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2023-08

2023夏を走る・14

【2023夏を走る・14】夏の北海道マラソンが終わりましたが、今年の同マラソンは例年にないほどの高温多湿の悪コンディションに見舞われました。8時30分のスタート時でもすでに、手元の温度計は「気温32度、湿度70%」と、私が経験した北海道マラソンでは最も過酷なコンディションでした。

案の定、スタート後のレース展開は男女とも壮絶なものでした……。

さて、来年のパリパラを目標に走り込んでいる日本ブラインドマラソン協会の強化指定選手たちも多数出走しましたが、過酷なコンディションに悪戦苦闘。もちろん、暑熱対策などにも取り組んで挑みましたが……。

そんな中、男子視覚障がいの部で3位に入った若手選手が、目標どおりのタイム(自己新)でゴールしました。彼は、T12クラスに該当する選手で、単独走ができます。と、いいながらも弱視(詳細は割愛)であるため、給水を取ったり、路面状況などを確認するには、かなり厳しい状況でもあります。

彼は、今年の4月に開催された「かすみがうらマラソン」が初マラソンで、今回の北海道マラソンが2度目のマラソンでした。しかし、その初マラソンも目標どおりのタイムで完走しており、たった2回のマラソン経験ですが、2回とも目標タイムをクリアしての完走になりました。

また、4月の初マラソンも、今回のマラソンもともに気温が高く、暑い中でのマラソンだったので、記録以上の強さを感じる選手です。このように暑さを苦にしないとか、いわゆる暑さに強いとかの判断はとても難しいのですが、暑さに対する適応力のようなものは生まれ育った環境が強く影響していると感じます。

私の経験上の話になりますが、強い選手(勝負や暑さなど)を育成するのは、たんに速い選手(記録が良い)を輩出するよりも難しく、強い選手の育成方法などのノウハウを見聞することはほとんどありません。やはり、「他人との勝負強さや自然相手の暑さに強い」などは、持って生まれたものや、生まれ育った環境などが強く影響しているのでしょうか。

いずれにしろ、楽しみな選手が出てきたのは間違いありません。今年の北海道マラソンは厳しい結果でしたが、まさに一筋の光明が差し、最後に希望をもたらしてくれました……。

2023夏を走る・13

【2023夏を走る・13】この1週間も厳しい猛暑が続きましたが、少しでも涼しい環境を求め、長野県上田市菅平高原で合宿を実施してきました。しかし、その菅平高原においても日中は30度を超える厳しい暑さでした。また、毎年この時期に菅平合宿を実施していますが、今年は朝晩の気温も例年より高いような感じを受けました。

そんな中、例年どおりの走り込みを実施しました。また、合宿参加者もほぼ例年どおりのメンバーで、確実に年齢を重ねております。もちろん、菅平高原には高校生や大学生の姿も多く、トラックやロードで走るそのスピードはうらやましいほどです。

一方、我々のグループは彼らのウォーミングアップのスピードにも満たないようなペースでの走り込みがメインです。これは、富津合同練習会で走り込んでいるときも同じで、実業団選手や箱根選手たちが、ウォーミングアップをしながら我々を抜いていきます。

しかし、常に生き生きと楽しく走っているのは、我々の方だと感じております。

かくいう私自身は横でタイムをとったり、給水を手伝ったりと、一緒に走ることはありません。しかし、常に外から拝見していると、いくつになっても好きなマラソンを目標にしているその姿は生き生きと輝いています。もちろん、高校生や大学生がガンガン走っている姿も迫力はありますが、どこか義務的な雰囲気がします。

かつて私も20代から30代ころは、まさにガンガン走り込んでいましたが、今は当時の気力で走ることはできません。ところが、菅平合宿に参加しているメンバーたちは年齢に関係なく、当時の私以上の気力を持って走っています。

若い時にスポーツなどを真剣に取り組んだ経験は、その後の人生のバックボーンになるといわれています。これは自分自身の経験からもそうだと思います。しかし、燃えるような情熱を注げるスポーツ(マラソンなど)や趣味に出会うのは「年齢を重ねてからの方がその人の人生をより充実させる」と、そう感じることが多くなりました。

また、人生100年時代といわれて久しいですが、そんな視点からも楽しめることは「後出しじゃんけん」した人の方が実りある人生を送れるような気もします。もはや私自身には、一緒に40kを走る気力はありませんが、せめて一緒の空間にいることで刺激を受け続けたいです……。

2023夏を走る・12

【2023夏を走る・12】8月も後半に入りましたが、猛暑(残暑)が続いております。涼しかった北海道北見市から関東に戻り、引き続き千葉県富津市で合宿を実施しました。案の定、寒いから暑いへの移動だったので、体にはこたえました。もちろん、本当にたいへんだったのは選手たちですが……。

あらためて8月も後半に入り、いわゆる「夏の走り込み」といわれている期間も終盤です。また、走り込みを重ねてきた選手たちの体には、かなりの疲労が蓄積しています。そして、その疲労が故障や不調の主な原因にもなります。

では、その疲労についてですが、日本疲労学会が定めた定義があるようです。「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養への願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」。

つまり、運動や仕事などのし過ぎで、体と心が本来の力を発揮できない状態でしょうか。特に、夏の走り込みのような過酷なコンディション下における過度なランニングは、その最たるものといえます。したがって、ランニングを中止すれば疲労は蓄積せず、回復方向に向かうでしょう。

そして、夏の走り込みをしなければ大きな疲労感もなく、故障や不調を防止できる確率は飛躍的に高まるでしょうが、これでは秋以降のマラソンシーズンで記録更新を狙うのは難しくなります。もちろん、夏は走らない選択をすることは、多くの選手にとって現実的ではありません。

一方、夏の暑い環境下でトレーニングすることを「ヒート・トレーニング」ともいうようです。このトレーニング方法の詳細は割愛しますが、あえて暑い環境下で走り込んでいくと、「ランニングに必要な血液のはたらきが向上して筋肉に回る血液量も増え、その効果は涼しくなってからも持続する」。

このように、いまさらながら夏の走り込みは善悪の矛盾があります。すでに、夏の走り込みも終盤に差し掛かった選手たちの体に疲労が蓄積されているのは間違いありません。しかし、夏の走り込みを積んできた選手たちの体はかなり強化されているのも確かです。

そして、その疲労回復に最も効果的といわれているのが、「良質な睡眠と食事である」と多くの専門家が話しており、間違いないでしょう。厳しい猛暑(残暑)は続きそうですが、選手の皆様は疲労回復も忘れないように……。

2023夏を走る・11

【2023夏を走る・11】8月4日から北海道北見市において強化合宿を実施しましたが、現地入りした当日から天候は雨が続き、気温も20度を下回る日が続きました。したがって、選手たちは35度を超える猛暑の中で走り込んでいたので、気温が一気に20度近くも下がった環境にさらされることになりました。

もう少し具体的な表現をすると、ウォーミングアップからランシャツ・ランパンで過ごせた環境から、いわゆるウインドヴレーカーを着用していないと、体が温まらない環境です。

このようにコンディションは一気に暑いから寒いへ激変しましたが、「人は楽な方にはすぐ慣れる」とも言います。案の定、合宿2日目に実施した40k走より、後半に実施した32k走の方が個々の動きもタイムも好転しました。もちろん、疲労がたまってきている状態にもかかわらず……。

同じように暑いから寒いへの事例としては、秋からのマラソンや駅伝・ロードレースで戦うための「夏の走り込み」でしょうか。これについては、もはや日本長距離界の慣習ともいえます。要は、あえて夏の暑い季節に走り込みを実施しておくと、涼しくなっていく秋以降に向かって調子は上がっていくサイクルです(詳細は割愛)。

このように、マラソンや長距離の競技特性上、暑いコンディションよりも涼しいコンディションの方がパフォーマンスは確実に向上します。したがって、夏(暑い)から秋・冬(寒い)に向かっていく季節の流れに対しては、確立されたトレーニング理論や方法論が数多く存在します。

一方、目標にした大会などが真夏の場合、そのトレーニング方法などは、いまだ手探りの状態が続いているともいえるでしょうか。その理由はいくつかありますが、まずは選手個々の暑さに対する適応力差が大きいことです。具体例としては、秋冬マラソンの走り込み期における距離走やその設定タイムなどは多くの選手に合致しますが、夏の走り込み期に対してはその法則がほぼあてになりません(私の経験上)。

つまり、選手個々の暑さに対する「強い弱い」が色濃く出るからです。また、昨年の夏は、しっかり走れた選手でも「今年の夏は全く走れない」というように、暑いコンディション下においてはパフォーマンスの再現性も難しいと感じます。

さて、我々が最大の目標にしているパラリンピックは夏に開催されます。前述したとおり、再現性の難しい夏の大会ですが、最も重要な大会です。そして、東京パラ同様、メダル獲得の再現を達成することが目標になります。

まずは、今月27日に開催される夏の北海道マラソンで……。

2023夏を走る・10

【2023夏を走る・10】8月に入りましたが、記録的な猛暑は続いております。また、7月の平均気温(?)は観測史上最高だったようですが、実際に屋外で活動をしている者としては、まさにそう感じました。

と、言いながらランナーたちにとって、夏の走り込みを中止することなど簡単にできません。もちろん、その日のコンディションや体調を重視するので、こちらから無理強いはしませんが……。しかし、目的意識の高いランナーほど、過酷な状況に追い込まれても無理(我慢)をするのは至極当然です。

そのため、練習をサポートしながら「今日はもう限界だな」と、見受けられるランナーに対してはどんなタイミングでも「中止」を伝え、走るのをやめさせます。ところが、そんなランナーほど、その状態からさらに頑張ります。

同様に、休養後(完全休息や軽めの練習)にもかかわらず、うまく走れないランナーも意外に多く見受けます。もちろん「なぜだろう?」と、本人と話をしたり、トレーニング実績などを振り返ります。すると、こちらが把握していないところで、さらに走り込んでいたり、追い込む練習をしているケースがあります(もちろん、個々にその理由は違います)。

「夏の走り込み期」は、どのランナーも秋からのマラソンシーズンに備え、意欲的に走り込みます。その結果、前述したような不調に陥っていくランナーもいます。しかし、自主的に走り込みをするランナーほど、結果を残しているのも違いなく、不調に陥るケースとは紙一重なのも確かです。

そして、その見極めを客観的にすることがサポートしている者の役目ですが、それ以上に本人の意欲が上回っているランナーに対する対応(コーチ)は、いつの時代も本当に難しいと感じます(もちろん、そのレベルに到達しているランナーはそんなに多くない)。

さて、今年の暑くて熱い夏(残暑?)は当面続きそうですが、いろいろな意味でこちらがオーバーヒートしないよう、ランナーたちをサポートしていく所存です。

暑い日々が続きますが、皆様もお体をご自愛くださいませ……。

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