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2008-11

トレーニング計画・6

今回は多くの市民ランナーの方々にとって、どの程度の強度や負荷をかけたインターバルトレーニングが適切なのかを考えていきます(毎度のことですが、必ずしもこれからお話しする内容が全ての方々に当てはまるとは限りません。あくまでも参考程度にして頂ければと思います)。

最初に最も基本的なことをお話しすると、練習は可能な限り継続していかないと効果がありません。よって、インターバルトレーニングを実施した翌日、筋肉痛が酷過ぎてジョギングもままならないと言った疲労感や、故障を誘発してしまうような強度や負荷では当然逆効果になってしまいます。と言って、翌日に全く疲労感のないような状態は、明らかに強度や負荷が足りない状態とも言えます。つまり、その日に怪我や故障をしてしまうような強度や負荷は無謀だが、翌日に疲労の残らない強度や負荷ではレベルアップしない。この矛盾にどう対応していくかが、インターバルトレーニングの最も難しい点のひとつです。

更にもう少し別の見方をした時、仮に適切な強度や負荷であったとしても、その距離や本数をある一定のペースを保ったまま集中力も切らさず、最後までやり遂げることができるかどうか。そして更に、1週間の流れのひとコマとして考えた時、翌週も同様な意欲を保ちながら同程度のインターバルトレーニングを継続することができるかどうか・・・。実はこの点をよく吟味せず、気持ちの向くままにインターバルトレーニングを実施した結果、故障を繰り返したり、走ることに対する意欲の起伏が大きくなってしまう市民ランナーの方が後を絶たないのも事実です(練習を継続できない)。

ではトータル距離が、どの程度のインターバルトレーニングであれば効果的なのでしょうか?

前回は一般的にトータル距離が、5k前後になるインターバルトレーニングが有効的であると話しをしました。しかし、ほとんどの市民ランナーの方にとって、これでは距離が多過ぎてインターバルトレーニングを継続していくことが難しくなる傾向にあります。そこで具体的なトータル距離として5kの7割程度である3kから4k程度におさまるトータル距離をひとつの目安とし、怪我や故障に注意しながら走ることをおすすめします。また、1回に疾走する距離も400mを超えないようにすることもひとつのポイントです。それは、多くの市民ランナーの方がある一定のスピードと集中力を保って疾走できる距離が、400m前後までの方が多く、それを超えるとペースダウンするケースが著しく増加するからです。つまり、400mを超える距離ではペースダウンすることにより、適切な強度と負荷を心肺機能に与えることが難しくなるのです・・・。いかがでしょうか?皆さんの中にも当てはまる方はいませんか?

では上記の条件を加味した具体的なインターバルトレーニングの例を考えてみると、◆200m×15本前後。◆300m×10本前後。◆400m×8本前後。・・・以上のようになります。しかし、これでもやはり連続して走る本数が多過ぎる傾向にあります。それは本数が多過ぎるため、今度は集中力を持続できなるケースが多くなってくるのです。そのため途中から設定タイムを維持できずペースダウンし、決めた本数を最後まで実施できない可能性が高くなってきます。

そこで更に分割して、◆200m×8本×2セット。◆300m×5本×2セット。◆400m×4本×2セット。・・・このようにちょうど半分程度で一旦大きな休息をとり、再度後半を疾走することで、集中力をキープすることも容易になります(もちろん走力のある方、何度もインターバルトレーニングを経験されている方は、最後まで連続で実施しても問題ありません/水曜練習会参考)。

次回は、具体的な疾走する設定タイムとリカバリー(休息)の時間を考えていきます。

つづく。

東京国際女子マラソン

30回を迎えた東京国際女子マラソンも今年が最後の大会となりました。この大会は、数々の名勝負や感動のドラマを私達にたくさん与えてくれた素晴らしい大会でした。そして、私にとっては選手を指導する難しさや厳しさ、更に選手が成長する感動や喜びを教えてくれた大会でもありました。

2003年の大会から私が指導する選手が、この大会に出場できるようになり、2004年の大会には4名の選手が出場しました。しかもその4名とも市民ランナーにとっては一流の証でもある「サブスリー(3時間突破)」を十分狙える走力を身に付け、自信を持って送り出しました。

◆2004年東京国際女子マラソン:A・K選手/3時間6分46秒(85位/国際の部)、M・SI選手3時間8分19秒(87位/国際の部)、M・KO選手/3時間9分7秒(90位/国際の部)、M・Y選手/3時間25分4秒(109位/国際の部)。

以上のように4名ともサブスリーどころか、3時間5分すら突破できない結果にただ呆然としたことを今でも鮮明に覚えています。同時に、コーチとしての自分自身に対する怒りと情けなさと・・・。そして何より、最後の最後までレースを投げ出すことなく国立競技場に帰ってきた4名の選手に対する申し訳ない気持ちが入り混じり、やり場のない複雑な気持ちにはじめて直面しました・・・。

この大会後、私は二つのことを心に決め、即実行しました。(1).ペースメーカーを付けた練習会を定期的に実施する(富津合同マラソン練習会)。(2).自分自身のために頑張るレースを封印する(ペースメーカー&伴走は除く)。・・・以上の二つを徹底することで、コーチとして離れている選手に対しても真剣に向き合うことを第一に、自分自身の気持ちと行動を改めました。

◆2005年東京国際女子マラソン:M・KO選手/2時間47分45秒=自己新(26位/国際の部)、A・K選手/2時間53分22秒=自己新(33位/国際の部)、M・SI選手/2時間59分00秒=自己新(55位/国際の部)、M・Y選手/3時間12分37秒(100位/国際の部)、M・SA選手/2時間55分49秒=自己新(2位/市民の部)。

◆2006年東京国際女子マラソン:M・KO選手/2時間39分48秒=自己新(9位/国際の部)、A・K選手/2時間49分24秒=自己新(22位/国際の部)、M・KA選手/2時間57分43秒=自己新(47位/国際の部)。

◆2007年東京国際女子マラソン:M・KO選手/2時間44分16秒(12位/国際の部)、※M・SI選手/2時間52分26秒=自己新(24位/国際の部)、A・K選手/2時間59分41秒(58位/国際の部)、M・Y選手/3時間3分49秒(78位/国際の部)、M・KA選手/3時間8分55秒(95位/国際の部)、Y・M選手/3時間17分44秒(115位/市民の部)、S・S選手/3時間18分2秒=自己新(119位/市民の部)。※M・SI選手は10ヶ月前に男の子を出産。今回が復帰レース。

そして、今年は国際の部に5名、市民の部に4名の計9名の選手を何とか無事に送り出すことができました。

◆2008年東京国際女子マラソン:M・KO選手/2時間40分54秒(12位/国際の部)、M・SI選手/2時間49分21秒=自己新(20位/国際の部)、M・Y選手/2時間54分19秒=自己新(36位/国際の部)、M・KA選手/2時間57分47秒(56位/国際の部)、A・K選手/2時間58分52秒(63位/国際の部)、※M・SA選手/2時間59分59秒(18位/市民の部)、Y・M選手/3時間16分6秒(191位/市民の部)、Y・I選手/3時間22分40秒(356位/市民の部)、S・S選手/3時間23分21秒(374位/市民の部)。※M・SA選手は10ヶ月前に男の子を出産。今回が復帰レース。

・・・来年は舞台を横浜に移し、新たな歴史がはじまります。これからもこの大会を目標に、選手達と共に泣いたり笑ったりしながら成長していければと願っています。

ランニングブーム・5

先週の土曜日、日本陸連主催のランニング講習会が東京のナショナルトレーニングセンターにて開催され、私も講師としてお手伝いしてきました。毎度のことながら参加される方々の熱心さには、心から感銘を受けます。そして、今更ながらランニングは単純にただ走るだけのスポーツですが、多くの方々を魅了しています。今回は、その魅力について少し考えてみます。

最初に私自身が、その魅力にはじめて触れた時の話をします。それは今から20数年前の中学2年生の頃までさかのぼります。その当時、長距離走は得意でしたが、長距離走は大嫌いでした(中学生まで野球部所属)。そして、当時は市内中学校対抗駅伝大会の候補選手に選抜されても最初の練習でわざとゆっくり走り、最初に候補選手から落とされるよう努力して嫌いな長距離走を避けていました。ところが中学3年生の時、その作戦が通用しなくなり、結果的にずっと練習をしなければならない環境に置かれたのです。

「どうせ毎日走るのなら・・・」と、開き直って自分より速い仲間達に嫌々付いて走るようになりました。ところが、どんどん記録が短縮していき、はじめて苦しみを乗り越えた中からしか生まれてこない真の達成感や充実感を味わったのです。そして、結果的に自分が努力した成果を記録(数値)で見ることができるその楽しさにはまったのです(笑)。

しかし、至極当然のことですが、記録が短縮していくほど練習での負荷や強度はどんどん増していきます。また、肉体的だけでなく精神的にも辛いことが多くなっていきます。実は、長距離走の練習で厄介なところは、記録を短縮するための技術的な部分が少ない点です。つまり、数少ない技術的部分であるランニングフォームについても、そのフォーム改善対策のドリルや補強運動ばかり反復練習していてもスピードやスタミナを格段にアップしていくことは、正直言ってかなり難しいと言えます。しかもそのドリルや補強運動そのものは、ほとんどの方が単調過ぎて直ぐにあきてしまいます(継続していくことも難しい)。

このように、誰もが最初に考える順位や記録だけを目標にしたランニングを長期に渡って楽しむことは、意外と難しいのです。私自身も純粋に記録や順位を目指すランニングを卒業(?)してからそのことを痛感する日々です。

では、他にどんな魅力があるのでしょうか?・・・それは、仲間達と共に楽しむランニングではないでしょうか。今回の日本陸連ランニング講習会をはじめ、近くの練習会や合宿等々に参加する際、他の参加者とはほとんど面識のないケースが多々あります。しかし、共に走り、共に汗を流せば初対面の方でも必ず話をして仲間になれる。こんなスポーツは他にはあまり見当たらないと思いますが、いかがでしょうか。

また、ランニングブームの火付け役ともなった東京マラソンを例にとってみても、オリンピックを目指す一流選手から完走を目指す市民ランナーの方までが、同じコースで一緒に走ります。しかも参加した方々がそれぞれの目標を設定し、それぞれの目標に向かって自由にレースを走ることができるのです(仮装したりデジカメを持って走ることも可能)。このように、仲間同士の走力や走歴が多少違っていても同じレースでそれぞれの目標に向かって共に挑戦することができます。もちろんゴール後は、同じレースを走った仲間同士として更に親睦を深めることもできるのです。

ランニングは単純動作の繰返しだからこそ誰もが挑戦でき、単純動作の繰返しだからこそ様々な楽しみ方を模索できます。まさにそこがランニングの醍醐味でもあり、様々な方を魅了するところではないでしょうか。

これから冬にかけ、各種マラソン大会が目白押しとなります。単純に記録や順位だけにとらわれることなく、各自のスタイルに合った楽しみ方で大いにランニングを満喫し、長く親しんでほしいと願っています・・・。

トレーニング計画・5

今回から水曜日のアフターファイブに実施する練習として、「インターバルトレーニング(スピード練習)」について考えていきます。

はじめに、インターバルトレーニングについて簡単に説明しておきます。既に経験している方も多いかと思いますが、最初にある一定の距離を目標としているレースペース前後のスピード(心拍数を最大値近くまでアップ)で走ります。そして、一定の距離や時間をジョギング&ウォーキング(回復)でつなぎ、決めた本数を繰り返すトレーニングです。と言ったところで、インターバルトレーニングは非常にバラエティーに富んでいます。スピードアップする距離や本数、回復時間・・・等々、様々な組合せが可能であり、各人の考え方や走力の違い等が色濃く反映される練習です。

しかも10k程度以下の比較的短い距離のレース対策には、抜群の即効性があり、練習の効果や達成感を感じ易い練習と言えます。一方別の見方をすれば筋肉や心肺機能への負荷は格段にアップし、かなり苦しくて辛い練習とも言えます。同時に仲間との過剰な競り合いが仇となり、怪我や故障のリスクが増すことも事実です。そのため、コンスタントにこの練習を継続していくのは、意外と難しかったりもします。

さて、皆さんはインターバルトレーニングの総距離や本数、設定タイム・・・等々をどのように決めているでしょうか?おそらくほとんどの方が、何となく誰かに指示された内容だったり、専門雑誌や自分より速い方の話を参考にしながら、あの苦しい練習に挑んでいるのではないでしょうか?かくいう私も現役の頃、どの程度の距離や本数が効果的で、どんな設定タイムが適切なのかをあまり考えず、ただガムシャラに走っていたような気がします(汗)。

しかし、記録がコンスタントにのびていたり、記録が安定している方のインターバルトレーニングに共通している点があります。それは、追込み過ぎていないところです(適切な量と強度を保っている)。何だが矛盾するような話ですが、実はそこがポイントなのです。具体的には、インターバルトレーニングの総距離が約5k前後におさまっている点です。例として、◆200m×25本、◆400m×12本、◆1000m×5本・・・等々、スピードアップする距離の合計が約5kになっています(専門的な見解として総距離が、4kから8kあたりが効果的と言われている)。

ところが、フルタイムの仕事をしながら、アフターファイブで日々のトレーニングを継続している市民ランナーの方々にとって、トータル距離5kと言うのは量や強度が大き過ぎる傾向にあります。つまり、真面目にインターバルトレーニングを継続した結果、本来の目的とは逆に故障や怪我が増加したり、練習強度の苦しさに耐えられなくなり(バーンアウト)、練習計画そのものを継続していくことが困難になる方も意外と多いのです・・・。

では、多くの市民ランナーの方々にとっての適切な量や強度とは?次回は、その点を考えていきます。

つづく。

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