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2013-03

期分け・63

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【期分け・63】前回は、「脚つくり」に適したペースと強度について考えてみました。今回は、そのペースでどの程度の距離や時間を走り続けていくのが効果的かを考えていきます。

実は、「脚つくり」の中で「設定ペース」と比較した場合、距離や時間については最も意見の相違があるところでもあり、各コーチや各チームのノウハウが色濃く出てくる部分でもあります。これから私が記載していくことも、これが絶対とは言えず、私自身も現役時代に実施していた考えと、少しずつ変化しているのも事実です。はじめに、この点についてはご理解いただき、これが絶対と言ったことではなく、参考にしていただければと思います…。

では、早速ですが、どの程度の距離、もしくは時間を走り続ければマラソンに必要なスタミナが養成されるのでしょうか?

この答えこそが上記したとおり、百人いたら百とおりの答えが出てくる部分です。私も現役時代を含め、20年以上マラソンに関わってきた中で、様々な実例を見聞きしてきました。

例えば、かつて私のライバルだったランナーたちの中には、30kまでの距離走だけで常にマラソンの記録が安定していたランナーがいました。逆に、マラソンより長い60k走を取り入れることで、マラソンを攻略したランナーもいました。もちろん、運動生理学を専門にしている先生方でもそれらの見解は様々です。しかし、どれも納得できる理論ばかりなので、どの見解も信用できました。

何でもそうですが、難しく考えていくと堂々巡りとなります。その結果、答えが見つからず、走れなくなっていきます。もちろん、正しい答えを導き出すことが目的ではありませんが、自分自身に最も適した方法やノウハウを身につけていくことが重要です。

そこで、ヒントになることのひとつに、過去のマラソン経験者たちがマラソン後によく話していたことです。いくつかの実例をあげると、次のような話しが思い出されます。

◆実例1).マラソンは、どんなランナーでも35kの壁がある。◆実例2).初マラソンでも30kまでなら誰でも走れる。◆実例3).どんなランナーでも実力に見合った設定タイムで刻んでいくと、2時間前後でスタミナは枯渇してくる。

いかがでしょうか?皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?実は、これらの話しはこれまでにマラソンを走ってきたランナーたちの実体験から導き出された見解です。しかも、実際にマラソンを経験すると、見事に当てはまります。すなわち、これらの話しの中にマラソン攻略の重要なヒントが隠されているとは言えないでしょうか?

次回は、これらの話しを軸に、更に掘り下げていきます。

つづく。

期分け・62

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【期分け・62】今回からマラソンに向けた「脚つくり」と、言われている走り込みについて考えていきます。はじめに、前回示した「脚つくり」に適した速度を振り返っておきます。

◆目安1).5kの記録を100%と、したときの83%~87%の速度。◆目安2).5kを全力で走ったときの感覚を「きつい」としたとき、「楽である」と感じる速度。

このように記載すると、あまりイメージがわきません。そこで、今回もマラソンでサブスリー(3時間以内)を目指している市民ランナーを例にして考えていきます。最初に、サブスリーを達成するために必要な5kのスピードを、「期分け・59」で計算した「19分30秒」とします。次に、その1kあたりのスピードを上記した速度に当てはめて計算します。

◆計算1).19分30秒÷5=3分54秒(1kのスピード)-①。◆計算2).①の83%~87%の速度≒4分28秒~4分44秒(1kのスピード)。

数値で表すと、かなり遅いスピードと感じますが、いかがでしょうか?

実際に5kを19分30秒前後で走れる市民ランナーにお願いし、上記のペースで走ってもらうと、ほぼ全員が体感的には「楽である」と感じます。また、「こんなに遅いペースで走り込んでも意味がない」と、話す方もいます(笑)。そのくらい遅いと感じるペースなのです。

また、多くの方が、「脚つくり」と聞くと、脚をいたみつけるような激しい走り込みをイメージします。特に、市民ランナーの中には、そのように信じてそれを実践している方も見受けられます。同時に、マラソン以外のスポーツ(特に道具を使う球技系)を過去に経験したことのある市民ランナーほど、「走り込み(猛練習)=短期間、苦しい、根性=成果」と、考えている方は多いと感じます。

ところが、マラソンの場合、道具を使いません。自分自身の「身体と心」だけで長時間戦うスポーツです。したがって、マラソンに必要な「脚(身体と心)」をつくっていくには、「走り込み(猛練習)=長時間、ゆとり、継続=成果」と、同じ走り込み(猛練習)と言っても、とらえ方が全く違ってくるのです。

このように「脚つくり」と、言っている意味を最初に理解しておくことは、マラソンを目指していく上で、大切な一歩となります。

つづく。

名古屋ウィメンズマラソン2013

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【名古屋ウィメンズマラソン2013】今年の8月、モスクワで開催される世界陸上モスクワ大会の代表選考レースを兼ねた名古屋ウィメンズマラソンが、3月10日に開催されました。また、この大会が国内で実施される最後の代表選考レースとなりました。

結果は、既にご存知のとおり、木崎選手が代表決定第1号となる好記録で優勝。更に、アテネオリンピックの金メダリストである野口選手が3位に入るなど、見ごたえのあるレースでした。

木崎選手はロンドンオリンピックに引き続き、2年連続で日本代表入りとなりました。実は、オリンピックの翌年開催の世界選手権に連続で出場する女子代表選手は国内初とのことです。

至極当然のことですが、どの選手も最大の目標としているのがオリンピックの舞台です。そのため、最も高くて険しい山を征服した直後に、再び次の険しい山を目指して激しいトレーニングを継続できる精神力は、驚くばかりです。木崎選手は、男子マラソン以上に低迷が危惧されている女子マラソンの救世主となるに違いありません。

一方、野口選手についても、アテネオリンピック後、長期低迷に苦しみましたが、見事な復活です。私のような者が軽々しく言う言葉ではありませんが、「凄い!」の一言です。あらためて、今回のマラソンで見せた、「あきらめない心」こそが、マラソンで最も重要な要素であると、野口選手は証明しました。

今回、私の選手(市民ランナー)は、4名出場しました。そして、自己記録更新を目標にした選手は1名でしたが、残念ながら記録更新には届きませんでした。しかし、自ら「自己記録更新を狙う」と、宣言して挑んだ今大会は、いつも以上に自信にあふれた堂々とした走りでした。そして、今回達成できなかった自己記録更新も近い将来必ず達成できると、私自身も手ごたえを感じることができました。また、他の3選手についても、2選手が目標タイムを達成することができ、次回以降のマラソンにつながる内容でした。

さて、実業団選手(プロ)はもちろん、市民ランナーの方々でも常に自己記録更新ばかりに目がいき、自分自身の状況を的確に把握できていないまま、マラソンに挑むランナーは意外に多いと感じます。何度かこのブログでも取り上げましたが、記録更新ばかりに目が向くと、どうしても場当たり的な雑なレースが多くなります。その結果、逆に失敗経験を積み重ねることになり、マラソンに対する自信やモチベーションを下げることになってしまいます。

野口選手や木崎選手が今回のマラソンで見せた快走は、身の丈にあった取組みと目標設定の大切さをあらためて示したのではないでしょうか。また、今回のマラソンで国内の大きなマラソンもひと段落し、4月からは新年度がスタートします。今年度もマラソンを通じて多くの経験を積むことができましたが、4月からの新年度に活かしていきます。

絆・4

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【絆・4】平成24年度最後の盲人マラソン強化合宿を3月2日(土)から1泊2日の日程で実施しました。合宿開催場所は、いつもの千葉県富津市です。今回の強化合宿は、毎年恒例となっている「千葉県民マラソン大会」、10kの部にも出場しました。

そして、今年も大会関係の皆様方のご理解とご尽力により、特別招待選手として出場させていただきました。もちろん選手たちにとっては、マラソンに対するモチベーションを高める絶好の機会となりました。あらためて大会関係の皆様方に対し、厚く御礼申し上げます。

今回の同大会には3名の全盲選手が出場しました。北京パラリンピック日本代表選手の新野正仁選手、加治佐博昭選手と、期待の若手選手である谷口真大選手です。特に、谷口選手については、このブログで何度か紹介した選手でもありますが、今回も「34分46秒」の自己新記録でゴールし、世界へ更に一歩近づきました。

さて、仕事や家庭との両立が原則となる市民ランナーの方々からレース後によく次のような発言を耳にします。「〇〇が無いから走り込めなかった」、「〇〇が忙しかったから走り込めなかった」、「〇〇の予定が急に入ったから走り込めなかった」、等々…。皆さんは、いかがでしょうか?

実は、視覚障害者マラソン選手たちも同じように、「伴走者がいないから走れない」、「誰に伴走をお願いして良いかわからないから走れない」、「伴走者が急にキャンセルしたから走れない」、等々、同じような愚痴を良く耳にします。

谷口選手もかつては全く同じようなことを口にし、自らの行動が伴わない選手のひとりでした。ところが、昨年の2月ごろからロンドンパラリンピックを意識するようになり、谷口選手自身の発言や行動が前向きに変化していきました。

しかし、ロンドンパラリンピック代表には、あと一歩及びませんでしたが、その後も積極的な行動で、トレーニングやトレーニング環境を自ら追い求める姿勢をより強くしていきました。具体的な変化として、合宿やレース後はもちろん、日ごろから伴走者たちに対し、「〇月〇日は伴走をお願いできますか?」、「〇月〇日は練習に伺ってもよろしいですか?」、「〇〇大会で自己記録を狙うので伴走をお願いできますか?」、等々、間髪入れずに積極的な発言と行動で伴走者を確実にゲットし、それに伴って記録もグングンのびてきました。

※谷口選手は今大会の翌週にあたる3月9日(土)には、再び単独上京して我々の業界では有名な熱血伴走者と、マラソン特訓を実施予定です。

物事に対して、「積極的になりなさい」と、誰もが一度は耳にしたことがあり、理解もしています。ところが、それを行動に移すことは意外と難しく、できない理由ばかりを並べてしまうものです。特に、単調で変化の少ないマラソンにおいては、その傾向がより強いと感じます。

かくいう私も発言と行動が伴わない典型的なダメ選手でした。しかし、新年度からは谷口選手のように前向きな発言と行動を意識し、選手強化のお手伝いをしていきます。

引き続き、皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

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