【マラソンに向けて・5】前回まで走るスピードの違いから3つのゾーンに分けて考えてきましたが、ここまでを少しまとめてみます。
AゾーンからBゾーンまでのスピードだと理論上は、乳酸が発生してもそれを取り除くために必要な酸素を取り込めている状態なので、長時間(距離)走り続けることが可能です。ところが、BゾーンからCゾーンにスピードが上がると、その境目と言われているATやLTをこえるため、乳酸を取り除くために必要な酸素を十分に取り込めない状態になっていきます。
この状態になってくると、体内に蓄積されていく乳酸を取り除くために必要な酸素を取り込めない借金生活に陥っていきます。そして、この酸素が不足し、乳酸が蓄積した状態に耐え得る能力を乳酸耐性とも言い、その能力は個人差が大きく、それを正確に把握することはとても難しいとも言われています。
これを実際のレースであるマラソンに置き換えてみ見ると、常にBゾーンとCゾーンの境目に近いスピードで走り続けることができれば、発生する乳酸を抑えながらゴールできます。また、自分自身の乳酸耐性能力をある程度把握できているランナーなら、残りの距離に応じてペースアップ(ラストスパート)し、ゴール地点で乳酸耐性の限界に達するように走り切ることができます。
しかし、このように自分自身の能力を正確に把握した上で、当日の目標タイムを割り出し、更にそのとおりのラップを刻んでゴールするのは相当難しいのは言うまでもありません。そのため、後半の失速を用心してCゾーンに近いBゾーンで走り、後半ペースアップをしたにも関わらず、かなりの余力を残してゴールし、力を出し切れなかったケース。
逆にスタート直後から周りのペースにつられてしまい、オーバーペースによる酸素負債に陥り後半大きく失速するケースと、思うように力を出し切れないランナーが多いのが現状です。ところが、スタートから自分自身の適切なペースを守り、Cゾーンのペースをキープしながら走っていたにも関わらず、中盤から後半にかけて大失速してしまうケースがあります。
つまり、単に酸素負債が原因ならペースを落として「酸素消費量≒酸素摂取量」の状態に戻せば乳酸も除去できて再び元気に走れるはずですが、実はそう簡単にはいきません。なぜなら走るために必要不可欠なエネルギーの話が絡んでくるからです。
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