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2010-03

新年度へ!

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早いもので平成21年度も終わろうとしています。それを陸上競技的?に言うと、マラソン&ロードレースシーズンもひと段落し、4月からはトラックシーズンの開幕です。また、何かと移動の多い季節でもあり、これまでの生活&練習環境が大きく変わる人もいることでしょう。

そんな年度末ですが12月の年末同様、新たな目標を設定するには、ちょうどよいタイミングです。また、至極当然のことですが、この一年間の練習日誌やマラソンでの記録やラップタイム等をよく分析し、新しいシーズンに活かしてほしいと思います。特に、この一年間で自己記録の更新を何度も達成した人ほど、実績の数値(記録)を細かく分析し、新年度も引き続き好調をキープしていけるようにしましょう。

では、具体的に4月からのトレーニングは何を実施していけば良いのでしょうか?

もちろん、4月や5月のマラソンを目指している人は、引き続きマラソンに向けたトレーニングを継続していく必要があります。しかし、マラソンもひと段落し、次のマラソンは秋からと考えている人は、約半年間ものブランクができてしまいます・・・。

そこで、一年間のスタートを4月と考えた場合、秋まではどのようなトレーニングの流れにし、どのようなレースを目標にしていくことが効果的なのかを考えていく必要があります。このように、一年間をトレーニングの流れや内容をベースに、ある一定期間毎に区切って考えていく方法を「期分け(※)」と言います。※呼び方や言い方については様々で、特に決まりはありません。

実は、このブログでも既に「マラソンシリーズ」で、この期分けの考え方をベースに、トレーニングの流れや内容を考えてきました。次回からは、一般的にマラソン期がひと段落する3月末以降、すなわち4月からはじまる新年度の具体的なトレーニングを期分けして考えていきます。

また、これからの季節は、気温や湿度も一気に高くなっていきます。屋外スポーツの原点とも言えるランニングを継続していくには、とても厳しい季節になってくるとも言えます。もちろん、そう言った点も加味しながら具体的なトレーニングや目標とするレースを模索していきたいと思います。

まずは、新年度の四半期にあたる4月から6月のトレーニングやレースについて考えていきます。

九州チャレンジ!

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3月21日(日)は、熊本県熊本市において「第13回九州チャレンジ陸上競技選手権大会(障害者陸上)」が開催されました。ご存知のとおり、この日の都内は大荒れの天候となり、荒川市民マラソン大会が中止になるなど、たいへんな一日でしたが、熊本県は晴天に恵まれ絶好のコンディションとなりました。

また、来年の1月には、ニュージーランドでIPC世界陸上競技選手権大会が開催されます。そして、今回の九州チャレンジは、その世界陸上に参加するための標準記録突破が承認(※)される大会です。※IPC公認大会

ところで、障害者の陸上競技大会は、一般の大会と違い、障害の種類や程度によるクラス分けや特別なルールが適用されます。そのため一般の大会に出場し、標準記録を突破しても原則として公認されません。それは、障害者の世界陸上を目指す選手にとっては、記録を狙える大会が極端に少なくなることでもあり、少ない大会に調子を合わせるピーキングが、より重要になることでもあります。

さて、今大会には、弱視の岡村、堀越、加治佐選手の3名が1万メートルの標準記録突破を目指して参戦しました。特に、岡村選手と堀越選手は、非公式ながら2週間前の10kロードレース大会でA標準記録である32分20秒を突破しており、大いに期待がかかります。

そして11時50分、6名の視覚障害者選手が記録を目指してスタートしました。その直後から堀越選手が先頭に立ち、岡村選手がピッタリと付いていく、マッチレースとなりました。ペースも1kを3分10秒前後と32分20秒突破を意識した設定どおりの流れです。その後、4千メートル付近でペースが若干落ちると、今度は岡村選手が先頭に立ち、ペースを維持しました。

しかし、好調をキープしてきた堀越選手は、その直後から少しずつ遅れだし、岡村選手が5千メートルを15分57秒で通過すると、完全に独走態勢となりました。ところが、A標準記録を突破するための通過タイムとすれば理想的ですが、予定より早い段階での独走は想定外です。つまり、後半の5千メートルを独走でペースメークしていくことは、かなり厳しい状況とも言えます。

だが、マラソンランナーである岡村選手の真骨頂はここからでした。何度も落ちかけたラップタイムを都度立て直し、残り千メートルは更に粘り抜き、「31分57秒24」の堂々たるA標準突破記録でゴールしたのです。それは同時に、後半の落ち込みをわずか3秒にくい止めたその粘りは、世界と十分に戦えることの証明でもありました。

一方で、残念ながらA標準記録に届かなかった堀越選手と加治佐選手も、粘りのある走りを最後まで見せてくれました。それは、ここまでともに切磋琢磨してきた仲間たちへの熱いメッセージとなったに違いありません・・・。

2010名古屋国際女子マラソン

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今年に入って開催された国内の国際的なマラソン大会は、なぜか天候に恵まれていません。1月に開催された大阪国際女子マラソンは雨でした。また、2月の東京マラソンも氷雨の厳しいコンディションになりました。更に、3月に入ってからのびわ湖毎日マラソンも冷雨と、こんなに雨が連続したことは、ほとんど記憶にありません。

ところが、先日開催された名古屋国際女子マラソンは、晴天に恵まれ気温も一気に上昇しました。大会主催者側から発表された気温は18度でしたが、実際に沿道で応援していた感じだと、軽く20度はこえている体感でした。

マラソンは、寒さや雨の中だと筋肉が硬くなり、後半の失速につながり易くなります。しかし、3月のマラソンで気温が15度をこえると、体感的には初夏のように感じます。同時に、身体が暑さに馴化していないことも手伝って、後半は脱水症状に陥り易くなり、とても厳しいレースとなります。

また、一般的に市民ランナーの人たちの方が、実業団選手(プロ)に比べ体脂肪が多い傾向にあります。そのことをよく表した例として、特に女性市民ランナーの場合、冬の冷雨や寒い中でのマラソンは、当然苦しそうに走るのですが、意外と最後までしっかりとした足取りでゴールします。ところが逆に、今回のように気温が高くなるマラソンでは、後半一気に失速するパターンを数多く見てきました(私の経験上)。

更に、この名古屋国際女子マラソンは、各ポイントの関門が他のマラソン大会より厳しい傾向にあります。そのため3時間10分前後のランナーを中心に前半からオーバーペース気味にレースを進めようとする傾向が強くなります。つまり、今回のマラソンに限っては、気温が高いコンディションにも関わらず、オーバーペース気味にレースを進めようと、極めて危険な流れになる可能性が高かったのです。

そして、実際のレースでは暑さのため、先頭集団を持ってしてもスローな展開に終始しました。同様にスタート前、私が懸念していたとおり、多くの市民ランナーが中間点以降大きく失速している姿を沿道から目にすることになりました。その中には、私がコーチしている選手も含まれており、残念ながら目標タイムを大きく下回る結果となりました。

コーチとしての言い訳になりますが、秋(暖)から冬(寒)へ移行していく季節のマラソンと比べ、冬(寒)から春(暖)へ移行していく中でのマラソンは、天候や気温の変動が大きくなる分、体調管理や調整も難しくなるのです。

そんな中、実業団チームではなく、クラブチームに所属している加納選手が終盤独走し、見事に優勝しました。多くの市民ランナーと同じ目線からの快走は、ランナーのみならず、多くの人たちに勇気と希望を与えるものでした。私もコーチとして、加納選手のようにどんな逆境にも屈しない「強い心」を持ったランナー育成をと、心に誓った名古屋でした・・・。

※おかげさまで、このブログも100話目となりました。

再び世界へ!

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3月6日(土)から1泊2日の日程で、千葉県富津市において、日本盲人マラソン協会主催の強化合宿を実施しました。今回で平成21年度の強化合宿は6回目となり、今年度最後の強化合宿です。※7日(日)は同じ富津市内で開催された「千葉県民マラソン大会」に、特別招待選手として出場しました。

実は、今のような強化対策をはじめたのは、北京パラリンピックの前年にあたる平成19年度からのことです。それまでは、強化対策と言っても選手(※)それぞれの自主性にほぼ全てを委ねる状態でした。ところが、パラリンピックをはじめとする各種大会での目覚ましい活躍や記録向上に伴い、伴走者の確保や練習場所等の問題を、選手だけで対応することが難しくなってきたのです。※以下、視覚障害者の選手を指します。

そこで、日本盲人マラソン協会は強化指定選手制度を立ち上げ、一定の記録を満たしている選手に対し強化対策を実施していくことを理事会で決定しました(詳細は割愛します)。しかし、強化対策と言ったところで、予算をはじめ様々な理由から1泊2日程度の合宿を年に5回から6回程度実施するのがやっとです。

はたしてこれが強化対策と言えるのかどうか?実はこの強化を担当することになった私自身が、最も不安に感じていました。しかし、できないことをなげくより、できることを確実に実行していくことを強化の柱とし、強化合宿をスタートしました。

同時に足場を固める意味からも、合宿の拠点を千葉県富津公園にしました。皆さんもご存知のとおり、この富津公園は世界を目指す実業団チームや箱根を目指す大学チームの多くが拠点にしています。また、都内からの移動も1時間程度とアクセスも抜群です。もちろん、ランニングコースの路面状態も極めて良好で、盲人ランナーにとっての安全確保も万全です。

さて、その強化対策も開始からちょうど3年が経過しましたが、まさに「石の上にも3年」です。この間、様々な方からのご支援とご協力のおかげで、世界を目指せる新たな選手と、その選手たちをサポートする伴走者の発掘と強化&育成も何とか軌道に乗ってきました。

そして、平成22年度は、アジアパラリンピック大会とIPC世界陸上選手権大会のビッグイベントが続けて開催されます。選手にとっては、これまでの成果を試す絶好の機会となります。・・・と言いながらも依然として、選手を取り巻く環境は厳しい状況ですが、これまで同様あきらめず、できることを確実に実行していくスタンスで世界に挑みます。

引き続き、皆さま方の絶大なるご支援ご協力をよろしくお願い申し上げます。

2010東京マラソン

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今年も3万人以上のランナーが東京を駆け抜けました。そして、今年も悪天候でした(涙)。

私は昨年同様、沿道からの応援&サポートです。また、今回の東京マラソンに私が直接コーチしている選手(※)は3名(男子1名、女子2名)出場しました。3名とも今回の東京マラソンに向け、順調にトレーニングを消化してきました。同時に、3名とも一度も風邪をひいたり、故障や怪我をすることもなく、体調管理もほぼ完璧でした。※選手と言っても市民ランナーです。

更に、この1年間を振り返っても、3名とも確実にトレーニングを継続できていました。もちろん私は、他の選手も同じようにコーチしています。しかし、年間を通じて「健康に毎日走れる選手」は、意外と少ないのです。これは、実業団選手(プロ)や学生選手にも当てはまります。

◆2010東京マラソン結果:男子N・T選手/2時間45分42秒(自己新記録・△4分15秒)、女子M・K選手/2時間39分1秒(4位入賞・日本人1位)、女子M・Y選手/2時間52分9秒(自己新記録・△37秒)。

結果は上記のように、最悪のコンディションにも関わらず、3選手ともトレーニングの成果を十分に出し切った素晴らしい内容でした。そして、コーチとして至極当然のことですが、その3選手の東京マラソン(※)を振り返ってみました。※参考までに今回の成功した要因を下記にいくつかあげてみます。

◆要因1).自分自身が走っているペース感覚を正確に把握できていた。⇒ 特に、N・T選手は、かなり好調だったので最初の5kを目標設定タイムより30数秒速く通過。しかし、10kまでにうまく減速し、その後は目標設定ラップを刻みゴール。前半ハーフの通過タイムに対し、後半ハーフの落ち込みは僅か1分弱だった。※マラソンを攻略していく上で、最も理想的なペース配分。

◆要因2).スタート前に体力を温存していた。⇒ 私はフルマラソンに限って、原則として選手にウォーミングアップをさせない。今回も2名の女子選手は、それを忠実に守った。今回、エリートの部でアップを実施せず、控室に最後まで残っていた選手は、この2名のみだった。今回のような悪コンディションになると、特に身体を温めようとアップを入念に実施する傾向にある。しかしその結果、前半で体力を大きく消耗し、逆に後半の失速に拍車をかける可能性が高くなる。※特に、悪天候時は要注意。

◆要因3).レース中も体温(体力)を保っていた。⇒ アームウォーマーはもちろんだが、ネックウォーマー(首)を最後まで着用して走りきった。今回、2名の女子選手は、スタート直前までネックウォーマーを着用するかどうか迷っていた。しかし、着用したことで、首や肩が極端に冷えることを回避でき、最後までしっかりと腕を振っていた。そして翌日は、上腕部がこれまでにない筋肉痛と話していたので、寒さで動かなくなった脚を、最後までしっかりした腕振りで、カバーしていた証とも言える。

以上、大きく3つの要因をあげてみましたが、皆さんはいかがだったでしょうか?

もちろん、これらの要因は全ての人には当てはまりません。むしろ専門的な常識からすると、かなりずれている部分もあるかもしれません。しかし、マラソンは自分自身の体験から学ぶことの方が多く、非常識のような対策でもその人にとってはベストなことも意外と多かったりします。

今回、厳しいコンディションの中、東京マラソンを走られた皆さんも、その貴重な経験を次回以降のマラソンやトレーニングに是非とも活かしてほしいと思います。

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