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2013-02

東京マラソン2013

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【東京マラソン2013】ランニングブームの火付け役となった、今年で7回目の東京マラソンが、2月24日に開催されました。今年の大会からワールドマラソンメジャーズ(WMM)に加わったことで、名実ともに世界のトップレースとなりました。特に、海外からの男子招待選手は、2時間4分台の記録を持つ世界のトップランナーが4名も出場し、記録への期待はこれまで以上となりました。

ところが、当日の天候は晴れたとは言え、北風が強く気温も低めで、記録を狙うには厳しいコンディションだったと、沿道からは強く感じました。案の定、先頭集団はスローペースな展開となりましたが、30k過ぎから爆発的なスパートを見せたケニアのキメット選手が2時間6分50秒のコースレコードで優勝。日本人トップは、後半の粘り強さを見せた前田選手が2時間8分00秒の好記録で4位に入りました。

キメット選手の自己記録は2時間4分16秒、前田選手は2時間8分38秒と、4分以上の開きがあります。しかし、キメット選手の爆発的なスパートに対し、日本人ではたったひとり粘り抜き、1分弱の差でゴールした前田選手の走力は世界と十分に戦える可能性を示したと言えます。

また、30kまでのペースメーカーに対する厳しいコメントも見受けられましたが、個人的には好アシストだったと思います。なぜなら、過去の国際大会においても、厳しいコンディションの中で無理に設定タイムを貫いた結果、記録を狙った先頭集団全員が後半失速し、逆に先頭集団に付けなかった後方の選手たちが上位を独占してしまったケースは意外と多いからです。

今回、結果的には30kまでペースを上げられなかったことで、20名近い大集団を形成しました。同時に、有力選手たちがその集団の中で体力を温存できたことが、30k以降の爆発的なスピードを生み出し、好記録へつながったと感じます。

さて、私の選手たち(市民ランナー)も厳しいコンディションの中、自己の記録へ挑戦しました。特に、出産後はじめてのマラソンとなったママさん主婦ランナーのFさんは、「3時間30分突破」を目標に前半からキッチリと目標ラップタイムを死守していきました。そして、最も苦しくなる30k以降も日本人トップとなった前田選手に引けを取らない粘り強さと、得意のラストスパートを発揮し、「3時間29分43秒」の大記録でゴール!出産後の大きな目標だった別大マラソンの切符もガッチリと手にする見事な快走でした。

マラソンは自分自身の目標に沿ったラップタイプをしっかりと刻んでいくペース感覚は重要な要素となります。しかし、当日のコンディションやレースの流れを読んで、目標ラップタイムを上下に修正しながら粘り抜く力は更に重要な要素です。今回の東京マラソンは、その力の差が記録と順位に大きく反映されたマラソンだったと…。

期分け・61

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【期分け・61】前回までの話しで、AT値(無酸素性作業閾値)や、LT値(乳酸性作業閾値)から導いた乳酸の蓄積しない境界強度(速度)のペースで走り込むと、持久力も効率よく向上していくことが、理論的には理解することができました。

ところが、距離走を30k~40kとマラソンに近づけた場合、そのペースも実際のマラソンペースとほぼ同じことになります。そのため、マラソンを目標にした走り込みとしてのペースは、常に目標のレースペースでトレーニングを実施することにもなり、逆に強度が強すぎる傾向になります。もちろん、怪我や故障のリスクも高まることになり、単純に効果的とは言えません。

更に、スタミナをつけるために走り込みを実施しているにも関わらず、最初から目標のレースペースになるため、マラソン経験の少ないランナーほど途中で失速してしまうリスクも高くなります。では、マラソンを目標にした場合、どんなペース設定で走り込んでいけば良いのでしょうか?

冒頭のペースは、5kの記録を基準にすると、90%~93%のペースです。また、体感的には5kを全力で走った感覚を「きつい」とした場合、「ややきつい」となります。同時に、理論上はこのペースでマラソンを走り切れる計算にもなります。しかし、これより更に落としたペースの方が、マラソンに向けた走り込みは、失速のリスクも少なく効果的と予想できます。

具体的には、上記同様に5kの記録から導いていきます。

◆目安1).5kの記録を100%としたときの83%~87%の速度。◆目安2).5kを全力で走ったときの感覚を「きつい」としたとき、「楽である」と感じる速度。※今回も心拍数については割愛します。

以上の2つがマラソンに向けた走り込みにおいて、スタミナアップに効果的なペースとなります。実は、ここからの考え方は各種専門誌や専門コーチ毎による見解が微妙に異なってくるところです。

いわゆるマラソンに向けた「脚づくり」と、呼ばれているゾーンでもあります。つまり、マラソンを攻略していく上でのノウハウ的な要素が色濃く出てくるところです。コーチたちの手腕が問われる部分でもあります(汗)。

もちろん、私が今回示した数値が絶対ではありません。しかし、少なくとも私自身の経験や、私自身の指導経験からは効果的であると考えます。

つづく。

期分け・60

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【期分け・60】前回は、マラソンでサブスリーを達成するための理想的なスピードを5kの記録から考えました。その結果、理論上は5kを19分30秒で走れるランナーなら、5kを21分15秒のペースでマラソンを走り切れる計算となり、サブスリー達成も可能と…。

ところが、実際のマラソンでは、そう簡単にはいきません。つまり、計算上なら乳酸が蓄積しない境界強度のペースですが、3時間前後も走り続けると、話しはかなり違ってくるからです。すなわち、冒頭の計算どおりにマラソンを走るためには、もう少し別のアプローチが必要です。それは、3時間前後も走り続けるためのスタミナ(持久力)を高める走り込みです。いわゆる「脚づくり」と、言われる走り込みです。

さて、ここで勘違いをしてほしくないことは、5kのスピードを否定しているのではありません。やはり、スピードは必要不可欠です。しかし、マラソンを走り切るためには、スピード以上にスタミナがより重要となるのです。

少し視点を変えると、5kを速く走れるスピードがあっても、単純にそのスピードを距離にして8倍以上もあるマラソンまで引き延ばすことは困難です。しかし、マラソンを確実に走り切れるスタミナは、5kと言う短い距離に凝縮して一気に吐き出すことは可能です。つまり、スタミナをスピードとして活かすことができます。(スピードが付いたらスタミナもアップした=×、スタミナが付いたらスピードもアップした=〇)

よく箱根駅伝を走るようなエリートランナーたちやその関係者たちが、若いときにスピードを高め、それから距離をのばしていく方法を推奨しています。しかし、冷静に分析していくと、それは理論的には正しいのですが、過去にそのような方法でオリンピックのマラソンまで到達したランナーは、残念ながらほとんど見当たりません。(かつての瀬古選手や宗兄弟をはじめ、過去のオリンピックランナーの多くは、20代前半からマラソンとトラックを両立していました)

もちろん、個人差もありますが、スピードを付けた後に、スタミナを付けていく流れは理想的ですが、現実的には移行する過程におて膨大な時間と失敗(失速)を繰り返すリスクが高いと感じます。その結果、移行する過程において選手自身のメンタル面の方が、肉体より先にバーンアウト(燃え尽きる)してしまうケースも意外と多いのです。

そのため、マラソンを目指していくには、スピードよりスタミナに重きを置いたトレーニングの方が賢明で、結果的にはスタミナアップがスピードアップにもつながると考えます。特に市民ランナーの場合、私の指導経験からも最初からスタミナ重視のトレーニング方法にシフトした方が、マラソンを攻略できる可能性も高まります。

さて、話しが少し脱線しましたが、次回からは「脚づくり」と言われる走り込み方法を再びAT値(無酸素性作業閾値)や、LT値(乳酸性作業閾値)から考えていきます。

つづく。

第62回別府大分毎日マラソン

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【第62回別府大分毎日マラソン】2月3日に開催された伝統の別大マラソンは、期待どおりに川内選手と中本選手の一騎打ちとなり、川内選手が見事な大会新記録で優勝しました。

さて、「あの選手は勝負強いランナー」と、よく耳にします。その強さとは、一般的には勝負に勝つことを指します。ところが、どんなに小さな市民マラソン大会においても「優勝」することは、簡単ではありません。しかし、優勝すると、大会会場にいる大勢の前でインタビューを受けたり、表彰されます。また、大会によってはテレビ中継があり、翌日の新聞に名前や写真が掲載されたりもします。これは、誰もが本来持っている「認められたい」と言う欲求を見事に満たしてくれます。そして、一度でもこの経験(蜜の味)をしたランナーは、最も苦しい勝負どころでも最後まで優勝をあきらめません。すなわち、勝負強くなります。

川内選手は、2009年の別大マラソンでマラソンデビューをし、この4年間で実に21回もマラソンを走ってきました。特に、今回の別大マラソンを含め、この1年間だけで何と11回も走っております。そして、特筆すべきは、この1年間で優勝を7回も経験したことです。私が偉そうに言える立場ではありませんが、間違いなく現役日本人選手で最も勝負強いランナーのひとりであると言えます。

また、「あの選手は安定しているランナー」と、よく耳にします。その安定とは、一般的にはどんな大会でも上位でゴールしたり、記録にムラがないことを指します。その指標のひとつにマラソンを走った回数に対し、自己記録を何回達成したかを見ます。実は、実業団選手(プロ)をはじめ、市民ランナーの中でも既に10回以上マラソンを完走しているにも関わらず、自己記録更新を一度も経験したことのないランナーは意外と多くいます。つまり、初マラソンが生涯記録となっているケースです。もちろん、最初からレベルの高い記録をマークした場合、記録を更新することは簡単ではありません。

しかし、自己記録を達成したことの無いランナーは、一発狙いの雑なレース内容が多く、自分自身の力を出し切る能力やレース状況を的確に判断する能力が不足しているケースが多いとも感じます。

中本選手は、今回の別大マラソンで10回目のマラソンでした。そして、5回目の自己記録更新です。ハイレベルな記録を目指している実業団選手(プロ)の中において、自己記録達成率が5割と言うのは、驚異的な安定感とも言えます。その真骨頂が、昨年のロンドン五輪での6位入賞と、中本選手は歴史に名前を刻みました。

このようにタイプの異なる川内選手と中本選手の直接対決が実現した今回の別大マラソンは、様々な意味で歴史に残る大会だったと感じます。また、かつての別大マラソンは、エリートランナーのみの大会でしたが、数年前から参加資格を3時間30分まで広げ、女子の部も新設しました。その結果、今大会は3千名以上のランナーが伝統ある別大マラソンに挑戦し、あらためて「新人の登竜門」と呼ぶに相応しい大会へと進化しました。

そして、川内選手と中本選手の歴史に残る一騎打ちは、一緒に別大マラソンを走った多くの市民ランナーたちへ、勇気と希望のメッセージを残したに違いありません。

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