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第66回福岡国際マラソン選手権大会

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【第66回福岡国際マラソン選手権大会】先日の12月2日(日)、国内最高峰のマラソン大会である「第66回福岡国際マラソン選手権大会」が開催されました。ロンドンオリンピック代表の藤原選手と公務員ランナーの川内選手との直接対決で何かと話題の多い大会でしたが、日本人トップは旭化成の堀端選手が2時間8分24秒の自己新記録での2位でした。

私も久々に現地にて応援をしましたが、曇り空でほぼ無風のコンディションに、記録への期待を込めての応援となりました。さて、私の選手は3名出場しましたが、3選手とも参加資格はマラソンを2時間42分以内のBグループです。そのため、スタートは平和台陸上競技場ではなく、隣の大濠公園となります。

実は、私自身にとっても大濠公園から選手を見送るのは初めての経験ですが、人数的に言うと、今回エントリーしたほとんどの選手は、この大濠公園からのスタートになります。また、今大会のようにスタート地点を分けてのスタートは、実際にどのようにスタートしていくのか、様々な視点から興味がありました。しかし、大濠公園からのスタートは陸上競技場とは違い、どの選手もスタート直前まで応援にかけつけた家族や仲間たちと談笑したり記念写真を撮ったりと、とてもリラックスした様子でした。

12時10分、号砲と共に一斉に福岡の街に駈け出していきました。途中、地下鉄を乗り継いで選手を応援しましたが、女子選手の応援と違って、スピードが速いのでゆっくり応援する時間はありません。数ヶ所のポイントで声をかけた後、ゴールの平和台陸上競技場に戻りました。果たして、私の3選手とも無事にゴールし、2選手は自己新記録をマークすることができました。

また、私がもうひとつ注目していた点として、川内選手を除く市民ランナーたちの中から何人の選手が「2時間20分」を突破してゴールするかです。しかし、残念ながら今回はそれに該当する選手はいませんでした。沿道で応援していると、ちょうど2時間20分突破を狙っている20数名の集団は形成されていたのですが…。

個人的な考えですが、高校時代や大学時代に陸上競技選手としての実績がほとんどない純粋な市民ランナーたちの中から「2時間20分」を突破できるランナーが次々に輩出される流れになったときが、本当の日本マラソン界の底上げだと思います。

と、言いながらマラソンの楽しみ方や価値観は様々です。同時に、仕事や家庭との合間をぬって走り込みを積み重ねている市民ランナーが、「2時間30分」を突破することも並大抵の努力ではありません。しかし、更にその上の「2時間20分の壁」に向かって本気で挑戦する市民ランナーが多くなることを期待するのと同時に、可能な限り応援していきたいと、強く感じた久々の福岡でした…。

ロンドンパラリンピックへの道・6

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先日の3月4日、「第34回千葉県民マラソン大会」が、千葉県富津市において開催されました。また、大会会場をこの富津市に移して5回目となります。そして、日本盲人マラソン協会の視覚障害者選手が特別招待として毎年参加できるようになったのも、この富津市に移ってからです。

あらためて、富津市の皆様をはじめ大会関係者の皆様に対し、厚く御礼申し上げます。

さて、少し手前味噌の話しになりますが、実は私も20代前半のころ、この大会で5連覇を達成したこともあり、マラソンへの足掛かりをつかんだ思い出深い大会です。そんなこの大会に今年は、3名の視覚障害者選手を参加させていただきました。もちろん、3選手とも今年のロンドンパラリンピック日本代表の有力候補選手です。

特に、T12クラス(弱視)の岡村正広選手は、昨年12月の福岡国際マラソン大会から好調をキープしており、今大会での快走も期待していました。

その岡村選手の視力は、見えている範囲が極端に狭くなる視野狭窄と、日が沈むとほとんど見えなくなる夜盲症があり、日々の練習にも大きな支障をきたしております。そんなハンディを持ちながらも地道な努力を積み重ね、昨年のIPC世界選手権大会のマラソンでは銅メダルを獲得しました。※一般的にも弱視者への理解や配慮は、全盲者よりも遅れている。

また、岡村選手は今年で42歳になりますが、肉体的な部分はもちろん、マラソンに対する意欲や情熱についても衰える気配すらありません。更に、身体のケアについては、自らの身体に自ら針治療を施しながら、常に万全の体調をキープしています。※岡村選手は千葉盲学校で針灸の教諭をしている。

そんな岡村選手は視覚障害者ランナーとしてだけでなく、富津練習会をはじめ共に練習を積み重ねている多くの市民ランナーたちが目標にしている貴重で憧れの存在でもあります。そして、今回の千葉県民マラソン大会でも全国高校駅伝大会に出場している強豪高校の選手たちと互角に競り合い、10kを31分2秒の驚異的な自己新記録でゴールを駆け抜けました。

今年の8月末から開催されるロンドンパラリンピックの日本代表選手発表は6月以降になります。もちろん、視覚障害者マラソンは岡村選手を軸にどの選手が代表選出されても、世界と勝負するための強化を積み重ねていく所存です。

皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願い申し上げます。

2012東京マラソン

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絶好のコンディションに恵まれた「2012東京マラソン」でしたが、まさにそのとおりの素晴らしい大会となりました。特に、男子の部については、ロンドンオリンピックの代表選考レースのひとつになっており、藤原新選手が見事な走りで、代表切符の1枚をほぼ手中におさめました。

そして、公務員ランナーとして注目を集めている川内優希選手は惜しくも14位でしたが、その果敢な挑戦は今後も日本マラソン界を牽引していくに違いありません。

また、既にご存知のとおり、藤原新選手と川内優希選手に共通している点として、強いチームに所属せず、マラソンに向けた取組み全てをたったひとりで切り盛りしていることです。一見すると、市民ランナーの誰もがしていることなので、至極当然のような感じを受けます。しかし、あれだけの注目を一身に集め、応援される以上に批判も受けながら自身の目標に突き進んでいく精神力は、逆に「プロ選手」と言えるでしょう。

仕事や家庭を理由にマラソンの結果を振り返るランナーが圧倒的に多い中、藤原新選手と川内優希選手がマラソンで見せた走りや各会見でのメッセージは、マラソンを攻略していく上で何が最も大切なのかを問いかけているようにも感じます。(先日の別大マラソンで快走した猫ひろし選手も同様)

そして同時に、日本の男子マラソンは長期にわたり低迷していましたが、ふたりの取組み姿勢やその走りは、男子マラソンを再び上昇気流に乗せる風穴をあけました。もちろん、この良い流れが、更にロンドンオリンピックまで続いていくことを信じています。

さて、私がコーチする選手(市民ランナー)たちもこの東京マラソンに出場し、自己の記録に挑戦しました。主な記録は次のとおりです。

◆男性市民ランナー:M・K選手/2時間59分28秒(自己新記録)。◆女性市民ランナー:H・Y選手/2時間50分40秒(セカンド記録)、M・Y選手/2時間52分33秒、C・I選手/3時間12分57秒(セカンド記録)。

なかでもM・K選手(男性市民ランナー)は、数年前から何度もサブスリーに挑戦し、ことごとく3時間の壁に押し戻されていました。今回の東京マラソンでもサブスリーを目標に地道な走り込みを積み重ねてきましたが、ようなく念願のサブスリーを達成しました。

特に、東京マラソンのコースはスタートから5k過ぎまで下りが続きます。そして、35k以降はアップダウンが続きます。したがって、このコースは出足の5kをどのように走るかが最も重要なポイントのひとつになります。

今回、初のサブスリーを達成したM・K選手は、多少のスタートロス時間もありましたが、この出足の5kが全体の5k毎ラップタイムで最も遅いタイムと、力を温存しながらうまく下り切りました。そして、前半のハーフを1時間29分55秒で通過し、後半のハーフを1時間29分33秒と、スタートからゴールまで見事なイーブンペースを貫いての目標達成です。

マラソンは、一定のペースで最後まで走り切るのが最も効率的です。ところが、前半を抑えていくことは、かなりの勇気と我慢が必要になります。特に、東京マラソンのような数万人規模で走る大会は、周りに惑わされて自分の設定ペースを見失う確率が高くなります。しかし、M・K選手は自分自身のペース感覚と我慢を富津練習会等で体得し、東京マラソンの舞台で見事に発揮したのでした。

期分け・38

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引き続きマラソンを攻略していく上でのペース配分について考えていきますが、今回は過去の記録を解析してみます。

はじめに、マラソン世界記録と日本記録についての前半と後半の実績タイムと、その差異についてです。

◆男子マラソン世界記録:2時間3分38秒/前半1時間1分44秒-後半1時間1分54秒=▽10秒(▽0.27%)。◆女子マラソン世界記録:2時間15分25秒/前半1時間8分2秒-後半1時間7分23秒=△39秒(△0.96%)。◆男子マラソン日本記録:2時間6分16秒/前半1時間2分29秒-後半1時間3分47秒=▽1分18秒(▽2.08%)。◆女子マラソン日本記録:2時間19分12秒/前半1時間9分19秒-後半1時間9分53秒=▽34秒(▽0.82%)。※男子の日本記録は優勝ではなく、3位で樹立した記録。

上記の記録については、5k毎のラップタイムを割愛していますが、どれも見事なイーブンペースであると言えます。そして、どの記録もペースメーカーがキッチリとペースメークして樹立した記録でもあります。

では、次に私がコーチする女子選手(市民ランナー)が残した記録を解析してみます。具体的には、2時間50分00秒から2時間59分59秒までの実績タイムから導いたデータですが、その記録内でゴールした回数は合計で55回です。

◆2時間50分00秒~2時間54分59秒(22回):平均タイム2時間52分34秒/前半平均1時間25分15秒-後半平均1時間27分19秒=▽2分4秒(▽2.42%)。◆2時間55分00秒~2時間59分59秒(33回):平均タイム2時間57分18秒/前半平均1時間27分17秒-後半平均1時間30分1秒=▽2分44秒(▽3.14%)。◆合計(55回):平均タイム2時間55分24秒/前半平均1時間26分28秒-後半平均1時間28分56秒=▽2分28秒(▽2.86%)。

以上のような記録の解析になりますが、参考までに後半ペースアップした回数は、5回と3回で合計8回です。また、逆に後半の落ち込みが4分以上(≒5%以上)の回数は、4回と6回で合計10回でした。もちろん、データの数が多いとは言えないので単純に結論を導き出すことはできませんが、マラソンを攻略していく上での効果的なペース配分が何となく見えてきます。

次回は、更に掘り下げて考えていきます。

つづく。

期分け・37

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前回は実際のマラソンを走るうえで、大きく3つのパターンについて考えましたが、今回もそのパターンについてです。※下記参照

◆パターン1).イーブンペース型。◆パターン2).前半突っ込み型。◆パターン3).後半ビルドアップ型。

はじめに前回の続きで、ペースメーカーが存在しなかった10数年前のマラソンは、どんなレース展開だったのかを振り返ってみます。

当時のマラソン大会の多くは、スタート直後から有力選手を軸に大集団が形成されるレース展開が主流でした。そして、10k、20kと通過していく毎に集団からランナーが次々と脱落していき、最後に残ったひとりが優勝する典型的なサバイバルレースだったと記憶します。

そのため、このサバイバルレースはゴールに向かってどんどんビルドアップしていき、最後は最も速いランナーが優勝するパターン3のように見えます。しかし、当時の5k毎ラップタイムを分析していくと決してそうでないことがわかります。

詳細は割愛しますが、特にマラソンの場合、30k前後までは駅伝のように意図的なペースの上げ下げはほとんどありません。そのため、力のあるランナーが他のランナーを振り落していくのではなく、力のないランナーが自然に脱落していく流れになります。

つまり、スタートから30kあたりまでは、大きな集団が形成されるのでペースは思ったほど上がらず、逆にややペースダウンしている流れが多かったと記憶します。そして、集団の人数が絞られてくる35kあたりからレースが動きだし、最後に残ったランナーが優勝となるレース展開でした。

これを上記パターンに当てはめると、パターン3の後半ビルドアップ型に見えます。しかし、35k付近まではお互いがけん制し合うのでペースは思ったように上がりません。そして、そこからペースアップしても結果的にはパターン1のイーブンペース型が最も近くなります。

さて、前回記載したとおり、近年のマラソン大会はペースメーカーを付け、記録を重視する傾向が強くなっています。その結果、上位数名が好記録をマークする確率は高まりましたが、逆に全選手がつぶれて凡レースとなる展開も多くなったと感じます。※全体的には雑なレース展開が多く、一気に好記録が出る反面、安定感のある選手が育ち難い。

一方、上記したように10数年前のマラソン大会は、前半は大集団を形成し、抑え気味のペースで後半に突入する展開が主流でした。そのため、記録よりも勝負重視となり、見ごたえのあるレースが多かったと感じます。※2時間15分前後の若手ランナーが育ちやすく、次世代を担う選手層を確保し易い。

はたして、どちらのレース展開が良いのかを簡単に決めることはできません。しかし、身の丈をこえる速いペースメーカーの後ろを積極果敢に付いていくことは、後半の大きな失速に直結する確率が相当高まることは事実です。そして同時に、前半のオーバーペースによる失速は、マラソンの場合、単に完走することも困難にします。この点は駅伝と決定的に違う点であり、マラソンを成功に導くためのペース配分を考える大きなヒントになります。

つづく。

※おかげさまで、このブログも200話目となりました。

ロンドンパラリンピックへの道・5

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2012年の今年は、いよいよロンドンオリンピックの年となりました。そして、オリンピックの後は、パラリンピックが同地において開催されます。また、このイギリスはパラリンピック(障害者スポーツ)発祥の地でもあり、今回のロンドンパラリンピックはより素晴らしい大会になると期待されています。

さて、そのロンドンパラリンピック日本代表を目指す視覚障害者選手と共に1月27日(金)から1月29日(日)の日程で、千葉県富津市において強化合宿を実施しました。また、今回の強化合宿は日本身障陸連が主催し、参加した選手はT11クラス(全盲)の和田選手、T12クラス(弱視)から岡村選手と堀越選手の計3名です。

3選手とも既にロンドンパラリンピック参加A標準記録を突破しております。しかし、ロンドンパラリンピックの日本代表選手に選出されるか否かの決定は、今年の6月以降となります。したがって、日本代表争いはかつてない厳しさが予想され、単にA標準記録を突破しているだけでは日本代表に選出されるのは難しい状況と言えます。

具体的には各種目の世界ランキングを目安に、メダル獲得や上位入賞争いにより近い記録を残していくことが、重要なポイントになってくると考えます。今回の合宿に参加した3選手とも、その点は十分に理解しており、積極的な姿勢で合宿に挑んでいました。

また、今回の合宿は日本身障陸連トレーナー部会からトレーナーの全日程帯同が実現しました。そして、トレーナーには日々の体調管理をお願いしたのはもちろんですが、特に腹筋や背筋のある体幹部についての筋力測定や強化の方法やポイントを指導していただきました。

私も現役時代そうでしたが、ランナーの多くはただ単にまっすぐ一定のペースで走り続けることが多いので、柔軟性や筋力がかたよっていく傾向にあります。その結果、慢性的な疲労や故障を抱える選手が多くなり、トレーニングの量や質を上げてもパフォーマンスが逆に低下していく、負の連鎖に陥っていく選手は多いと感じます。

もちろん、今回の合宿で指導いただいた様々なことが、ストレートに記録や成績に結びつくことは難しいと思います。しかし、自分自身の身体を違う視点から考えたり、評価していくことで、記録を短縮するためのヒントを得たに違いありません。

ところが、一方で3選手とも競技歴を重ねており、初心者のように分単位で記録を短縮することは、現実的には難しくなってきています。だからこそ、「あと1秒を短縮する」ための工夫や新しいトレーニング方法を取り込んでいくことも選択肢のひとつになります。そして同時に、それらを柔軟に対応できる決断や勇気も重要になり、これからはメンタル的な部分を強化していくことも必要不可欠になっていきます。

ロンドンパラリンピックに向け、皆様方の絶大なるご声援をよろしくお願いします。

つづく。

期分け・36

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今回から実際のマラソンを走る上で、目標タイムに対してどんな設定ラップタイムで走っていくかを考えていきます。

既にご存知のとおり、マラソンはスタートしたら単純にゴールを目指すシンプルなスポーツですが、ゴールを目指す走法についてはいくつかのパターンがあります。はじめにそのパターンをあげてみます。

◆パターン1).イーブンペース型:単純に1k毎の目標ラップタイムを守ってゴールまで淡々と一定ペースで走るパターン。◆パターン2).前半突っ込み型:前半のハーフを速めに通過し、後半は失速しながらも走り切るパターン。◆パターン3).後半ビルドアップ型:前半のハーフを抑え気味に通過し、後半のハーフをペースアップしながらゴールするパターン。

主なパターンは上記3つになりますが、どんなレベルの選手が走っても必ずどれかに当てはまる至極当然のパターンです。

ところが、どのパターンが自分自身に最も適しているかをしっかりと自己分析できているランナーは驚くほど少ないと感じます。もちろん、出場する大会毎にコンディションやレース展開は違います。そのため自分自身に合うパターンを見つけることは、難しいことでもあります。

さて、皆さんはどのパターンが得意でしょうか?

それでは上記パターンについて、それぞれを詳しく考えていきますが、はじめに最近の傾向について考えてみます。※但し、テレビ中継のあるエリートマラソンについてです。

この時期は、ほぼ週末毎にマラソンのテレビ中継があります。そして、どの大会もペースメーカーがレースを先導します。ペースの目安として男子は1kを3分、女子は3分25秒あたりでしょうか。

これを上記パターンに当てはめると、パターン1のイーブンペース型になります。しかし、ペースメーカーは25kから30kあたりで役目を終えます。したがって、そこからが本当の勝負です。つまり、そこからがマラソン競争となり、パターン3の後半ビルドアップ型へとなるはずですが、大会によってはそこから大きく失速してパターン2へと陥ることも多々あります。

特に国内の大会では、ペースメーカーが離れた後、ペースが上がらずパターン2となるマラソン大会の方が多いような感じさえ受けます。もちろん、その理由は様々ですが、レース展開が走っているランナーの走力や走法にマッチングしていないことが大きな原因と感じます。

しかし、最も効率のよさそうなイーブンペース型で走っているにも関わらず好記録ラッシュに結びつかないところが、マラソンの難しさでもあります。そして同時に、目標の記録をどのような走法で攻略していくかは、とても重要なポイントであると考えます。

つづく。

期分け・35

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今回も「マラソン期」で実際にマラソンを走る際の目標タイムやそれに伴う数字(タイム)について考えていきます。

前回もふれましたが、マラソンを走る前にほとんどのランナーは目標タイムを設定します。そして同時に、目標タイムに対し、1k毎の通過設定タイムや5k毎の通過設定タイムに関しては、ほとんどのランナーが確認します。ところが、10kや15kの通過設定タイム、更には25kや35kの通過設定タイムになると、逆にほとんどのランナーは確認及び把握していないケースの方が多いと感じます。

もちろん、1k毎の目標ペースをスタートからゴールまでキッチリと刻める走力やペース感覚の優れたランナーなら全く問題ありません。ところが、実際のマラソンレースでそれを実行するのは簡単なことではありません。

なぜなら、実際のマラソンレースでは、走力や目標タイムの違う数千人から数万人のランナーが一斉にスタートします。その結果、他のランナーに惑わされる可能性が高くなるからです。特に、スタート直後から10k前後あたりまでは人波が凄く、自分自身のペースを維持していくことは事実上困難な状況と言えます。※マラソンは「1対1」の勝負ではなく、「1対他」の勝負となります。

同様に、大会主催者側が準備しているペースメーカーのいるグループについたとしても、そのペースメーカーを務めているランナーがペースを一定に刻める保障もありません。つまり、前半のペースが遅れた場合や速すぎた場合、ペースメーカーの判断でペースの上げ下げを必ず実施します。

そのため、目標タイムに対する5kの設定タイムはキープできたとしても、その間の1k毎にペースの上げ下げをするケースが多々あり、走力の伴っていないランナーはそのペースの変化で力を使い切ってしまいます。

ところが、このとき自分自身の目標タイムに対する各ポイントの通過設定タイムをしっかりと把握していたとします。すると、そのペースの変化を身体(感覚)だけでなく、自分自身の時計を目で見て確認し、実際の数字(タイム)として頭の中で正確な判断ができます。

このような話しをすると「そんなことは当たり前」と、誰もが言います。しかし、実際のマラソンレースではペースが速すぎたり遅すぎたりしていることを正確な数字(タイム)として把握できず、最終的には自滅するパターンが意外と多いのです。

つづく。

期分け・34

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ここまで長々と「期分けシリーズ」を連載してきましたが、いよいよ狙ったマラソンを走る「マラソン期」について考えていきます。

はじめに、ここまでの期分けを簡単に振り返っておきます。

◆スピード養成期:4月~7月 → ◆第1次走り込み期(基礎体力養成期):8月~9月 → ◆第1次走り込み期(スピード持久力養成期):10月~11月 → ◆調整期:11月~12月 → ◆マラソン期:11月~1月。・・・以上のような流れとなります。そして更に、それぞれの期について考えてきました。※期間(月)については目安です。

もちろん、毎度のことですが、上記の期分けが絶対ではありません。なぜなら、市民ランナーの多くは実業団選手(プロ)や学生選手のようにランニングを軸にした生活スタイルを継続していくことが難しいからです。したがって、それぞれがそれぞれの仕事や生活スタイルに合わせた流れ(期分け)を構築していくことが重要なポイントになります。

一方で、マラソンは球技のようなスポーツと違い道具を使いません。そのため、ランニングに上手い下手はありません。また、別の見方をすると、バッティングセンターで素人が140キロの速球を偶然打ち返すことはできても、マラソン4時間のランナーが運よく2時間10分で走れることは絶対にあり得ません。

つまり、いかなる理由があったとしても「走ること」を継続していかないと、マラソンを攻略していくことはできません。更に、目標のマラソンに向けて必要不可欠なことは、それぞれの走力やレベルに合ったトレーニング計画であり、期分けなのです。

さて、前置きが長くなりましたが、ここまで上記の期分けを通じて計画的なトレーニングを考えてきました。そして、いよいよ目標のマラソンに挑戦する「マラソン期」です。

今更言うことでもありませんが、狙ったマラソン前の睡眠時間や食事内容については、どんなレベルのランナーでも気を使います。また、当日のコンディションに合わせた暑さや寒さ対策、シューズ等についても考えます。同じく、レース中の給水対策に至っては、既にランナーにとって常識です。

ところが、意外と盲点になることがあります。それは、目標タイムの設定やペース配分についての数字です。具体的には、目標タイムが3時間突破のランナーなら、「4分15秒/kペース」で目標を達成できることは、どんなランナーでも把握しています。

しかし、3時間突破をするための15k通過予定タイムや25k通過予定タイムになると、ほとんどのランナーは答えることができません。そして、実際のマラソンでスタートから「4分15秒/kペース」が乱れると・・・。

次回はこの点を掘り下げていきます。

つづく。

期分け・33

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新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、毎年のことですが、お正月三が日は「駅伝観戦」と、決めつけている方々も多かったと思いますが、いかがだったでしょうか?かくいう私も駅伝三昧の三日間でした・・・。

今年のお正月三が日は天候にも恵まれ、「ニューイヤー駅伝」、「箱根駅伝」ともに好記録が続出し、見ごたえのある駅伝でした。特に、どちらの駅伝も優勝したチームの安定した走りが目をひきました。具体的には、各区間に配置された選手たちがブレーキも無くそれぞれの役割を見事に全うし、予定どおりの力を出し切ったその「調整力」に驚きました。

駅伝はマラソンと違いチームで競い合います。しかも、区間毎の距離やコースの起伏等が全て異なります。同時に、スタート時間も全区間異なるので、区間毎に起床時間から食事時間、更にはウォーミングアップ等の流れに至るまで全てが異なります。

このように駅伝は、区間毎にまるで違うレースが展開されます。更に、それらをチームの目標に向けてひとつに合わせていくことは、本当に至難の業です。今回、ふたつの駅伝では、その調整力の差がそのままチーム順位に現れ、あらためて調整(ピーキング)の重要性を見せつけられる思いがしました。

また、正月の駅伝を目指している選手たちも春にはトラックレースを走り、夏には走り込みを実施します。ところが、1万メートルの平均タイムを短縮したとしても、夏の走り込みが計画どおり積めたとしても、最後の調整期間で勝負の明暗が分かれます。

この点は、マラソンを目指している市民ランナーの人たちも全く同じです。

マラソンは駅伝のように区間毎にスタート時間が異なったり、同じ大会で別々なコースを走ることはありません。しかし、マラソンも大会毎によってスタート時間が異なります。同じくコースの特性も違います。それらの点は駅伝もマラソンも同じであり、駅伝からのノウハウをマラソンに活かすことは可能です。

例として、箱根駅伝の1区を走るランナーは8時のスタート時間に合わせて夜中の2時から3時には起床し、体調を整えます。同様に、早朝9時より早い時間にスタートするマラソン大会だったとしたなら起床時間や食事等のノウハウはもちろん、早朝に体調を合わせていく調整方法は参考になります。また、アップダウンの多い区間を走る選手のトレーニング方法や調整方法は、起伏の多いマラソンコース攻略にも応用できるはずです。

このように、正月の駅伝を攻略したチームや選手たちの調整方法については、マラソンを目指す市民ランナーにとっても参考になると考えます。また、これから新聞や雑誌、ネット等で正月の駅伝を制したチームや選手たちの記事を目にする機会が増えてきます。是非ともそのコメントを注視し、調整方法のヒントを学んでほしいと思います。

つづく。

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