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2011-03

マラソンシーズン総括・上

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既にご存知のとおり、東日本大震災を境に開催予定だった大きなマラソン大会のほとんどは、開催自粛や中止となりました。そのため、私がコーチする選手たち(市民ランナー)のマラソンシーズンも3月末でひと段落することになりました。

さて、私は1年間を「期分け」し、トレーニングの内容や流れを組み立てています。特に、マラソンをメインに考えている選手に対しては、場当たり的なトレーニングやマラソン大会出場に陥らない様、期分けに沿った流れを重視しております。

従って、私がコーチする選手たちのマラソンシーズン(マラソン期)は、原則として秋から冬となります。もちろん平成22年度のマラソンシーズンも、昨年10月から今年の3月までと設定し、トレーニング計画や目標とするマラソン大会を決定してきました。

また、臨機応変にトレーニング方法や流れを変えていくことも大切ですが、1年間の流れを「期分け」し、同じ流れを何年も継続していくことも大切です。その結果、選手毎の様々なデータや持ち味等々が見えてくることは、私自身が経験から学んだ重要なポイントのひとつです。

では、実際に私がコーチしている選手たち(市民ランナー)のマラソンシーズンを、簡単に振り返ってまとめてみます。

◆平成22年度マラソン出場数(H22年10月~H23年3月):11大会(日本陸連公認大会)。◆延出場選手数:31名(男子7名+女子24名)。◆自己新記録達成回数:14回(男子4回+女子10回)。◆自己新記録達成率≒48%(初マラソン除く)。※初マラソン:2名(男子1名+女子1名)。

以上のような成績を残すことができました。もちろん、選手毎に課題はありますが、出場したマラソンの約半数で自己新記録を達成できた点は、大きな成果です。

次回は、その自己新記録についてもう少し考えていきます。

つづく。

※このブログもおかげ様で、スタートしてから丸3年間継続することができました。平成23年度も引き続きよろしくお願い申し上げます。

ロンドンパラリンピックへ!

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先日の3月20日(日)、障害者の陸上競技大会である「第14回九州チャレンジ選手権大会」が、熊本県で開催されました。この大会から来年に迫った「ロンドンパラリンピック」への挑戦が、事実上スタートしました。

このブログでも何度か記載していますが、パラリンピックへ出場するための参加標準記録を目指すには、一般の陸上競技とは違う条件がいくつかあります。もちろん、それらの条件を全てクリアした上での記録以外は、パラリンピックへの参加公認記録としては認められません。

参考までに主な条件は次のとおりです。

◆条件1).選手がIPC登録をしている。◆条件2).選手が国際クラス分け認定を受け、「R(Review)」または、「C(Confirmed)」と認定されている。◆条件3.出場する大会が、IPC公認である。※IPC:国際パラリンピック委員会

特に、条件2にあげた「国際クラス分け認定」を受けていない選手は、障害者選手として国際的に認められていないことになります。従って、障害者手帳を持っていたとしても、パラリンピックに出場することはできません。※原則として国内でのクラス分け認定は非公式扱いとなります。

さて、3月22日にロンドンパラリンピックで実施される正式種目が発表になりました。まずは、実施される障害クラスの数を記載します。

最初にトラック種目についてです。◆視覚障害:3クラス。◆脳原性麻痺:5クラス。◆切断・機能障害:3クラス。◆脊髄損傷/切断・機能障害:4クラス。◆知的障害:1クラス。・・・以上の16クラスです。

次にフィールド種目についてです。◆視覚障害:2クラス。◆脳原性麻痺:7クラス。◆切断・機能障害:4クラス。◆脊髄損傷/切断・機能障害:7クラス。◆知的障害:1クラス。・・・以上の21クラスです。

このように障害の種類や程度によって細かく分類されています。参考までに男子100mの金メダリストは、オリンピックではたったの1人です。ところが、パラリンピックの場合、男子100mはクラスが最も多い種目となり、その数は14クラスにもなります。つまり、パラリンピックの男子100mの金メダリストも14名となります。

そのため、「パラリンピックは障害のクラスが多すぎるので、メダルの価値が下がる」と、言った意見もあります。しかし、クラスが違えば、選手のパフォーマンスは男性と女性ほどの違いになったりもします。例として、視覚障害の場合、T13クラスは弱視となり伴走者を付けて走ってはいけない単独走行です。ところが、T11クラスは全盲となり伴走者が必ず必要となります。従って、同じ視覚障害クラスとしてクラスを統合すると、程度の軽い弱視の選手が有利になることは、誰の目から見ても明らかになります。

しかし、残念ながら世界の流れはパラリンピック種目やクラスを統廃合していく方向に向かっており、障害者の陸上競技は大きな転換期に差し掛かっています。それは同時に、選手たちにとっては大きな試練になる部分でもありますが、「新たな挑戦や夢を実行に移せるチャンス」と、私は信じています・・・。

ガンバレ!ニッポン!

復興へ・・・

去る3月11日に「東北地方太平洋沖地震」が発生しました。まずは、被災者の方々には心よりお見舞い申し上げます。また、お亡くなりになられた方々、ご遺族の方々には心よりお悔み申し上げます。

私が住んでいる千葉県君津市でもこれまで経験したことのない大きな揺れを体験しました。しかし、幸いなことに大きな被害はなく、私のランニング関係者や職場と職場の方々も全員が無事でした。また、マラソン練習会の会場としてお世話になっている千葉県富津公園も無事でした。

一方、各地で開催予定されていた各種マラソン大会の中止も相次ぎ、事態の大きさが伺えます。特に、世界選手権マラソンの最終選考レースに指定されていた「名古屋国際女子マラソン大会」の中止は、様々な意味で陸上界に大きな衝撃を与えました。

この大会には、私が直接コーチする3名の女子選手(市民ランナー)も出走予定でした。しかも3選手とも仕上がりは順調だっただけに、正直なところ悔やまれます。しかし、次のマラソンでは、被災された方々に勇気と希望を与える快走を期待しています。

さて、今回のような大きな災害の報道に接する度に、何もできない自分自身の無力さを感じます・・・。この様な気持ちは、多くの方々が感じていることと思います。

しかし、善意ばかりの気持ちで現地に赴いたり、根拠のない風評を含め、情報過多になることは、逆に事態を混乱させる原因にもつながっていくと考えます。今は、正確な情報や指示に従い、敏速かつ正確な行動をとることと、何より節電することが、被災した方々に対する支援の第一歩と・・・。

また、ランニングが可能な方は、単に自粛するのでなく、可能な範囲で確実にトレーニングを継続してほしいと思います。

「こんな非常事態時にランニングとは・・・」と、言う方々もいるかもしれません。しかし、その姿に「勇気と希望」を感じる方々も確実にいます。そして何より、自分自身の健康な身体と精神を保つことにもつながります。

最後になりましたが、一刻も早く、ひとりでも多くの命が助かることと、一日も早い復興を心より祈念いたいます。

東京マラソン2011・下

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今回は、先日開催された東京マラソンで、エリート女子の部に出場した3選手(市民ランナー)の記録をもう少し詳しく解析していきます。

はじめに、皆さんもマラソンに挑戦するとき、自分自身の走力や体力に合った設定ペースや、ペース配分を少なからず考えてからスタートすると思います。ところが、号砲と共にスタートすると、一緒にスタートした多くのランナーや大会の雰囲気にのまれてしまうケースが相変わらず後を絶ちません。

特に、スタート直後から自分自身の設定タイムよりもかなり速い集団やランナーに付いていくパターンは、どのマラソン大会でも多く見受けられます。そして、その結果として、後半の大失速へとつながり、最終的には目標タイムを大きく下回る結果へと・・・。

皆さんは、いかがでしょうか?

では、上記3選手(女性市民ランナー)の東京マラソンでの設定タイムと実績タイムを前半のハーフと後半のハーフに分けて解析します。

◆M・I女子選手:設定タイム/2時間37分50秒(1時間18分16秒+1時間19分34秒・▽1分18秒)→実績タイム/2時間37分34秒(1時間18分15秒+1時間19分19秒・▽1分4秒)。◆M・Y女子選手:設定タイム/2時間49分49秒(1時間23分53秒+1時間25分56秒・▽2分3秒)→実績タイム/2時間49分51秒(1時間24分22秒+1時間25分29秒・▽1分7秒)。◆M・S女子選手:設定タイム/2時間55分48秒(1時間27分54秒+1時間27分54秒・±0分0秒)→実績タイム/2時間54分18秒(1時間25分21秒+1時間28分57秒・▽3分36秒)。

このように前後半のハーフに分けて解析すると、設定タイムに対し、最も記録の良かったのはM・S女子選手ですが、実は後半の落ち込みが最も大きいことがわかります。また、自己記録を更新したM・I女子選手とM・Y女子選手については、40kの通過地点では、設定タイムに対し、「▽4秒と△10秒」でしたが、ゴールでは逆に、「△16秒と▽2秒」と逆転しました。特に、M・I女子選手のラスト2.195kは、「8分00秒」と、女子選手の中では何と5番目の速さとなる素晴らしいラストスパートでした。

また、自己記録を更新した2名の女子選手は、タイプ的にはどちらともスピードタイプであるが故に、スタミナが付きにくく、後半は失速するマラソンを繰り返してきました。しかし、マラソンに挑戦する毎に、5k毎の設定タイムと実績タイムを対比していくことで、自分自身の弱点や課題を明確にしていくことができました。そして更に、マラソントレーニングの中では永遠に変わることのない単調な日々の走り込みも、意欲的にかつ継続的な取り組みが可能になっていきました。

さて、マラソンを攻略するためのペース配分に絶対はありません。もちろん一定のイーブンペースで走り切ることは、最も効率的な走法のひとつであることは言うまでもありません。また、前半おさえて後半ビルドアップしていく走法は、マラソンの完走を目標にするならとても有効的な走り方です。しかし、どの走法を選んだとしても自分自身の走力や特徴に合っていなければ安定した記録や成績を残すことはできません。

そして、マラソンで最も重要な要素は、常に安定したパフォーマンスを発揮することと、私は考えます。そのためには、故障や怪我をしにくい「丈夫な身体」。更に、自分自身の感情をコントロールできる「強い精神力」のふたつを兼ね備える必要があります。

・・・と言いながら、理想と現実のギャップはまだまだ大きいですが、次のマラソンに向け、今回の経験とデータを選手と共有しながら地道な取り組みを継続していきます。

おわり。

東京マラソン2011・上

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先日開催された「東京マラソン2011」は、久々の晴天に恵まれました。同時に、その絶好のコンディションに後押しされて、自己記録を更新したランナーも多かったのではないでしょうか。特に、日本人男子のトップでゴールした川内選手の走りは素晴らしかったですね。川内選手の記録や内容についてのコメントは割愛しますが、これから一気に増えてくると予想される外野からの声や情報に惑わされることなく、川内選手らしいこれまでのスタイルを淡々と貫いてほしいと、陰ながら応援しております・・・。

さて、私が直接コーチする選手(市民ランナー)も川内選手同様、この「東京マラソン2011」に挑みました。具体的には、エリート女子の部に3名、一般女子の部に2名と、5名とも女性市民ランナーです。

では最初に、今回の東京マラソンに挑んだ5選手の設定タイムと実績タイムを振り返ります。

◆M・I女子選手:設定タイム/2時間37分50秒→実績タイム/2時間37分34秒(自己新記録)、◆M・Y女子選手:設定タイム/2時間49分49秒→実績タイム/2時間49分51秒(自己新記録)、◆M・S女子選手:設定タイム/2時間55分48秒→実績タイム/2時間54分18秒、◆C・I女子選手:設定タイム/3時間18分59秒→実績タイム/3時間19分23秒(自己新記録)、◆K・F女子選手:設定タイム/3時間19分59秒→実績タイム/3時間32分29秒

以上のような結果となり、ほぼ目標どおりの記録を残すことができました。特に、エリート女子の部に出場した3選手につていは、この1年間、個々に故障や体調不良に苦しむ時期もありましたが、それらの困難を乗り越えての快走でした。

至極当然のことですが、マラソンは記録や走力がアップすることに伴い、トレーニングの量や質も向上していくので、故障や体調不良に陥る確率も上がっていきます。また、上記3選手ともフルタイムで仕事をこなし、それぞれが家庭を持っている典型的な市民ランナーです。ところが、マラソンの記録を短縮していくに従って、3選手とも慢性的な故障個所を抱えてきていることも事実です。

特に、フルタイムで仕事をしている市民ランナーの場合、故障や体調不良に対する対応が適切にできないケースが多いと感じます。その最大の理由として、実業団選手(プロ)のように専属のトレーナーやチームドクターが存在しないことがあげられます。それは、身体に問題が発生した時点での適切な対応や処置が遅れることにつながり、結果的には完治や復帰させる時期を遅らせる結果にもつながるからです。

また、仮に掛かり付けの治療院があったとしても、今日電話して今日の17時に予約がとれる保証はなく、むしろ希望する日時に予約をとり、身体の治療を受けられるケースの方が圧倒的に少ないのです。更に、「なるべく立ち仕事は避けるように」とか、「車の運転は控えるように」と、治療院の先生からアドバイスを受けたとしても、仕事上それが困難なケースは多く、逆に仕事を通じて症状を悪化させることにもなり、ランニングそのものを断念する市民ランナーも意外と多いのです。

実は、上記3選手も同じような問題を少なからず抱えており、多くの市民ランナーにとっては永遠の課題なのかもしれません・・・。

次回は、エリート女子の部に出場した3選手の実績タイムをもう少し詳しく解析していきます。

つづく。

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