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2024-05

2024春を走る・11

【2024春を走る・11】ブラインドマラソンに欠くことのできない存在は伴走者です。具体的な役目としては、視覚障がいランナーの目や杖となり、横で並走しながら安全にゴールまで導くことです。

近年は、どのマラソン大会においても視覚障がいランナーが参加することを拒むようなことはなくなり(かつては安全上の理由などから拒まれた)、各地のマラソン大会においても伴走者と楽しく走る視覚障がいランナーを拝見する機会は増えました。

また、その伴走者を養成するための研修会を、日本ブラインドマラソン協会などが中心となって開催しております。かくいう私もそのお手伝いをすることがあり、先日も伴走者養成講習会の講師をしてきましたが、最近は伴走に興味関心を持って頂ける一般ランナーが増えました。

一方、「視覚障がいランナーは増えているのか?」と言えば、実はそうではありません。正確な数字での確認はできませんが、30歳代より若い世代の視覚障がいランナーは確実に減っていると感じます。逆に、視覚障がいランナーの高齢化はどんどん進んでおり、年齢や体力的な理由からランニングをやめていく人は増えています。

その結果、前述したように視覚障がい者のマラソン人口は減少傾向にあります。

視覚障がいランナー(特に若い世代)が減少している理由を正確に把握することは難しいですが、事実として全国にある特別支援学校(旧盲学校)の在籍生徒数は毎年減り続けています。これは、視覚障がい児童や生徒も地元の学校(一般の普通学校)にかよう「インクルーシブ教育」が浸透してきたこともその一因と言われています(良い意味で)。

ところが、視覚障がい者が一般の普通学校で学ぶ場合、体育については安全上などの理由から「見学になる可能性が高い」との調査報告もあります。つまり、本来なら体育(運動会や校内マラソン大会なども)で走ることを学んだり、体験もしていきます。しかし、皮肉にもその体験する機会を得ること自体が、逆に難しい環境になってしまうのです。

もちろん、インクルーシブ教育を否定しているわけではありません。しかし、小中高時代に「走ること」をほとんど経験しないまま成人することで、その後も「走ること」とは無縁の生活が続く可能性は高まると推察できます。

これまでは、視覚障がいランナーが「走りたいけど伴走者がいない」との話が多数でしたが、逆に「伴走したいけど視覚障がいランナーがいない」の時代に移ってきていると感じます。それも急激なスピードで……。

伴走講習会を受講された皆様におかれましては、視覚障がいランナーから「伴走できますか?」などの依頼を待つだけでなく、「一緒に走ってみませんか?私が伴走しますよ!」と、逆に声をかけて下さい。そして、運動経験の少ない視覚障がい者に「走る機会を提供」して頂きたいと、勝手ながらもせつに願う次第です。

2024春を走る・10

【2024春を走る・10】恒例のGW菅平合宿(長野県上田市)は無事に終了しました。この時期の菅平高原は、気温が下がる日も多く、午前中の気温が10度以下の日もありました……。

今回の合宿は、マラソン後の調子などを確認することが最大の目的だったので、質も量も落とした内容でした。また、6月からは、パリパラに向けた本格的な走り込みを実施していくので、その準備をするような意味合いもありました。

幸い、主力選手たちの状態は問題なく、6月からは計画どおりの走り込みにシフトしていけそうです……。

さて、パラリンピックの開催はオリンピックの後になるので、開催期間は8月後半から9月前半の日程になります。そして、パラマラソンは、パリ大会も最終日に実施されることが決定しているので、それに向けた走り込みは、6月から8月になります。

したがって、最も暑い季節に最もたくさん走り込むことになるので、身体への負担が大きくなるのは言うまでもありません。もちろん、菅平高原など比較的涼しい場所での走り込みをメインにしていきますが、最終的には暑い中でもしっかりと走れる身体に仕上げていくことが不可欠になります。

また、冬のマラソンと違って、本番直前に練習を落としたからと言っても、簡単に疲労が抜けていくとは限らないのが、夏マラソンの最も難しいところです。もちろん、マラソンに向けた走り込みができていないと、本番でも走れないのは冬マラソンと同じです。

同時に、冬マラソンによくある「成功するための王道」のようなトレーニング方法は、夏マラソンには見当たらず、常に手探り状態のも確かです。まさに「過去の経験とカン」に頼る部分が多いのも「夏マラソン」とも言えるでしょうか。

そんな中、ひとつ言えるのは、トレーニングの量も質も冬マラソンのように追い込み過ぎると、最後は疲労を抜いていくのが困難な状況に追い込まれるリスクが高くなるのも夏マラソンの特徴です。

と、言いながら逆に落とし過ぎると、本番に勝負ができなくなるのは冬マラソンと同じなので、とても矛盾したバランスを保ちながら走り込んでいくことになります。

このようにパリパラに向け、いよいよ「難解なパズル」を組み合わせていく作業に挑む時期に入っていきます……。

2024春を走る・9

【2024春を走る・9】今年もGWに突入しました。そして、今年のGWも長野県上田市の菅平高原において強化合宿を実施しております。

今年の菅平高原は、ラグビーやサッカー選手たちの姿も多くなり、コロナ以前の活気が戻りつつあります。もちろん、長距離選手が走っている姿も多く、GW中の菅平高原は実業団選手の姿を多く目にします。

さて、前回のブログでも記載したとおり、パリパラに日本のブラインドマラソン選手を派遣できるか否かも不明な状況です。と、言いながら至極当然のことですが、パリパラに出場することを前提に強化を進めていきます。

そして、そのパリパラのマラソンは、9月8日の実施予定です。日程を逆算していくと、6月から本格的な走り込みに入り、真夏に突入する7月から8月にかけての走り込みがカギになります。

もちろん、パリパラに向けた6月からの走り込みは、ここ菅平高原からスタートします。今回の菅平合宿は、本格的な走り込みに入る前の足慣らし的な意味合いもあります。また、どの選手も先月の「かすみがうらマラソン大会」を走っており、その回復状況を確認することも重要な目的になります。

前回の東京パラのマラソンに向けても、6月から本格的な走り込みに入り、そのスタートも菅平高原でした。そして、7月から8月は北海道で走り込み、最後は千葉県富津市で調整と暑熱順化を実施し、選手村に入村しました(女子は金メダル、男子は銅メダルを獲得)。

今回のパリパラに向けた流れも、その実績をベースに計画していきます。また、東京パラのマラソンコースは後半に上り坂が続く「難コース」でした。しかし、今回のパリパラのマラソンコースを視察した結果、その東京パラを上回る「超難コース」であることを確認しました。

したがって、東京パラ以上にスピードよりもスタミナが要求されます。そしてさらに、石畳に耐え得る強靭な脚力も必須であり、その超難コースでのメダル争いとなります。しかし、それはチームジャパンの選手たちが最も得意とするコースとも言えます。

ますは、今回の菅平合宿を良い流れで乗り切り、6月からの本格的な走り込みにつなげていきます。

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