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2012-07

期分け・48

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【期分け・48】前回はスピードトレーニングを実施しているにも関わらず、うまくスピードが身についていかないケースを取り上げました。今回はその対策を考えていきます。

皆さんは、マラソンや長距離走で大切な基準となるのはスピードと考えるでしょうか?あるいは、スタミナと考えるでしょうか?

実は、最初にここのとらえ方が違うと、マラソンを攻略していくトレーニング方法や流れが変わってきます。もちろん、マラソンを攻略していく上でどちらも大切な要素であり、どちらも必要不可欠になります。しかし、前回このブログでスピードが身につかないランナーの例をあげたように、スピードトレーニングを実施しても記録や成績に結びつかないケースは多く、エリートランナーにも多く見られるケースでもあります。

その主な理由として、ハードなスピードトレーニングに対応できる体力ができていない。すなわち、スタミナが身についていないことがあげられます。また、激しいスピードトレーニングの詰め込みは、単に苦しいことの繰り返しとなり、メンタル面にも悪影響を与えます。具体例として、トレーニングに対する意欲が著しく低下する「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に陥る可能性が高まります。

そのため、スピードトレーニングを実施していくためのトレーニングが、もうひとつ必要になります。つまり、「練習のための練習」が必要になってきます。何だかおかしな言い回しですが、これを少し整理すると次のようになります。

◆1).スピードトレーニングのような質の高い内容に対応できる体力を身につけること。◆2).スピードトレーニングで疲労した身体を効率よく回復させること。◆3).スピードトレーニングで蓄積したメンタル面のストレスを和らげること。

以上、3つについての対応可能なトレーニングが、スピードトレーニングとセットで実施できれば、スピードトレーニングも効率よく身についてくるはずです。少なくとも私の経験上、強く感じます。そして、その代表的なトレーニングは、「LSD」となります。

意外と簡単な答えですが、市民ランナーをはじめ多くのランナーは、トレーニング効率や、できるだけ走らない方法を求める傾向が強くなってきています。特に、ランニングフォームやトレーニング理論ばかりに目がいき、時間をかけてゆっくり長く走る「LSD」の重要性が少し薄れているようにも感じます。

もちろん、私が勝手に感じていることでもありますが、次回はこの「LSD」についても考えていきます。

つづく。

期分け・47

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【期分け・47】前回は、1990年代までのランナーたちが主流にしてきたトレーニングの流れについて振り返りました。今回は話しを戻し、あらためてスピード養成期におけるスタミナ養成について考えていきます。なんだか不可解な言い回しですが、要はマラソンを目標にしているランナーも単にスピードを磨きたいと考えているランナーにとっても、土台となる部分である「スタミナ(持久力)」についての話しです。

既に7月後半に入り、夏の走り込み期に入ってきましたが、4月から7月前後までのスピード養成期にさかのぼって考えます。この期は、市民ランナーの方々でも10k程度までのロードレース大会や各種駅伝大会、あるいはトラック種目と、短い距離のレースを積極的に走ります。あるいは、走らされます(笑)。

日々のトレーニングについても、スピード系を中心に「ゼーゼーハーハー」と、かなり苦しい内容です。ところが、記録に直結しないケースは意外に多く、苦しんだ割には成果のでないランナーが多いのも事実です。

では、何故そのようになるのでしょうか?

もちろん様々な理由が考えられますが、最も大きな要因は「スタミナ不足」です。では、その具体例をいくつかあげてみましょう。

◆1).10kより短い距離のロードレース大会や駅伝大会において、同じようなレベルのランナーたちと集団で競り合っても、ラスト勝負になる前の中盤で、その集団から離れてしまう。◆2).気温や湿度が高くなったり、向かい風になったりと、レース当日のコンディションが悪化した場合、高い確率で失速している。◆3).日々のトレーニングやレースにおいて、適切な設定タイムでスタートしても後半に入ると失速するパターンが多く、最後まで目標のペースや本数を維持できない。

いかがでしょうか?上記の内、ひとつでも引っかかる人は、スタミナが不足している可能性が高いと言えます。特に、3の最後まで目標のペースを維持できない人は要注意です。また、上記に共通していることは、スピード養成を目的に適切な設定タイムにしているにも関わらず、ラストまでそのスピードを維持できない点です。

これについては極めて重要で、このようなランナーの場合、単に設定タイムや本数を調整したとしても、上記のような失速パターンになる可能性が高く、スピードに対する苦手意識が強く残ります。

次回は、その対策も含めて更に考えていきます。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・12

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【ロンドンパラリンピックへの道・12】いよいよロンドンオリンピック開幕が迫ってきました。もちろん、オリンピックの後はパラリンピックです。パラリンピック日本代表選手たちもこれから最後の調整段階に入っていきます。

先日の7月14日(土)から7月22日(日)の日程で、北海道深川市においてロンドンパラリンピック陸上競技に出場する日本代表合宿がおこなわれています。選手はもちろん、スタッフたちもそれぞれのスケジュールを調整しながらこの合宿に参加しています。

視覚障害の長距離マラソン代表選手の3選手は、14日から2泊3日の日程で参加し、トラック種目に出場する弱視の堀越選手については、最終日の22日まで頑張ります。

さて、ここで陸上競技日本代表選手の障害クラス別の人数を大まかに紹介しておきます。はじめに、上記合宿現在の陸上競技日本代表人数は合計36名。その内、車イス選手が18名、立位選手が18名となっており、その18名の中で視覚障害選手は6名です。

更に、視覚障害選手6名の内、2名が女子選手で、残りの4名は長距離マラソン選手です。したがって、この6名以外で陸上競技日本代表に選考された視覚障害選手はいません。

実は、立位の視覚障害クラスや切断クラスの記録は年々レベルアップしており、どの種目も健常者の記録と遜色なく、かなりのレベルに到達しております。そのため、オリンピック同様、立位選手がトラック種目でのパラリンピック出場は極めて難しい状況になりつつあります。

また、視覚障害クラスの全盲選手につていは、伴走者をはじめ日々のトレーニングをサポートしてくれる協力者が必要不可欠であり、その人材を確保できるか否かが最初に高いハードルになっています。

今回、日本代表選手に選考された全盲クラスの高橋選手と和田選手についても、「日々の伴走者をどのように確保するか?」を、常に悩みながらのトレーニングとなっています。至極当然のことながら選手にとっては相当なストレスであり、選手生命に直結する重要な問題でもあります。

特に、全盲の和田選手は、1500mにもエントリーしております。和田選手のベスト記録は、「4分19秒」ですが、4分10秒前後の記録も狙えるレベルにまで到達しています。ところが、このレベルの選手を伴走するには、1500mで3分台相当の走力が求められてきます。ご存知のとおり、ランニングブームの到来でランナー人口は爆発的に増加していますが、1500mを3分台で走れる市民ランナーは全国的に見てもほぼ皆無と言ってよいでしょう。

このように、パラリンピックに出場する視覚障害選手の走力は確実に上がっていますが、それを本当にサポートできる環境は不十分と言うのが現状です。

しかし、パラリンピックに出場することで、それぞれの選手にとっては、障害者スポーツを世間に知ってもらう一番の舞台であることに違いありません。そして何より、パラリンピックの舞台で選手自身が最高のパフォーマンスを発揮することが、今後のトレーニング環境改善や次世代育成へとつながっていくのです。

つづく。

期分け・46

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今回も前回の続きですが、少し脱線した話しをしていきます…。

何度も話していますが、マラソンを攻略していく方法や考え方はたくさんあり、どれが正解とか間違っているとは簡単に言えません。むしろ、目指している記録や各選手の走力によって様々な攻略方法があって当然です。

ところが2000年以降、アフリカ勢の台頭により5000m以上の長距離種目は驚異的な記録に飛躍していきます。そして、その波はマラソンにも押し寄せ、もはや2時間の壁も夢ではなくなりつつあります。

かつて、2000年以前は「短距離は素質が全てであり、長距離は努力である」と、聞かされることが多かったと感じます。しかし、2000年以降、むしろ長距離の方が素質的な部分に影響されているのではと強く感じます。そして同時に、長距離種目でも盛んにスピードを重視する傾向が強くなり、20代前半からマラソンに挑戦する選手は少なくなりました。

ところが、2000年以降、短い距離から徐々に長い距離へ移行し、マラソンランナーとして活躍したランナーは、国内では逆にそれほど多くありあせん。男子選手では高岡選手、女子選手では弘山選手と、この2選手以外で目立った実績を残した選手は直ぐに思い浮かびません。※一発屋ではなく、安定した記録を残した選手として。

さて、高岡選手と弘山選手に共通している点は、20代はトラック種目で日本記録を連発し、少しずつ距離をのばしてマラソンランナーに成長していった点です。2人とも選手生命が長く、毎年安定したパフォーマンスを残していました。しかし、2人ともマラソンではオリンピックに出場することはできませんでした。

何度も言いますが、これが絶対と言うマラソンの攻略方法はありません。しかし、短い距離でスピードを磨き、そこから徐々に距離をのばしていってマラソンランナーとして成長していく方法は、とても理にかなっており理想的です。ところが一方で、とても長い年月と手間がかかり、多くの選手や指導者にとっては単なる夢を語っているだけで、あてのない目標にむかっている現実逃避のようにも感じます。

様々なトレーニング方法や考え方が確立してきた現在ですが、今一度、歴史をひもとき、1990年代まで主流だったトラックとマラソンを年間の中で同時に目指していく流れを見直してみることも必要な時代なのかもしれません…。

つづく。

ロンドンパラリンピックへの道・11

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7月3日、ロンドンパラリンピック日本代表選手及び役員の公式発表がありました。日本盲人マラソン協会の強化指定選手からは、4名の選手が選出されました。

◆T12クラス(弱視):岡村正広、堀越信司。◆T11クラス(全盲):和田伸也、高橋勇市。

エントリー種目は、高橋選手はマラソンのみの出場ですが、パラリンピック3大会連続出場。堀越選手は、トラック種目のみの出場で、北京パラリンピックからの2大会連続出場となります。そして、岡村選手と和田選手は初めてのパラリンピック出場となりますが、マラソンとトラック種目のとちらにもエントリーします。

さて、4年前の北京パラリンピックでは、障害クラスの統廃合が実施された影響もあり、メダル獲得はおろか入賞すらできず、本当に悔しい思いで帰国したことを今でも鮮明に覚えています。そして、その悔しい思いを決して忘れることなく、この4年間は地道にかつ冷静に強化を継続してきました。

しかし、今回のロンドンパラリンピックでは前回の北京大会と同じく、視覚障害者マラソンはT12クラスのみの実施となります。したがって、T11クラスの和田選手と高橋選手は前大会同様、障害の軽い選手たちと勝負する厳しい状況は変わりませんが、入賞ラインは視野に入っています。そして何より、T12クラスの岡村選手がチームジャパンとしては、2大会ぶりのメダル獲得を狙える位置までに仕上がってきました。

また、T11クラスの和田選手は、トラック種目の1500mと5000mにも出場します。しかも両種目とも上位入賞を目指せる記録を残しています。大いに期待のかかるところですが、歴代のオリンピック選手を振り返っても、トラックの1500mからロードのマラソンまでを同時に走りこなした選手はほとんど皆無です。

なぜなら、若いころは短い距離でスピードを養成し、少しずつ距離をのばしながらマラソンに移行していくスタイルが一般的だからです。ところが、和田選手の場合、最初からマラソンを目指しました。その結果、マラソンをしっかりと走り切れる強靭なスタミナと脚力が身についていきました。

そして、ここからが和田選手の特徴的なところで、マラソンを走り切れる強靭なスタミナと脚力が身についたことで、質の高いトラックでのスピード練習がどんどん消化できるようになりました。その結果、この1年間で和田選手が潜在的に持っていたスピードが、一気に開花してきたのです。

特に、近年のトラック種目で世界と対等に勝負を挑める日本選手は、オリンピック選手を含めても稀です。今回トラック種目に出場する和田選手や堀越選手の活躍を大いに期待したいと思います。

この4年間でロンドンパラリンピック代表選手に選出された上記4選手とは、多くの強化合宿を共にしてきました。4年前の北京大会と比較してもその成長ぶりは一目瞭然です。ロンドンパラリンピックではそれぞれが持ち味を発揮し、「チームジャパン」として世界と対等に勝負してくれるに違いありません。

皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

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