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2011-07

期分け・14

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今回でスピード養成期についての話しは一区切りとします。

最後は3kのタイムトライアルについて考えていきますが、この3kの距離は一般的に言うと、馴染みの薄い距離になると感じますが、いかがでしょうか?

しかし、この3kは陸上競技的に言うと長距離走の登竜門となる基礎的な距離になります。それは、全国の中学生が各地で開催している陸上競技大会において、男子の最も長い距離が3kです。また、同じく全国の高校生が各地で開催している陸上競技大会において、女子の最も長い距離がこの3kとなります。

なぜ、中学生男子と高校生女子の最長距離が3k(3000m)なのかについては、私も正しく把握しておりませんが、長距離を志す男女のジュニア選手は必ずこの3kからスタートすることは間違いありません。そして、この3kで長距離的なスピード感覚やペース配分等々を体得しながら年齢と共に距離をのばしていくのが、日本の伝統的なスタイルのひとつです。

もちろん、実業団選手(プロ)になり、ハーフマラソンやマラソンのような長い距離を走れるようになった選手でも各種競技会に出場し、この3k(3000m)を走っています。実は、マラソンの日本記録保持者である高岡選手は、3000mの日本記録保持者(7分41秒)でもあります。

そして、マラソンの基礎的なスピードの目安となる5kや10kのタイムを短縮するためには、この3kのスピードをアップすることが大きなカギとなります。具体例として10kを40分以内で走ることが目標とした場合、5kの目安は19分30秒前後となります。更に、トレーニングの段階において、そのペースで3kを走り切る走力が必要不可欠になってきます。即ち、3kの目標タイムとして「19分30秒×3/5=11分42秒」となり、3kのタイムトライアルではこの「11分42秒」を意識して走ります。

では、実際に3kのタイムトライアルを走る場合の注意点として、まずは1kのタイムトライアル同様、距離の正確なトラックで正確なラップタイムを計測しながら実施するのが原則となります。また、1kのタイムトライアル同様に200m毎にラップタイムを確認しながら走る方がより正確で確実です。但し、距離が長くなる分、ペース配分がより重要になります。特に、出足のオーバーペースは致命的になりますので、最初の200mから400mあたりまでをおさえるようにして走ります。

この出足を少しおさえる感覚は、3kのタイムトライアルを通じて体得してほしい大切なポイントのひとつになります。また、距離が長い分、逆に2kあたりまでペースをおさえ、残り1kからペースアップする走り方は、ラストスパートをするタイミングや残った力の出し切り方を覚えるにも最適です。

最後にこのスピード養成期をまとめると、◆1).1kのタイムトライアルを通じて自分自身のスピード限界を高める。※失速を怖がらず積極的に走れる度胸と粘り。◆2).3kのタイムトライアルを通じて速いスピードでのペース配分やスパートのタイミングを体得していく。※失速しないように体力の配分を考えながら最後まで一定に走れる冷静さと安定感。

以上のように1kと3kのタイムトライアルをセットで実施することは、単にスピードを身に付けるだけでなく、マラソンに必要不可欠な積極性や粘り強さを体得することにもつながっていきます。

つづく。

期分け・13

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1kのタイムトライアルについて考えていきますが、可能な限り途中のラップが計測できる距離の正確なトラックで実施することをおすすめします。(近くにある学校のグラウンドでもOK)

既に何度も記載していますが、正確な距離を走り、そのタイムを正確に記録していくことがタイムトライアルの原則となります。もちろん、距離表示のある公園や河川敷でもかませんが、200m~400m毎の細かいポイントがわかる場所を探しておきましょう。(自分自身で予め距離を測定したコースでもOK)

次に、大まかな目安となる目標タイムを決めておき、200m毎のラップタイムを走る前に書き出し確認しておきます。参考までに今回は、1kを4分00秒で走ることを例にして話しをすすめていきます。

それでは実際に1kを4分00秒のイーブンペースで走った場合、200m毎のラップタイムは、「48秒―1分36秒(48秒)-2分24秒(48秒)-3分12秒(48秒)-4分00秒(48秒)」となります。そして、このラップタイムを頭の中でイメージしながら実際に1kを走ります。

ところが、1kのタイムトライアルを実施すると、ほとんどのランナーが600mを過ぎたあたりから大きく失速し、ゴール直前の200mは止まりそうになります。その代表的なラップは、「39秒―1分25秒(46秒)-2分13秒(48秒)-3分8秒(55秒)-4分8秒(60秒)」となりますが、皆さんはいかがでしょうか?

実は、小中学生の地区陸上大会(市内大会レベル)を見ていると、ほとんどの選手がこれに近いパターンの走りをします。即ち、スタートからダッシュで飛び出し、ゴールに向かってどんどん失速していきながら、ゴール直前が最も遅いペースとなる走り方です。そのためレース中のかけひきやラストスパートはあまりなく、単にゴールに向かって消去法的なレース展開が多くなります。これは走歴が浅く、練習量の少ないランナーに多く見られる走り方です。

そして、この悪いパターンを修正していくためには、タイムトライアルを定期的に取り入れてペース感覚をつかんでいくことは、ひとつの打開策となります。特に、この1kのタイムトライアルは、5kや10kのように走行距離や走行時間も長くなく、誰でも手軽に挑戦できる距離でもあります。

また、スタートから飛ばすと上記のように最後は失速しますが、逆に最初の200mをコントロールできればラストスパートも出せるようになります。したがって、200m毎に様々なペース配分を試していくことで、自分自身の能力に合ったペース配分を見つけることもできます。そして、たったの1kだからこそ逆に、1回のトレーニングで何パターン(1k×3~5本)も試すことが可能となります。

このように、1kのタイムトライアルを活用し、様々なペース配分を想定しながら走ることは、頭の中でイメージしたスピードを手足に正しく伝達していく能力を高めることにもつながります。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・2

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梅雨もあけた7月9日(土)から10日(日)の日程で、大阪府堺市において「第22回日本身体障害者陸上競技選手権大会」が開催されました。今大会は、来年に迫ったロンドンパラリンピック代表選考大会のひとつに指定されており、日本代表入りを目指した選手たちの熱き戦いが繰り広げられました。

もちろん、日本盲人マラソン協会の強化指定選手たちも多数出場し、ロンドンパラリンピック参加A標準記録の突破を目指しました。特に、マラソンの記録を目指す上でスピードのバロメーターにもなる「5000m」については、どの選手も記録を狙っています。

しかし、初日の気温は30度以上、湿度も70%以上の厳しいコンディションとなり、あと一歩のところで記録に手が届きませんでした。選手にとってはどんなに厳しいコンディションになったとしても言い訳できませんが、中長距離種目にとってはあまりにも過酷なコンディションでした。

ところが、その翌日は更に気温も高くなり、ただ単に競技会を観戦しているだけでも幸いコンディションとなりました。しかも最終日の種目は、全員が「1500m」です。この1500mは、マラソンを目指している選手の多くは苦手意識も強く、マラソンとは関係なさそうですが、スピード強化の段階においてはとても重要な種目のひとつです。

また、前日の失敗レースからわずか24時間でどの程度の立て直しができているのか?更に、2日連続の厳しい暑さでのレースに対し、集中力をどこまで持続できるのか?・・・等々、各選手のメンタル面やコンディショニング、ウォーミングアップ等を観察するには、逆に絶好の機会でもあります。

はたして結果は、T11クラス(全盲)の和田選手が、4分27秒69の日本新記録&A標準記録突破。更に、T12クラス(弱視)の堀越選手が、4分7秒30の日本新記録&A標準記録突破と、見事な集中力と精神力を見せてくれました。もちろん、他の選手たちも積極的な走りを見せてくれ、これまで地道に継続してきた強化合宿の成果を確認することができました。

さて、オリンピックやパラリンピックでの選手コールや招集はとても厳しく厳格です。具体的にはスタート1時間前あたりから選手は招集所に拘束され、ウォーミングアップすらできない状況になるケースも多々あります。したがって、いつものウォーミングアップが実施できなくなり、大舞台で力を発揮することができない原因のひとつにもなっています。

実は、この点についての対策をコーチや選手自身が重要視していないケースが多く、個人的にはとても残念に感じる点です。そして、今大会のようにとても厳しいコンディションの中でのレースは、それに近い状況に似ています。

そんな中、どの選手も2日間にわたり気持ちを集中させ、ピーキングを考えて行動していた点は大きな成長であり、大きな自信となったに違いありません。

期分け・12

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あらためて皆さんは、1kの距離を全力疾走したことがあるでしょうか?

3kや5kの距離なら駅伝等で走った経験があるランナーでも、たったの1kを最初から本気で走ったことは意外と少ないかもしれません。しかし、5kや10kのスピードアップにとって、この1kを全力で走ることは重要なポイントになります。

また、5kや10kはマラソンの基礎になる距離と言っても、スタートから全力で走るには距離が長いと思っているランナーは、多いのではないでしょうか。その理由は様々だと思いますが、大きな要因のひとつが最初からスピードを出すと最後までもたないと考えるからです。

具体的には、運動会で走ったようにスタートからスピードを全開させるような感覚で5kや10kを走れないと、決め付けているからです。もう少し別の言い方をするならスタートから速く走ろうと手足を動かす前に、頭や気持ちの中でブレーキが掛かってしまうのです。

実はスピードを上げて長く走ることは心拍数が上がり苦しくなるとイメージしますが、初心者を中心に多くのランナーは手足を早く動かそうと頭で指令を出してもそれがうまく手足には伝わりません。その結果、5kを走るスピードもマラソンを走るスピードもあまり変わらないランナーが多くなります。

つまり、頭から手足に指令を伝える神経を発達させることができれば自身のスピードもコントロールできるはずです。そして、その手段がスピードトレーニングであり、タイムトライアルなのです。もちろん実際に速く走ろうと頭から指令を出し、そのとおりに手足が動くようになれば、自分自身が持っているスピードの上げ下げも思い通りになります。それは、マラソンでの「スピード的ゆとり(余裕)」にもつながっていくはずです。

このように、スピード養成期で1kや3kのタイムトライアルを積極的に実施した方が良い理由は、単に心肺機能を向上させるだけではありません。速く走ろうとする指令を手足に正しく伝える神経系を鍛えることで、自分自身のスピードを自在にコントロールするためでもあるのです。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、次回からはタイムトライアルの具体的な走り方を考えていきます。

つづく。

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