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2011-10

期分け・25

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今回から「スピード持久力養成期」のソフト面にあたるペース走の距離と設定タイムについて考えていきますが、この期はゆっくり長く走り込むことではなく、ある距離を正確なペースで走り込んでいくことが最大の目的となります。この点はとても重要なポイントになるので、常に意識しながら走り込んでいきましょう。

では早速ですが、どんな距離でペース走を実施すればマラソンの攻略につながるのでしょうか?

最初からとても無責任な言い方になりますが、この点については様々な考え方や理論がある部分であり、判断や決断に最も迷う部分でもあります。実際に私が指導している選手たち(市民ランナー)の中には、30kまでのペース走でマラソンを攻略できたケースや、マラソンとほぼ同じ距離である40k走を取り入れることでマラソンの自己新記録を大幅に更新した選手もいます。

しかし、今回はマラソンを攻略していく上で多くのランナーに当てはあるトレーニング方法と言う意味で、40k走を取り入れる前提で話しをすすめていきます。

では次に、40k走の実施頻度として毎週1回は40k走を取り入れていく必要はあるのでしょうか?

実は、この40k走の本数や実施タイミングについても、経験や走力によって大きく異なります。例としてオリンピックを目指すような実業団選手(プロ)は、1回のマラソンを目指していく過程で40k走を10回前後は実施します。つまり、初マラソンと言ってもトレーニングの段階で既にマラソンの距離を10回以上は経験していることになります。

ところが、一般の市民ランナーが同じような回数を実施できたとしても、平日はしっかりと仕事や家事をしているが故に、計画的な身体の手入れや休養を取り入れることは思うようにいかないのが現実です。そのため、慢性的な疲労が蓄積して故障をしたり体調を崩す可能性が大幅に高まります。したがって、一般の市民ランナーが、毎週末毎に40k走を実施していく流れは逆に効率的とは言えません。

一方で、人の身体は一度スタミナ切れ等の壁を経験すると、身体の中でスタミナを蓄えようとする働きが大きくなります。そして、次に同じような壁に再びぶつかった場合、意外と簡単に乗り越えるケースを実際に多く見てきました。そのため、40k走を10回も実施することは負担が大き過ぎるとしても、何度か適正なスピードで実施することは、マラソンに必要な「スピード持久力」を向上させるための有効的な手段であると考えられます。

次回はどのタイミングで40k走を実施するかについてです。

つづく。

期分け・24

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「スピード持久力養成期」のハード面として、◆1).正確な距離を測定した練習コースを確保する。◆2).アップダウンのあるコースについては、走る前に必ず路面や傾斜の状況等を確認しておく。・・・以上のように、大きく2つのポイントについて考えました。

これらについては、実際にマラソントレーニングを実施する際、トレーニングの量や強度を導き出す上で必要不可欠な重要事項となります。また、ペース走を軸にマラソントレーニングを計画どおり積み重ねているにも関わらず、思うような記録や成績を残せないランナーの多くは、上記の2つが抜けている可能性があります。もう一度、トレーニングコースについてチェックしてほしいと思います。

さて、今回からは、「スピード持久力養成期」のソフト面を考えていきます。はじめに、ここで言うソフト面とは主にペース走の距離や設定タイムのことを指します。実は、どんなレベルのランナーでもまず最初に考えることは、「どんな距離をどんなペースで走り込めば、マラソンの記録につながるのか?」と思いますが、皆さんはいかがでしょうか?

つまり、このことがマラソンを成功させるための最も重要な部分であり、同時に様々な方法や考え方があるところでもあります。そして、ここで大切なことは、どのトレーニング方法が正しいとか正しくないとかではなく、自分自身に合っているか否かを見極めることです。具体的には、実際の走力や走歴はもちろん、トレーニング環境や生活環境を加味した上で、そのマラソントレーニング方法が自分自身に合うか否かを判断することが重要です。

と、言いながら多くのランナーは常に考えている部分であり、実際のマラソントレーニングを積み重ねていくと、逆に大きくブレてくる部分でもあります。そこで、スピード持久力養成期の具体的なトレーニング方法を考えていく前に、共通した注意事項を最初にあげておきます。

◆注意1).一気に走行距離を増加させない。→ 故障や怪我を防止する。◆注意2).必要以上に速いスピードで走り込まない。→ 気持ちと身体にゆとりを持って、短期間で燃え尽きないようにする。◆注意3).場当たり的に走り込んでいかない。→ 日々のトレーニングはメリハリを付け、慢性的な疲労を蓄積させないようにする。

他にも細かく注意することはありますが、少なくとも上記のことは常に意識してほしいところです。

次回からは、今回の注意事項も取り込みながら具体的なソフト面を考えていきます。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・4

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10月10日(月・祝)、埼玉県上尾市において「第16回関東身体障害者陸上競技選手権大会」が開催されました。この大会はIPC公認大会となっており、来年開催されるロンドンパラリンピックに出場するための記録が公認される大会です。また、国内で開催されるロンドンパラリンピック参加標準記録を目指せる今年最後の大会となります。

既に何度かこのブログでも説明しておりますが、パラリンピックに出場するための参加標準記録を公認できる大会は国内はもちろん、世界的にも少ないのが現状です。そのため選手たちは少ないチャンスで記録を残す必要があります。したがって、どの選手にも求められるのは、狙った大会及びレースにしっかりと調子を合わせ、キッチリとパフォーマンスを発揮するための「ピーキング」となります。

もちろん、このピーキングを単に頭の中でイメージしたり、専門誌で勉強することは簡単なことですが、一般のオリンピックを目指している選手たちにとっても調子のピークを狙った大会に合わせることは至難の業です。

※参考までに10月22日から山口県で開催される全国障害者スポーツ大会はIPC公認大会ではないので、大会でのルールも記録もパラリンピックとは関係ありません。

今回、私はNTO(国内技術員)の研修員としてこの大会を細かく観察する機会を得ることができました。あらためて障害の種類や程度によって、同じ種目でもルールや技術的ポイントの違いが大きいことに驚きました。特に、これまで私自身が深く接してきた視覚障害者の競技については、フィールド種目を中心に多くのことを学びなおすことができました。

視覚障害者の走り幅跳びや走り高跳びである跳躍種目は、伴走者に相当するコーラーと呼ばれる人が、声や音で選手を踏切位置まで誘導します。例として視覚障害者の走り幅跳びは、コーラーが発する音の方向に単独で走っていき、そこにある踏切板(1m×1.22m)から空中に飛び出していきます。

至極当然のことですが、選手は目隠しをして音のする方向に走っていくため、暗闇の中へ単独で走っていく恐怖を感じます。そして、トップスピードで踏み切った後、目隠しのまま空中に飛び出す恐怖と見えない場所に着地する恐怖に打ち勝たなくてはいけません。同時にコーラーは、選手の不安や恐怖を取り除き、全ての安全を確保する重責を一手に背負います。このように、視覚障害者のフィールド種目は、トラック種目とは違うサポート方法や技術があり、伴走者と違った視点も必要となるのです・・・。

さて、今大会もロンドンパラリンピック参加A標準記録突破者が多数輩出され、私が強化担当している視覚障害者の中長距離種目でも好記録が誕生しました。◆男子5000m:W選手(T11クラス・全盲)/16分10秒26(日本新・A標準突破)、H選手(T12・弱視)/15分23秒79(日本新・A標準突破)、O選手(T12・弱視)/15分46秒94(A標準突破)。◆男子1500m:T選手(T11・全盲)/4分31秒68(自己新・A標準突破)。

この後、国内でロンドンパラリンピックへの挑戦が可能な大会は来年3月以降となりますが、各選手がそれぞれの課題と目標を意識しながら日々のトレーニングを積み重ねていってほしいと願っています。

引き続き、皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

期分け・23

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今回も「スピード持久力養成期」のハード面について考えていきます。前回は正確な距離についてでしたが、今回は練習コースのアップダウン(起伏)についてです。

はじめに、皆さんもこれまで何度となく耳にしたことのある話しとして、「上り下りのあるコースや起伏での走り込みはスタミナが付く」、「山道やクロカン(クロスカントリー)での走り込みは脚力や心肺機能を高める」・・・。こんな話しを雑誌や本で読んだり、聞いたことのある人は多いと思います。

実際に山道やクロカンでの走り込みについては、多くのランナーがその効果を体感しており、世界のマラソンを席巻しているアフリカ勢がこれを証明しています。また、国内においてもクロカンでの走り込みを積極的に取り入れている選手やチームの多くが活躍しています。

では、あらためて起伏やクロカンでの走り込みの主な効果を簡単にまとめてみます。◆効果1).路面が舗装されていないので自然とバランスの良い走りが身に付く。◆効果2).斜面を上り下りする時はペースを上げなくても心肺機能を高めることができる。◆効果3).下りを走る時は着地の衝撃が大きくなるので脚筋力のアップにつながる。・・・以上のような効果をはじめ他にもランナーに必要な様々な能力を高めることができます。

しかし、逆にクロカンや起伏のあるコースでの走り込みは相応のリスクも伴い、デメリットになる場合もあります。◆リスク1).路面が舗装されていないので怪我や故障をし易くなる。◆リスク2).斜面を上り下りすることで平地でのペース感覚が狂ってくる。◆リスク3).下りを走る時の着地衝撃が大きく、その分疲労回復が遅れる。・・・このようにクロカンや起伏を走ることの効果は、見方によってはリスクにもなるのです。

実は、「スピード持久力養成期」に移行してからのクロカンや起伏での走り込みは相応の注意が必要になってきます。なぜならこの期の重要なポイントは、「正確な距離を正確なペースで走り込んでいくこと」だからです。そのため、上りや下りでの「5分/kペース(それぞれの設定ペース)」が、平地では何分何秒に相当するのかをしっかりと体感できる能力が備わっていないと、逆にペース感覚が狂ってしまう可能性があります。※平地で本来のスピードが出せなくなったりします。特に走歴の浅いランナーは要注意です。

同じく上り下りでの走り込みは、身体へのダメージが平地より大きくなります。そのため、平地でペース走を実施した後の疲労回復期間に対し、どの程度のズレになるかを予め見越したトレーニング計画を作成していないと、疲労の蓄積により故障する可能性が高くなります。

このように、「アップダウンでの走り込み」と言っても平地との相違点は多々あります。そのため、起伏での走り込みは、少なくとも「ペース感覚のズレ」と「疲労回復期間」、そして、「故障&怪我防止」の3点は常に意識してほしいと思います。

つづく。

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