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2011-05

期分け・8

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マラソンの自己記録を短縮するには、10kやハーフマラソンの記録短縮がポイントになる話をしてきました。もちろん、これ以外にもマラソンを攻略していく上で大切な要素は様々ですが、今回からマラソンにつながる10kの記録について考えていきます。

はじめに、持久係数についてもう一度説明しておきますが、10kの何倍でマラソンを走れているかの係数をさします。そして、その係数はランナー毎の走力にもよりけりですが、概ね4.50~5.00程度の間におさまります。もう少し細かく見ると、国際マラソンに出場するような走力の高いランナーの場合、持久係数は4.50の方に近づいていきます。逆に完走することが目標となるような走歴の浅いランナーは5.00をこえている場合もあります。

さて、話を少し脱線させ、ここで日本記録と世界記録についての持久係数を見てみます。

マラソンの日本記録は高岡選手が2002年にマークした2時間6分16秒です。1万mについても高岡選手が2001年にマークした27分35秒が現在も残っており、高岡選手の持久係数は4.58となります。一方、マラソンの世界記録はゲブレセラシェ選手が2008年にマークした2時間3分59秒です。そして、ゲブレセラシェ選手の1万mは26分22秒で、持久係数は4.70になります。※ボストンマラソンの記録は、コースの設定が公認規格から外れており、未公認記録となります。

更に、ゲブレセラシェ選手が高岡選手と同じ持久係数だったとしたならマラソンの記録は、2時間00分46秒となります。そして、ゲブレセラシェ選手が2時間を突破するための持久係数は4.55となります。これは単なる数字上の話になりますが、1万mを26分30秒前後のスピードで走れるランナーが、持久係数4.50に相当する持久力を身につけると、理論上はマラソンで2時間を突破できることになります。

私の個人的な考えですが、男子マラソンについては2時間を突破するための肉体的条件は既に整いつつあると感じます。あとはハード面としてペースメーカーの途中交代を可能にしたり、高低差のない短い周回コースで気象条件が整えば・・・。

同じく日本人選手についても、高岡選手の日本記録を上回る27分30秒のスピードがあり、持久係数を4.50~4.60相当でマラソンに挑戦した場合をシュミレーションしてみます。

持久係数が4.58の場合、2時間5分57秒となります。そして、持久係数が4.50に到達すると、2時間3分45秒で今の世界記録を上回ることになります。もちろん、これについても単なる数字上の話となりますが、これからも日本人選手がマラソンで世界と勝負していける余地は十分に残っていると言えます。

つづく。

期分け・7

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前回は、持久係数から「10kはマラソンを走るための指標となるスピード」と話をしました。

実は、ハーフマラソンからも10kと同じような考え方をしていくことができます。しかし、走歴の浅いランナーを中心に多くのランナーは、ハーフマラソンの距離を最後まである一定のスピードを維持しながら走り抜くことはかなり難しいと感じます。

なぜならスタートから勢いよく飛び出していくと、後半はマラソンの30k以降と同じように大幅なペースダウンをするランナーが意外と多いからです。つまりスピード強化のために出走したハーフマラソンにも関わらず、結果的にはスタミナ不足まで露呈してしまうのです。

そこで逆に、後半のペースダウンを防止するために前半を抑えて走るようにします。ところが、今度はペースをつかめず自分自身のマラソンペースと同じようなスピードにはまってしまうランナーが多く、これではスピード養成の意味合いが薄れてしまいます。

このようにハーフマラソンは、マラソンを走るためのスピード養成として捉えていくにはかなりの経験と走力が必要になると、少なくとも私はそう考えます。

また、大会を申し込む段階で「同じ参加費を払うなら少しでも長い距離を走らないともったいない」と考えている人も意外と多いのでは?

皆さんはいかがでしょうか?

このような考え方で大会に参加していくと、年間を通じてハーフマラソン以上のレースしか走っていない状況に陥っていきます。単に、大会に参加することが目的の人ならそれも由ですが、上記したとおりハーフマラソンなのにマラソンに近いペースとレース展開を繰り返す可能性が高くなります。その結果、スピード養成の目的から逸脱していき、マラソンの記録も頭打ちになっていきます・・・。

さて、長々とハーフマラソンを否定するような話となりましたが、ハーフマラソンを走るなと言っている訳ではありません。ハーフマラソンを通じてスピード感覚を身につけていくのは簡単なことではなく、むしろレースでの走り方とすればスピード加減が難しい距離と理解しておくことが必要なのです。※ハーフマラソンについては別の機会にあらためて考えていきます。

次回からは、スピード養成期の10kについて掘り下げていきます。

つづく。

期分け・6

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今回から「スピード養成期/4月~7月」について考えていきます。

最初に、スピード養成期のスピードとは何を指すのかをある程度明確にしておきます。既に何度かこのブログでも記載してきましたが、最終的な目標はマラソンになります。従って、マラソンを速く走るためのスピードにならなくてはいけません。つまり、単に100mを速く走るためや運動会の徒競走で1番になるためのスピード養成ではありません。

では、あらためてマラソンを走るためのスピードとは何を指すのでしょうか?

そのヒントは持久係数にあります。この持久係数についても何度か記載してきましたが、10kやハーフマラソンの自己記録に対し、その何倍でマラソンを走れたかの係数です。具体例として、マラソンを2時間59分59秒で走るランナーが2名いたとします。Aさんは10kのベストタイムが39分00秒、Bさんの10kは38分00秒です。そこでふたりの持久係数を計算すると次のようになります。

◆Aさんの持久係数=2時間59分59秒÷39分00秒≒4.61

◆Bさんの持久係数=2時間59分59秒÷38分00秒≒4.73

これを簡単に説明すると、上記のようにマラソンの自己記録が同じ場合、持久係数の小さい方が持久力に優れていると一般的には判断します。つまり上記の例で言うと、Aさんの方が持久力が高いことになります。更に、Aさんが今の持久力を維持したままBさんと同じ10kの記録をマークしたなら次のようになります。

◆Aさんのタイム=4.61(Aさんの持久係数)×38分00秒(Bさんの10k)≒2時間55分10秒

このようにAさんが10kのタイムを1分短縮できたなら、理論上はマラソンの自己記録を4分50秒も更新することが可能となります。もちろん全てが理論どおりにはいきませんが、10kのタイムを短縮することはマラソンの記録短縮へとつながる重要なポイントのひとつであることは間違いありません。そして同時に、10kはマラソンを走るための指標になるスピードと位置付けることができます。

つづく。

期分け・5

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秋から冬のマラソンを目指していくランナーにとって4月から7月の時期は、自身のスピードを高めるトレーニングが効果的です。即ち、「スピード養成期」として短い距離のレースやスピードトレーニングを行い、マラソントレーニングでは難しい速い動きや刺激を積極的に取り入れていきます。

このように当初空白だった4月から7月のトレーニングが大まかに決まったことで、1年間の期分けも次のような流れとなります。※ここでは秋と冬のマラソンを軸に期分けしたパターンです。

◆年間計画(期分け):①スピード養成期:4月~7月→②第1次走り込み期:8月~10月→③調整期:11月上旬→④第1次マラソン期:11月中旬~12月上旬→⑤休養&回復期:12月中旬~12月下旬→⑥第2次走り込み期:12月下旬~2月上旬→⑦調整期:2月中旬→⑧第2次マラソン期:2月下旬~3月中旬→⑨休養&回復期:3月中旬~3月下旬。

少し込み入っていますが、このように1年間を期分けすることができます。もちろん、それぞれの期については更に細分化し都度微調整が必要になりますが、このように自分自身の目標に対し予め期分けをしておくことで1年間をより効率的な流れにすることが可能となります。

しかし、最初から細かいトレーニング内容や出場するレースばかりに目がいくと、全体的な流れに無理が生じてきます。同時に、あれもこれもと目標を欲張りすぎても計画倒れになってしまいます。

今更ながら腹八分目の計画を心掛けることが重要です。そして何より、1年間を終えたとき、ひとつでも自己記録を更新する種目があったならその1年間は成功です。また、逆に故障や怪我に悩まされた1年間だったとしても経験として次に活かすことで少しずつスパイラルアップしていくことができます。

何度も記載していますが、トレーニング計画や期分け、方法論に絶対はありません。大切なことは実行に移し経験を積み重ねていくことです。

次回からは、それぞれの期について考えていきます。まずは「スピード養成期」からです。

つづく。

期分け・4

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マラソンを軸に1年間を期分けしていくと、ちょうど今の季節にあたる4月から7月の期間が空白になってしまいます。なぜなら、前回も記載したとおり、淡々とマラソントレーニングを継続していくには、コンディション的にも厳しくなっていく季節だからです。・・・と、言いながらこの期間全てを「休養&回復期」にするには、あまりにも長過ぎます。

しかし、少し別の角度から見ると、長い距離を走り込んだり、長時間走り続けることは難しくなりますが、その逆ならどうでしょうか?

即ち、比較的短い距離のレースに出場したり、トレーニングも量より質を重視した内容にシフトしていくことで、トレーニングの継続も可能になるのでは?

具体的には、出場するレースは10k前後以下の短い距離へとシフトし、トレーニング内容も量から質へと転換していきます。このように、マラソンを目指した期分けから少し頭を切り離し、「スピード養成期」として量より質へと思い切ってシフトするのです。

実は、人の身体はスピードとスタミナの両方を同時に高めていくことは難しいと言われており、私の経験からもそのように感じます。もちろん個人差もありますが、一般的にはスピードとスタミナは相反しており、スタミナが付くとスピードが出にくくなります。逆に、スピードが付くと、スタミナが落ちていきます。

これを期分けに置き換えてみると、1年中マラソンを目指すサイクルで期分けしていった場合、スタミナは確実にアップしていきますが、スピードは少しずつ落ちていくことになります。もう少し具体的な表現をすると、短期間で何度もマラソンを完走できるスタミナは付いてくるが、自己記録を更新するためのスピードは出にくくなってくるのです。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

以上のように、1年間のどこかで自己のスピードを高める時期がないと、マラソンの記録もすぐに頭打ちになってしまう可能性が極めて高くなると言えます。つまり、マラソンで自己記録を更新するためには、自己のスピードを高める時期が必ず必要になってくるはずです。

従って、4月から7月は「スピード養成期」と位置づけ、マラソントレーニングから一度離れることは、マラソンを目指す上で逆に効果的と言えます。そして、トレーニング内容も量から質へとシフトさせ、気持ちや身体にいつもと違う刺激を与えることは、走ることに対する「マンネリ化の防止」にもつながっていきます。

つづく。

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