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2021-03

3月を走る・4

【3月を走る・4】3月は年度末になりますが、この1年はまさに想定外の連続でした。もちろん、予断を許さない状況はまだ続いています。しかし、関東の緊急事態はなんとか解除されました。そんな状況下、今年度最後の強化合宿をいつもの千葉県富津市富津公園で実施しました。

さて、この1年間は、特にガイドランナーを必要とする選手の合宿参加自粛が続きました。可能な限り密を避ける意味からもしかたない状況でしたが、ようやく今回の強化合宿から合流できた選手もいました。もちろん、強化合宿に参加できない期間においてもそれぞれの選手が、それぞれの方法で走り込みを継続していました。

同様にこの1年は、各種大会の延期や中止が相次ぎ、選手にとってはまさに最悪の状況が続きました。しかし、そんな状況下においても関係者のご尽力で開催に踏み切っていただいた大会もあり、少ないチャンスでしたがそれらの大会にトライすることもできました。

特に、ロードで開催されるマラソン大会においては大小問わず、中止や延期が相次ぎました。もちろん、その厳しい流れはまだまだ続いております。そして、パラリンピックを目指す我々の記録が公認される大会は、昨年12月に開催された防府読売マラソン大会のみでした。

同大会は、この1年間を通じてたった1回のみのWPA公認マラソン大会でしたが、男女の優勝選手をはじめ多くの選手が自己記録を更新しました。また同様に考えると、延期になった東京パラリンピックは今年9月の予定で、このレースもたった1回の開催になります。

このように、この1年は大会が激減したので、特にピンポイントに調子を合わせるピーキング能力がどの選手も格段に上がりました。と言うより、「やればできる」の方が正しい表現かもしれません。いづれにしても、この経験は東京パラリンピックに向け、大きな自信になったと思います。

しかし、多くの選手やコーチが、本命の大きな大会で自らの力を発揮できるよう、逆に小さな大会に数多く出場していくことで、その経験とノウハウを蓄積しようとします。ところが、この1年間はそれが全くできない状況に追い込まれ、何とか出場できそうな大会に退路を断つ思いで挑戦し、かつてない好記録を残している選手が多かったのは、見方によっては何とも皮肉なことだったかもしれません。

マラソンをはじめ多くのことは、量(ムリ・ムラ・ムダ)の中から本物の質が出てくると言われてます。一方で、最初から一点集中することで成功するケースもあります。この1年間の経験はどのように位置するかをよく振り返り、9月の東京パラリンピックにつなげていきます。

3月を走る・3

【3月を走る・3】今年の名古屋ウィメンズマラソン大会は、最も危惧していた強風下での開催となりました。それも最大風速10m近い強風がスタートからゴールまで吹荒れる最悪のコンディションでした。また、同大会のコースは、折り返し地点と交差点を90度に曲がる箇所が多く、風が吹くと追い風と向い風を交互に受け続ける難コースに豹変する特性もあります。

そんな悪コンディションの中、松田選手の走りは圧巻でした。まるでひとりだけ別のマラソンコースを走っているような安定した力強いフォームで最後まで駆け抜けました。その松田選手は、この1年間は特に精神的に厳しい状況だったとのことですが、そんな苦難を全く感じさせない見事な走りでした。アッパレでした!

さて、今大会の強風はスタートから10k付近まで強い追い風、逆に10kから15k過ぎまでは強い向い風。もちろん、それ以降もゴールまで強い追い風と向い風が交錯。また、このコースは全体的にはフラットですが、実はスタートから10k付近まではゆるやかに下り、その先を折り返したら同じ道を16k付近まで帰るので、15k付近まではゆるやかな上りになります。

マラソンを攻略する上で基本となるのは、最初の10k程度は抑え気味に走る点です。もちろん、どのように走るかは個々の戦術になりますが、特にこの名古屋ウィメンズマラソン大会のコースは、最初の10kまでは体力を温存しながら目標ラップタイムで確実に通過できるか否かが攻略ポイントのひとつと考えてきました。

しかし、今大会に限ってはそれが逆になったケースが多かったようです。つまり、追い風とゆるやかに下る最初の10kまでを無理におさえて目標設定タイムどおりに通過したランナーの多くは、結果的にはそれがあだとなりました。それは、10k過ぎを折り返した後、まともな強い向い風とゆるやかな上りとなる15kまでに大きくラップタイムを落とし、そのままリズムに乗り損ねてしまったケースが意外と多かったからです(15k地点の通過タイムを見て戦意喪失状態)。

ところが、逆に最初の10kを強い追い風とゆるやかな下りの勢いに身を任せ、目標より少し速いタイムで通過したランナーは、強い向い風と上りになる15kまでのラップタイムが相当落ちても、トータル的には目標タイムを狙える状況と余力が十分に残っていました。そして、それ以降も追い風と向い風を交互に受けながらも、リズムとラップタイムを風向きに合わせられていたランナーたちが記録を残せていた印象です(15k以降も記録に対するモチベーションをキープ)。

果たして富津合同マラソン練習会から今大会に参加したメンバーたちの多くは、10kから15kの強い向い風にレース全体の流れを崩されたケースが多数でした。今回出走したメンバーたちの多くは好調だっただけに、コーチの私がスタート前にこの点を、的確に指示できなかったことが失敗原因のひとつとなりました……。

「何度も足を運んでいる大会にも関わらず、常に何かを見落としている」

私自身が大いに反省し、その現場で得た情報から臨機応変に対応して発信する現場力を……。

最後になりましたが、大会準備と安全で安心な大会開催に導いていただいた大会関係の皆様に重ねて御礼申し上げます。

3月を走る・2

【3月を走る・2】寒暖の差が大きい季節ですが、強化合宿を実施している千葉県富津市富津公園においても、この1週間は10度前後の気温差がありました。更に、花粉が飛散する季節にも入っており、そちらの方がこたえる人も多いのではないでしょうか。

また、今回の強化合宿から選手とスタッフ全員に対するPCR検査も導入し、コロナ対策をより徹底するようにしました(今後は合宿毎に都度実施)。

さて、今週末の14日は名古屋ウィメンズマラソン大会が開催されます。同大会には東京五輪女子マラソン代表の鈴木選手も出場予定でしたが、足の調子から見送るとの報道がありました。鈴木選手にとって、この大会が目標ではないので、マラソンファンのひとりとしては周りの雑音を気にすることなく、マイペースで調整してほしいと願っております。

そして、同大会は女性市民ランナーの皆様が、久々に公認のマラソン大会を走れる機会となります。ここ富津公園においてもいつも一緒に走り込んでいる仲間からも10名以上の女性市民ランナーが出場します。

マラソンファンとしては、「歴史的な好記録ラッシュ!」となった先日のびわ湖毎日マラソン大会の後だけに、大きな期待をしてしまいます。しかし、上記した鈴木選手同様、周りの雑音を気にすることなく、個々の目標に沿ったマラソンをしてほしいと思います。

マスクや手洗い消毒の徹底と定着の効果で、風邪をひいている人を見かけない気がしますが、マラソンの最終調整における最大の敵は「風邪」です。出場される皆様においては、くれぐれも最後まで体調管理に注意し、休養第一でお過ごし下さい。

名古屋ウィメンズマラソン大会開催に向け、ご尽力いただいた関係者の皆様に対し、心より御礼申し上げます。

3月を走る

【3月を走る】何もかもが記録的で衝撃的だった最後のびわ湖毎日マラソン大会でした。優勝した鈴木選手の驚異的な日本新記録はもちろん、サブテン選手(2時間10分突破)が42名。更に、2時間20分突破選手までを含めると、なんと174名。おそらく人類史上最高レベルの大会だったのではないでしょうか。

好記録の要因は様々ですが、そのひとつとして出場メンバーがそろっていた点は大きかったと思います。今回、注目選手が多数いる中において、マラソンファンのひとりとして注目していた選手は、安川電機所属の北島寿典選手でした。

北島選手は、2016年3月に開催された第71回びわ湖毎日マラソン大会において、日本人トップの「2時間9分16秒」の記録で2位に入賞し、リオ五輪代表権を獲得した選手です。同大会は6位までに日本人選手が4人ゴールし、4人ともサブテンを達成するハイレベルなレースでした(7位・川内優輝・2時間11分53秒、8位・中本健太郎・2時間12分6秒、9位・井上大仁・2時間12分56秒)。

しかし、リオ五輪を含めてその後、北島選手が元気に快走する姿はほとんど見かけなくなりまいた。もちろん、他人の私がとやかく言う筋合いはありませんが、リオ五輪代表が決定した後、ケガに苦しんだようです。そして、北島選手が所属する安川電機には、ロンドン五輪6位入賞の中本選手も所属しています。

その中本選手は、今回のびわ湖毎日マラソン大会前に引退を表明しました。マラソンファンとしては本当に残念な気持ちでしたが、同世代で同チームに所属する北島選手の動向も気になりました。しかし、北島選手は今回のびわ湖毎日マラソン大会に一般参加選手としてエントリーし、調子は上向きとの報道がありました。

5年ぶりにびわ湖毎日マラソン大会を出走した北島選手は「2時間9分54秒」でゴール。5年前の記録とそん色ない快走でした。ところが、その順位は上記したサブテンでゴールした42選手の中では最後尾となる42位。しかし、この記録で北島選手は、びわ湖毎日マラソン大会における最後のサブテンランナーとなり、長い歴史の中にその名を刻みました。

さて、その北島選手は36才のベテラン選手ですが、サブテンでゴールした42選手の中で35才以上の選手は北島選手を含めて4名。同様に、2時間20分突破選手まで広げると、35才以上の選手はサブテンを含めて15名。このうち、40才以上の選手が2名でした(40才を過ぎての2時間20分突破は凄い!)。

更に、年齢を31才以上までに引き下げて確認すると、サブテン選手は11名。2時間20分突破選手はサブテンを含めて44名と、ベテラン選手の快走は想像以上でした。今大会は記録の価値観だけでなく、選手寿命の常識も大きく変えるきっかけになるかもしれません。

あらためて、今大会で復活した北島選手をはじめ、ベテラン選手たちの更なる躍進を大いに期待し、年齢の壁を崩し続けていってほしいと、心より願っております。

そして、同大会開催にご尽力いただいた大会関係の皆様、そして同大会を長年支え続けていただいた地元の皆様、ありがとうございました(かく言う私もその昔、同大会に鍛えていただいたひとりです)。

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