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2013-07

IPC世界陸上競技選手権・3

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【IPC世界陸上競技選手権・3】大会最終日のマラソンも無事に終了しました。結果は、全盲(T11クラス)の和田選手が銀メダルを獲得。続いて実施された車イスマラソンでは、男子の部で洞ノ上選手が銅メダル、女子の部で土田選手が銀メダルを獲得し、日本チームとしては有終の美を飾ることができました。

あらためて、選手の皆様、スタッフの皆様、お疲れ様でした。また、この大会に参加するにあたってたくさんの方々からご支援ご協力を賜りました。この場をお借りし、厚く御礼申し上げます。

さて、今大会は、昨年のロンドンパラリンピックで惨敗した翌年の大会だけに、選手の選考段階から様々な不安要素ばかりに目が行きました。大きな理由のひとつとして、実際にロンドンパラリンピックで陸上競技が獲得したメダル数は、たったの4個です。そして、その内の3個はひとりの選手が複数種目で獲得したメダルです。更に、その選手はロンドンパラリンピック後に競技を引退しただけに、今大会はチームの軸となる選手が抜けた状態での戦いとなるからです。

ところが、最終日のマラソンを含め、日本チームは合計10個のメダル(金1個、銀5個、銅4個)を獲得しました。これは、監督としての目標であった6個を上回り、今後の強化に弾みのつく好成績だったと言えます。更に、メダルや入賞と違った視点から見た場合、自己記録を更新した種目が12種目もあり、暑さの厳しいコンディションでしたが、各選手のピーキングもほぼうまくいったと評価できる記録も多かったと感じます。

一方で、種目毎に精査していくと、勝負するには日本とのレベル差が大きすぎる種目、高いレベルで各国の選手が拮抗して今後の強化策が難しい種目等、頭の痛い課題も浮き彫りになりました…。

いずれにしろ、今回メダルを獲得した種目を軸に一層の強化をすすめていく所存です。

また、次世代を担う若手選手の発掘及び育成についても待ったなしの状況です。しかし、今大会に参加した20代前半の若手選手は、世界の雰囲気にのまれることなく力を出し切った選手が多かった点については今後の希望となりました。特に、大会初日の男子車イス1万メートル(T54クラス)で、今大会初のメダルを獲得した渡辺選手は2016年のパラリンピックだけでなく、更にその先の大会も視野に入る将来性豊かな選手と感じました。

帰国後は今大会の成績を細かく解析し、あらためて今後の強化につなげていきます。

今後とも皆様方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

おわり。

IPC世界陸上競技選手権・2

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【IPC世界陸上競技選手権・2】競技がはじまって4日目が終了しました。ここまでの日本チームは、メダル4個(金1個、銀1個、銅2個)を獲得です。監督の立場として、メダル獲得数の目標(予想)は6個と考えているので、選手たちは健闘しています。もちろん、スタッフたちの支えがあってのことです。また、メダル獲得以上に自己記録更新が既に7個もでており、現地入りしてからどの選手も調子を崩さず、ピーキングがうまくいっていることが何よりです。後半戦に向け、更に気を引き締めていきます。

さて、あらためてリヨンのコンディションですが、当初の予想に反して連日猛暑です。気温は35度前後まで上昇し、夜の22時頃まで明るいため、競技が進行している時間帯は全て暑さとの戦いでもあります。選手はもちろんですが、選手のため早朝から深夜まで動き回っているスタッフたちの体調も心配なところです…。

今回、私は監督なので、原則として競技中はスタンドで全ての競技を観察しながら全体を把握するようにしています。同時に、国際大会への帯同はそれなりに経験していますが、競技を最初から最後までスタンドで観る機会は意外と経験しておりません。ご存知のとおり、障害者の陸上競技は、車イスをはじめ手足の切断(機能障害等)、視覚障害、脳性まひ、知的障害等、それぞれの障害と程度によってクラスが分かれています。そのため、同じ100mと言ってもその記録や競技スタイルは様々で、同じように評価することはできません。

しかし、一般の陸上競技同様、障害者の陸上競技も強豪国はアメリカを軸に形成されており、その記録も驚異的なスピードで更新され続けています。特に、視覚障害や切断クラスの短距離種目については、日本の一般競技者と遜色ないレベルまで到達している種目も多く、障害者の域を超えている感もあります。

具体例として、T11クラス(全盲)の男子200mは、伴走者と走って22秒台の記録が当たり前です。そして、程度の軽いT13クラス(弱視)の男子200mは、21秒06と驚異的な速さです。更に、T43クラス(両脚下腿切断)の男子200mは20秒66と、もはやオリンピックレベルにまで到達しており、これまでのような障害者陸上の関係者だけでの強化や選手発掘は困難な状況になりつつあります。

そんな厳しい状況の中ですが、冒頭に記載したとおり、日本チームはここまで4個のメダルを獲得するなど、健闘しています。

後半戦に向け、引き続き選手とスタッフがひとつになり、各選手が最高の調子でスタートに立つためのピーキングをしっかりとしていきます。

つづく。

IPC世界陸上競技選手権

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【IPC世界陸上競技選手権】障害者陸上の世界選手権がフランス・リヨンで開催されます。今回、私は日本チームの監督として帯同します。

7月15日(月)11時に日本を出発し、パリ経由でリヨンに到着したのは現地時間の深夜0時過ぎでした。途中、パリでの乗り継ぎや待ち時間等もあったので、約24時間の長旅となりましたが、毎度のことながら海外遠征は移動時にコンディションを崩す選手もいるので、特に障害の重たい選手に対するサポートは細心の注意をはらいます。

また、これまで大きな海外での大会は、日本選手団として全員一緒に移動するケースが多かったのですが、今回は各選手の競技スケジュールに合わせて幾つかのグループ別での移動となりました。したがって、一緒に行動できない選手の調子を把握することが難しいので、現地にて直接顔を合わせるまでは安心できません。幸い、今のところ調子を崩している選手やスタッフは出ておりませんが、最後まで気を抜けない重要事項となります。

そして、現地入りが完了すると、翌日から順次トレーニングを開始します。至極当然のことですが、現地でのトレーニングは最終調整です。いわゆる狙ったレースへのピーキングです。

「迷ったら休養」です。

もちろん、これについてはどの選手も頭では理解できています。しかし、同じ練習会場にライバル国の選手や自分よりはるかに大きな身体をした外国選手を目の当たりにすると、状況が変わってくる選手もでてきます…。

ある意味、どのスポーツにも共通することですが、普段と違う環境下に置かれると、急に自分自身のフォームや調整内容に対する「不安」が心の中に芽生えてきます(不安症候群)。そして、厄介なことにその「不安の芽」が成長するスピードの速さは、これまで膨大な時間を費やして構築してきた「自信」をはるかに上回ります。つまり、狙った大会に向け、身体と心をつくっていくには膨大な時間と手間がかかりますが、それを崩すのは一瞬のことなのです。だからこそ、「迷ったら休養」を実践できるか否かは、重要なキーワードとなります。

また、世界選手権やパラリンピックは、世界ナンバーワンを決める極めて注目度も高い大会です。だからこそ、そこで結果を残せる選手は、末永く讃え続けられます。今回、日本代表選手として参戦する34名の選手については、最高の調子でスタートラインに立てるようスタッフが一丸となって選手をサポートしていきます。

皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

夏!暑さ対策!

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【夏!暑さ対策!】梅雨が明けた途端、記録的な猛暑が続いております。誰でも夏は暑いと覚悟はしていますが、ここまで暑いとランニングどころか外出することも苦痛に…。

と、言いながら秋のマラソンシーズンを見据えた夏の走り込み期にも入っていきます。したがって、暑いからと言って、簡単にランニングを中断する訳にもいきません…。※もちろん、無理は厳禁です!

そこで今回は、夏の暑さ対策として、水分補給についての注意事項を再確認していきます。

一つ目は、基本となる体温調整についてですが、簡単にまとめると次のような流れになります。「暑熱環境→体温上昇→体温調整(汗をかく、皮膚血管拡張、他)」。また、汗は蒸発してはじめて力を発揮します。データ的には、「1mlの汗が蒸発→580calの熱が奪われる」、「60kgの成人男性が、1度体温を下げるには約100mlの汗が必要」。したがって、だらだら流れている汗は無意味であり、湿度の高いところや風通しの悪い場所でのランニングや運動は特に注意が必要です。※体育館のような室内は要注意。

二つ目は、暑熱順化についてです。既に何度か耳にしたことのある言葉だと思います。簡単に説明すると、暑さに慣れているか否かのことです。これについては、個人毎の体力差や生活環境等に大きく影響を受けるので、誰もが同じになるとは言えません。しかし、暑熱順化についても次のような実験データがあります。「2週間にわたって33度から35度の実験室で、じっくりと汗をかくような運動を1から2時間程度実施。その結果、ほぼ4から5日で約8割程度、夏の暑さにも慣れてきた」。つまり、あえて暑い環境下で暑さに慣れることで、人は暑さに適応できるようになります。※個人差が大きいので注意です。

三つ目は、脱水と体重についてです。体重の3%の水分が失われると、運動能力や体温調整が低下すると言われています。したがって、ランニングや運動による体重減少が2%をこえないよう水分を補給することがポイントです。具体的な目安として、「ランニング前:250から500ml、ランニング中:500から1000ml/時間=10から20分/回の給水」。更に、日ごろから水分を体内に蓄えておくことは重要です。「ウォーターローリング:毎日1時間ごとにミネラルウォーターを200ml程度摂取する」。また、単にのどの渇きだけで判断すると、脱水に見合う量を摂取することが難しく、塩分や糖分を含んだ飲料から摂取すると、脱水防止により効果的と言われています。

以上が主な注意事項となります。もちろん、他にも諸注意はありますが、更に大きくまとめると次のようになります。

◆1.体温上昇に注意!◆2.塩分及び糖分も含む飲料を摂取するとより効果的!◆3.水分補給は前もって!

しかし、真夏のランニングはやはり危険です。できることなら回避した方が賢明ですが、朝夕の涼しい時間帯や涼しい場所(環境)でのランニングを推奨します。

期分け・69

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【期分け・69】スピード養成期においてもランニングの基礎となるスタミナ(土台)をキープするためには、最低限のスタミナ系トレーニングも必要不可欠です。では、具体的にどの程度の距離や時間をどの程度の頻度で走れば良いのでしょうか?

今回もサブスリーレベルランナー(3時間以内)を例に考えていきます。

既に、このブログの中で何度も記載してきたとおり、マラソンを目指す上で効果的にスタミナを養成するスピードとして、マラソンペースの83%から87%のスピードを推奨しました。そして、サブスリーランナーの場合、1kあたりのスピードが4分15秒なので、4分30秒から4分50秒前後のペースで走り込むのが最も効果的となります。

しかし、このスピード養成期はマラソンペースより速いペースでのトレーニングやレースを軸にしたスピードトレーニング系が中心となります。つまり、走行距離は短いのですが、強度は格段にアップしています。そんな状況下において、秋から冬の走り込み期と同等の設定タイムで長距離走を加えると、質の高いスピードに加え、質の高い量(距離)が加わることになります。それは逆に、故障や怪我の確率を飛躍的に高めることにもつながります。

そのため、スピード養成期においてのスタミナ系トレーニングは、基礎となるスタミナ(土台)をキープすることに目的をシフトする必要が出てきます。具体的な長距離走のペースは、上記の4分50秒より遅いペースを推奨します。そして、このブログの「期分け・66」でも記載したとおり、時間なら1時間40分から2時間30分程度の間となります。しかし、気温や湿度の高いコンディションを考慮すると、長くても2時間程度がギリギリの線となります。※暑さに対する耐性は個人差が大きいので要注意。

更に、このスピード養成期のスタミナ系トレーニングの位置付けとして、スピード系トレーニングやレース後の疲労回復的な目的も大きくなってきます。特に、トラックレースや10k以下のロードレースや駅伝を走った後は、ゆっくり長く走ることで、疲労回復と枯渇したスタミナ(土台)を戻す両面の効果が期待できます。

まとめると、スピード養成期中のスタミナ養成は、◆1.走行距離を目安にするなら、マラソンペースの87%前後のスピードで20kから25k。◆2.走行時間を目安にするなら、1時間40分から2時間程度の時間でゆっくり。◆3.取り入れる頻度は、週に1回程度で、1か2のどちらかを選択。

もちろん、暑さに対する耐性や適応力は個人差が大きいので全てのランナーに当てはまる訳ではありません。しかし、スピード養成期においても、スタミナ系トレーニングをうまくかみ合せることで、スピードも効果的に上がっていくと考えます。

つづく。

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