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2016-06

マラソンのスピードについて・10

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【マラソンのスピードについて・10】ペース走についてですが、前回ふれたAT値についてもう少し専門的に説明しておきます。

はじめに、AT値はトレーニング強度の基準となり、このAT値について理解しておくことはマラソンを目指していく上においても重要になります。

さて、誰でもゆっくり走っているときは苦しみもなく、いわゆる有酸素的エネルギー機構で生成されるATP(アデノシン三燐酸)のみでランニングに必要なエネルギーを供給できています。

ところが、ランニング速度が速くなってくると、ATPだけではエネルギーが不足してきます。そのとき、無酸素的エネルギー機構が働き始め、同時に苦しくなってきて乳酸が多く生産されだします。その変換してくる時点をAT値と言っています。

つまり、AT値は有酸素運動と無酸素運動の境界線とも言えます。但し、厳密には線ではなく閾値(ゾーン)であり、タイムに換算すると幅もあって個人差もあります。

そして、このAT値に達する手前のスピードでペース走を繰り返すことで、エネルギー代謝能力が向上し、運動中の乳酸産生を減少させ乳酸除去能力も向上すると言われています。その結果、AT値が向上するとも言われています。つまり、AT値が高いということは、より高強度の運動においても有酸素性エネルギーが供給され、特に持久力が必要な競技においては有利になります。

しかし、実際に自分自身のAT値を正確に測定するには専門の器具や専門家の協力も必要になります。また、AT値は閾値であるのでタイムにも幅があります。そこで、これまでの専門家たちの研究データから導かれた次のような簡便測定法を参考にします。

■AT値≒5000mの平均スピードを100%とした時、92.5%のスピード

例として5000mを20分で走る市民ランナーの場合、1000mの平均スピードは4分ちょうどで、その92.5%は、4分18秒前後で走るスピードになります。そして、上記の簡便測定法から導いた数値は、私自身の競技経験や指導経験からも概ね一致しています。

マラソンのスピードについて・9

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【マラソンのスピードについて・9】今回から「ペース走」について考えていきます。

このペース走については、既に何度もこのブログで取り上げてきており、最も多く実施されているトレーニング方法のひとつです。もちろん、本格的なマラソントレーニングに移行していく秋からも多くの市民ランナーが実施するのは、このペース走です。

しかし、このスピード養成期においてもペース走はトレーニングの要になります。但し、その距離は30kや40kと言った長い距離ではありません。そこでまずは、あらためてペース走とは何かについて再確認します。

そもそも今回のペース走は、5000mのスピードを高めるための位置付けになります。具体的な方法としては、5000mより長い距離を一定のペースで走るトレーニング方法です。そして、走る場所についてはトラックにこだわらず、ロードや公園等、距離のわかるコースであるならどこでも問題ありません。

さて、ある一定のスピードでスタートし、少しずつペースを上げていくと、ある地点から代謝産物である乳酸が蓄積されだし、苦しさが急に増してくるように感じてきます。そして、この地点を専門的には、AT値(無酸素作業閾値)と言っています。

このAT値にあたるスピードでペース走を繰り返すと、乳酸が蓄積してくる地点を遅らせることができるようになってきます。つまり、乳酸が蓄積くる地点を遅らせることで、より速いスピードで走れるようになるのです。

そこが、このトレーニング方法であるペース走の最大の目的になります。

次回からは、更に掘り下げていきます。

マラソンのスピードについて・8

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【マラソンのスピードについて・8】前回までは、トレーニング方法1のインターバルトレーニングについて掘り下げてきました。これはトレーニング方法2にあげたレペティショントレーニングにも共通している部分があります。

話は前後しますが、あらためてインターバルトレーニングの効果とリスクをまとめてみます。

はじめに、インターバルトレーニングは時間対効果が高く、最も効率的なトレーニングのひとつと言われています。具体的な効果としては、心臓や血管の循環器系能力が向上します。更に、いわゆる遅筋と言われている筋肉の持久力向上だけでなく、速筋に対する持久力向上の効果もあると言われています。

一方で、その分の負担が大きいので、やりすぎると故障や怪我等の逆効果にもなります。具体的には、走速度が速くなるにしたがい、着地時の衝撃が大きくなり、筋肉や関節へのダメージが大きくなります。同時に、脚を軸にした活動筋へ血液をたくさん供給するので、血液量の少なくなった内臓組織にも相当なダメージを与えると言われています。

また、インターバルトレーニングは体内に蓄えてある糖を利用する能力が向上します。しかし、マラソンは逆に体内の糖をいかにして保存していけるかが重要なポイントとなります。そのため、マラソンを目指すランナーにとってインターバルトレーニングは逆に糖を利用する能力を向上させてしまうので、果たして本当に必要なのかを問う専門家もいます。

インターバルトレーニングは様々な効果を期待できる魔法のようなトレーニングですが、その分身体のあらゆる器官に強いストレスが加わります。この点をよく理解し、トレーニング強度や頻度、個人差をよく見極めた上で実施することが成功のカギとなります。

マラソンのスピードについて・7

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【マラソンのスピードについて・7】今回はポイント3についてです。

インターバルトレーニングのリカバリーについてです。いわゆる1本目の疾走から2本目までの「つなぎ」の部分です。具体的にはスロージョギングでつないだり、ウォーキングしたりと、身体を休める休息部分に相当します。

さて、インターバルトレーニングの強度を上げる方法として、大きく2つあります。ひとつは、疾走する距離を変えたり、その設定タイムを速くしていく方法。もうひとつは、疾走する間のリカバリー(つなぎ)を短くしていく方法です。

そして、多くの市民ランナーが実践しているのは、疾走する距離を変えたり、その設定タイムを変えることで強度を調整している方法ではないでしょうか。ところが、いつも仲間から遅れたり、決めた本数を最後までやり遂げることができないと感じている方は意外と多いとも感じますが、いかがでしょうか。

実は、インターバルトレーニングの強度については、疾走する間のリカバリーに変化をつける方が、追い込みすぎることもなく効果的と言われており、私自身の経験からもそう思います。具体的には、疾走するスピードは前回のブログに記載したとおり、5000mのタイムを目安にし、リカバリー(つなぎ)を正確に管理するのです。

例として、400mを疾走する場合、次の400mまでのリカバリーを200mのジョギングでつなぐ時、そのジョギングのスピードを正確に測り、一定に保ちます。つまり、400mをある設定タイムで疾走し、200mのジョギングを1分としたならそのタイムで正確に走り(つなぎ)、次の400mを疾走します。

そして、強度が軽すぎると感じるなら、このリカバリー(つなぎ)の距離や時間を短くしていき、強度を上げていくのです。但し、市民ランナー方の場合、リカバリーの距離を短くしていくと、今度は一定のスピードでジョギングすることができなくなってきます。そのため、リカバリーについては、ある距離をジョギングでつなぐ方法ではなく、時間のみで管理する方法を推奨します。

具体的には、400mを疾走し、次の400mまでのリカバリーを距離ではなく1分なら1分と、時間のみで管理します。したがって、ゴール地点が次のスタート地点になり、グループで実施していてもバラバラになることを防止できます。同時に個々の体力に合わせ、それぞれがジョギングしたりウォーキングしたりと、同じ1分間でもそれぞれのレベルに合わせたリカバリー(つなぎ)も可能になると考えます。

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