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2013-12

年末年始

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【年末年始】毎年のことですが、今年もあと少しとなりました。皆様にとってこの1年はどんな年だったでしょうか。マラソンで自己記録を大幅に更新できた人、逆に怪我や故障に泣かされた人…。良し悪しは別にして、この1年も貴重な経験を積み重ねることができたに違いありません。そして、この1年で得た経験を来年以降に活かしてほしいと願っております。

さて、既に年末年始の長期休暇に入っておりますが、ランナーの皆様方におかれましてはこの連休を活用し、充実した走り込みの真只中と思いますが、いかがでしょうか?

かくいう私のチームも毎年恒例となった年末年始合宿を千葉県富津市において実施中です。今年は、12月29日(日)から1月1日(水)までの日程です。合宿内容もここ数年、ほとんど変わりなく、恒例となっております。

◆12月29日(日):午後/35k走。◆12月30日(月):早朝/調整jog、午前/100分jog+1k走、午後/100分jog+1k走。◆12月31日(火):早朝/調整jog、午前/35k走、午後/調整jog。◆1月1日(水):早朝/調整jog、午前/120分jog+1k走。

ポイントは、「ゆっくり&じっくり走り込む」です。

そして、更に重要な目的が、仲間との懇親を深めることです。日頃、練習会等で顔を合わせるチームメートですが、ゆっくり話しをする機会は意外と多くありません。しかし、この年末年始合宿は、それぞれが忙しいスケジュールを調整して集まってきます。

実は、チームメートと言ってもクラブチームなので、それぞれの仕事や生活環境はバラバラです。したがって、マラソンを通じて集まった仲間ですが、語り合う内容は多岐にわたり、まさに異業種交流会のように充実します。

そして、年末年始の短い期間ですが、仲間と一緒に走り込み、大いに語り合うことで、今回も1年分の元気を蓄えることが…。

来年もよろしくお願い申し上げます。

期分け・77

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【期分け・77】前回は、「ゆっくり長く走るトレーニング」の効果について考えました。今回から「ゆっくり長く走るトレーニング」を、どのような頻度で、どのタイミングで実施していくかを考えていきます。

はじめに、毎度のことですが、「ゆっくり長く走るトレーニング」が絶対ではなく、様々なトレーニング方法が存在していることを、まずは再認識してほしいと思います。

既に何度も話しておりますが、「絶対に速くなるトレーニング」は存在しません。つまり、ランナーの数だけトレーニングパターンやノウハウは存在し、どれが正しいとか間違っているかの判断は簡単にできません。更に、「ゆっくり長く走る」ことを真っ向否定し、記録を残しているランナーもいます。もちろん、「ゆっくり長く走る」だけで、5kからマラソンまで全ての自己記録を更新したランナーも実在します。

では、何を目安に判断すれば良いのでしょうか?

ポイントは、「記録の確率(平均値)」です。具体的な例で話しをすると、あるトレーニングパターンを実施することで自己記録を更新したとします。そして、その後も同様のトレーニングパターンを継続し、狙った記録を再びマークできているか否かです。

マラソンは、量や質は別にして、大なり小なり走り込まないと完走すら難しいスポーツです。ところが、マラソンほど当日の天候やコンディションに結果を左右されるスポーツも珍しいと感じます。つまり、たまたま当日の天候やコンディションが良く、たまたま風向きも追い風となり、たまたま同じペースのランナーと競い合い、たまたま自分自身が予想しなかった好記録をマークしてしまう例は意外に多いのです。もちろん、逆もありますが…。

このように、マラソンの記録はトレーニングの量や質に影響される部分と、当日のコンディションに影響される部分とが存在します。そして、私のこれまでの経験からは、マラソンの記録は当日のコンディションに左右される確率の方が、かなり高いと感じます。

だからこそ、マラソンは2回目以降の「記録の確率(平均値)」を見ていく必要があるのです。特に、次の3つについては、ランナー毎に段階(成長)を追いながら確認していく大切な指標になります。

◆指標1:成功した次のマラソンでも目標の記録に到達できたか否か。◆指標2:1年間を通じてコンスタントに目標タイムでマラソンを走れたか否か。◆指標3:2年以上、コンスタントに目標タイムでマラソンを走り続けているか否か。

そして、上記3つの指標を達成するために共通していることは、「怪我や故障をしない身体づくり」となります。冒頭にも記載したとおりマラソントレーニングに絶対はありません。少ないトレーニングでも自己記録を手にすることは可能かもしれません。

しかし、マラソンは当日のコンディションに大きく左右されるスポーツなだけに、安定したパフォーマンスを発揮するためには、どんな天候や状況にも対応可能な「心と身体」が必要不可欠になります。つまり、「ゆっくり長く走るトレーニング」を取り入れることは、それらを強化し、安定したパフォーマンスを発揮するための効果的なトレーニングパターンのひとつになるのです。

以上、前置きが長くなりましたが、あらためて次回からは具体的なトレーニングパターンを考えていきます。

つづく。

絆・14

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【絆・14】12月15日(日)、第44回防府読売マラソンが山口県防府市において開催されました。既にご存知のとおり、公務員ランナーの川内優希選手が、先日の福岡国際マラソンから連続となる「1ヶ月間で2度のサブテン(2時間10分切)」を見事に達成しました。川内優希選手は2位でしたが、優勝したモンゴルのセルオド・バトオチル選手に最後まで食い下がり、持ち前の粘り強さを発揮する素晴らしい内容でした。

レースは、川内優希選手とセルオド・バトチオル選手の一騎打ちとなりましたが、向かい風の強くなった32k過ぎに強烈なスパートで川内優希選手を引き離しました。結果的には、そのままセルオド・バトチオル選手が優勝しましたが、スパート時についた10数秒前後のタイム差をゴールまで持ち込む見ごたえのあるレースでした。

逃げるセルオド・バトチオル選手は何度も後ろを振り返り、追いかける川内優希選手は何度も離れては詰めよる粘りを繰り返し、まるで駅伝のアンカー勝負を見ているようでした。優勝したセルオド・バトチオル選手は自己記録を2分以上も短縮する「2時間9分0秒」。2位で粘り抜いた川内優希選手は「2時間9分15秒」と、2人とも見事なタイムでした。しかし、セルオド・バトチオル選手が惜しくも2時間8分台に突入できなかったのは、すぐ後ろで粘り抜いた川内優希選手が阻止したかのようにも感じました…。

さて、今大会には日本盲人マラソン協会の強化指定選手たちが、はじめて公式出場しました。それも11月後半に同大会出場を緊急決定する強行日程でしたが、大会関係各位のご理解ご尽力により、無事に出場することができました。あらためて御礼申し上げます。

今回の防府読売マラソンには、女子強化指定選手全員がエントリーし、男子強化指定選手はベテラン勢が意欲的にエントリーしました。結果は、女子の道下選手(T12/弱視)が、「3時間6分32秒」の日本新記録をマーク。男子選手はベテラン勢が奮起し、福原選手(T11/全盲)が、「2時間53分8秒」。加治佐選手(T11/全盲)が、「2時間57分42秒」。そして、57歳の新野選手(T11/全盲)が、「2時間59分2秒」と、ベテラン3選手が揃ってサブスリーでゴールしました。実は、このベテラン3選手が揃ってサブスリーでゴールするのは、2007年の京都福知山マラソン以来となります。

これらの好記録の理由として最も大きなことは、今年度から女子の強化指定選手が加わり、強化合宿の雰囲気がより明るく意欲的な空気に変わったことです。その結果、少しマンネリ化になりつつあった男子選手たちも刺激を受け、特に若手選手が意欲的になりました。そして、肩身の狭くなっていたベテラン3選手たちが、強化合宿においても久々に積極的な走り込みを積み重ねるようになりました。

そんな意欲的な取組姿勢が実を結び、今回の結果につながったことは言うまでもありません。そして同時に、今回出場しなかった他の強化指定選手たちへの熱いメッセージとなったに違いありません。来年1月に再び強化合宿を実施し、今回出場しなかった強化指定選手の多くは、2月の別大マラソン、3月のびわ湖毎日マラソンと、ビッグレースへの本格参戦も待っています。

引き続き、皆様方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

つづく。

期分け・76

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【期分け・76】「ゆっくり長く走ることで、スタミナ(持久力)を養成していくために必要な基礎部分(土台)を構築していく」と、前回は話しをしました。今回もその続きですが、はじめに前回記載した「目的1」から「目的3」について、もう少し専門的な説明を加えていきます。

◆目的1:毛細血管の発達。→ スピード系トレーニングのような高強度の運動は交感神経が働いて毛細血管が収縮してしまうため、身体の隅々まで血液が回り難くなる。逆に、ゆっくり長く走ることは、リラックスした運動のため交感神経が活発に働かないので、身体の隅々にある毛細血管に長時間圧力をかけることができる。その結果、筋肉中の血液が流れている毛細血管が増加すると共に血液量も増加する。→ 筋持久力の向上。

◆目的2:エネルギー源としての脂肪利用割合の向上。→ ゆっくり長く走ることで体内の脂肪燃焼効率が高まり、筋グリコーゲン枯渇までの時間が長くなる。即ち、長時間動き続けることができるのでダイエット効果も高まる。→ ランナー体型への進化。

◆目的3:肺活動の効率化。→ 呼吸のとき横隔膜を使うが、スピード系トレーニングの場合、活性酸素が発生し横隔膜が疲労する。逆にゆっくり長く走ると、横隔膜の中に活性酸素を除去する酵素が発生し、横隔膜をより効率的に動かし続けるようになる。その結果、肺の活動が効率的になり、酸素を取り込み全身に送るメカニズムが強化され、長時間動き続けることが可能となっていく。→ 肉体的及び精神的スタミナの養成。

以上のように、ゆっくり長く走ることで、マラソンに必要な基礎部分(土台)を構築していくことができます。だが、一方でレベルの高いランナーにとっては、上記したような効果が表れにくいのも事実です。

しかし、ゆっくり長く走ることは、上記以外にも「疲労回復」を促進する効果もあげられます。「目的1」に記載したとおり、ゆっくり長く走ることで毛細血管が増加し、血液量が増加するため、筋肉に蓄積された疲労物質も効率よく取り除くことが可能となります。

つまり、レベルの高いランナーにとっての「ゆっくり長く走る」は、スタミナの基礎部分(土台)を構築していくより、レース後や高強度トレーニング後の疲労回復を促進したり、身体のコンディションを整える目的の方が大きくなります。それは、「ゆっくり長く走る」ことで、レース後や高強度トレーニングで痛んだ基礎部分(土台)をメンテナンスするようなイメージにもなります。

つづく。

福岡国際マラソン

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【福岡国際マラソン】数々のドラマが繰り返されてきた伝統の「福岡国際マラソン」が、12月1日(日)に開催されました。今年も何かと話題の多い大会でしたが、終わってみれば今回も公務員ランナーである川内優希選手が話題を独占しました。

もちろん、私の選手たち(市民ランナー)も出場したので、今年も現地にて応援してきました。当日のコンディションですが、実はスタート直前まで雨が降っていました。しかし、スタート後は雨もあがり、天候は回復していきました。

また、沿道で応援している感覚では、雨が降っていたときは暖かく感じ、天候の回復と共に気温が下がっていったように感じました。その影響のためか、18k付近で応援したとき、どの選手も発汗が多く、前半で予想以上に体力を消耗しているように感じました。今回、私の選手たちは前半を抑え気味に入ったにも関わらず、気温の影響があったのか、後半は身体が固まって動かなくなったと振り返っていました…。

さて、レース結果はご存知のとおり、川内優希選手が中盤以降に見せた粘り強さばかりが目立つ内容でした。多くのマスコミや陸連関係者のコメントも川内優希選手を絶賛するものが多く、まさにそのとおりと感じる内容でした。

実は、今回の招待選手の中に松宮隆行選手の名前もありました。松宮選手は、5000mと30kの日本記録保持者で、北京五輪の5000mと10000mの日本代表選手です。つまり、日本最強のスピードランナーでもあります。しかし、今回の結果も含め、いまだにスピードを活かしたマラソンに移行できていません。

一方の川内優希選手は、どちらかと言えばスピードはなく、スタミナと自分自身の経験を頼りに粘り抜いていくマラソンを貫いています。まさに日本人気質である職人です。近年のマラソンは、黒人選手の台頭で驚異的に記録がのびています。その影響もあり、実業団関係者や他のマラソン関係者も口をそろえて「まずはスピード強化」と、コメントしております。しかし、そのコメントとは裏腹に、スピードを手にいれたランナーたちのマラソン挑戦は必ずしも成功しているとは言えません。

古い話しですが、1980年代から1990年代に活躍した児玉泰介選手や谷口浩美選手をはじめ当時のサブテンランナーの多くが、10000mは28分台半ば、5000mは13分台後半と、今の箱根駅伝常連大学のエースレベルにも届かないスピードでした。しかし、マラソンは川内優希選手のような粘りを身上とした職人気質に満ちたマラソンが多く、世界をリードしていました。

日本のお家芸であるマラソンは、今も昔も何かと話題になるスポーツですが、世界のスピード面ばかりに目が行き、日本人が本来得意とする「粘り強さ」が失われつつあるようにも感じます。そして、川内優希選手の時代に逆行するようなスタイルでの頑張りは、そんな日本人選手たちへの強いメッセージとも感じました…。

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