Home > Archives > 2014-03
2014-03
絆・16
【絆・16】3月21日(金)から3月23日(日)の3連休を利用し、日本盲人マラソン協会主催の強化合宿を千葉県富津市で実施しました。今回は、来月開催のロンドンマラソンに出場する女子選手に絞った強化合宿でした。
ご存知のとおり、4月12日にイギリスで開催されるロンドンマラソンは、世界的にも有名なマラソン大会です。そのロンドンマラソンが今年から視覚障害者マラソンのワールドカップも兼ねることになり、日本からは4名の女子選手が招待を受けました。
まだまだ馴染みの薄い女子の視覚障害者マラソンですが、2016年のブラジルリオ・パラリンピックでの実施候補種目にもなっています。また、日本盲人マラソン協会としては、昨年4月から女子選手の強化を立ち上げていただけに、今回のロンドンマラソンは願ってもない朗報です。同時に、今回のロンドンマラソンは、いろいろな意味で重要な位置づけとなるに違いありません。
ところが、パラリンピックで実施される陸上競技は、種目毎に「3ヵ国6名以上の参加者」の条件が満たされないと、その種目が成立しないルールになっています。一般のマラソンを見ていると、そんな条件は必要ないと誰もが感じるはずです。しかし、今回のロンドンマラソンで実施される視覚障害者女子の部については、まさに3ヵ国6名だけの出場です。しかも日本から4名の選手を派遣するので、極端な見方をすると、日本選手以外に女子の視覚障害者マラソン選手は、世界にたったの2名しか存在しないことになります。もはや強化と言うより、「びっくり人間の世界」に近いのが現状なのです。
更に、オリンピックとパラリンピックの開催が公式に統合された影響もあって、パラリンピック種目の削減(メダルの価値を高める意味で)が、重要課題となっています。特に、陸上競技や水泳は障害によるクラス分けが細かいため、メダル数も多くなります。したがって、陸上競技や水泳の種目統廃合が中心に進む方向は避けられない状況でもあります。
既に、男子の視覚障害者マラソンについては、2008年の北京大会から「T12(弱視)クラス」のみとなり、「T11(全盲)クラス」の選手は、T12(弱視)クラスの単独走選手(伴走無)と同じ土俵で競うことになりました。そんな中、2012年のロンドン大会では、T11(全盲)クラスの和田選手と高橋選手が5位と7位に入賞する健闘を見せましたが、T11(全盲)クラスのみなら金メダルと銀メダルだったのです…。
そんな厳しい状況の中、逆に女子マラソンを新たに追加していこうとする朗報を何とか実現させるためにも、今回のロンドンマラソンは大きなチャンスです。そして、チームジャパンとしては上位独占を目標に、その存在を世界にアピールできることを期待しております。
皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願いします!
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
期分け・83
- 2014-03-18 (火)
- トレーニング計画 | マラソン | マラソントレーニング
【期分け・83】前回は少し話が脱線しましたが、あらためて「ゆっくり長く走るトレーニング(LSD)」と、3時間突破(サブスリー)について考えていきます。
はじめに、疲労回復を主な目的とし、「ゆっくり長く走るトレーニング(LSD)」を取り込んだトレーニング計画例を記載します。◆パターン1).月/休養、火/調整ジョグ、水/スピード、木/90分~120分LSD、金/調整ジョグ、土/距離走、日/90分~120分LSD。◆パターン2).月/調整ジョグ、火/スピード、水/90分~120分LSD、木/調整ジョグ、金/休養、土/距離走、日/90分~120分LSD。パターン3).月/調整ジョグ、火/16k~20kペース走、水/スピード、木/90分~120分LSD、金/調整ジョグ、土/スピード、日/90分~120分LSD。
どのパターンも全体的にかなり詰め込んでいる感じもしますが、1週間の流れを注視して下さい。そして、疲労回復が主な目的となるため、いわゆるポイント練習と呼ばれている「スピード」や「ペース走&距離走」の後にLSDを実施するパターンとなります。
では、上記パターンのようにLSDを実施する際のポイントを、段階を追って説明していきます。◆段階1).ポイント練習の疲労が残る中、「速く走ろう」、「何キロ走ろう」との意識を放棄し、とにかくゆっくりと走り出す。◆段階2).疲労の影響から出足は身体のだるさを感じることが多く、集中力も散漫し易い状況になるが、ゆっくりじっくりと走り続ける。◆段階3).自分自身の身体と対話することに意識を集中し、「疲労はどの筋肉にどの程度か?」、「身体の芯に疲労は残っていないか?」等々、身体からかえってくる感覚を意識し、ペースを上げずに走り続ける。
◆段階4).40分~60分前後から身体の芯から疲労と汗が一緒に出てくる感覚で、身体が少しずつ軽くなってくる。◆段階5).「疲労が抜けて軽くなってきた」と、実感できてもペースを絶対に上げず、ゆっくりじっくりと走り続ける。◆段階6).90分前後から更に走り続けることで、今度は逆に「力(スタミナ)を身体に蓄えていく感覚」にかわってくる。
以上のように感覚的な部分が多く、数値で表すことが難しい点が特徴であり、逆に疲労回復を目的としたLSDの難しさであると感じます。また、感覚的な部分が多いが故に個人差も大きく、ペースが途中から速くなったり、疲労が抜けてくる感覚の前に止めてしまったりと、トレーニング計画の一部として定着させるまでに相応の時間が掛かるのも事実です。
しかし、疲労回復が目的のLSDと言っても、後半の部分は「力(スタミナ)を身体に蓄えていく感覚」からスタミナ強化の部分も期待できます。実際に私がコーチしている市民ランナーも上記したトレーニングパターンがベースになっており、LSDの効果は間違いないと実感しております。
つづく。
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
2014名古屋ウィメンズマラソン
【2014名古屋ウィメンズマラソン】今年の名古屋は天候もよく、何より風がほとんど無い絶好のコンディションの中、スタートしました。そして、参加人数も1万4675名と、女性だけのフルマラソン参加者数として、昨年の同大会のギネス世界記録を更新したとのことでした。(2012年大会の参加人数は1万3114名、2013年大会は1万4554名。)
「日本女子マラソンの低迷」と言われていますが、同大会を沿道から応援する限り、そんな不安を感じることすらできない盛り上がりでした。また、国内で開催される国際女子マラソンの参加標準記録の目安となる「3時間15分以内」で完走した人数は314名と、昨年の264名を大きく上回っています。更に、3時間以内(サブスリー)で完走した人数も昨年の74名を上回る92名と、日本女子マラソンのボトムアップにも大きく貢献している大会とも言えます。
今回、私の選手(市民ランナー)は4名出場し、全員が無事に完走しましたが、88位でゴールしたK選手の頑張りは、特に印象的でした。ゴールタイムは「2時間59分43秒」と、ギリギリのところで3時間突破(サブスリー)でしたが、注目したいのは上記した3時間突破完走者92名の中で、中間点の通過タイムが1時間30分をこえていたのは、K選手を含めたったの2名です。同様に、2時間50分を突破した選手は今回41名ですが、中間点の通過タイムが1時間25分をこえて、2時間50分突破を達成した選手はいませんでした。参考までに、中間点の通過タイムが1時間37分30秒をこえて、3時間15分を突破した選手もたったの2名でした。
一般的に、マラソンを効率よく完走するには、最初から最後までイーブンペースでラップを刻んでいくか、前半を抑え気味に通過するのが良いと言われています。しかし、3時間や2時間50分、あるいは3時間15分と、ある壁(記録)を狙うとき、多くのランナーはその壁に不安やプレッシャーを感じ、万が一のことを考えだします。つまり、後半の失速が怖くなり、前半に「貯金」を作ろうとします。しかし、マラソンに限っては前半の貯金はオーバーペースを意味し、逆に後半での「借金(失速)」につながるケースが圧倒的に多く、判断の難しい点でもあります。
さて、3時間突破(サブスリー)でゴールしたK選手は、今回で15回目の3時間突破となりました。初めて3時間突破を達成したのは、2004年1月の大阪国際女子マラソンでした。それからちょうど10年です。この間、コンスタントに3時間突破を積み重ねてきた経験と実績があるからこそ、今回も周りのランナーに惑わされることなく、冷静かつ正確な自分自身の走りができたと言えます。
今後、単に自己記録更新だけでなく、K選手のような何年も安定したパフォーマンスを発揮し続ける価値を、もっと大切にしていこうと感じた名古屋でした…。
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
期分け・82
- 2014-03-05 (水)
- トレーニング計画 | マラソン | マラソントレーニング | 冬を走る
【期分け・82】前回も記載したとおり、単に「ゆっくり長く走るトレーニング(LSD)」だけで、3時間突破(サブスリー)のレベルに到達することは、やはり難しいと考えるのが一般的です。したがって、「ペース走」や「インターバル」と言ったスピード系トレーニングもある程度取り込んでいくことになります。もちろん、何をどんな設定タイム(スピード)で、どの程度(距離)取り込んでいくのかは、個々の走力やランニング環境によっても違ってきます。
しかし、逆に「ゆっくり長く走るトレーニング(LSD)」を取り込むタイミングは大きく2パターンがメインになります。すなわち、スピード系トレーニングの前にするか後にするかですが、3時間突破(サブスリー)を目指すランナーにとって、「ゆっくり長く走るトレーニング(LSD)」の主な目的は、疲労回復にシフトしていきます。この点が、4時間突破(サブフォー)を目指すランナーと大きく違ってきます。つまり、スピード系トレーニングの後に取り入れるパターンが、疲労回復には効果的と考えます。
では早速、具体的なトレーニングパターンを考えていきますが、はじめに話しが少し脱線します。それは、これまであまり触れてこなかった部分でもあり、このブログで取り上げている3時間突破(サブスリー)を目指しているランナーの前提条件についてです。まずは、次の点を確認しておきます。
◆前提条件1).月曜日から金曜日までの5日間(一般的に言う平日)において、仕事やプライベートな私用が立て込んだとしても、コンスタントに3日以上は走る時間を捻出している。◆前提条件2).原則として、休日の優先順位はランニングからである。◆前提条件3).あらかじめ正確な距離を確認し、スピードを上げて走れる自分自身のランニングコース(トラックや公園・河川敷等)を確保してある。
以上の3点についてですが、いかがでしょうか。かなりハードルが高いと感じる方、逆にこの条件を満たしていなくても、3時間突破(サブスリー)を達成できた方もいることでしょう。
また、統計的にみると、1年間で3時間突破(サブスリー)を達成しているランナー数は、国内のフルマラソンを完走した全ランナーの中においても、たったの5%以下であるとも言われています。実際に私が市民ランナーを指導してきた経験からも、誰もが簡単に到達できるレベルではありません。
なぜなら、3時間突破(サブスリー)を目指すためのトレーニングは冒頭に記載したように、量(距離)だけでなく、質(スピード)も加味されてくるからです。そして同時に、レベルの高いトレーニングを継続していくには、上記した3つの前提条件となる「自分自身の環境を整えていく力」も、必要不可欠になってくるからなのです。
つづく。
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
Home > Archives > 2014-03
- Search
- Feeds