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2011-09

ロンドンパラリンピックへの道・3

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先日の9月24日(土)から25日(日)にかけて、大分県で身障者陸上競技大会である「ジャパンパラリンピック」が開催されました。この大会は、身障者陸上競技大会の中においては日本選手権大会と並ぶ国内最高峰の大会です。もちろん、来年に迫ったロンドンパラリンピック代表選考大会のひとつにも指定されています。

また、コンディション的には厳しい残暑の影響が懸念されていました。しかし、選手への影響は心配するほとではなく、逆に各種目において日本新記録をはじめ、ロンドンパラリンピック参加A標準記録を突破する選手も多く、大会は大いに盛り上がりました。

特に、車イス男子(T53&T54クラス)の1500mにおいては上位8位までが、ロンドンパラリンピック参加A標準記録である「3分2秒00」を突破する世界的にも価値あるレースとなりました。実は、このA標準記録である「3分2秒00」を突破した選手は、この時点において世界でもたったの2名しかおらず、標準記録の見直し論まで出ていた種目だったのです。

では、なぜ今大会において一気に8名の選手がA標準記録突破となったのでしょうか?

最大の理由は出場選手全員が、「勝負から記録」へと、気持ちと走りをシフトして挑んだからです。至極当然のことですが、仮にこの大会で優勝してもロンドンパラリンピック参加A標準記録を突破していないと、来年のロンドンパラリンピックにはつながりません。ところが、出場選手の誰かがペースメーカーを請け負い、「同じ土俵で勝負している仲間から一人でも多くのA標準記録突破者を出す」と、果敢にレースを引っ張り、更にその後を全員で必ず付いていくレースになったから好記録が誕生したのです。

このようなレースは、一般の国際マラソン大会をはじめ、各種トラックの中長距離レースでは、記録を狙うための一般的な方法です。また、このペースメーカーや一流選手の練習パートナーを経験することで後に世界的な選手へと成長した例は数多く、むしろその流れが世界の常識となっている感もあります。

少し古い話しになりますが、1980年代に世界の中長距離種目を総なめにしていたモロッコのS・アウィータ選手は、ロス五輪5000金メダル、ソウル五輪800銅メダルをはじめ、1500m、2000m、3000m、5000mで世界記録を何度も更新した伝説の選手です。そして、そのS・アウィータ選手の練習パートナーやペースメーカーとして力を付けていった同じモロッコのB・ブータイブ選手は、ソウル五輪1万mで金メダルを獲得するまでに成長したことは有名な話しです。

さて、今回のジャパンパラリンピックの車イス男子(T53&T54クラス)の1500mで、出場選手全員が力を結集することで好記録に結びつけた実績はとても大きいと感じます。それは、今後も5000mや1万mをはじめ、ロードでのマラソンにおいても、日本選手だけのレースでも世界に通用する好記録をマークしていける可能性を示せたからです。そして、今回のようなレース内容を今後も継続していくことで、車イス種目の世界的中心が日本の大会になることも夢ではないと、強く感じたレースでした。

期分け・22

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「スピード持久力養成期」の軸となるトレーニングは、20k~40kの長い距離を走るペース走です。もちろん、マラソンを目標にしているランナーならこの点については、既に常識的とも言えます。

しかし、意外と盲点になっている点があります。それは、正確な距離を計測した正確なコースでペース走を実施しているランナーが意外と少ない点です。さて、皆さんはいかがでしょうか?

実はランニング経験の無い一般的な人の距離感覚は、実測距離より長く感じる傾向にあります(私の経験上)。具体例として、ランニング経験の無いAさんに最寄り駅までの距離を聞くと、「3k程度」と教えてくれました。ところが実際にゆっくり走って行くと、10分もかからず目的の駅に到着・・・。ランナーの距離感覚なら大目に見ても2k前後の距離です。

また、別の例ですが、Bさんはマラソンを目指すために近所にある公園でトレーニングをはじめました。その公園は1周まわると1kになる遊歩道があり、距離表示もあります。それは、マラソントレーニングにとっては願ったりかなったりのコースです。

早速Bさんは、その周回コースで30k走にも挑戦し、ペース感覚も体得していきました。そして、目標タイムである3時間30分も十分に狙える充実したトレーニングを積んで、本番のマラソン大会に挑みました。ところが、あんなに楽に走れた「5分/k」ペースが実際のマラソン大会では最初の5kから苦しく感じます。「もう少しで楽になる」と、自分自身に言い聞かせながらそのペースを何とか維持して行きましたが・・・。30k以降は大きく失速してしまい、目標の3時間30分には届きませんでした。

Bさんはマラソン大会が終わった後、練習コースである公園の1kコースを、距離計を用いて実測してみました。すると驚くことに「950m」だったのです。つまり、1k走ると50m短く走っている計算になり、実は間違ったペース感覚を体得していたのです。もちろん、ランニング経験が無ければたったの50mと思いますが、このコースで5kを走ると250mも短くなります。そして、これを時間に置き換えると「約1分」です。ところが、5kで1分の誤差になると、予定していた通過ラップに修正していくことは、走力のあるベテランランナーを持ってしても難しい大きな誤差に匹敵するのです。

このように、公共施設である公園や河川敷にある距離表示も厳密に言えば正確でない場合も多々あります。そのため、公園や河川敷にある遊歩道などを利用したがためにペース感覚が狂ってしまうケースも意外と多いのです。

つづく。

期分け・21

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今回から「第1次走り込み期」の後半にあたる「スピード持久力養成期」について考えていきます。前回までの「基礎体力養成期」は、マラソンを走るためのベースとなる基礎体力(スタミナ)を養成するトレーニングでした。そして、今回はその基礎体力の上にスピード持久力を積み上げていくトレーニングとなります。

これを家に例えると、基礎体力となる部分が家の土台部分(基礎)にあたります。そして、今回の「スピード持久力」は、土台部分の上に組み上げていく家の柱部分となります。もちろん、柱と言っても単に基礎から垂直に立ち上がっている部分もあれば、その柱と柱をつないでいる部分もあります。更に屋根の部分に相当する柱もあります。つまり、この柱が全て組み上がると、その家の大きさや間取り部分の全体像がほぼ決定します。

このように「スピード持久力養成期」は、家の建築同様、マラソンを目指していく上で具体的にどの程度の記録を目指せるかが、ほぼ見えてくる最も重要な期でもあります。具体的な前期との大きな相違点は、身体の感覚を頼りにゆっくり長くの走り込みから、ある設定タイムを守りながら目的の距離を走り込んでいく点です。つまり、同じ走り込みでもタイムと距離に拘束されていく感じになっていきます。

と、言いながら前期の「基礎体力養成期」で走り込みが不足気味のランナーが、この「スピード持久力養成期」で一気に走り込むと、怪我や故障に悩まされて思うような走り込みができなくなるケースも多々あります。この場合は、焦らずもう一度「ゆっくり長く」の走り込みに戻って基礎から積み上げていきましょう。

さて、それでは「スピード持久力養成期」のポイントを、ハード面とソフト面の2点から大きくまとめてみます。

はじめにハード面として、◆ポイント1).長い距離を安全かつ正確なスピードで走り込むための、正確なトレーニングコースの設定及び確保。(トラック含む)

次にソフト面として、◆ポイント2).目標のマラソンを目指したペース走の適切な距離と、そのペースの設定。(20k~40k程度のペース走)

次回からは、それぞれのポイントについて考えていきます。

つづく。

期分け・20

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今回も前回の続きで「長く」について考えていきますが、「基礎体力養成期」の最後となります。

はじめに、「長く」の目安は「2時間」と話しましたが、ひと口に2時間と言っても長時間です。実際にたったひとりで黙々と2時間走り続けることができるランナーなら間違いなくマラソンに対する適正はあると言えます。少なくとも私はそう判断します。

一方で、一度に2時間も走り続けることが可能だとしても、実際は日常生活の中でその時間を確保する方が難しいとも言えます。したがって、2時間を連続で走り続けるには一般的には週末等の休日になります。しかし、平日でも出勤前の早朝や仕事後のアフターファイブをうまく活用することで、1日のトータル走行時間として2時間を確保することは可能です。

このように何事も工夫していくことは大切ですが、はたして2時間を連続で走るのと、2時間を2回にわけ、トータル2時間とするのでは同じような効果を期待できるのでしょうか?

判断の難しいところですが、特に走歴の浅いランナーや比較的体重の重たいランナーにとっては、2回にわけることで身体や足腰等への負担を軽減することが可能になります。同時に、無理なく走行距離をのばしていくことが可能となるので、ダイエット効果も期待でき、同時に基礎体力をアップさせることが可能となります。

さて、私の経験ですが、実はスタミナが付くか否かの境目の時間は、2時間よりも少し短い「100分」前後になります。実際に走っていると感じますが、60分をこえて80分連続で走るのも90分連続で走るのも同じような疲労を感じます。しかし、あと10分足して100分をこえてくると、スタミナが枯渇してきたことを感じてきます。このように100分連続で走り続ければ2時間と同じような効果を期待できます。

あらためて基礎体力養成期は、「ゆっくり長く」走ることで、マラソンを完走するためのベースとなる体力(スタミナ)をじっくりと養成していきます。それは、仲間と雑談できるスピードで2時間(≒100分以上)走り続けることがひとつの目安となります。そして、このようにじっくり走ることで、マラソンを走るために必要不可欠な「忍耐力」も培われていきます。

既に何度か話していますが、マラソンは球技のように道具を使用せず、単純に長時間走り続けるスポーツです。そのため技術的な部分は極端に少なく、自分自身の「身体と心」だけで勝負していくシンプルなスポーツです。だからこそ、基礎体力養成期では「ゆっくり長く」走ることを通じて身体だけでなく、「心のスタミナ」も養成していくのです。

つづく。

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