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2014-07

期分け・94

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【期分け・94】ここまで「スピード養成期」としてトラックレースへ積極的に出場する話しをしてきました。具体的に何分何秒の設定タイムでどのように走るかの話しより、我慢とか忍耐と言ったような話しに終始してきた感はあります。

もちろん、トラックでしっかりと自己記録更新を目指していくためには、マラソン同様に綿密なトレーニング計画が必要不可欠である点は違いありません。しかし、今回に関しては、トラックレースの経験が少ない市民ランナーの方々がどのようにトラックレースを捉えるかに視点を置きました。

その結果、マラソンやロードレースとは違う「苦しさ」や「緊張感」を体感できることが分かりました。それは、単に苦しいと言った感覚だけでなく、ある一定のペースで長く走っていくマラソンの苦しさとは違いました。

特に、マラソンの記録が停滞気味になっている方や単に長く走るトレーニングを軸に走り込んできたランナーにとってその苦しさも、逆に新鮮だったのではと思いますが、いかがでしょうか。

さて、ランニングをはじめた当初のように、走り込んでもマラソンの記録が短縮できないとか、いくら走り込んでも目に見える成長を感じられなくなることを、「プラトー現象(停滞期)」とも言います。

実は、マラソンだけでなく物事がひたすら右肩上がりに成長していくことはほとんどありません。必ず、怪我や故障をしたり、それを通じて気持ちが萎えたりと、停滞する時期が必ず存在します。例えるなら階段の踊り場のような位置でしょうか。

このように、プラトー現象(停滞期)に陥ると、モチベーションが下がり、走ることへの意欲も低下して更に走れなくなる…等の悪循環にも陥り易くなります。これは、実業団選手や箱根駅伝選手にも見られる現象であり、休養や気分転換、あるいはトレーニング方法の見直しをすることによって、克服できることでもあります。

すなわち、トラックレースを積極的に走ることで、これまで経験したことのない苦しさや緊張感を体感することは、プラトー現象(停滞期)から抜け出すキッカケをつかんだり、陥らないための予防策にも活かせるのではないでしょうか。

単に、スピード養成するためにトラックレースを走るのではなく、走ることに対するマンネリ化やモチベーション低下を打開するヒントも、トラックレースにはあると考えます…。

つづく。

絆・22

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【絆・22】関東地方も梅雨が明け、本格的な夏到来です。そんな中、千葉県富津市において、日本盲人マラソン協会主催の強化合宿を7月19日から21日の日程で開催しました。この日程で強化合宿を開催するのは毎年恒例となっておりますが、今回は来月実施される北海道マラソンに向けた強化と位置付け、参加選手たちも例年以上に気合いが入っていました。

また、今回は強化スタッフの一員でもあり、元五輪選手の大崎栄氏にも全日程参加いただき、選手たちにトレーニングに関する講義や直接指導をお願いしました。実は、「オリンピック選手と市民ランナーの違いは?」と、聞かれたところで、トレーニング内容の質や量に違いこそありますが、大きな違いはそれほどありません。

しかし、あらためてオリンピック選手になった大崎氏の話しを拝聴すると、語弊があるかもしれませんが、「意外と頑張っていない」と感じます。つまり、トレーニングの継続を重視しており、走りのリズムや生活のリズムを常に意識しているので、トレーニングにも「メリハリとゆとり」があって常に自然体なのです。

実は、この点は市民ランナーの方々も常に意識し、頭では理解しています。ところが、市民ランナー(盲人ランナー)の多くは、大会が近づくと焦って走行距離を大幅に増やし、大会直前に怪我や故障をするパターンに陥り易いのです。そして、怪我や故障をすると、更に焦って痛みを我慢して走り続けます。その結果、気持ちまで燃え尽き(バーンアウト)、せっかく始めたランニングも短期間で遠のいていくケースは後を絶ちません。

さて、今回の強化合宿において、故障明けの選手も何人かいました。至極当然のことながら「無理をするな」、「自分のペースで」と、スタッフから言われ、本人も十分に理解しているのですが、やはり最終日には思うように走れない選手もいました。気持ちばかりが焦り、「早く調子を戻したい」、「北海道マラソンを走りたい」と、自分自身の体調や状態を正確に把握できていなかったのです…。

誰もがトレーニングの量と質を上げれば、パフォーマンスがアップすることを知っています。しかし、それを実現するためには、自分自身の「感情をコントロール」することと、自分自身の「身体との対話」が重要であることも理解できます。

ところが、周りに影響されず、毎日同じような自分のリズムでそれらを継続していくことは、実は最も難しい…。

だからこそ、そこに飛躍のポイントが…。

つづく。

期分け・93

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【期分け・93】トラックレースが苦しい要因について少し専門的な話しをしてきました。そして、ひとつの大きな要因としてはオーバーペースでしたが、マラソンやロードレースにもオーバーペースはあります。

しかし、トラックレースの場合、スタート直後から全力に近いスピードになってしまう点が、マラソンやロードレースのオーバーペースとは若干異なります。したがって、トラックレースの方がより早い地点で失速し、後半の苦しさに直結していきます…。

先日の7月12日(土)に千葉県千葉市において、伝統の「第46回千葉県クラブ対抗陸上競技大会」が開催されました。今でこそ「クラブチーム」の言葉をよく耳にしますが、「千葉県実業団対抗陸上」と言わず、「千葉県クラブ対抗陸上」として同大会を40数年前から開催してきた点は、ある意味先見の目があり驚きです。もちろん、私自身も現役時代に何度も出場させていただいた思い出の大会でもあります。

そして、近年のランニングブームが同大会にも少しずつ影響してか、一般の市民ランナーたちもこの大会に出場するようになってきました。この大会は、とてもアットホーム的な雰囲気があり、初心者の方でも陸上競技を楽しめる大会なので、陸上競技の普及と言う意味からも参加者が更に増えていってほしいと願っております。

さて、この大会の大きな特徴として、毎年7月に開催されます。したがって、ほとんど真夏に近い炎天下での競技会となり、特に中長距離種目にとっては過酷を極めます。果たして、今年の大会も快晴となり、気温も33度以上、湿度60%前後と、厳しいコンディションとなりました。

また、4月から7月前半あたりまでを、「スピード養成期」と位置付け、積極的にトラックレースに出場する話しをしてきました。その結果、冒頭に記載したとおり、マラソンやロードレースとは違う苦しさを経験しました。更に、4月から7月前半のトラックシーズンは、一部のナイター競技会を除くと、ほとんどの競技会が炎天下での開催となります。

つまり、暑さの中で走る苦しさも、トラックレースを通じて経験することになります。実は、スピード強化と矛盾しているような感じですが、マラソンと比較すると5000mは距離も短く、厳しいコンディションの中でも前半からスピードを上げて走ることで、マラソンとは違う苦しさや我慢を身体が体感することになります。

このような厳しいコンディション下でも、短時間での苦しさや我慢を経験することは単にスピードを付けるとかだけでなく、逆にマラソンのような長時間耐える苦しさや我慢に対する余裕度としても効果を発揮してきます。(私の経験上)

この点は、短い距離のレースでもロードではなく、積極的にトラックレースを走る意味があると考えます。

つづく。

期分け・92

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【期分け・92】トラックレースが苦しいと感じる要因について考えていますが、前回はいきなり「AT値」が登場しました。今回もその続きになります。

前回、5000mを20分ちょうどで走れるランナーの場合、その平均スピードの90%に相当する4分27秒前後のペースで走ると理論上、乳酸が蓄積せずに(疲労せず)ランニングを長時間継続することが可能と、話しをしました。

もちろん、走歴の浅い市民ランナーの場合、5000mの速度に対して70%かもしれません。この点は、必ずしも全てのランナーに当てはまる訳ではありませんが、上記したランナーの場合、4分27秒前後のペースはマラソンペースとほぼ一致しています。つまり、乳酸が蓄積せずに(疲労せず)ランニングを長時間継続できる上限のペースがマラソンペースにもなります。

ところが、トラックレースで5000mを走る場合、自己記録を目指してスタートすると、至極当然ながらマラソンペースよりも速いペースになります。具体的には、5000mを20分ちょうどで走れるランナーの場合、自己記録を更新するためには、4分以内のペースが必要になります。

しかし、トラックレースの場合、スタート時の混雑等もないため、トップスピードでスタートすることが可能です。更に、最短で100m毎のペースを確認することも可能であり、正確なペースを保つことも可能です。したがって、スタートから4分切りペースを刻んでいくことは十分可能な状況が揃っています。

特に、トラックレースの経験が浅い市民ランナーは、このように考えスタートするケースが多いのですが、1000mを通過したあたりから急激に呼吸も苦しくなります。更に、手足も思うように動かなくなって、ほとんどのランナーはペースを保てなくなるだけでなく、大きく失速していくパターンに陥ります。

この時、体内では「AT値」を大きく上回るオーバーペースでスタートしたが故に乳酸を除去できる能力を発生量が上回り、過剰な酸素負債になっているのです。つまり、乳酸を除去するために必要な酸素量を取り込めない状況です。同時に、心拍数も頭打ちになり、酸素摂取量より酸素消費量が多くなるので、呼吸は苦しくなり、手足もうまく動かせない状況に陥っています。

これが、「トラックレースは苦しい」と、感じる大きな要因のひとつなのです。

つづく。

期分け・91

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【期分け・91】前回まで、ロードレースとトラックレースを比較してきましたが、どうもトラックレースの方が苦しいような感じです。同時に、その違いや感想をいくつかあげてきましたが、今回はもう少し掘り下げてみます。

特に、はじめてトラックレースを走った市民ランナーの多くが、走った後の感想として、「とにかく苦しかった」、「こんなに苦しい経験は初めて」とまで言う方もいます。では、その苦しさの要因を別の視点から考えてみます。

はじめに、考えられる最大の要因としては、以前にこのブログでも取り上げたトレーニング強度の指標となる「AT値」が、大きく影響していると考えられます。と、ここで久々に「AT値」が登場したので、もう一度簡単に説明しておきます。

ATとは、無酸素性作業閾値と言います。詳細については割愛しますが、簡単に説明すると、有酸素運動と無酸素運動の境界付近を指します。具体的には、遅いスピードで走っている段階では有酸素性エネルギーが供給され、乳酸を蓄積せずに(疲労せず)ランニングを継続していくことが理論上可能です。

ところが、スピードを上げていくと、無酸素的エネルギー供給機構が働き始め、乳酸がより多く産生(疲労してくる)されて、スピードを維持できなくなってきます。そして、その境界をAT値と言っています。しかし、その変換点はポイントと言うより閾値、つまり「ゾーン」と考えられています。

もちろん、正確なAT値を測定するには、専用の機器や血液検査等々、専門的なデータ分析が必要になります。しかし、ランニングペースの目安を導き出すため、簡易的な計算式でも、ある程度の目安を判断することは可能です。(個人差も大きいので目安として)

◆簡易計算式:5000mの記録を100%とした時の90%(5000mの記録/0.9)

例として、5000mを20分ちょうどで走れるランナーの場合、1000mの平均速度は4分ちょうどとなります。したがって、その90%なので、1000mを約4分27秒前後のスピードで走り続けると、理論上は乳酸が蓄積せずに(疲労せず)ランニングを長時間継続することが可能になります。また、そのペースの前後が閾値(ゾーン)となります。

さて、久々に難しい話しになりましたが、苦しさの要因となるヒントが何となく見えてきたでしょうか?

次回も引き続き考えていきます。

つづく。

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