Home > Archives > 2013-01

2013-01

第32回大阪国際女子マラソン

h25-1-27-020h25-1-27-023h25-1-27-052

【第32回大阪国際女子マラソン】今年、モスクワで開催される第14回世界陸上競技選手権の日本代表選考競技会を兼ねた今回の大阪国際女子マラソンに私の選手(市民ランナー)も2名出場しました。

当日のコンディションは、気温が6度前後で風もほとんど無いとの公式発表でした。しかし、実際に沿道で応援した感じでは、風は逆にかなり強く、途中で小雪が舞うなど、体感温度はもっと低く、厳しいコンディションだったと思います。

今回出場した私の2選手は、昨年11月のマラソンで不本意な結果に終わった選手たちです。その後、気持ちを切り替えて2月末の東京マラソンを目標に走り込みを続けています。今回、大阪での目標は、11月のマラソンで失敗したイメージを早く払しょくすべく、実際のレースを活用してペース走的な感覚で、最後までしっかりと走り切ることでした。

実は、マラソンを目指して走り込みを続けていく段階で、いくつかのタイプに選手を分けることができます。もちろん、私が経験的につかんだことなので、絶対ではありません。

◆タイプ1).スピードがあり、スタミナもある。◆タイプ2).スピードがあり、スタミナがない。◆タイプ3).スピードはないが、スタミナがある。

もっともっと細かく分類できますが、大きく分けると上記の3タイプにほぼ当てはまります。タイプ1は、誰が見ても理想的ですが、このようなタイプはマラソンの歴史を振り返っても多くはいません。では、タイプ2とタイプ3についてですが、一見するとタイプ2の方が将来性はあるように感じます。

ところが、実際に選手たちの走り込みを見ていくと、タイプ2は、「スタミナが付きにくく、スタミナが抜けやすい」と、長い距離への移行が難しいケースも多く、苦労する選手がほとんどです。逆に、タイプ3の選手は、走り込みの量と質がそのままマラソンのタイムに反映されていくケースが多く、マラソンでは安定したパフォーマンスを残している選手が多いと感じます。(市民ランナーも含めて)

また、タイプ1は、タイプ2の選手が苦労してたどり着いた姿とも言えます。しかし、実際のマラソンでは、30k以降に大きく失速するパターンを何度も繰り返し、スピードランナーと言われた多くの選手たちは、道半ばでマラソンへの移行を断念するケースも意外に多いと感じます。(市民ランナーも含めて)

さて、前置きが長くなりましたが、大阪を走った私の2選手は、タイプ2の選手です。市民ランナーですが、スピードがあり、長い距離もしっかりと走り込むことができています。しかし、実際のマラソンでは、練習量に見合った目標どおりの走りがうまくできないケースが多く、2選手ともその点は苦労しています。

はたして、今回の大阪でも35kから失速し、目標タイムでゴールすることはできませんでした。しかし、昨年11月のマラソンより調子は好転しており、2月の東京マラソンに向け、明るい兆しは見えました。

毎度のことですが、マラソンは奥が深く、うまくいかないケースばかりです。しかし、最後まで粘り強く走り込み、粘り強く最後までマラソンを走った選手が成功します。今回、優勝したガメラシュミルコ選手のように、最後の最後まであきらめない粘り強い姿を見習いたい…。

期分け・59

p1040922p1040925p1040927

【期分け・59】今回からマラソンの記録向上につながる、AT値(無酸素性作業閾値)やLT値(乳酸性作業閾値)を高めるトレーニングを考えていきます。

はじめに、このブログでも紹介した5kとマラソンの記録の関係から適切な設定タイムを算出していきます。もちろん、ひとつの例としてなので、全てにおいてこのパターンどおりになるとは限りません。この点は、予めご理解いただければと思います。

◆関係1).5k記録×2倍+1分≒10kの記録。◆関係2).10kの記録×4.5~5.0≒マラソンの記録。

今回もマラソンで「サブスリー(3時間突破)」を目指しているランナーを例にしていきます。但し、5kの記録が、サブスリーを目指すことのできる理論上の最低ラインを突破していることを条件として考えていきます。すなわち、5kを19分30秒以内(10kを40分以内)の記録をマークしていると仮定します。

次に、乳酸が蓄積していかない限界の速度を計算します。それは、5kの記録に対して90%~93%の速度なので、計算すると次のようになります。

◆計算1).19分30秒÷5=3分54秒(1kのスピード)-①。◆計算2).①の90%~93%の記録≒4分12秒~4分20秒(1kのスピード)。

上記のように1kを4分12秒~20秒の間のスピードで走り続けることが、サブスリー達成に必要なAT値やLT値を効率的に高めることにつながるはずです。同じく、5kに換算すると、21分00秒~21分40秒です。更に、5kを19分30秒前後のランナーは、21分00秒前後のペースに対して「ややきつい」と、感じるケースが多く、感覚的な部分もほぼ合致しています。(私の経験上)

また、サブスリーを達成するためのペースを1k毎に換算すると「4分15秒」なので、乳酸を蓄積させない境界強度(速度)のスピードとしては理論上も一致しています。では、5kを19分30秒で走れるランナーなら誰でも上記したとおり、5kを21分00秒~21分40秒間のペースで簡単にマラソンを走り切れるのでしょうか。

もちろん、個人差もありますが、答えは「NO」です。

次回は、この点も加味しながら更に考えていきます。

つづく。

期分け・58

h25-1-13-010h25-1-13-023h25-1-13-035

【期分け・58】今回は、AT値(無酸素性作業閾値)やLT値(乳酸性作業閾値)を高めるトレーニングを、5kのタイムから考えていきます。更にもう少し専門的に説明すると、乳酸が蓄積しない境界強度(速度)でトレーニングを継続していくことで持久力が向上し、AT値やLT値も改善されていきます。その境界強度(速度)となる目安を5kのタイムから算出していく考え方です。

では、実際に5kのタイムから具体的な数値を考えていきます。もちろん、より専門的な器具での測定や個別の細かい分析も必要ですが、我々のような一般的な市民ランナーには不可能です。そこで、簡易的に用いられている計算式と私の経験的なことを織り交ぜて考えていきます。

◆目安1).5kの記録を100%としたときの90%~93%の速度。◆目安2).5kを全力で走ったときの感覚を「きつい」としたとき、「ややきつい」と感じる速度。※心拍数については割愛します。

以上の2つについてが、代表的な目安となります。おそらく皆さんもランニング雑誌等で一度は目にしたことのある考え方だと思います。私自身の経験や各種練習会等で指導してきた経験から話すと、目安2の「ややきつい」と感じる速度でトレーニングを継続していくと、持久力は効率的に向上していきます。

何度も話していますが、マラソンは自分自身の肉体と精神のみで勝負していく競技なので、様々なデータの積み重ねは重要です。しかし、生身の身体だけに日々の体調や精神状態、天候等のコンディションも同じではありません。つまり、データを蓄積していっても逆に当てはまらない部分も多く、そのため自分自身の身体と常に対話し、ランニング中に感じる「感覚」は最も重要な要素になると考えます。

したがって、目安1の「数値」と、目安2の「感覚」が常に一致していくような状態を身体で覚えていくことがトレーニングの重要な目的であり、それが持久力向上にもつながっていきます。実は、初マラソンに挑戦し、最初から狙いどおりの走りができるランナーと、何度も失敗を繰り返してようやくマラソンを攻略できるランナーがいます。その差の大きな要因のひとつは、この「感覚」をつかめているか否かによると、私自身の経験からも強く感じるところです。

次回は、マラソンの記録から具体的な数値を考えていきます。

つづく。

期分け・57

h25-1-6-0121h25-1-6-017h25-1-6-025

【期分け・57】前回、AT値(無酸素性作業閾値)やLT値(乳酸性作業閾値)を高めることは、マラソンの記録短縮につながると、話しをしました。今回は、それぞれの数値を高める具体的なトレーニング方法を考えていきます。

では最初に、乳酸が一気に増加してくるスピードとはどこを指すのでしょうか?また、それはどんな感覚なのでしょうか?

至極当然の疑問として最初に誰もが思う疑問であります。同時に、マラソン歴の長いベテランランナーにとってもよく理解できない点だと思います。その最も大きな理由のひとつが、AT値やLT値と言ってもそれは「閾値」であり、「ゾーン」を指すからです。すなわち、マラソン経験の豊富なランナーがこれまでの経験や実績を元に次のマラソントレーニングを開始しても、そのときの調子やコンディション等によってそれらの数値も常に変化しているからなのです。

と、言いながらやはり目安となるスピードを導いておく必要はあります。そして、効率的なマラソントレーニングを積み上げていく上で様々な数値が必要不可欠になります。しかし、大切なことは、これらの数値を参考にしながら常に、「自分自身の身体と対話する能力を高める」ことが、トレーニングの目的であり基本になります。したがって、それぞれの数値もその都度、微調整する必要があることを、はじめに理解しておく必要があると考えます。

さて、前置きが長くなりましたが、これから具体的なスピードを考えていきます。何度かこのブログにも記載しましたが、マラソンの自己記録を更新していく上でスピードの目安となる距離があります。もちろん、様々な距離があり、どれが正しいか否かを簡単に決めることはできませんが、今回のAT値やLT値を高める上で目安とする距離を「5k」で考えていきます。

ここでもう一度、5kの記録とマラソンの記録との関係を振り返っておきます。

◆関係1).10kの記録≒5kの記録×2倍+1分。◆関係2).マラソンの記録≒10kの記録×4.5倍~5.0倍。

全てのランナーに上記の関係式が成り立つとは言い切れませんが、走歴を重ねていくとほとんどのランナーがこれに当てはまってきます。逆に大きく食い違っている場合は、そもそも5kや10kのような短い距離を走ることがほとんどなく、ハーフ以上の距離がメインになっているランナーと想像できます。特に、学生時代以前に競技経験がなく社会人になってからランニングをはじめた市民ランナーの多くは、このケースに当てはまるのかもしれません。しかし、これから話しを進めていくAT値やLT値に関しては、この5kやそれよりも短い距離の記録がとても重要になっていきます。※5kのタイム計測は、定期的に実施することを推奨します。

つづく。

2013年スタート!

h24-1-1-0121h24-12-31-012h24-12-31-026

【2013年スタート!】新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。今年はパラリンピックの翌年ですが、2016年のパラリンピックに向け、引き続き地道な強化を継続していきます。

さて、今年も元旦から駅伝中継にくぎ付けとなった方々も多かったと思いますが、いかがだったでしょうか。かくいう私も例年どおり、テレビの前から一歩も動けない状況でした。(笑)

特に、箱根駅伝は往路の山登りでトップに立った日本体育大学が、復路も堅実な安定した走りで逃げ切りました。しかも、昨年の箱根駅伝では事実上の最下位(※)となる19位と惨敗し、どん底からの優勝は見事としか言いようがありません。別府駅伝監督を筆頭に、この1年間の努力は並大抵なことではなかったと、我々にも想像できます。※昨年の箱根駅伝で最下位は東京農大ですが、5区でのアクシデントによるものでした。

しかし、現実にはどん底に落ちたチームを立て直すことは、どんな名監督でも簡単なことではありません。そんな中、日本体育大学は、昨年の4月から兵庫県西脇工高を駅伝強豪高に鍛え上げた渡辺公二氏(74歳)を特別強化委員長に迎えました。そして、選手の寮に一緒に住み込んで私生活から徹底指導したと言います。その内容は、毎日10分の雑草取りを厳命したりと、感謝の気持ちを第一にしたようです。

どんなスポーツにも共通しますが、あるレベルを超えてくると、チームや個人毎のトレーニング内容や強度等のレベル差がなくなっていきます。そして同時に、医科学的な要素やメンタル的な要素を取り込んでいこうとします。しかし、日本体育大学が実践した「当たり前の日常生活をいかにして安定させるか」が、実は最も大切な要素であると、今回あらためて証明したとも言えます。

それは、日々進化するトレーニング方法や理論を受け入れて実践していくためにも、まず最初に日々の生活を律し、食事や睡眠時間等の基本的なことを確実に継続していくことが何よりも大切だと…。

今年の強化は初心にかえって、この点をより重視していきます。

(優勝した日本体育大学をはじめ、4位に躍進した帝京大学、伝統の力を発揮して6位に返り咲いた順天堂大学は、盲人マラソン強化合宿に対しても伴走協力として、積極的に学生ランナーを派遣いただいている大学でもあります。)

Home > Archives > 2013-01

Search
Feeds

ページの先頭へ