Home > Archives > 2008-06

2008-06

トラックレース

皆さんはトラックレースを走った経験はあるでしょうか?練習会等でペース走やスピード練習のため、トラックを走ることはあっても、トラックレースを走る機会は意外と少ないのでは?また、トラックは単調で走りにくく、ロードは景色が変化し、記録を出しやすいと思っている方も多いのでは?

はたして実際の世界記録や日本記録はどうなっているのでしょうか?そこで、まずは公認記録として扱われている1万m(トラック)と10k(ロード)の記録を比較してみます。

(1).世界記録男子1万m/10k:26分17秒(2005年)/27分02秒(2002年)。(2).世界記録女子1万m/10k:29分31秒(1993年)/30分21秒(2003年)。(3).日本記録男子1万m/10k:27分35秒(2001年)/28分05秒(2007年)。(4).日本記録女子1万m/10k:30分48秒(2002年)/31分44秒(1996年)。・・・以上のように、全てにおいてトラックの記録に軍配があがっています。しかし、これについては、1万mがオリンピック公式種目であるのと同時に、公認のロードレース大会で10kを走る機会が圧倒的に少ないことも影響していると推察されます。

続いて、20k以上の公認記録についても同じように比較してみます(但し、男子のみ)。

(5).世界記録男子2万m/20k:56分26秒(2007年)/55分48秒(2006年)。(6).日本記録男子2万m/20k:57分48秒(1985年)/57分24秒(2007年)。(7).世界記録男子3万m/30k:1時間29分19秒(1981年・瀬古選手)/1時間28分00秒(2005年・松宮選手)。・・・と、なっています。実は、3万mと30kの世界記録については、共に日本選手が保持しています(素晴らしい!)。そして、今度は全てにおいてロードの方に軍配があがっています。しかし、1万mと10kを比較した時より、走る距離が2倍以上になっているにも関わらず、そのタイム差は縮まっている感じがしますね。

そこで、公認記録として扱われている最長距離である100k(10万m)についてはどうでしょうか?男子100kロード世界記録は、「6時間13分13秒(1998年・砂田選手)」と、なっています(これまた日本選手です!)。では、トラックの記録は?あまり知られていませんが、驚くことに、「6時間10分20秒(1978年)」と、凄い記録が残っています。つまり、最も苦しくて長い100kについては、景色が単調なトラックの方が速いのです!

以上、いろいろな種目を比較してきましたが、トラックとロードとの最大の違いは、正確な距離と時間をより細かく把握できるかどうかの差です。よって、トラックの方がより細かく正確なラップタイムを刻むことが可能になります。もっと言うと、ある記録を目指した時、出足から正確なラップタイムを把握しながら走ることが可能になるので、無駄な動きもなく体力を温存しながら走ることができます。(ある目標タイムに対し、最高率な走りが可能となるので、実は長距離になるほどトラックの方が有利?)

このことは、日々の練習のなかでも応用できます。長距離走を実施する時もあえてトラックを使用することで、正確なラップを刻みながら体感的にこれは何分ペースと、身体で覚えていく作業がロードより効率的になってきます。また、トラックを周回するので、誰かにラップタイムを計測してもらうことも簡単になります(給水も簡単)。そこで、何人かでトラック練習を実施する際は、二人ずつのペアを作り、交代でお互いのラップタイムを計測したり、給水を渡したりする方法はいろいろな意味で効果的です。そして、この方法なら専門コーチ等が不在なクラブチームの方でも正確で効率的な練習を継続していくことも可能になります(是非ともお試しを)。

・・・もしも、トラックでフルマラソンの記録会があったなら、細かいラップ管理と精密なペースメークが可能となり、今よりもっと凄い記録が出るかもしれませんね(笑)。

調整

これからの季節は、いうまでもなく「暑さ」との戦いでもあります。給水はもちろん睡眠時間等にも注意し、体調管理に努めてほしいと思います。また、レースに向けた最終調整によっても記録は大きくかわります。調子が今ひとつと感じている方も最後まであきらめず調整してほしいところです。

さて、その調整の目的は、疲労を抜いて調子を上げることです。ところが、頭で理解していてもうまく実行できないのが調整でもあります。特に、レース一週間前あたりになると、急に焦る気持や不安な気持が強くなっていきます。そして、これまで一度も経験したことのない「スピード練習」や「ロング走」を突然強行。その結果、レース数日前の時点で、肉体的にも精神的にも調子がピークに達し、本人は自信を持ってレースに挑むのですが・・・。結果は、スタート直後から身体全体が重く、後半になると呼吸も苦しくなり、ボロボロ状態でゴール・・・。

如何でしょうか?皆さんの中にもこんな経験をされた方は意外と多いのでは?

原因は言うまでもありませんね。典型的な調整ミスです。特に、レース一週間前は、どんな一流選手でも不安になります。ところが、この不安な気持と裏腹に身体は休養が必要です。実は調整のポイントは、このギャップをどうやってコントロールしていくかなのです。つまり調整の基本は、「不安になったら休む」です。まずは、この点をしっかりと頭に入れ、レース一週間前は休養第一であることを再認識してほしいと思います。

具体的なレース一週間前の調整例として、月曜日:完全休養、火曜日:軽めのジョギング、水曜日:ペース走(出場レースの1/4から1/6程度の距離を目標のレースペースで)、木曜日:軽めのジョギング、金曜日:完全休養、土曜日:軽めのジョギング+百m(8割程度のスピード)×数本、日曜日:レース。(詳細は割愛します。)

もちろん個人差もあり、このとおり実施してもうまくいかない場合も多々ありますが、もうひとつ大切なことは、その経験を次のレースに活かしていくことです。例えば、レース前日は身体が軽かったが、レース当日は重かった。逆に、レース前日は重かったが、レースでは嘘のように身体が軽くなった・・・等々の経験を練習日誌に記録し、次回のレースに向けた調整で修正していくのです。

調整は、どんなレベルの方でも難しいことですが、何事も経験です。そして、最初から練習の成果をレースで発揮することは難しいことです。また、調整に絶対と言った方法はありません。それぞれが試行錯誤しながら自分自身の身体の特性に合った調整方法を構築していくことが大切です。それには時間もかかりますが、ランニングの醍醐味でもあるのです。

北京へ・2

北京パラリンピック視覚障害者マラソンの日本代表選手が正式決定しました。あらためて紹介すると、高橋勇市選手(43歳)、加治佐博昭選手(34歳)、新野正仁選手(51歳)の3名。高橋選手は、前回のアテネパラリンピック金メダリスト(全盲の部)であり、今回の北京で前人未到の連覇を狙います。そして、昨年11月の福知山マラソンで、その高橋選手を終盤激しく追い上げた成長著しい加治佐選手。更に、4月のかすみがうらマラソンで自己記録を更新したばかりの新野選手。今回も史上最強の日本代表選手を選出することができました。そして、かくいう私は、視覚障害者マラソンのコーチとして北京に帯同し、代表選手及び伴走者達のサポートをさせて頂くことになりました。

早速、先日の6月7日(土)から1泊2日の日程で、千葉県富津市富津公園において、日本代表選手の第2回強化合宿を実施しました。この富津公園では、過去に何度も合宿を実施しているので、選手達もコースを熟知しており、今回も精力的に走りこんでいました(高橋選手は私用のため、今回は不参加)。

さて、視覚障害者マラソンの伴走は、どなたでも簡単にすることができます。しかし、日本代表選手の伴走はある意味特殊で、やはりそれなりの走力が必要となります。また、伴走者の走力が選手より高ければ高いほど伴走者自身のゆとりとなり、同時に選手のゆとりにもなります。これは、至極当然の話ですね。では、走力のある伴走者が選手をサポートすれば、どんな選手でも好成績をおさめることができるでしょうか?残念ながら答えは「No」です。実は、ここが視覚障害者マラソンの最も難しい点でもあります。

それは、選手と伴走者が歩調と同時に、「心」を合わせる必要があるからです。特に、国際大会となれば、何日間も行動を共にします(更に同じ部屋で、24時間全てを共にする)。また、選手は伴走者がいないと一歩も走れませんが、伴走者はその選手が走っていなければ根本的に必要ありません。このように、選手と伴走者は微妙な距離間を保っている関係でもあります。もっと言うと、些細なことで、選手と伴走者の関係は亀裂が入りやすく、コンビとして破綻してしまうこともあります(お互いが不信感を持つと、一歩も走れなくなる)。

北京パラリンピックまで3ヶ月弱となりました。それぞれの代表選手と伴走者の走るリズムは、しっかりと合ってきました。あとは「心」です。それには、選手と伴走者がお互いにもっともっと深く掘下げた部分で理解する必要があります。つまり合宿等で、お互いの生い立ち話も含め、何でも積極的に語り合うことが重要です(特に伴走者の方から)。すると、お互いの生々しい話も飛び出し、人の痛みや情けを知ることができます。そして、情に流されそうになる気持が、どんどん強くなって行きます。ところが、その気持が強くなってくるほど、過酷な状況下のレースや練習では逆に、的確な判断や伴走が可能になってくるから不思議です。そうやってお互いの「心」がひとつになった時、はじめて世界との勝負が可能となります。

だから、選手と伴走者を結んでいる伴走ロープを、「絆」と言うのです。

皆様の絶大なるご声援をお願い申し上げます!

ランニングブーム・3

様々なランニングコース設定と言っても実は、ほぼ二つのコースパターンに集約されます。ひとつ目は、「往復コース」です。これは、ある地点まで走って行き、折り返した後、再び同じコースを返ってくるパターン。そして、ふたつ目は、「周回コース」です。これについてもある地点からスタートし、周辺をグルッとまわって戻ってくるパターンです。往復コースとの違いは、一般的に同じ道を通らず、スタート地点に戻ってくる点です。実は、各種ロードレース大会やマラソン大会のコース設定もほとんどの場合、このどちらかに当てはまります。つまり、皆さんも日頃から自然と慣れ親しんでいるコースなのです。

さて、私の経験談になりますが、三交代勤務(夜勤有)をしながら走っていた20代前半の中心的な練習は20k走でした。この時のコースは、会社の寮からスタートし、10kを折り返すコース設定。そのコースは、前半の約6k付近まで市街を走ります。そこから田んぼの中にある道を通り、どんどん田舎へ走って行きます。そして、折り返し地点は何と墓地(汗)。このコースは夜中に走っても昼間に走っても、折り返し付近から自然に?ペースアップし、後半は嫌でもビルドアップする走りとなりました(笑)。また、このコースを繰返し走ることで、どんな状況でも後半ビルドアップする走り方が、自然と身に付いていきました。当時の練習は、このコースでの20k走を週に3回から4回程度実施することが中心でしたが、マラソンの記録も2時間21分まで短縮することができました。よくこんな練習で・・・と、私自身も当時思っていましたが、冷静に分析してみると・・・。

(1).練習時間を確保するため、簡単な体操だけでスタート。そのため前半からとばせず、逆に故障防止になった。(2).6k付近まで市街を走るので、人目が気になり途中で妥協しても引き返せない。(3).折り返し地点が墓地だったので、嫌でもペースアップ。(4).ペースアップした後、折り返して市街に戻ってくるので、再び人目が気になり、上げたペースを落とすことができない。(5).コース全体の流れが自分の性格にマッチしていた。・・・以上のことから故障防止をしながら後半はしっかりとペースアップする理想的なビルドアップ走となっていたのです。しかも人目を気にすることで、マンネリ防止もできています。当時の私は、偶発的にこのコースがマッチし、繰返し走ることで走力がアップしていきました。(実は、当時トラックでのスピード練習は全く実施せず、このコースでの20k走だけで、5000mも初めて14分台に突入しました。)

ランニングは、単純動作の繰返しだけにマンネリ化し、直ぐに飽きてしまうケースが多々あります。そこで、自分自身の生活環境や生活リズムに合わせて走行時間や距離を自由に調整できるコースや起伏のあるコース設定。更には自分自身の性格も加味したユニークなコース等々、複数のコース設定をしておくことは、日々継続していく上で重要なポイントとなります。特に、自分自身の性格や特徴を加味したコース設定ができれば、より一層の成果が期待できると思います。また同時に、コース設定を考える上で、自分自身の簡単な性格診断をしてみるのも有効な方法かもしれませんね(笑)。

Home > Archives > 2008-06

Search
Feeds

ページの先頭へ