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2010-05

再びトレーニング計画・7

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年間を通じて10kより短い距離のレースを敬遠傾向にある市民ランナーは意外に多く、マラソンの記録が停滞するひとつの原因になっているのでは?

それは、燃料タンク(スタミナ)の容量を大きくするためのトレーニングやレースが中心となり、排気量(心肺機能)をアップさせることが疎かになっているから?

以上のような話しを前回しました。では、10kより短い距離のレースを走ることはマラソンと、どんな点が違うのでしょうか?・・・幾つか思いつく点を書き出してみます。

◆1).スタートから速いペースで走りだす(手足を素早く大きく動かす)。◆2).脚にダメージがくる前に、前半から心臓がバクバクして苦しくなってくる(呼吸が「ゼーゼーハーハー」となる)。◆3).後半は手足がしびれたような感覚も出てきて、うまく動かせなくなってくる(乳酸が蓄積されてくる)。・・・以上のように大きく三つのことが直ぐに思いつきますが、皆さんはいかがでしょうか?

もちろん、ゆっくり長く走り続けても上記のような状況になることは、ほとんどありません。むしろ、ゆっくり長く走るトレーニングが中心になっている人の多くは、短い距離のレースを走っても上記のような状況を体感できない人もいます。別の見方をするなら、呼吸が苦しくなる状態まで手足を動かすこと(追込むこと)が、できないとも言えます。また、走る距離を短くしていってもそのペースは、常にマラソンと同じになってしまう人も意外と多く見受けられます。

実は、それらのことがマラソンの記録を停滞させる大きな原因のひとつなのです。つまり、スピードが無いのではなく、「スピードの出し方を身体が覚えていない」のです。そこでこのスピード養成期は、短い距離のレースを積極的に走ることで、スピードを上げて走ること(追込むおと)を体感し、その動きを覚えるのと同時に心肺機能もより高めることを目的としていきます(単に短い距離の記録更新を目指すのではありません)。

短い距離のレースを積極的に走ることとは即ち、◆4).手足を大きく素早く動かすことで、逆にランニングフォームの改善と安定につながる。◆5).ゼーゼーハーハーと苦しむことで、心肺機能の強化につながる。◆6).手足がしびれるような状態から更に頑張るので、乳酸に対する緩衝能力が高まり、持久力のアップにつながる。※専門的な話しは割愛します。

スピード養成としてとらえた短い距離のレースは、マラソンのようにペース配分や設定ペースを細かく考えるより、スタートから積極的にスピードを上げて走ることが重要なポイントのひとつなのです。

つづく。

再びトレーニング計画・6

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引き続き「スピード養成期」のレース選択についてです。さて、前回は「短い距離のレースを敬遠傾向にある人が意外に多い」と、話しをしました。では、10kより短いレースに出場することが、スピード養成につながるのでしょうか?

その前に、そもそもスピード養成とは、単に短い距離を速く走れるようにするためのことなのでしょうか?

話しは前後しますが、スピードとスタミナについてのイメージをあらためて簡単にまとめてみます。最初に、自分自身の身体を自動車に例えて、次のようにイメージしてみます。◆1).スピードが出せる=エンジンの排気量が大きい(心肺機能)。◆2).長く走れる=燃料タンクが大きい(脚力)。

もちろん専門的な見解とは違っている部分もありますが、上記のように大きく二つをイメージして下さい。そして、自分自身の身体を軽自動車に例えるとしたなら、排気量は660ccと小さいのですが、近所を走りまわるには、とても燃費が良く効率的です。

ところが、高速道路を使って遠い場所へ移動したとします。このとき、近所を走っていたときには感じなかったことを幾つか感じるはずです。◆3).遠くに速く到着しようと、スピードを上げて走行すると、排気量が小さいこともあり車体の安定性に欠け、長時間の運転は疲れやすい。◆4).燃費そのものは良いのだが、燃料タンクが小さいので、遠くへ移動する場合、途中で何度か給油する必要があり、結果的には到着時間も遅くなる。

以上の点については、誰もが感じることと思います。そして、これらの問題を解消する方法は至極当然のことながら、排気量と燃料タンクの大きな自動車に乗り換えることですね。

では、上記の例を再び人の身体に戻して考えたとき、実は同じようなことになります。つまり、遠くに移動することをマラソンとし、そのマラソンを速く走りきるためには次の要素が必要不可欠になります。◆5).エンジンの排気量をアップする=心肺機能をアップする。◆6).燃料タンクを大きくする=脚力(スタミナ)をアップする。

実は市民ランナーの多くは、上記◆6を目的としたトレーニングに終始しているケースが一般的な傾向なのです。具体的な例として、日々のトレーニングは仲間たちと常にゆっくり長く走ることがメインとなり、レースについては年間を通じてハーフマラソン以上の距離が中心になっているケースです。

その結果、一年間にマラソンを何度も完走したり、マラソン以上のウルトラマラソンに挑戦したりと、驚異的なスタミナを身につける人も見受けられます。ところが、マラソンの記録については、ある記録で頭打ちとなり、たくさん走るほど停滞してしまう人も意外と多いのです。

その原因のひとつとして上記の自動車に例えるなら、燃料タンクを大きくすることが中心となり、もうひとつの排気量をアップするトレーニングが圧倒的に不足しているからなのです。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

つづく。

再びトレーニング計画・5

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今回からスピード養成期のレース選択について考えていきます。

さて、マラソンを完走したことのある皆さんは、初レースはどんな距離だったでしょうか?5kや10k以下の短い距離のレースでしょうか?あるいは、最初からマラソンに挑戦したのでしょうか?

個人的には、マラソンブームの影響も手伝って、初レースからハーフマラソンやマラソンに挑戦する人が多くなったと感じているのですが、いかがでしょうか?一方で、最初は5kや10k以下の短い距離のレースに出場するのですが、一度マラソンを経験するとハーフマラソンより短い距離のレースを敬遠する人は、もっと多くなったと感じます。

それは、このマラソンブームにより、全国各地で開催されるマラソン大会が増えた影響も大きく、年間を通じて誰でも手軽にハーフマラソンやマラソンを何度も走ることが可能になったことでもあります。

実は、このように一度マラソンを経験した後、ハーフマラソンより短い距離のレースを敬遠する人は、ランニング歴の浅い人ばかりでなく、サブスリーを達成しているようなベテランランナーの人にも多く見受けられます。

そして、このような人たちに多い傾向として、もう何年もの間、マラソンの自己記録更新を達成できずにいるケースです。具体的には、2回目から3回目のマラソンでマークした自己記録を長く更新できないでいるパターンです。そして更に、日々の走行距離を増やしているのにも関わらず、それが記録更新へと結びつかないどころか、故障や怪我を繰り返していく負のスパイラルに苦しんでいる人もいます・・・。

このように、マラソンの記録更新を大きな目標に掲げ、年間を通じて何本もマラソンを走ることが逆に仇となり、長期低迷につながっている人が意外と多いのも事実です。同時に、年間を通じて多くのマラソンを走ることで、マラソンに対するモチベーションが著しく低下したり、バーンアウトしてしまう人も残念ながら見受けられます。それは、長期低迷ではなく、好きではじめたマラソンを長期離脱することにもなりかねません。

そんなトラブルを防止する意味からもこのスピード養成期のレース選択は、マラソンを目標としていく上で、とても重要なポイントにもなるのです。

つづく。

再びトレーニング計画・4

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今年のGWは記録的な晴天に恵まれましたが、予定どおりのトレーニングは実施できたでしょうか?また、GW中のレースでは目標タイムを達成することはできたでしょうか?

さて、スピード養成期をトレーニングとレースの両面から考えていく前に、参考例として私がコーチする女子選手たち(市民ランナー)が、GW中にスピード養成期の一環として出場したレースを簡単に振り返ってみます。

◆2010年4月29日~5月5日レース実績(女性市民ランナー)    
  選手名 マラソン記録    4月29日    5月1日    5月2日    5月4日    5月5日
 1 M ・ K A   2.55.21 ◎10.54/3k        →        →        → ○18.43/5k
 2 M ・ S A   2.54.07        →        →        → ●38.47/10k        →
 3 M ・ Y A   2.52.09 ◎31.01/8k        →        → ●38.01/10k        →
 4 A ・ K A   2.49.24 ◎19.11/5k        → ○18.55/5k        → ○19.28/5k
 5 M ・ K O   2.38.51 ◎27.38/8k ○9.28/3k        →        →        →
  ◎=駅伝、○=トラック、●=ロード、→=出場無      

上記に記載した5名の女子選手たちは、マラソンをサブスリーで走る市民ランナーです。初心者の人からすると、ある意味、速すぎて参考にならないと思ってしまうかもしれません。しかし、彼女たちも最初からサブスリーを達成できたのではなく、地道な走り込みを一年間継続することからはじめ、それを何年も積み重ねてきた成果なのです。

そして、そのトレーニングの基本となる考え方が期分けです。もちろん、5選手たちの年間目標は間違いなくマラソンです。この大きな目標に向かっていくための第一ステップとなるのが、このスピード養成期となります。

最初にこの点をしっかりと理解した上で、5選手たちのレース結果を簡単に振り返ってみます。※GW中は、連日30度前後の厳しいコンディションとなり、記録的には低調でした。

◆1).M・KA選手:3月のマラソンは不調だったが、その疲労もうまく抜けており、トラックの5千メートルで久々の自己記録更新を狙えるスピードが戻りつつある。◆2).M・SA選手:2月に脚の違和感を感じ、狙っていた3月のマラソンを泣く泣く断念。その後、脚も順調に回復し、4月の5千メートルでは自己記録を更新。現在は、5選手の中で最も好調。◆3).M・YA選手:2月のマラソンで自己記録更新後、持病の貧血が出て、4月中旬まで回復優先メニュー。ようやく貧血も改善し、このGWで調子も徐々に回復。6月のレースは期待大。◆4).A・KA選手:狙っていた3月のマラソンが悪天候のため中止となり、肉体的にも精神的にも落ち込んでいた。しかし、4月からレースに積極参戦することで、調子を戻しつつある。◆5).M・KO選手:2月マラソン後、思い切って練習を落としたことが良いリフレッシュとなり、スピードアップにつながっている。

以上がコーチの視点から見た各選手の状態です。更に5選手たちに共通しているのは、マラソン結果の良し悪しに関係なく、スピード養成期への切り替えを自ら積極的におこない成果をあげている点です。それは、5選手たち全員が、期分けについての意味やスピード養成期の目的や重要性をしっかりと理解し、それを実際の行動(トレーニング)に移行できるからなのです。

つづく。

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