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2020-11

冬を走る

【冬を走る】12月20日開催予定の防府読売マラソン大会に向けた最後の強化合宿をいつもの千葉県富津市富津公園において実施しました。また、大会当日から残り1ヶ月を切ると、選手ごとの調子もはっきりしてくる時期に入っていきます。

よく選手に「調子はどうだ?」と聞きますが、調子の良し悪しを判断するとき、どのように考えるでしょうか。単純に「絶好調!」と答える選手、「あまり良くない」とか「まずまず」などと答える選手。

判断基準や答え方はそれぞれですが、ひとつの考え方として「白黒」をつけた判断をすることは大切です。つまり、現状を直視し、自分自身の調子などをオブラードで包まないことです。もちろん、誰に言うのでなく、自分自身の中での本音になります。

目標のマラソンに向け、現時点での具体的な判断基準例のひとつとして、「達成できる・ほぼ達成できる(調整次第で達成)・かなり難しい(調整次第で現状維持)・難しい」の4つで判断する方法があります。そして、このときの判断基準に「普通」とか「まずまず」と言った表現を使わないことがポイントです。

特に、「普通」という言葉は相手をはぐらかす言葉としては、逆に便利な表現です。例として注目されている選手が、マスコミなどの取材に対する受け答えとして常に「普通です!」と答える心構えは大切と考えます。

「調子はどうですか?」「普通です!」。「明日の目標は?」「普通です!」。「具体的には?」「普通です!」……。私の経験になりますが、余計な受け答えをすることによって墓穴を掘り、その影響で本当に走れなくなってしまう選手は、実に多いのです。

さて、話しを戻すと、「かなり難しい・難しい」と自己判断できる場合、目標を下方修正することを推奨します。例として、目標を「サブスリー」としていたが、「かなり難しい・難しい」と判断できる場合、目標を「3時間5分」などに下方修正するのです。

それによって逆に、「達成できる・ほぼ達成できる」に調子を引き上げることにもなります。一見するとマイナス思考のようにも感じますが、下方修正することでその次のマラソンにもつながります。もちろん、この後の最終調整での無理な負担もなくなります。

何事も現実を直視することは勇気のいることですが、最終調整に入る前の時期だからこそ現実逃避をしないことです。かくいう私は、選手時代にそれができませんでした(涙)。

秋を走る・10

【秋を走る・10】毎年のことですが、11月に入ってくると、12月の全国高校駅伝や正月のニューイヤー駅伝、箱根駅伝を意識した記録会が佳境に入ってきます。特に、今月末まではいわゆる「厚底シューズ」でのトラック出走が事実上認められていることもあり、各記録会のリザルトを拝見すると驚異的な記録ラッシュです。まさに「駆け込み乗車」と言ったら言い過ぎでしょうか。

しかし、それぞれのリザルトをよく拝見すると、厚底シューズを使用していない選手でもしっかりと好記録をマークしています。厚底シューズが好記録ラッシュのきっかけになったのは間違いありませんが、記録に対する「心の壁」を取り除くことにも大きく貢献しているのでしょう。

また、高校生や大学生の記録ラッシュばかりに目がいきますが、30代の実業団選手や40才以上のいわゆるマスターズ選手たちの頑張りも驚異的です。こうなってくると、厚底シューズが合う合わないではなく、そのシューズを乗りこなすテクニックを身につけ、その上でそれ以外のシューズを履き分けていくことになるのでしょうか。

さて、10月の富津合同マラソン練習会で実施した「タイムトライアル」を今月も実施しました。このタイムトライアルはトレーニングの中においては最も過酷な方に位置します。そのため、スタート前から自らの可能性を自らの心がブロックしてしまう人がいます。と言うか、必ずいます。

実際のレースと違うので、「行けるところまで行く」と、自らを試すのが目的なのにも関わらず、スタートからゴールまで自重してしまう人は多いのです。今回もそのようになりそうな人たちが相当数いましたが、積極モードに心が向かうよう、何とか仕向けたつもりです。

結果、先月以上に自己記録を更新したり、目標記録をクリアする人を多数輩出できました。特に、今回のタイムトライアルにも参加した50代女性ランナーは、前日に出場したトラック記録会の3000mで、若い高校生たちとデッドヒートの末、「11分11秒」の自己新記録を達成しました。そして、翌日もこのタイムトライアルに挑戦。

この女性は、ハーフマラソンで1時間30分の壁を突破できないと悩んでいました。しかし、トラック記録会のように思い切って4分ペースの集団についていき、一気に「1時間26分台」を達成しました。昔から「速いペースでも『速くない』と思い込んで走れ」と言いますが、間違いなく厚底シューズは、この「心の壁」も見事に崩したと言えるでしょう。

秋を走る・9

【秋を走る・8】暦の上では立冬が過ぎ、季節も冬に入ってきましたが、比較的温暖な千葉県富津市でも朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。そんな中、11月最初の強化合宿も無事に終了。

ブラインド選手たちは、12月20日に山口県で開催される防府読売マラソン大会を目標に走り込んでいるので、概ね今月末までのトレーニングは走り込みになります。今回の合宿も40k走をメインとし、26kビルドアップ走と3kのインターバルを実施しました。

夏の走り込みを終え、9月以降の強化合宿は千葉県富津市富津公園で実施していますが、各合宿で実施している走り込みの内容(トレーニングパターン)は、ほとんど変えずにたんたんと積み重ねています。

さて、マラソンを目標にした走り込みについては何度も取り上げてきましたが、「これが正しい」と言った正解がありません。それぞれのチームや選手ごとに積み上げてきた成功体験などをベースとしたノウハウによって走り込んでいるからです。

特に、秋からの走り込みは、季節的には夏から秋、更に冬へと気温が下がっていく方向に向かっていくコンディションになります。そのため、同じ距離を同じ設定タイムで走り込んでいても、季節が冬に向かっていくにしたがって「ゆとり」を感じるようになります。

この時、気温が下がって走り易いコンディションに向かっていくごとに、距離走などの設定タイムを引き上げていくチームや選手もいます。もちろん、更に質の高い内容にシフトしていくことになるので、走力アップを期待できる可能性も高くなります。

また、どの選手も狙っている目標タイムがあるので、最後はその目標タイムで走れる状態に仕上げる必要があります。つまり、どこかのタイミングで目標タイムを達成するための対応策を組み込むことが必須となります。それは、単に距離走などの設定タイムを引き上げることなのか、スピード練習などを増やしていくことなのかは、「あなた次第」になります。

9月から富津公園で走り込んできたブラインド選手たちは、同じ40k走を同じ設定で繰り返し走り込んできましたが、どの選手もゆとりを持って走れるようになってきました。また、ビルドアップ走については、同じ距離を同じ設定タイムでスタートしても、ラスト1kのタイムは確実に速くなってきました。

「これは楽しみだ」と久々に手応えを感じる立冬でした。

秋を走る・8

【秋を走る・8】この1週間は、全日本大学駅伝大会をはじめ各地区の実業団駅伝大会などが開催され、いよいよ本格的な駅伝シーズンが到来しました。また、12月開催予定の福岡国際マラソン大会や防府読売マラソン大会の当選発表(?)もあり、マラソンシーズンに向けても動き出してきました。

同様に、大学関係が主催するトラックでの長距離記録会も例年並みに戻りつつあるでしょうか。また、それぞれのリザルトを拝見すると、特に学生選手(男子)たちの記録躍進は驚異的と感じるのは私だけでしょうか。

いわゆる「厚底シューズ」の使用ルールが決まりましたが、国内に限っては11月末までのトラック競技使用も事実上認められている状態です。その影響は間違いなく好記録に結び付いていると感じます。

一方、それぞれの大学や選手たちが厚底シューズを上手に乗りこなす技術や、厚底シューズを着用したトレーニング時の設定タイムなどのノウハウが確立されつつあるとも感じます。これからはじまる本格的な駅伝・マラソンシーズンで、驚異的な記録を目の当たりにする可能性が高まっているのは事実であり、駅伝・マラソンファンとしてはとても楽しみです。

また、この厚底シューズはトップ選手だけでなく、市民ランナーや高校生、中学生にも深く浸透しています。特に、市民ランナーの方々は学生選手や実業団選手たち並みに普及している印象です。

厚底シューズの記録への影響について、正確なデータや報告を私は見たことがありません。しかし、マラソンを目標にしている市民ランナーの場合、厚底シューズに変えたことで5分以上の記録短縮を達成した方もいるでしょうか。特に、走力が3時間20分程度以内の市民ランナーの方々は、トップ選手以上に厚底シューズの恩恵を受けている方も多いと感じます。

ランニングは道具を使わないスポーツとして広く知られているので、誰でも気楽にはじめることができます。一方、シンプルなだけに「上手い、下手」ではなく、まじめに努力した人が結果を残せるスポーツとしても広く知られていると思います。

しかし、まさかの厚底シューズの登場で、記録はもちろん、トレーニング理論などにも大きな影響を与えるかもしれません。その昔、トラックはアンツーカー(土)でしたが、1968年のメキシコ五輪あたりから今の原型となるタータントラック(全天候型)に移行し、記録が大躍進しました。

厚底シューズを着用し、トラックで驚異的なスピードを出せるノウハウをつかんだランナーたちが、ロードの駅伝やマラソンでどんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみです。

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