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2012-10

期分け・54

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【期分け・54】前回は週末集中型トレーニングパターンを大きく3つに分け、それぞれを評価しました。今回はそれぞれのパターンを詳しく考えていきます。

はじめに、パターン1の「土曜日:スピード系トレーニング+日曜日:スピード系トレーニング」についてです。このパターンは、おすすめできない「X」と判定しましたが、具体的なトレーニング実施例を記載します。

実施例1).土曜日:400m×10本+日曜日:300m×15本。実施例2).土曜日:200m×15本+日曜日:1000m×5本。実施例3).土曜日:1000m×5本+日曜日:400m×10本。

以上のように2日間連続で、「ゼーゼーハーハー」と、かなり苦しむトレーニングですが、意外と多くの人が実施しているパターンです。もちろん、内容的には上記したパターンと異なるケースもありますが、全力失速に近いスピードで頑張るトレーニングです。

実は、マラソンを目指して走り込みをしていく段階で、各種ロードレース大会や駅伝大会に参加するようになります。そのとき一緒に参加した仲間たちから指摘されることが、「スピードがないとマラソンのタイムも悪くなる」、「長い距離ばかり走るからスピードが出なくなる」等々のスピードが出ないことに対する注釈です。ある意味、指摘されたことは間違いではありませんが、それを鵜呑みにした結果、上記のようなトレーニングパターンに…。

ではなぜ、このパターンを「X」と判定したかです。その理由はいくつかありますが、1つ目の理由は、「怪我や故障のリスクが大幅に上がる」。既に皆さんも経験していることですが、スピードを上げて走ることで、心拍数が上がり、呼吸もかなり苦しくなります。しかし、それ以上に筋肉へのダメージは相当なものになります。特に、スピードに苦手意識の強い人が更に翌日も同様なスピードトレーニングを実施することは、怪我や故障を誘発させる自殺行為とも言えます。

2つ目は、「精神的に燃え尽きる(バーンアウト)」。これについては、個人差もありますが、スピードトレーニングはどちらかと言えば即効性があります。しかし、頭打ちになる時期も意外と早く、逆に苦しい割には効果が見え難くなっていきます。そのため、更に負荷のある内容にシフトしていくのですが、ほとんどの人は苦しいことに耐え続けることが難しくなり、気が付けば走ることからも遠ざかっているケースは意外と多いのです。

3つ目は、「スピードを上げる適切な距離や本数、設定タイムを導くことが難しい」。まさに記載したとおりで、それぞれの走力に合った適切なスピードを導き、どんな距離をどんな設定タイムで走るかを判断できるようになるには相応の経験と知識も必要です。かといって、単に自分自身より速い人と一緒に走ることは、上記した1つ目と2つ目のリスクだけが大きくなる可能性もあります。

以上、大きく3つの理由から2日間連続でのスピード系トレーニングは避けた方が賢明と考えます。

つづく。

期分け・53

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【期分け・53】この期分けシリーズをスタートして1年が過ぎました。大まかですが、年間を通じたマラソントレーニングの話しが少しはできたと勝手に判断しております。また、途中で話しがあちこちに飛んでしまったことをお詫び申し上げます…。と、言いながらこのまま話しを続けていきます。

さて、厳しかった残暑もようやく影をひそめ、秋らしい季節に移りました。本格的なマラソンシーズンの到来です。これから全国各地でマラソン大会が目白押しとなり、週末毎に各種大会が開催されます。同時に、マラソントレーニングに関する雑誌等もたくさん目にするようになってきます。

既に何度も話しをしていますが、マラソントレーニングに絶対はありません。もちろん、おすすめできないトレーニングもありますが、マラソントレーニングの基本は、「走ってなんぼ」です。特に、走る以前から情報過多に陥り、理論や理屈ばかりが先行しているパターンは意外に多く見受けます。

かといって、場当たり的に40kを走ったり、インターバルトレーニングに挑戦することは、怪我や故障の大きな原因になります。この点は、自分自身の走歴や走力等に合わせたトレーニングを実践してほしいところです。

前置きが長くなりましたが、前回はLSDとスピードトレーニングの関係について取り上げました。引き続き、LSDについて考えていきますが、今回からマラソントレーニングの中で、LSDをどのタイミングで組み込んでいくかを考えていきます。

はじめに、多くの市民ランナーが週末の休日にポイントとなるトレーニングを集中させています。もちろん、マラソンに向けた走り込みもこのパターンに当てはまります。そこで、この週末集中型のトレーニングパターンを検証してみます。

◆パターン1).土曜日:スピード系トレーニング+日曜日:スピード系トレーニング=X。◆パターン2).土曜日:スピード系トレーニング+日曜日:スタミナ系トレーニング=〇(土、日曜日が逆でもOK)。◆パターン3).土曜日:スタミナ系トレーニング+日曜日:スタミナ系トレーニング=〇。※「X」は、推奨できないパターン。「〇」は、推奨できるパターン。

上記のように、走歴や走力に関係なく、主に3つのパターンに集約されますが、皆さんはいかがでしょうか?

次回は、更に掘り下げていきます。

つづく。

荒川30k

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【荒川30k】10月14日(日)、東京都荒川の河川敷において、30kの大会が開催されました。しかし、この大会は普通の大会とは目的や趣旨が若干違います。それは、目標のマラソン大会に向け、走り込みの一環として開催している点です。具体的には、1kを4分15秒ペースから7分00秒までのペースメーカーをたてたグループ毎にスタートし、それぞれのペースを維持して30kを走ります。

実はこのような方法は、私が主宰している富津合同マラソン練習会と同じスタイルであり、多くのクラブチームの練習会で実施している内容でもあります。ところが、どこの練習会にも共通している点として、ペース感覚の優れたペースメーカーをコンスタントに確保することは意外と難しく、常に悩みのタネになっている点です。

また、練習会に参加いただいている多くの市民ランナーは、速い人はどんなペースでもペースメーカーを務められると思っていることが多く、そのような期待をしています。ところが、箱根駅伝や実業団選手として活躍したエリートランナーの多くは、市民ランナーが思っているほど、「ゆっくり走る」ことに慣れていません。具体的には、1kを4分30秒ペースより遅いペースになってくると、逆にそんなにゆっくり走った経験が少ないため、ペースを一定に保つことが難しいこともあります。

実際に私が主宰する富津合同マラソン練習会でも現役学生選手に4分30秒や5分00秒のペースメーカーをお願いすると、速くなる傾向にあります。したがって、速いランナーが遅いペースを引っ張っていくことは、多くの市民ランナーが考えているほど簡単なことではないのです。

しかし、今回の荒川30kでは、そんな不安を抱く必要のない素晴らしい方々が各グループのペースメーカーをキッチリと務めていました。もちろん、参加人数も回を重ねるごとに増加しており、今回は4343人と普通の大会並みの規模になっています。そして、私が担当したグループは1kを6分30秒のペースでしたが、436人のランナーと一緒で、かなりの人数でした。

更に、この大会のもうひとつの特徴は、実際のレースと同じ方式で給水を準備してある点です。マラソンを攻略していく上で最重要項目のひとつに給水があります。これは誰もが知るところですが、実際に走りながら水を飲むことは簡単ではありません。それをこの荒川30kで体験できる点は、重要なポイントです。なぜなら、集団の中にいながら給水を取りにいく難しさや、給水している間にペースメーカーから遅れていく距離感は実際のレース経験からつかんでいくしかないからです。

さて、今回参加された皆様方は、どんな経験をしたでしょうか?

予定より速いグループについていき、残念ながら途中でグループから脱落した方もいたことでしょう。また、ゆとりを持って走ることの重要性に気が付いた方もいたことでしょう。今回の荒川30kは、目標のマラソン大会に向けた貴重な経験と、自分自身の適正ペース等を考える機会になることは間違いありません。

そして、今回の経験を目標のマラソンレースで、少しでも活かしていただければと願っております…。

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【絆】ロンドンパラリンピックが閉幕し、ちょうど1ヶ月が経ちました。帰国後、各種報告会や慰労会等々、慌ただしかった選手及び関係者の方々も少しは落ち着いてきた時期でしょうか。また、次のパラリンピックであるブラジル・リオに向けた課題や対策についても、より具体的な方針等がそろそろ見えてくる頃でもあります。

さて、先日の10月6日(土)から2泊3日の日程で、千葉県富津市において盲人マラソン強化合宿を実施しました。この合宿は、先日のロンドンパラリンピック強化とは別に、今年度の強化計画に予め組み込んでいたもので、特別な合宿ではありません。しかし、来年には、はやくもIPC世界陸上競技選手権がフランスで開催されます。したがって、今回の合宿はその大会に向けた最初の強化合宿でもあります。

既にご報告したとおり、ロンドンパラリンピックへは、日本盲人マラソン協会から4名の選手が選出され、それぞれが素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。そして、今回の合宿には、そのロンドンで戦ってきた全盲の和田選手、弱視の堀越選手の2選手をはじめ、期待の若手選手やパラリンピックを経験したベテラン選手たちと、久々に多彩な顔ぶれがそろいました。同時に、選手を支える伴走者も箱根駅伝を目指す現役学生ランナーにも多数ご協力いただき、量と質ともに充実した合宿でした。

しかし、一方で盲人マラソンと言っても一般ランナーたちのように全国各地に何万人もの視覚障害者ランナーは存在しません。そのため、マラソンでサブスリーレベルの視覚障害者ランナーは、全国的にも今回の合宿に参加した7名のランナーと、あと数名程度と圧倒的に数は少ないのです。したがって、言葉は不適切ですが、選ばれた選手と言うより、数少ないビックリ人間と言った表現が近いかもしれません。

ところが、この4年間で本当にビックリするほど選手たちは成長しました。それは、今回の合宿でも、選手たちの粘り強い走りを目の当たりすることで、その成長を強く感じることができました。また、若い選手と話しをしている中で、マラソンに対するモチベーションが高くなっていることを強く感じることもできました。

と、言いながら来年のIPC世界陸上競技選手権をはじめ、4年後のブラジル・リオに向け、課題はたくさんあります。しかし、少ない人数でもお互いがお互いを意識し、切磋琢磨していくことで、仲間意識や絆はより深まります。そして、その深い絆こそが、選手たちを大きく飛躍させる最大のエネルギーとなり、大きな目標へと向かっていく原動力となるのです。

これから4年後のブラジル・リオを目指していきますが、仮に強化費や環境が大きく改善されたとしても世界を目指せる視覚障害者ランナーが劇的に増加することは簡単なことではないと感じます。しかし、これまで以上に選手間や伴走者との絆が深まるなら、世界との距離は更に縮まっていくと確信しております。

今後とも皆様方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

期分け・52

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【期分け・52】LSDをスピードトレーニングの翌日に実施することによって、より効果的になると、前回は話しをしました。このように、2日間連続でポイント(メイン)となるトレーニングを実施することは、仕事の合間をぬってトレーニングを重ねている多くの市民ランナーにてきしたトレーニングとも言えます。それは、少ない時間でより効果的なトレーニングを実施していくためにも、週末の休日をより効率的に活用する必要があるからです。

ところで、逆のパターンはどうでしょうか?

すなわち、LSDを実施した翌日にスピードトレーニングを実施するパターンです。実は、日曜日にランニング仲間と近くの競技場や公園等に集まり、一緒にスピードトレーニングを実施するケースは多くの市民ランナーが実施しています。そのため、日曜日のスピードトレーニングを実施する前日の土曜日にLSDを組込むパターンとなります。

パターン的には、前回と同じように2日間連続で、ポイントとなるトレーニングを実施することになるのですが、体感的には微妙な違いがでてきます。具体的には、スピードトレーニングの翌日に実施した場合、疲労を回復させることと、体調を引き上げることを重視しながらのLSDでした。しかし、今回のようにLSDを先に実施し、翌日にスピードトレーニングを実施する場合、回復よりスタミナ(体力)を養成する強化的な目的が強くなります。

そのため、LSDの翌日に実施するスピードトレーニングは、身体が少し重たい感じになります。もちろん、個人差があるので、全てのランナーが同じような状況にはなりませんが、スピードが出にくくなる傾向です。

したがって、いつもと同じ設定タイムでスピードトレーニングを実施しようとしても、身体が重たく感じる分、設定タイムに到達する前にいつもと同じ苦しさを感じます。もう少し別の言い方をするなら、本来より遅い設定タイムで、いつもと同じ負荷を身体に与えることになります。

この感覚はとても大切で、前日にLSDを実施することで翌日のスピードトレーニングを速く走ることが難しくなります。しかし、身体にかかる負荷はいつもと同程度です。つまり、スピードを上げて走れない分、逆に怪我や故障防止につながるとも言えます。

このように、スピードトレーニングを軸にLSDを前日に実施するのか、後日に実施するかで、かなりの違いがあります。もちろん、どちらが効果的なのかを簡単に決めることは難しく、理論的なことはもちろん、ランナー毎の経験やデータの蓄積がより重要になってきます。

つづく。

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