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2014-04

期分け・86

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【期分け・86】前回から引き続きトラック競技についてですが、今回も話を脱線し、記録について考えてみます。はじめに、トラック長距離種目とマラソンの世界記録と日本記録を記載します。

◆男子世界記録:5千メートル/12分37秒35(2004年)/ベケレ選手(エチオピア)、1万メートル/26分17秒53(2005年)/ベケレ選手(エチオピア)、マラソン/2時間3分23秒(2013年)/キプサング選手(ケニア)。◆女子世界記録:5千メートル/14分11秒15(2008年)/ディババ選手(エチオピア)、1万メートル/29分31秒78(1993年)/王選手(中国)、マラソン/2時間15分25秒(2003年)/ラドクリフ選手(イギリス)。

◆男子日本記録:5千メートル/13分13秒20(2007年)/松宮選手、1万メートル/27分35秒09(2001年)/高岡選手、マラソン/2時間6分16秒(2002年)/高岡選手。◆女子日本記録:5千メートル/14分53秒22(2005年)/福士選手、1万メートル/30分48秒89(2002年)/渋井選手、マラソン/2時間19分12秒(2005年)/野口選手。

あらためて記載すると、意外と古い記録ばかりが残っており、男子マラソンの世界記録以外は停滞している感じがしますが、ベケレ選手の世界記録はとにかく速いです。ベケレ選手の5千メートルを100mあたりのペースにすると、「15秒14」の速さになります。これをトラック1周、すなわち400mに換算すると、何と「60秒56」!

もう少し具体的に説明すると、トラック1周を約60秒ペースで12周半も走り通したことになります。トラックでインターバルトレーニングを実施するとき、400mを60秒ペースで休息を入れながらも12本実施できるランナーは、日本のトップランナーでも多くないと思います。しかしベケレ選手はそのペースで5千メートルを走り切ってしまうのです。もはや、100mの世界記録より凄いことかもしれませんね。

さて、少し見方を変えて5千メートルと1万メートルの記録について考えてみます。以前にもこのブログで取り上げたことがありますが、次のような関係になります。「5千メートルの記録×2倍+1分=1万メートルの記録」、これを上記した世界記録と日本記録に当てはめてみます。

◆男子世界記録:12分37秒35×2倍+1分=26分14秒70≒26分17秒53(+2秒83)。◆女子世界記録:14分11秒15×2倍+1分=29分22秒30≒29分31秒78(+9秒48)。◆男子日本記録:13分13秒20×2倍+1分=27分26秒40≒27分35秒09(+8秒69)。◆女子日本記録:14分53秒22×2倍+1分=30分46秒44≒30分48秒89(+2秒45)。

次に、1万メートルの何倍でマラソンを走ったかを目安にした持久係数で比較すると次のようになります。

◆男子世界記録:2時間3分23秒÷26分17秒53=4.69。◆女子世界記録:2時間15分25秒÷29分31秒78=4.59。◆男子日本記録:2時間6分16秒÷27分35秒09=4.58。◆女子日本記録:2時間19分12秒÷30分48秒89=4.52。

この持久係数は、数値が小さいほど持久力があり、大きいほどスピードタイプである目安となります。この視点から考えると、男子マラソンの世界記録については記録を短縮できる余地が十分に残されており、ベケレ選手の持久係数が4.56に到達した場合、「1時間59分51秒」と2時間を突破できる計算になります。

また、日本の男子マラソンも1万メートルの記録を27分30秒まで短縮し、持久係数が日本女子選手並みの4.52に到達した場合、「2時間4分18秒」となり、4.50に到達すると「2時間3分45秒」になります。もちろん、上記した5千メートルと1万メートルの関係からも日本男子の1万メートルは、記録短縮の余地が残っています。つまり、日本の男子マラソンは世界で十分に勝負できると考えます。

ところが、日本女子マラソンの記録については、5千メートルと1万メートルの関係や1万メートルからみた持久係数からも、今の日本記録でほぼ限界点に到達していると感じます。したがって、逆に5千メートルや1万メートルの記録短縮がマラソン復活に向けたポイントのひとつになると…。

つづく。

かすみがうらマラソン

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【かすみがうらマラソン】先日の4月20日も全国各地でマラソン大会が開催されていました。茨城県土浦市においても、伝統の「かすみがうらマラソン大会」が開催されました。この大会は都心から1時間前後で会場に到達できる便利さからも、参加者は年々増加しています。そして、今年は2万2千名のランナーが参加し、大会を盛り上げていました。また、今年の大会は曇り空で、少し肌寒い気温でしたが、ほとんど風もなく絶好のマラソン日和となりました。

今年で24回目となる同大会は、国際盲人マラソン大会も兼ねており、こちらも20回目となりました。さまに盲人マラソン大会の普及と発展にたいへんご尽力いただいた大会でもあります。あらためて大会関係の皆様方に御礼申し上げます。

さて、今年の大会ですが、コンディションが良かったこともあり、好記録もいくつか誕生しました。特に、フルマラソン男子の部では、実業団選手が積極的に走り、2時間14分20秒の大会新記録(自己新記録)をマークしました。もちろん、テレビ中継される国際マラソン大会では、2時間10分突破が当たり前のように感じますが、かすみがうらマラソン大会のような一般の大会では、2時間20分を突破すること自体まれなことです。

したがって、今回の2時間14分20秒は、まさに驚異的です。また、かすみがうらマラソン大会を含め、一般の大会は記録重視のコース設定をしていないケースが多いので、起伏も多く難コースになるのも特徴で、実力のある実業団選手が招待や練習のつもりで参加しても、簡単に記録を出せない理由のひとつでもあります。

しかし、公務員ランナーの川内優希選手が全国各地のマラソン大会を積極的に走ることで実力を付けてきた影響もあってか、最近は一般のマラソン大会に実業団選手が参加している姿も見受けるようになってきました。今更ながら、マラソンは走り込みも大切ですが、経験に頼る点が多く、実業団選手と言ってもやはり実戦を経験していくことは重要と感じます。来年以降も積極的に参加いただき、大会を盛り上げてほしいと思います。

一方、盲人マラソンの部は、少し低調気味でした。そんな中、20代の若手選手2名が、3時間を突破する自己新記録をマークしました。もちろん、2選手とも以前から期待をしていましたが、思うような記録に結びつかないレースが多く、大いに悩み苦労をしていました。しかし今回、IPC公認大会でもあるこの大会で記録を残せたことは、今後の国際大会へつながる道を自ら開拓できたと確信しております。

期分け・85

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【期分け・85】スピード養成期の一環として、トラックでの競技会を積極的に走る点について考えていきます。はじめに、ひと口にトラックと言っていますが、陸上競技場について少し説明します。

既にご存知のとおり、各種マラソン大会やロードレース大会に出場すると、日本陸連公認コースとプログラムに記載してある大会があります。公認と記載していない大会(一般的な市民マラソン大会)のコースについては何の取り決めもなく、大会種目に示してある距離が実際にどれほど短くても長くても構いません。ところが公認コースの条件は日本陸連の陸上競技ルールブックの中に定めてあり、その条件を満たした上で日本陸連検定員の審査をパスしないと、公認証は交付されません。

同様に陸上競技場についても細かい条件が定められており、第1種から第5種までに分類されています。最も審査の厳しい第1種については、日本選手権や国民体育大会、国際的な競技会を開催できる競技場となります。主な条件には補助競技場の設置があり、第1種公認申請する陸上競技場の隣に、もうひとつ第3種相当の陸上競技場を備える必要があります。つまり、ひとつの陸上競技場を第1種公認申請するためには、隣にもうひとつの陸上競技場も作る必要があるのです。

実は、陸上競技の聖地とも言われている東京の国立競技場ですが、隣に補助競技場がありません。したがって本来は、第1種公認競技場としては登録できないのです。しかし、隣接地にある東京体育館付属のトラックと代々木公園陸上競技場が事実上補助トラックと見なされているため、第1種公認競技場と認められている珍しいケースなのです。

以上のようにトラック競技においても日本陸連公認記録を得るためには、公認競技場で開催される競技会に参加することが第一の条件となります。至極当然のことですが、出場する各自が日本陸連登録をしており、大会そのものが日本陸連公認の競技会である必要もあります。

また、トラック競技の場合、開催されている競技会の多くは、日本陸連公認競技会です。中には日本選手権のように出場するための高い参加標準記録が設定されている競技会もありますが、市民ランナーの方が気楽に出場できる公認の競技会も数多くあり、各大学が主催する陸上記録会等を含めると、ロードレース大会に引けを取らないほどの大会数になります。

ちょうど4月は、日本陸連登録の更新時期でもあるので、出場してみたい方は是非とも登録をし、トラックでの公認競技会に参加してみてはいかがでしょうか?

つづく。

絆・17

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【絆・17】4月13日(日)の富津合同マラソン練習会は、気温が10度前後と低めだったのですが、長距離を走るには絶好のコンディションとなりました。あらためて、この練習会を簡単に説明すると、1kを4分30秒と5分00秒で距離走を走るグループと、LSDの3グループがあり、私はLSDを担当しています。

そして、今回の練習会に全盲の谷口選手が単独参加。しかも私の担当する2時間LSDを走るとのことで、これまた久々に伴走をすることになりました。もちろん、今の私に谷口選手を伴走できる走力はないので、「絶対に速く走るな、LSDだから」と、念を押してのスタートでした…。

さて、谷口選手は神戸に在住しています。したがって、千葉県富津市で開催しているこの練習会に参加したいと言ったところで、簡単に参加するには難しい距離です。ところが、谷口選手はこれまでも富津練習会に何度か単独参加をしています。それも今回同様、前触れもなく単独で上京してきます。

今更ながら、それぞれの選手がどこでどんなトレーニングを実施するかは自由であり、目標どおりの記録や成績を残せているならどれも正しいトレーニング方法です。谷口選手についても同様で、日本盲人マラソン協会の強化指定選手と言いながらも、どこでどんなトレーニングを実施するかは、全て自己責任となります。

しかし、谷口選手は少しでも良い練習環境や走力のある伴走者を求めて自ら積極的に行動するタイプの選手です。悪く言えば場当たり的とも受け止められますが、全盲の谷口選手が白杖を片手に電車を乗り継いで移動する姿は、まさに「平成の山下清」です。

今回、土曜日の夜は私の自宅に泊まり、日曜日の練習後は最寄駅から無事に帰っていきました。しかし、詳しく話しを聞いてみると、実は木曜日から上京しており、その夜は東京に住む伴走者の自宅に泊まり、一緒にトレーニングを実施。翌日の金曜日は栃木の伴走者宅に泊まり、一緒にトレーニングを実施。それから東京経由で千葉入りだったのです。

谷口選手は、このスタイルで確実に力を付けてきており、その活躍はこのブログで何度も取り上げているとおりです。私もこれまで様々なランナーを見てきましたが、周りが呆れるくらいの行動力を持ったランナーは、障害の有無に関係なく自らの目標に到達する確率は圧倒的に高いと感じます。今後も今の行動力を忘れず、2016年のパラリンピックはもちろん、2020年東京パラリンピックも目指してほしいと願っております…。

つづく。

期分け・84

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【期分け・84】いよいよ新年度がスタートしました。それに伴い職場や生活環境が変わる方も多いかと思います。もちろん、ランナーの方々にとってランニングは生活の重要な一部なので、「自分自身を取り巻く生活環境の変化に左右されることはない」と、誰もが考えます。しかし、「ランニングほど生活環境の変化から影響を受けるスポーツは珍しい」と、思う例をこれまで数多く見てきました。

考えられる理由は様々ですが、最も大きな要因のひとつは、「自分自身の身体と心だけで勝負するスポーツ」だからではないでしょうか。つまり、マラソン(長距離)は、道具を使わず、シンプルに自分自身の身体を如何に速く遠くに運ぶスポーツだからです。そこには、ランニングフォームとかペース配分とかでなく、とにかく1番最初にゴールしたランナーが最も讃えられ、過去の実績やどこに所属し、どんなトレーニングを積んできたかは全く問われない世界でもあるからです。

まさに、公務員ランナーとして日本マラソン界を牽引している川内優希選手のランニングライフがそれを証明していると言えます。それは上記したように「生活環境の変化から大きな影響を受けるスポーツ」と言いつつ逆に、その生活環境をどのようにとらえるかは個々の問題であり、マラソン(長距離)は、「どんな環境からでもトップを目指せる数少ないスポーツである」とも言えるからです。

同様に、新年度から職場や生活環境が変わったランナーの方々にとっては、その変化こそがこれまでのマンネリ化や記録の頭打ちを打開するチャンスかもしれません。もちろん、そんな簡単な話しではありませんが、少なくともそのようなとらえ方は重要です。川内優希選手も4月から転勤となり、新しい職場環境からの世界挑戦となります。そして、新年度も変わりなく、その川内優希選手が日本マラソン界を牽引していくと…。

さて、4月に入り、国内の大きなマラソンや駅伝大会はほぼひと段落ついた感じです。同時に、陸上競技としては、いわゆるトラックシーズンの開幕となります。マラソンブームが到来し、それを期にランニングをはじめた方々にとっては、馴染みの薄い感もあるかと思います。本来、陸上競技は、100mからはじまる短、中、長距離種目、走幅跳等の跳躍種目、ハンマー投等の投てき種目などがあり、陸上競技場で実施する競技です。つまり、マラソンはそのひとつに過ぎないのです。しかもマラソンは、公道(ロード)で競う特殊な種目とも言えます。

そして、4月からは、「スピード養成期」と位置付け、積極的に10k以下の短いレースに出場したり、スピード系のトレーニングを多く取り込む時期となります。まさに、トラックシーズンと一致します。次回からは、スピード養成期の一環としてトラックを積極的に走る点にスポットを当てて考えていきます。

つづく。

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