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2011-01

IPC世界陸上競技選手権大会・3

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障害者陸上競技大会の世界最高峰であるIPC世界陸上競技選手権大会も、本格的な競技がはじまりました。月並みな言い方ですが、世界から集まったトップアスリートの技術や戦いは見ごたえ十分です。

特に、「立位」と言われている「視覚障害」、「脳性まひ」、「手足切断」のクラスは、一般の大会でもかなり上位で戦えるような好記録が次々にマークされており、ただただ驚くばかりです。

参考までに、全盲クラスの女子100m(T11/伴走有)や腕切断クラスの女子100mは、12秒台前半のタイムが普通に出ております。また、全盲クラスの男子1500m(T11/伴走有)は、4分4秒台、同じく弱視クラスの男子1万mは、30分台と、かなりのハイレベルです。

そんな中、日本選手たちも果敢に戦いを挑み、メダルも獲得するなど健闘しております。

さて、今大会に全盲クラスの男子1万mとマラソンにエントリーした和田選手について少し紹介します。彼は、昨年12月に中国広州で開催された「アジアパラ」にも日本代表選手として出場しました。至極当然のことですが、わずか1ヵ月弱のスパンで大きな国際大会を連戦することは、肉体的にもかなりの負担となります。もちろん、精神的にも自分自身の中で高いモチベーションをキープしていくことは、最も難しい調整だったに違いありません。

しかし、大会直前の千葉県富津合宿では、周りからの期待やプレッシャーに潰されることもなく、「1万mは、日本新記録が目標」と、具体的な目標を掲げていました。和田選手は、どんな不利な状況に対しても、常に冷静な判断と行動がとれるトップアスリートです。もちろん、彼の走力や調整の状況から判断しても十分に狙えると、こちらも大きな期待をして見ていました。

そして、大会2日目に全盲クラス(伴走有)の1万m決勝が実施され、和田選手も出場しました。スタート直後からハイペースな展開となりましたが、前半の5千m通過は、17分20秒前後と設定どおりです。ベテラン伴走者の中田氏と共に、後半は本当に少しずつペースアップしながら順位もあげていきました・・・。8千m以降は、かなり苦しい表情を見せながらの力走でしたが、マラソンランナーらしい粘り強さを余すことなく発揮してゴール。

残念ながらメダル獲得には、あと一歩及びませんでしたが、堂々の4位入賞です。そして、公式記録も「34分21秒89」と、公約どおりの日本新記録を、この大舞台で叩き出したのです。

今回の走りは、和田選手のもうひとつの目標である、「マラソンでメダル獲得」に向け、大きな自信となったに違いありません。

つづく。

IPC世界陸上競技選手権大会・2

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1月17日、IPC世界陸上競技選手権大会に出場するため、成田空港から約11時間のフライトで、ニュージーランド・クライストチャーチに入りました。日本との時差は4時間で、こちらの方の時間が進んでいます。そのため、いわゆる「時差ボケ」を感じることはほとんどありません。また、季節は夏ですが、到着した18日はあいにくの雨で、かなり肌寒い感じでした。しかし、翌日は晴れて夏らしい天気になりました。ところが、本日は再び雨が降り、気温も10度前後と、かなり寒いです。

このように入国してわすか3日間ですが、天気や気温が激しく変動しています。至極当然のことながら、選手たちの体調やコンディションが心配になってきますが、大きなトラブルもなく全選手とも元気です。

また、入国直後から慌ただしく参加選手たちの「クラス分け」が行われています。今大会でクラス分けを受ける日本選手は3名でしたが、全員が無事にクラス確定となりました。

さて、今大会の私は、日本代表チームのヘッドコーチという立場なので、選手やコーチ陣のことはもちろん、目に見えない雑務に追われています。そして、昨日はその大切な仕事のひとつである「ユニフォームの申請」を実施してきました。

言葉だけを聞いてもピンとこないと思いますが、オリンピックも含めた国際大会になると、競技場内やその周辺施設で選手が着用するジャージやユニフォーム等を予め大会側に申請しておく必要があります。もちろん、荷物を入れるバックや帽子等も申請する対象になります。別の言い方をすれば、申請していないジャージやTシャツ等を着用しての競技はもちろん、サブトラックでのウォーミングアップ等の実施も禁止となります。

同時に、申請した日本の公式ユニフォームだとしても、国名字の大きさやメーカーロゴの大きさや個数に至るまで、細かい国際ルールが規定されています。そのため、規定に違反している個所は、ガムテープ等を貼って隠さなくてはいけません。残念ながら日本もいくつか指摘を受けました・・・。

また、入国した翌日の早朝に抜き打ちドーピング検査を受けた選手もいました。今や、ドーピング検査は、競技場以外の自宅や宿泊先にもやってきます。もちろん、いかなる理由であろうと、これを拒否すると直ちに失格になるのは言うまでもありません。

このように、国際大会になると、ひとりの選手がスタートラインに立つまでに、クリヤーしておく事項がたくさん出てくるのです。

つづく。

IPC世界陸上競技選手権大会

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IPC(国際パラリンピック委員会)主催のIPC世界陸上競技選手権大会が、いよいよ間近に迫ってきました。この大会は障害者陸上競技にとっては、パラリンピックに次ぐ世界のビッグイベントとなり、パラリンピック同様、4年に1回の開催となります。そして、今回はニュージーランドのクライストチャーチでの開催となります。

既にご存知のとおり、来年はオリンピック&パラリンピックがイギリスのロンドンで開催されます。従って、今大会の成績が、ロンドンパラリンピックに参加する国別出場枠に反映されます。また、更に今大会は、そのロンドンパラリンピックで実施する種目そのものを見直す極めて重要な大会でもあります。そのため、この大会に向けた各選手の取組みや意気込みは、並々ならぬものでした。

しかし、参加標準記録のかつてないレベルへの引き上げ、IPC登録選手制度をはじめとする各種ルールや制度の厳格化・・・等々、この大会に出場するための道程も、かつてない厳しいハードルの連続でした。

そんな幾多の苦難を乗り越え、日本代表選手として今月17日(月)から渡航する日本代表選手は、32名です。それぞれが期待と不安を抱いての戦いとなるに違いありませんが、世界と勝負できる貴重なチャンスです。ここまで蓄えてきた力を何としても出し切って帰国してほしいと、心から願っております。

その日本代表選手団は、18日(火)にニュージーランド到着後、直ぐに「クラス分け」がはじまります。既に、このブログでも説明していますが、障害者の陸上競技は、各選手の障害の種類や程度に応じて、クラスが細かく分類されます。従って、競技以上に、このクラス分けが重要な位置付けとなり、各選手は最も神経を使う部分でもあります。それは、障害の種類や程度が違うと、同じ種目であっても、大人と子供以上のハンディになるケースが多分にあるからです。

「クラス分け」は、まさに障害者スポーツの最重要部分であり、各選手にとっては、「生命線」とも言えます。

さて、実際の競技は22日(土)からとなり、最終種目となるマラソンは30日(日)と、長期間の戦いになります。しかし、ニュージーランドは南半球のため、今は日本と反対の夏です。そのため、現地にてコンディションを整える期間としては逆にとても短く、どの選手も厳しい調整を求められることになるでしょう。

今回、私は日本代表チームのヘッドコーチとして帯同します。至極当然のこととして、かつてない厳しい戦いになることも覚悟していますが、代表選手はもちろん、コーチ陣と監督のパイプ役として・・・。

次回からは、日本代表選手たちの様子や活躍を少しずつ紹介していきます。

つづく。

継続は力なり

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新年明けましておめでとうございます。本年もこのブログ共々よろしくお願い申し上げます。

ところで年末年始は、予定どおりのトレーニングが実施できたでしょうか?予定どおりにトレーニングを消化できた人、残念ながらそうでなかった人も、それぞれの目標に向かって地道な走り込みを今年も継続してほしいと思います。

月並みな言い方ですが、「継続は力なり」です。

さて、正月恒例の「ニューイヤー駅伝」、「箱根駅伝」と、テレビの前にクギ付けとなった人も多かったのではと思います。かくいう私もまさにそうでした・・・。そして、どちらの駅伝も、フルマラソン以上の長丁場をライバルチームと激しく競い合い、その間、何度も抜いたり離されたりを繰り返しながらのデットヒートでした。

そんな中、今年の大会は駅伝史上かつてない僅差の戦いとなりました。観戦している私たちはともかく、タスキを付けて勝負している各選手や、監督をはじめとする関係者方は、かつてない緊張感の中での激しい戦いだったに違いありません。至極当然のことですが、たったの「1秒」でも勝ち負けが決まります。その結果、天国と地獄ほどの違いが待ち受けます。特に、今年の駅伝はその傾向がより強かったと感じました・・・。

そして、そんな駅伝観戦の後は、どんな人でも頑張る気持になります。特に、今月末から2月のマラソンを目指しているランナーにとっては、これ以上ない刺激になったことでしょう。

ところが、マラソンは駅伝と違い、たったのひとりで最後まで走り抜かなくてはいけません。そのため、駅伝選手のように前半からトップスピードで押し切るような走りでは、ゴールにたどりつけません。同時に、駅伝では無理して予定より速いスピードで通過した記録を、前半(前区間)での「貯金」と言いますが、マラソンの場合、前半の無理は必ず後半の「借金(失速)」となります。

また、仲間とチームのために前半から積極的に走る駅伝と違い、30k以降のためにゆとりを持って後半まで体力を温存しながら走るのがマラソンです。もちろん個人差はありますが、マラソンは駅伝と違い、前半から飛ばしていった人は、かなりの確率で後半失速します。少なくとも私自身は、この失敗パターンを数多く目にしてきました。

この点は、コーチとして肝に銘じ、今年も地道に堅実なトレーニングと練習会を継続していきます。

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