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2012-05

期分け・43

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前回は、10kを40分で走れる市民ランナーを例にマラソンの目標タイムを考えました。具体的には、10kの記録に持久係数をかけた数値です。

至極当然のことながらマラソンは距離が長く、走っている時間も長い競技です。そのため、自分自身の目標タイムを目指すための設定ペースを決めることは難しく、多くの市民ランナーは、貯金を作ろうと前半をとばし、その反動で後半は大きく失速する「前半突っ込み型」に陥るケースは後を絶ちません。

一方で、スタート時の混雑や偶然ペースに乗れなかった結果、逆に後半に入りペースが自然とアップしてゴールするパターンも見受けます。この場合、実は後半失速したケース以上に、後半ペースアップした理由を見つけることは難しく、次のレースで再現することは実業団選手(プロ)を持ってしても難しいと感じます。

そのため、持久係数を活用して目標タイムを導き、その設定ペースで少なくとも30k過ぎまでペースを守ることは、マラソンを攻略する有効な方法のひとつと考えます。

さて、前置きが長くなりましたが、今回は上記方法でマラソンを走り、その結果から次回以降のマラソンに向けて、どのようにトレーニング方法を構築していくかを考えていきます。

はじめに、30k地点をさかいにどのようなパターンでゴールしたかをあげてみます。

◆ゴールパターン1).30k手前で失速し、ゴール手前では歩く程度まで大きくペースダウン。◆ゴールパターン2).30k過ぎからややペースダウンしたが、後半ハーフが前半ハーフに対し、4%以内の失速に踏みとどまった。◆ゴールパターン3).30k以降は、どんどんペースアップしながらゴール。

主に3つのゴールパターンにわかれますが、理想はゴールパターン2です。※このブログの「期分け・38」を参照下さい。

しかし、ほとんどの市民ランナーは、このゴールパターン2を体得するまで相当数のマラソン経験が必要となります。少なくとも私の指導経験からはそのように感じます。同時に、多くの市民ランナーはゴールパターン1のケースが多く、特に男性市民ランナーに多く見受けられます。

逆に、女性市民ランナーの方は、前半を用心しながら走るケースが多く、30k以降にペースアップするゴールパターン3は意外に多いと感じます。

次回は、それぞれのゴールパターンから次のマラソンにつながる具体的なトレーニング方法を考えていきます。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・9

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ロンドンオリンピック日本代表選手を目指している国内トップクラスの選手達が多数出場する伝統の「第54回東日本実業団陸上競技選手権大会」が、埼玉県熊谷市で開催されました。

そして、この大会プログラムに初めて「視覚障害者1500m」の部を組み込んでいただきました。このような一般のメジャー大会の中で視覚障害者種目が一緒に実施されることは、国内ではほとんど例がありません。あらためて関係各位のご理解ご尽力に感謝申し上げます。

さて、今回の視覚障害者1500mには、男子選手7名、女子選手1名の視覚障害者選手が出場しました。そして、男子選手については7選手中6選手が、日本盲人マラソン協会の強化指定選手です。これまで地道に強化してきた成果を一般の方々にもアピールできる絶好のチャンスでもあります。

結果は、その6選手全員が5分以内でゴールし、上位6位までを占めることができました。特に、2位と3位でゴールした全盲クラスの和田選手と谷口選手は、ロンドンパラリンピック参加A標準記録である4分38秒00を突破する4分24秒10と4分32秒33でのゴールでした。

残念ながら、今回の記録はロンドンパラリンピックの公式記録に該当しませんが、オリンピックを目指している多数の選手や関係者が注視する前で力を発揮できたことは、大きな自信となったに違いありません。

また、このブログでも取り上げてきましたが、視覚障害者選手が伴走者と一緒に並走する姿は迫力があります。特に、スピード感のあるトラックでのレースはなおさらです。そんな勇姿を披露できたことは、単に視覚障害者1500mと言う種目だけでなく、障害者スポーツを理解していただく意味でも意義深いことでした。

参考までに、和田選手の公式自己ベスト記録は、4分26秒84です。この記録が現在の日本記録ですが、和田選手は非公式ながら今年の4月に4分20秒90で走っています。このレベルに到達してくると、日々のトレーニングを含め伴走者の確保が最大の悩みとなってきます。

しかし、世界に目を向けると、和田選手と同じ全盲クラスの世界記録は、ブラジルのサントス選手がつい先日マークした4分2秒97と、驚異的です。この世界との差を少しでも短縮するため、今回の貴重な経験を選手と共に、今後のトレーニングとレースに活かしていく所存です。

引き続き、皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

期分け・42

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前回同様、マラソンの走り方についてですが、今回も「後半ペースダウン型(スローダウン)」について考えていきます。前回は、同じ後半ペースダウン型でも中間点をさかいに大きく失速する「前半突っ込み型(後半失速)」について記載しました。

実は、実業団選手(プロ)をもってしてもこの走法になってしまうランナーは実に多く、決しておすすめできる走法ではありません。もちろん、様々な走法もありますが、やはり30k前後までは目標タイムを狙ったラップタイムを刻めないと次回以降のマラソンにもつながりません。特に、これから初マラソンやマラソン経験が極端に少ない市民ランナーの場合、マラソンの目標タイムを自ら予測し、自ら設定することは相当難しいと言えます。

では、マラソンの目標タイムはどのように決めればよいのでしょうか?

そのヒントは、「持久係数」にあります。このブログでも何度か取り上げていますが、10kやハーフマラソンの記録を基準にその何倍でマラソンを走れるかの係数です。個人的には10kの記録を基準にした持久係数の方が、マラソンの回数を重ねていくほどより精度が増してくると感じます。したがって、今回も10kのタイムを基準に話しをすすめます。

はじめに、ある程度マラソン経験を積んで、トレーニングも確立しているランナーのケースです。この場合、10kの記録に対し、持久係数は概ね4.5倍から4.8倍程度の範囲にマラソンの記録も到達していきます。

具体例として、10kを40分で走れる市民ランナーのケースを計算してみます。◆計算1).持久係数4.5の場合=40分×4.5=3時間00分00秒。◆計算2).持久係数4.8の場合=40分×4.8=3時間12分00秒。

この市民ランナーの場合、3時間00分から3時間12分の間がマラソンの目標タイムとなります。余談になりますが、サブスリーを目指すには、10kのタイムは最低でも40分を突破しておくことが重要な要素であるとも言えそうですね。

次に、初マラソンも含め、マラソン経験の少ない市民ランナーの場合です。これについても10kの記録を基準に計算していきますが、持久係数は若干変わります。もちろん個人差もありますが、持久係数は4.9から5.0程度に修正して考えます。その主な理由として、初めてでも30k前後までは確実に目標タイムを狙ったラップタイムを刻んでいけるようにするためです。

では、上記した例と同じく10kを40分で走れる市民ランナーを例に計算してみます。◆計算3).持久係数4.9の場合=40分×4.9=3時間16分00秒。◆計算4).持久係数5.0の場合=40分×5.0=3時間20分00秒。

このように同じ40分で走れる市民ランナーでも初マラソンやそれに準ずる場合、持久係数を少し大きくして目標タイムも下方修正した方が賢明です。もちろん、中間点前で失速するような「前半突っ込み型(後半失速)」を回避する狙いもありますが、場当たり的で雑なレース展開になり難いので、次回以降のマラソンに向け、課題や対策もより具体的に振りかえることが可能となります。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・8

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GW後半の5月3日から5月5日の日程で、盲人マラソン強化合宿を実施しました。場所は千葉県富津市富津公園です。この富津公園で強化合宿を実施するようになって早7年目となりました。この富津公園は既にご存知のとおり、箱根駅伝を目指す大学やオリンピックを目指している実業団チームも多数拠点にしています。そんな富津で我々も強化合宿できることをとても誇りに感じております。

あらためて、富津の方々をはじめ関係各位のご理解ご協力に対し、心より感謝申し上げます。

さて、富津で強化合宿を重ねてきた成果として、昨年のIPC世界陸上競技選手権大会では、全盲と弱視のマラソンでそれぞれ銅メダルを獲得することができました。特に、2004年のアテネパラリンピック以降、世界のレベルから取り残されてきた感のあった全盲クラスの選手たちが、再び勢いを取り戻してきました。

具体的には、マラソンを目指す上で重要な指標となるトラック種目での躍進がめざましく、1500mでは4分20秒から4分30秒、5000mでも16分の壁に肉薄してきました。もちろん、これらの記録はロンドンパラリンピックA標準記録を突破していますが、現時点で日本代表選手に選出されるか否かは、わかりません。しかし、世界レベルに到達してきたことは間違いありません。

同様に、上記のような全盲選手をサポートする伴走者の走力も相当なレベルになります。そのため、伴走者に対しても現時点の走力を重視することになり、人選に苦慮することが多くなってきました。更に、伴走者も選手同様、国際ルールや国際登録、ドーピング関係についてもより厳格になってきており、誰にでもお願いすることが難しくなってきているのも事実です。

今後は、ロンドンパラリンピックはもちろん、国際大会に通用する伴走者の育成や発掘等も重要な強化対策のひとつになっていきます。引き続き、この富津を拠点に地道な取り組みを継続していきますので、皆様方の絶大なるご理解ご支援をよろしくお願いします。

最後に、あらためて伴走ルールの重要な3点を記載しておきます。至極当然のことですが、伴走者がルール違反すると、共に走っている視覚障害者選手が即失格になります。

◆1).視覚障害者選手との距離は常に50センチ以内とする。但し、競技中のフィニッシュライン前10メートルにおいては、この距離をのばしてもよい。※この間は伴走ロープを離してもよい。◆2).いかなる場合も視覚障害者選手を引っ張ったり、押して前進させたりして推進を助けてはならない。※人以外の自転車やバイク、動物等と走ることは違反となる。◆3).視覚障害者選手がフィニッシュラインをこすとき、伴走者は視覚障害者選手の後方にいなくてはならない。※伴走者の方が胸ひとつでも先にゴールすると視覚障害者選手が失格となる。

つづく。

横浜駅伝大会

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先日の4月30日に横浜駅伝大会が開催されました。この駅伝大会は今回で24回目と、ランニングブーム以前から開催されている市民駅伝大会です。しかも区間数や距離は高校駅伝と同じ7区間42.195kと本格的です。したがって、ランニング経験の浅いランナーたちが、軽い気持ちで出場するには少しハードルが高い駅伝大会と感じます。

ところが、ここ数年のランニングブームは全国各地で開催されている各種駅伝大会にも波及し、この大会も今年は650チーム以上のエントリー数となりました。

大会は鶴見川にある河川敷のランニングコースで開催されます。具体的にはスタート及びゴール地点と各区間の中継点は全て同じ地点にし、その中継点をさかいに上流と下流に設置してあるそれぞれの折り返し地点を往復するコースです。そのため、応援する側にとっては、常に同じ場所で全区間を応援できるため、とても盛り上がります。

そして、私がコーチするチームも男女混合の部(奇数区間が男子、偶数区間が女子)に3チーム出場しました。結果は、3チームとも6位入賞をはたし、AC・KITAチームは7連覇を達成することができました。

もちろん公式な大会ではないので、特に何がある訳でもありません。しかし、同じ大会で連続して勝ち続けることは、選手(市民ランナー)やチームにとっても大きな自信につながります。特にこの駅伝大会は区間数が多く、区間毎の距離も長いので、チーム全員がそれぞれの区間をキッチリと走ることが必要不可欠となります。また、メンバーに起用した選手は7区間中4名が初出場と、来年以降につながる内容でした。

さて、この駅伝大会を毎年応援していると、様々なことを感じます。特に、チーム数が増加し、トップ争いのチームと楽しみながら走る下位チームとの差が年々大きくなってきている点です。その結果、同じコースを繰り返し走るため、コース上に区間違いのランナーが多数混在し、上位チームは常に下位チームを追い抜く展開となります。

そして、この展開こそがこの駅伝大会を攻略していく上で最も難しい点のひとつと感じます。それは、後ろからゴボウ抜きをしている展開なら誰でもスピードに乗っていけるように見えます。ところが、この駅伝大会ではゴボウ抜きに近い状況となる後半の区間に配置している選手ほど、設定タイムどおりに走れません。少なくとも7連覇の経験からそう感じます。

もちろん、いくつかの要因はありますが、大きな要因のひとつとしてゴボウ抜きをしているチームが、自チームより前を走るチームではなく、下位を走るチームである点です。その結果、本来のスピード感覚より遅い方に感覚がずれ、ゴボウ抜きをしているにも関わらずスピードは上がらない負の連鎖にはまるのです。

実は、正月の箱根駅伝やニューイヤー駅伝でも似たような展開があります。例として、1区からトップでタスキを受けた選手が2チームに抜かれて3位で次の3区につないだとします。一方、下位の方でタスキを受け、10チームを抜いて7位まで引き上げた選手がいたとします。

この2選手の区間順位を比較したとき、2チームに抜かれて3位に後退したにも関わらず区間順位も3位。ところが、10チームを抜いて7位に躍進したが区間順位は6位と、見た目の走りと実際の区間順位が違うケースは意外と多く、区間順位はタスキを受け取った順位に影響を受け易いのです。それだけに、後方からタスキを受け取って、区間上位に食い込むことは相当な走力と共に、自分自身を追い込める強い精神力も要求されるのです。

以上のように、横浜駅伝の後半区間の選手は、常に後方からタスキを受け取るような展開になり、自分自身の力を出し切ることが難しいと感じます。しかし、逆にそのことが選手のメンタル面を強化することにもつながり、目標のマラソンにも生きてくると…。

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