナーたちが「30kの壁」とか「35kの壁」と言った表現をします。また、この距離を時間に換算すると、スタートしておよそ「2時間」に相当します。※例として2時間は、1kを4分00秒ペースで走ると30k地点となり、3分30秒ペースで走ると35k前後となります。

このように1年間365日すべてをマラソントレーニングに当てているようなエリートランナーでもスタミナが枯渇してくるひとつの目安が、2時間となるケースが多いと感じます。余談ですが、世界の男子マラソンは2時間の壁にかなり近づいてきたので、「スタミナ切れをおこす前にゴールできる?」。もちろん、今の常識ではあり得ない発想ですが、今後はそんな研究をする人も出てくるかもしれません・・・。

さて、皆さんの「長い」とは、どの程度でしょうか?

ゆっくり長く走ろうと、スタートしたところ90分をこえるあたりからスタミナが枯渇し、2時間前後で動けなくなった経験はないでしょうか?

また、2時間が基礎体力を養成するのに適切な時間か否かについては、様々な考えもありますが、次回はその2時間についてもう少し考えていきます。

つづく。

期分け・18

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今回から「ゆっくり長く走る」について考えていきます。

はじめに、「ゆっくり」とは、どの程度のスピードなのでしょうか?

また、「長く」とは、どの程度の時間なのでしょうか?

実は、この2点の明確な定義については、少なくとも私自身はこれまで見たことも聞いたこともありません。したがって、具体的な数値を示し、必ずこのペースでこの時間を走り続けなさいと、言い切ることもできません。

・・・と、最初から無責任な言い方になりましたが、実は速く走るより、ゆっくり長く走る方が難しい面もあります。そのため、マラソンに向いてるかの判断をする材料として、単独でゆっくり長く走れるか否かを判断基準にしている指導者は意外と多く、もちろん私もその点は目安のひとつにしています。

では、話しを元に戻し、「ゆっくり」のペースについてですが、上記したとおり、明確な定義はありません。また、心拍数で管理する方法もありますが、今回は私の経験から数値で表してみます。

◆ゆっくりペースの目安 ≒ マラソンペース×1.5倍以上

具体例として、マラソンをサブスリーで走れるランナーの場合、1kペースは4分15秒になります。そのペースを1.5倍すると6分22秒となり、このペースより遅いペースが「ゆっくり」の目安になります。そして、このペースはサブスリーランナーにとって、仲間と会話をしながら走れるペースとなります。つまり、ゆっくりの目安は、「楽しく会話ができるペース」とも言えます。

更に、もう少し初心者レベルのランナーを例にとり、マラソンのタイムが6時間をこえる場合で考えてみます。この場合、1kのペースは8分30秒前後になります。そして、そのペースを1.5倍すると、12分40秒以上となります・・・。お気付きになったと思いますが、このペースはウォーキングのペースと変わらなくなります。即ち、マラソンのタイムが6時間をこえるようなランナーがゆっくり長く走ることは、長く歩くことと同じであるとも言えます。

このように、各自のゆっくりペースを計算していくと、ランニングペースがウォーキングペースと交錯するランナーもいます。いずれにしろ「ゆっくり」とは「楽しく会話ができるペース」であることを、ひとつの目安にしてほしいと思います。

次回は、「長く」について考えていきます。

つづく。

期分け・17

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今回も「基礎体力養成期(8月~9月上旬)」についてです。

既に大まかな流れについては話していますが、この期は「ゆっくり長く」がキーワードになります。具体的には、距離より時間です。即ち、「何キロ走る」から「何時間(分)走る」へのシフトです。その大きな理由は、気温や湿度が高い中で走り込みを実施する場合、距離を目標に一定のペースを保ちながら走ることが難しいからです。

例として、私がコーチする市民ランナーの中にはサブスリー達成者が多数います。そのランナーたちが30k以上のペース走を実施する場合、設定ペースは1kあたり4分30秒からが標準的な設定ペースと位置付けています。

ところが、この暑い8月にその設定ペースでペース走を実施すると、至極当然のことながら中盤あたりからペースを保つことが難しくなってきます。原因は言うまでもなく、気温と湿度が高いからです。そこで、更に設定ペースを落として走ればと考えます。実際に1kあたり30秒落とし、5分00秒ペースで走ると何とか走り切ることができます。

しかし、ここで新たな問題が出てきます。それは、設定ペースを落とし過ぎることで、11月のマラソンで目標記録にしているペースと大きくかい離することです。具体的には、次の「スピード持久力養成期」に移行した際、狙った設定ペースで30k以上のペース走が難しくなるランナーが・・・。もちろん私の経験上の話しが主なので全てのランナーに当てはまりませんが、設定ペースを落とし過ぎてペース走を実施する場合、自分自身が持っているペース感覚が遅い方へぶれるランナーが意外と多くなるのです。

・・・と、長々と説明してきましたが、暑い中でキッチリと設定ペースを守り、計画どおりの距離を走り込んでいくことはとても難しいのです。そして何より、苦しんだ割には身体に疲労を蓄積させるだけになり、精神的なストレスをためこむ結果にもなります。

このように、8月の暑い中での無理なペース走は個人差もありますが、マイナス面の方が多いのです。

そこでこの基礎体力養成期では、自らを設定ペースや距離のストレスから解放させ、「ゆっくり長く」をモットーに走り込んでいきます。更に、ゆっくり長く走ることは、長距離ランナーに必要不可欠な毛細血管網の発達を促進させます。実は、長距離ランナーの速さや強さを決める要素のひとつが、肺から取り込んだ酸素を身体の隅々まで運ぶ毛細血管網にあります。※専門的な話しは割愛します。

それは、この基礎体力養成期でゆっくり長く走ることが、11月のマラソンに必要不可欠な長距離ランナーとしての身体つくりにつながるのです。

つづく。

期分け・16

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前回は、「第1次走り込み期」を大きく二つに分けました。そして、今回からはその前半にあたる「基礎体力養成期」について考えていきます。

既にこのブログでも何度か夏の走り込みについて考えてきましたが、今回の基礎体力養成期についても大きく変わることはありません。実は、1年で最も暑いこの時期と反対に最も寒い時期のことを陸上競技では鍛錬期とも呼んでいます。即ち、最も暑い8月とその前後の月と、最も寒い2月とその前後の月は自分の種目に必要な基礎体力を養成する期間と、多くの陸上選手は位置付けています。

そしてこの期間は、短距離選手も積極的な走り込みを重ね、同時に筋力をアップさせるようなトレーニングを集中的に実施します。もちろん、同じ走り込みでも長距離選手のような走り込みとは異なりますが・・・。そのため、8月の暑い時期は涼しい場所へ移動し、2月の寒い時期は暖かい場所へと移動しての合宿形式のトレーニングが多くなります。

ところが、マラソンを目指している選手にとって、2月はマラソンやロードレースのシーズンにあたります。そのため、基礎体力を養成できる期間は8月とその前後の月だけとなります。そして、マラソンを目指している選手にとっての基礎体力を養成するトレーニングは、もちろん走り込みが中心となります。

このように、基礎体力養成期にあたる8月とその前後の月は、単に11月のマラソンを目指した走り込みだけでなく、1年間をしっかりと走り切るための土台を構築する最も重要な期間とも言えます。

一方で、7月から8月は1年間で最も気温や湿度が高く、ランニングには最も適さない季節であることも違いありません。そのため、この暑い時期を逆に休養にあてる市民ランナーも多く見受けます。この考え方は、運動生理学的に言えば正しいのかもしれませんが、暑い季節を避けて9月から走り込みを開始した場合、はたして秋や冬のマラソンで狙った結果を残せるのでしょうか?

私の経験上の話しになりますが、答えは「NO」です。その理由はいくつかありますが、最も大きな理由のひとつは暑さを避けた結果、暑さや湿度に対する「暑熱順化」ができていない点です。詳細は割愛しますが、暑い時期にじっくりと汗をかくような走り込みを積み重ねてこなかった結果、9月以降の厳しい残暑で夏バテや脱水症状に・・・。

特に、ここ数年は温暖化の影響で11月のマラソン大会にも関わらず気温が20度をこえるケースも珍しくなくなりました。つまり、夏の暑い時期を休養にあてたランナーは、9月以降の走り込みやレースで残暑による暑さの影響を受け易くなります。

また、走力や出場する大会のレベルは全く違いますが、実業団選手(プロ)や箱根駅伝を目指す学生選手においても、実は同様のことが言えます。つまり、秋や冬の各種大会で不調な選手の原因を突き詰めていくと、その年の夏を計画どおりに走り込めなかったことが大きな要因となっている選手は多いのです。

このように、8月を軸にした基礎体力養成期は秋のマラソンに向け、とても重要な期であると・・・。

つづく。

期分け・15

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いよいよ今年も8月に突入です。そして、第1次マラソン期(11月中旬~12月上旬)に向けた本格的な走り込みをスタートさせる時期になってきました。今回からその第1次走り込み期にあたる8月から10月の走り込みについて考えていきます。

はじめに、期分け的に言えば「第1次走り込み期」となりますが、もう少し細分化して考えた方が理解し易いのと、実行し易くなります。そこで実際に細分化し、次のように分けます。

◆8月~9月上旬:基礎体力養成期。◆9月中旬~10月下旬:スピード持久力養成期。

以上のように大きく二つに分けることで、走り込みの具体的な目的や内容がより明確になります。もちろん毎度のことですが、期分けの呼び方や期分けの月割りや期間等については、各自それぞれのスタイルで全く問題ありません。同時に、トレーニングの流れやパターンについても絶対はありません。これまでの経験や実績のある人は、自分自身が積み重ねてきたデータをより重視していくようにしましょう。

では、続いて細分化したそれぞれの期について簡単な説明をしておきます。

◆基礎体力養成期(8月~9月上旬):ゆっくり長く走ることが基本となります。具体的にはペースを意識せず、走行距離でなく走行時間を目安に走り込んでいきます。もちろん、距離走やペース走を実施しても問題ありませんが、ペースを落としてじっくりと、スタミナをを蓄えていくイメージで走り込んでいくことがひとつのポイントになります。したがって、涼しい高原での開放的な走り込みや、登山(トレイルラン)をうまく活用することは全身持久力を養成するためにも効果的なトレーニングのひとつとなります。

◆スピード持久力養成期(9月中旬~10月下旬):目標とするマラソンの記録を意識したペース走や距離走が中心の走り込みとなります。そのため、距離表示の正確なコースやトラックでのペース走が重要なポイントになります。また、この時期に10kからハーフマラソンのレースをうまく活用することはペース感覚を養成することにもつながり、とても有効的なトレーニングとなります。そして、この期では目標のペースで確実に走り切るためのスピードも要求されてくるので、ひとつひとつのポイント練習(ペース走や距離走)に対する集中力が、とても重要になってきます。

次回からは、基礎体力養成期について考えていきます。

つづく。

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