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2010-08

猛暑から残暑へ・レース編

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先日の29日(日)は、夏マラソンの代名詞である「北海道マラソン大会」が開催されました。今年の大会も、高温多湿の悪コンディションでの大会となりました。また、同日は福島県で、「伊達ももの里マラソン大会」も開催され、私の選手(市民ランナー)も参戦しましたが、こちらも高温多湿の厳しいコンディションでした。

今更説明するまでもありませんが、長距離走にとって最もパフォーマンスを低下させる要因は、高温多湿です。暑い時期は、軽いジョギングをするだけでもかなりの負担を感じるのに、全力で走るレースでの負担や苦しさは計り知れません。

では、具体的に暑い中でのレースは、秋や冬でのレースと比較すると、どれだけのタイム差があるのでしょうか?

ところが、これについては様々な考え方があり、個人差も大きく一言でまとめることはできません。そこで、29日の「北海道マラソン大会」と「伊達ももの里マラソン大会」に出場した、私の関係する選手(市民ランナー)が残した記録を参考に、今年の1月から3月にマークした記録と対比して考えていきます。

◆北海道マラソン大会).K男子選手/2時間41分46秒(2月マラソン)→2時間55分17秒(▼8%)。T男子選手/2時間45分42秒(2月マラソン)→2時間57分10秒(▼7%)。U女子選手/2時間53分18秒(3月マラソン)→3時間7分3秒(▼8%)。

◆伊達ももの里マラソン大会).T男子選手/33分57秒(1月10k)→36分19秒(▼7%)。Y女子選手/36分23秒(1月10k)→39分22秒(▼8%)。

以上のように偶然かもしれませんが、どの選手(市民ランナー)も7%から8%のマイナスとなっています。実は、北海道マラソンを走った3名については、目標タイムとほぼ同じタイムでゴールしました。また、後半余力があればペースアップするように指示しましたが、目標タイムを落としたにも関わらず、暑さのためそのペースを維持していくことが、精一杯だったようです。

もう少し別の見方をすると、暑い中でのマラソンは、最初から自己記録の更新やそれに近い記録を目指して前半から飛ばすと、後半は大きなリスクを伴う確率が高くなります。そのため、直近の冬や秋に走ったマラソンの記録から更に落とした設定タイムで完走を目指す方が、暑い時期のマラソンは攻略し易くなります。

そして更に、暑い時期のマラソンは、秋から冬のマラソンと決定的に違う点があります。それは、最後の調整方法です。この点については、別の機会に詳しく話しをしますが、秋から冬のマラソンは走り込みを実施しながら途中で、10kからハーフ程度のレースに出場する流れをつくれます。しかし、暑い時期のマラソンは、走り込みの疲労が少しでも残っていると、短い距離のレースでもうまく走りきることはできません。

それは、今回の「伊達ももの里マラソン大会」で10kを走った2名が証明しています。2名とも1週間前の菅平合宿でしっかりと走り込みを実施しており、今大会に向けた調整を実施させませんでした。※ゴール後、二人とも「スタートから全く脚が動かなかった」と、振り返っていました。

このように、暑い時期の各種レースについては、「自己記録を更新する」と言った至極当然の目標を掲げて大会に挑むことは、かなり難しいことになります。そして同時に、大きなリスクが伴うことを覚悟しておく必要もあります。また、レース後のダメージも秋や冬より確実に大きく残り、何となく大会の参加申込をするなら、暑い時期の各種レースに出場する意味や目的を、一度よく吟味することをおすすめします。

猛暑から残暑へ・下

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先日の8月21日(土)から8月23日(月)にかけて、長野県菅平高原で合宿を実施してきました。しかし、標高1500mあたりでのトレーニングにも関わらず、日中の気温は30度以上にもなります。そんな中、今回の目的は、「40k走を実施する」ことでした。

実は前回のブログで、「夏の走り込みの目安は距離より時間」と、話しをしました。そんな話しをしたにも関わらず、「40k走を実施する」とは・・・、とても矛盾していますね。そこで今回は、その点を中心に話しをすすめていきます。

はじめに、私の経験上の話しになりますが、暑い時期でも距離を目安に走れるレベルの人と、時間を目安に走り込んだ方が効率的なレベルの人が、実はいます。まずは、その境目のレベルについて話しをします。

最初に、フルマラソンのベスト記録(その時点の走力)を1k毎のタイムに換算し、そのタイムに1.2をかけ、2割遅いタイムを導きます。そして、そのタイムが「5分00秒」より遅い人は、距離走から時間走に切りかえた方がより効率的となります。具体的には、30k以上の距離走は全て時間走に切りかえて、トータル時間も最大120分から150分以内にします。つまり、5分00秒より遅いペースで走る場合、ある距離に到達するより、時間(120分から150分)の方が先に経過したなら、時間で打ち切るようにします。

では、1.2をかけて5分00秒以内のランナーとは、どんな走力なのでしょうか?

逆の計算をしてみれば直ぐにわかりますが、1kあたり4分10秒から4分15秒のペースでマラソンを走れる走力となります。即ち、フルマラソンで3時間を突破(サブスリー)できる走力が備わっていれば、夏の走り込みでも30k以上の距離走に耐えられるひとつの目安となります。※もちろん個人差もあります。

実際に先日の菅平合宿では、15名の選手(市民ランナー)が気温30度以上の中、30k以上の距離走に挑みました。そして、10名が40k走を設定どおりのタイムで走りきりました。その時の設定タイムを参考までに記載しておきます。

◆Aグループ).フルマラソンで2時間30分以内の走力:1kあたりの設定タイムは、4分5秒~10秒。◆Bグループ).フルマラソンで2時間40分以内の走力:1kあたりの設定タイムは、4分15秒~20秒。◆Cグループ).フルマラソンで2時間50分以内の走力:1kあたりの設定タイムは、4分30秒~35秒。◆Dグループ).フルマラソンで3時間00分以内の走力:1kあたりの設定タイムは、4分50秒~55秒。また、Dチームにはフルマラソンを3時間10分前後で走れる人も2名走りましたが、2名とも30k手前で集団から脱落しました・・・。

ところが、設定どおりのタイムで40kを走りきれた人たちも、最後まで余裕があったわけではありません。つまり、自己ベスト記録より2割も遅い設定タイムで走っているにも関わらず、思ったような余力を残せない状態に、逆に自信を失う人が出てくる可能性もあるのです。

このように暑い時期の走り込みは、単に距離やタイムだけを頼りに、勢いだけで乗り切ることはとても難しく、リスクも伴います。

しかし、何度かこのブログにも記載していますが、マラソン練習に絶対はありません。しかし、最後までゆとりを持って継続できなければ成果もでません。暑い時期の走り込みは、この点を特に意識しながら安全に取り組んでほしいと思います。そして、9月からの本格的なマラソン練習につなげてほしいと・・・。

※参考までに、菅平合宿の40k走では、スポーツドリンクを40リットル、水を40リットル、スポンジ、氷・・・を準備し、約3k毎に補給できる体制でサポートしました。

猛暑から残暑へ・中

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今回から暑い時期のランニング方法について考えていきますが、今年はいまだに猛暑日が続いています。さすがに、その中をまともに走ることは自殺行為です。暑い時期に走り込むことは年間を通じてとても重要ですが、炎天下でのランニングは、内容によっては熱中症や脱水症等の危険にさらされる可能性もあります。特にランニング経験の浅い初心者や暑さに弱いと自覚のある人は、絶対に無理をしないようにしましょう。

では、上記のことを踏まえた上で、暑い時期のランニング方法を考えていきます。

◆1).水分補給とランニングの実施時間

はじめに水分補給についてですが、まずはランニングを開始する前に、コップ一杯程度の水分を補給してから走るようにします。次にランニング中の補給目安ですが、15分から20分程度に1回の補給が良いでしょう。この時の摂取量についても、身体が吸収できる量が決まっているので、コップ一杯程度が大まかな目安となります。そして、補給する水分については、単なる水よりミネラルの入ったスポーツドリンクを2倍程度に薄めたものがおすすめです。それは、発汗が多くなると、汗と一緒に体内のミネラルも大量に排出され、ケイレンをおこす原因にもなるからです。

◆2).ランニングの目安は距離より時間

暑い時期のランニングについては、「何キロ走る」から「何分走る」へと、量の目安をシフトさせます。これについては、例えば走る距離を10kに決めると、一般的にはどんなペースで走るかを考えます。しかし、暑い中では、設定ペースを落としたとしても、そのペースで最後まで余裕を持って走りきることができるのかどうかの判断は、ベテランランナーでも難しいのです。仮に、走りきれたとしても予想以上のダメージに、逆に自信を無くすケースも少なくありません。つまり、距離を目安に走り込みを実施すると、肉体的にも精神的にも大きなダメージを残す可能性が高くなるのです。

そこで、40分間走とか60分間走と言った時間走にシフトします。その時のポイントとして、ペースは全く意識する必要はなく、とにかく余裕を持ってゆっくりじっくりと走ることを意識します。もちろん、途中の給水も立ち止ってゆっくり補給します。また、途中でウォーキングに切り替え、ランニングと交互に実施しても構いません。

ところが、このように説明してもほとんどの人が、効果が無いのではと不安になり・・・、途中からペースをどんどん上げていき・・・、結果的には決めた時間を走りきれない人も意外と多いのです。実は、ペースを落としても速くしても、同じ時間動き続けるのであるなら、同じような効果を期待できます。※専門的な話しは割愛します。

つづく。

猛暑から残暑へ・上

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記録的な猛暑だった夏も、暦の上では既に秋へと移りました。そして、今更ながらその秋のマラソンに向け、夏の走り込みはとても重要であると、皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。

と、言いながら現実的には、暑さの中で走ることは簡単なことではありませんね。また、暦の上では秋と言いながらも、厳しい残暑はまだまだ続きそうです。

さて今回は、その暑い中を走る意味について、少し考えてみます。

はじめに、年間トレーニング計画の流れからみた、7月から8月の位置付けについてです。まずは、簡単に1年間の期分けを記載します。◆1).9月から12月は、第一次マラソン期と、それを目指した走り込み期。◆2).12月から3月は、第二次マラソン期と、それを目指した走り込み期。◆3).4月から6月は、5kから10k程度の短い距離のレースを積極的に走る、マラソンに向けたスピード養成期。※期分けの考え方については、狙う大会やその時期等によって異なります。

大雑把に記載すると、以上のようになりますが、7月から8月が抜けています。実は、7月から8月については、1年を通じて気温と湿度が最も高くなり、ランニングには適さない時期となります。そのため、記録を目指すのも一般的にはかなり困難な時期とも言えます。

もちろん、根本的に暑さが苦手な人も多くいます。そんな様々な理由からか、この2ヵ月間に限っては、ランニングの量を減らしたり、休養したりする人が増加します。言い方をかえると、そんな人たちにとっての7月から8月は、休養期とでも言いましょうか。

では、7月から8月を休養にあてた人たちは、9月からスムーズに走り込みを開始できるのでしょうか?また、第一次マラソン期で目標のマラソンを狙い通りに攻略できるのでしょうか?

実は、このあたりの正確(学問的)な話しを、少なくとも私自身は目にしたり、聞いたことはありません。しかし、20年以上も同じようなトレーニングの流れを繰り返していると、経験的なことも蓄積されて、ある程度の傾向は見えてきます。

それは、7月から8月の暑い時期を意味もなく休養にあてたり、練習量を極端に落とした人は、10月から12月のマラソンをうまく攻略できない人が意外と多いことです。そして、その悪い流れは、年が明けた1月から3月のマラソンにまで影響し、1年間を通じて負の連鎖に陥るパターンの人も多く見てきました。

また、逆の見方をするなら、7月から8月の暑い中でのトレーニングは、1年間をフルに安定した走りをしていく上で、とても重要であると・・・。

さて、皆さんはいかがでしょうか?

つづく。

世界へ挑む!

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7月31日(土)から8月1日(日)の日程で、身障者陸上競技大会の国内最高峰となる「2010ジャパンパラリンピック陸上競技大会」が、宮城県仙台市で開催されました。しかし、二日間とも30度をこえる猛暑の中での競技会となり、選手にとって記録を狙うには、たいへん厳しいコンディションになりました。

さて、ここであらためて一般の陸上競技大会と障害者陸上競技大会との大きな相違点を幾つかあげておきます。

◆1).同じ種目でも障害の種類と程度によってカテゴリーがわかれている。※視覚障害、手足の切断、脳性麻痺、頸椎&脊髄損傷、他。◆2).同じ種目でも障害の種類や程度によってルールが異なる。◆3).各選手は、IPC(国際パラリンピック委員会)に選手登録し、各障害の種類と程度別に分類しているクラス分け認定を受けなくてはいけない。◆4).IPC公認大会でマークした記録のみが、国際大会に出場するためのIPC公認記録となる。

以上のように一般の陸上競技大会と大きく4つの相違点があります。したがって、障害者の選手が一般の公認競技会で新記録を達成しても、障害者陸上の中では原則として未公認記録扱いとなります。※日本陸連公認記録になってもIPC公認記録にはならない。

そのため、障害者の選手が国際大会を目指す場合、記録を狙える国内の大会が極端に制限されます。具体的には、国内で開催されるIPC公認の陸上競技大会は年間6大会程度となります。更に、各選手の障害や程度によって種目が細かく分類されるため、ほとんどの種目は1名から5名程度のエントリーと、極端に少ないのが一般的です。

つまり、障害者の選手にとって、公式記録を狙う機会が極端に少なく、自己記録を狙うために競い合うライバルも、ほとんど存在しないことにもなります。それは、少ないチャンスに最高の調子を合わせる能力、即ちピーキングがより重要となります。

そして、今回の大会は今年12月に中国広州で開催されるアジアパラリンピック大会に向けた国内最後の選考大会でもありました。そんな中、出場した選手たちは厳しいコンディションの下、自己の記録へ果敢に挑戦し、多くの好記録が誕生しました。

特に、弱視の堀越選手は、初日に800mと5000m、二日目に1500mと、三種目に出場しましたが、今回のような暑さは中長距離種目のパフォーマンスに最も悪影響を与えます。そして更に、追い打ちをかけるように出場した全ての種目が、スタートからゴールまで全く競り合うことのないオール独走と、厳しいレースになりました・・・。

しかし、堀越選手は最後まで集中力を切らすことなく、狙い通りに800mと1500mで見事な日本新記録をマークし、世界へ挑む準備が整いつつあることを見せてくれました。

引き続き皆様方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

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