Home > Archives > 2023-04

2023-04

2023春を走る・9

【2023春を走る・9】今年もGWがやってきます。そして、今年もGWは強化合宿を実施します。場所が長野県上田市菅平高原なのも、いつもと変わりません。また、すでにトラックシーズンに入っていますが、ブラインドマラソン選手の多くは4月までマラソンを走るので、この合宿からトラックシーズンにシフトしていくのも、例年通りです。

あらためて言うまでもありませんが、マラソンを目指す上でトラックレースを欠かすことはできません。いわゆるスピード強化と言われる部分に該当するからです。しかし、やみくもにスピード練習やトラックレースを走るだけでは、マラソンにはつながりません。

なぜならトラック種目の5000m(5k)や10000m(10k)と、マラソンのタイムには密接な関係があり、目標のマラソンタイムを達成するために必要なそれらの必須タイムが存在するからです。詳細は割愛しますが、マラソンで、あるタイムを目標にした場合、それに必要な5000mや10000mのタイムがあります。そして、その5000mや10000mのタイムに到達するためのトラック練習が、いわゆるマラソンに必要な個々のスピード練習に該当するのです。

そして、この5000mや10000mのタイムをクリアしているのに、目標のマラソンタイムに到達できない選手はスタミナが不足している(スピードタイプ)。逆に、目標のマラソンタイムを達成しているのに、トラックの必須タイムに到達していない選手は、スピードが不足しているとも言えます(スタミナタイプ)。もちろん、そう単純な話ではありませんが、ひとつの目安として捉えることはできます(私の経験上)。

しかし、この関係をよく理解していない選手は意外に多く、スピードがあるのにマラソンをうまく走れない。逆に、マラソンを走れるスタミナがあるのにトラックレースでは苦手意識が先行してしまう選手など、「もったいない」と感じるケースが多いのは確かです。

特に、5000mのタイムはマラソンに必要なスピード練習の基準となるので、それに該当するタイムを個々に確認しておくことは必須です。今回の菅平合宿においてはこの点も含め、個々の課題などを確認し、どの選手も7月前半までのトラックレースを、充実させてほしいと願っております……。

2023春を走る・8

【2023春を走る・8】かすみがうらマラソン大会は無事に実施されました。いわゆるコロナの影響がここ数年続きましたが、久々に本来の姿での開催となりました。まずは、大会開催にご尽力いただいた関係者の皆様に御礼申し上げます。

さて、大会当日の天候ですが、スタート時は曇っていました。しかし、晴れ間が出てくると、気温がグングン上昇し、男子の先頭が30kを過ぎたあたりに差し掛かると、手元で27度を超えていました。さらに湿度も60%前後。

そんな過酷なコンディションでしたが、ブラインドマラソンの主力選手たちは経験豊富なところを存分に発揮し、ほぼ予定どおりのタイムでゴール。これにより、来年開催されるパリパラへつながる道筋も見えてきたことが、大きな収穫となりました。

また、今回は期待の若手男子選手が初マラソンに挑戦し、設定タイムどおりにゴールすることができました。もちろん、今後の課題はたくさんありますが、今の力を誰よりも自分自身が理解し、それに見合ったラップタイムを最後まで刻めた点は次につながります。

特に初マラソンの場合、想定したタイムと大きく乖離すると、2回目以降のマラソンで苦労することになります。詳細は割愛しますが、これは予想よりも良過ぎたタイムにも言えます。最近はシューズの性能が格段にアップしたこともあり、初マラソンから好タイムをマークする選手が増えてきました。しかし、その選手たちの多くが2回目以降のマラソンでは……。

今回、初マラソンに挑んだその男子選手は、今月から社会人になったばかりでしたが、新しい環境にもうまく順応している様子だった点も成功につながった要因でした。しかし、マラソンを目標にした練習量とそれに伴う練習時間は想像以上に多く、目に見える成果を手にするまでには相応の期間が必須です。

したがって、逆により良い環境を求めて転職したり、チームを移籍する選手が比較的多い競技と感じます。しかし、良い環境と考えて移っても、その環境に自分自身が順応できなければ、記録や結果にはつながりません。

ここで言う環境と言うのは、単なる練習環境や待遇面ではありません。選手が最も影響を受けるのは「人間関係」と「生活環境(日常生活)」でしょうか(私の経験上)。今回、初マラソンに挑んだ男子選手も、じっくりと今の環境に溶け込ませながら根気よく走り込ませていきます。

2023春を走る・7

【2023春を走る・7】今年度最初のターゲットとなる「かすみがうらマラソン大会」が、明日となりました。昨年の夏以降、調子を落としていた主力選手たちもようやく底を打ち、その調子が戻ってきているところです。

さて、今大会は「国際クラス分け」を実施しております。その実施についての詳細は割愛しますが、視覚障がいマラソンはもちろん、パラスポーツの中において最も重要な決め事は、この「国際クラス分け」です。これは、障がいの程度が競技の成績に影響しないよう、障がいの程度ごとに区分しているものです。

特に、パラリンピックについては、予めこの国際クラス分けの判定を受けていないと、出場することはできません。もちろん、記録も公認にはなりません。また、クラス分けの規則は競技ごとに異なります。

パラリンピックで採用されている競技は、IPC(国際パラリンピック委員会)が決めた「国際クラス分け基準」に準じて、規則が定められています。そして、国際クラス分けの判定は、「クラシファイヤー」と呼ばれる資格(医師免許とは違う)を有している人が判定をします。

パラリンピックの場合、IPC公認の「国際クラシファイヤー」の資格を有した人しかクラス分けの判定をすることができません。したがって、国内のクラス分けを受けていても、パラリンピックに出場することはできないのです。

このように、パラスポーツはどんな障がいの方でもスポーツを楽しめる反面、公式な国際大会を目指すレベルに達してくると、この「国際クラス分け」の問題に必ず直面することになります。

参考までに視覚障がいマラソンの場合、障がいの重たい方から「T11、T12、T13」と3つのクラスに分かれています。また、障がいの軽いクラスの選手が、障がいの重いクラスで一緒に競技を競うこと(T12クラスの選手がT11クラスで競技するなど)は、原則としてできません。

しかし、逆のケースは許可されることがあり、パラリンピックにおいての視覚障がいマラソンは、T12クラスのみの実施となっていますが、T11クラスの選手も一緒に走ることができます(T13クラスはマラソンに出場できない)。

つまり、自分が得意としている種目(100mや砲丸投げなど)だったとしても、パラリンピックでは障がいのクラスによって実施されない種目であることも多々あります。

パラリンピックなどの国際大会を目指している選手たちは、この「国際クラス分け」を十分に理解し、自分自身の専門種目が実施されるか否かについても、予め確認しておく必要があるのです。

2023春を走る・6

【2023春を走る・6】新年度初日からいつもの千葉県富津市において強化合宿を実施しました。また、新年度最初の目標となる「かすみがうらマラソン大会」のちょうど2週間前と言うこともあり、練習内容も調整メイン(量を落として質を上げていく)で実施しました。

さて、昨年は東京パラ翌年となりましたが、代表選手たちはそのときの調子を維持したまま強化合宿を消化していきました。その結果、トラック種目での自己記録更新やマラソンでも好調をキープする選手が多く、逆に驚いていました。

ところが、昨年の夏を境に好調をキープしていた代表選手たちは、足並みを揃えるように調子を落としていきました(詳細は割愛します)。最初は「少し休めばよい」と、それぞれに話をしていましたが、まともに走れない状態のまま2023年を迎えてしまいました。

もちろん、調子が戻らない選手自身の焦る気持ちは手に取るように伝わってきますが、さすがに「これはまずい」と、私の方も焦っていきました……。

そんな状況下での強化合宿でしたが、久々に主力選手たちがほぼ揃い、懸念していた調子もようやく上向きに転じていることを確認することができました。至極当然のことですが、どんなに強い選手でも必ず好不調の波があり、ケガや故障もします。

「もっと速くなりたい!もっと強くなりたい!」

そして、どんな選手もその思いに突き動かされ、日々の苦しい練習を耐え抜きます。その結果、目標の記録や成績に到達したときの達成感は何物にも代えがたく、何よりも次の目標に向け、さらに苦しい練習に耐え得る動機付けにつながります。

また、人には欲があり、良かったときほど「もっと上を」と、どんな選手も指導者も前向きにコメントします。しかし、その瞬間から落とし穴があることが多く、練習の強度を少し上げただけなのに、疲労の抜け具合などが微妙に変化し、やがて大きなケガや故障に結び付くケースは多いのです。かくいう私も、同じような状況を繰り返してきました(コーチとしても)。

「迷ったら休養」

まずは今月の「かすみがうらマラソン大会」ですが、来年のパリパラに向けてもこの言葉を忘れないように……。

Home > Archives > 2023-04

Search
Feeds

ページの先頭へ