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夏を走る

2024夏を走る・8

【2024夏を走る・8】関東地方も梅雨が明け、連日30度を超える猛暑です。いよいよ本格的な夏の到来でしょうか。そんな中、本日から千葉県富津市富津公園においてパリパラ強化合宿を実施します。

本来なら涼しい場所で合宿をしますが、あえて暑い千葉県で実施します。その目的は、暑さ対策になります。専門的な話は割愛しますが、一度は暑熱順化した身体も、長期間涼しい場所にいると、その効果はどんどん薄まっていくと言われています。

パリパラマラソン代表選手たちは、今月の前半は北海道北見市で強化合宿を実施しましたが、このタイミングでもう一度暑い中で走り込んで、身体を暑熱順化させます。もちろん、無理をして調子を崩すようなことはしませんが、暑さに慣れるためには、科学的と言うよりも根性論寄りのトレーニングが推奨されています(そもそも気温が30度を超える中で運動をしていはいけない)。

実際に暑熱対策の専門的な話を見聞しても、最終的には「気持ちの持ち方」「慣れるまで我慢」など、「そんなんで大丈夫かな?」と思ってしまう文献などが多いと感じます(繰り返しになりますが、気温が30度を超える中で運動をしてはいけない)。しかし、何年も夏マラソン対策のトレーニングを繰り返し、その経験を重ねてくると「確かにそのとおりだ」と、腑に落ちます。

また、8月から9月上旬のパリの気温は、日本ほど暑くなりません。少なくとも過去のデータ上では……。しかし、最近の異常気象を受け、パリをはじめヨーロッパは熱波の影響で40度を超える日があったりもします。要は、パリパラマラソン代表選手たちがパリ入りした時、「ここは涼しくて快適だ」と、思える状態に仕上がっていれば、個々の目標を達成できる確率は高くなります。

そして、今日からの千葉県富津市での強化合宿を終えると、8月は再び北海道北見市で合宿を実施します。そのあとは、長野県上田市菅平高原に移動し、8月下旬は、千葉県富津市で最後の調整合宿を……。そして、そのままパリへ飛ぶ予定です。

さて、9月8日のパリパラマラソン当日から逆算すると、ある程度の量(距離)を追える最後の強化期間に入ります。富津強化合宿2日目となる明日は、早朝6時スタートで「40k走」を予定しています。この期間に入って、パリパラ代表選手たちの走りを見るのは、いろいろな意味で緊張もします。

そんな中、上記したように身体が暑さに順化しているか否かよりも、気温が30度の中でも「たいした暑さではない」と、選手たちが心の中で思いながら走れる状態になっていれば合格です。そこを今日からの強化合宿で見ていきたい。

2024夏を走る・7

【2024夏を走る・7】パリパラマラソンのちょうど2ヵ月前に当たるこの日程で実施した北海道北見市での強化合宿は無事に終了しました。その合宿中の主なポイント練習は42k走を3本。さらに、ホクレンディスタンス北見大会と網走大会の5000mに出場。

毎年のことながら、この7月の北見合宿はかなりハードな内容になりました。特に、40k以上の長距離を短期間で3本走ることは、設定タイムを抑えて走ったとしても相応のダメージが蓄積されていきます。そのイメージとしては、まさに「じわじわと真綿でしめていく」。そんな感じでしょうか。

至極当然のことながら、マラソンに向けたトレーニング方法は様々で、どれが正しいかの判断がつかないのは、いつの時代も同じです。その中においても、特に夏マラソンに特化した的確なトレーニング方法や理論を目にすることは、ほとんどありません。

ましてや4年に1回しか開催されないオリパラマラソンに対する専門的なノウハウを見聞することなど、なおさら難しいことです。かくいう私は、4年に1回のパラマラソンにかかわるのは、今回のパリパラで8回目になります。

もちろん、私自身が夏マラソンに向けた確固たるトレーニング理論などを持っているわけではありません。しかし、長くかかわってきた分、暑い中で走り込むためには「どの程度の強度で、どの程度の距離を走るとどうなるのか?」は多少経験してきましたが……。

その中においてひとつ言えることは、指示している側(監督やコーチ)がどれだけ我慢できるか否か。つまり「こんなに暑い中で走らせて良いのか?」「こんなに遅い設定タイムで意味があるのか?」など、どうしても冬マラソンと比較し、選手のシャープな動きや速い設定タイムなどを追いかけてしまうからです。

また、「涼しい時間帯で走る方が身体への負担がすくない」「量より質を上げた方が良い」など夏のトレーニングにおいてはよく見聞しますが……。実は、これまでの経験から夏マラソン攻略にはあまり効果的ではないかもしれないと、個人的に思うトレーニング方法も多々あります……。

そもそも、気温が30度をこえる中で運動すること自体が命の危険にさらされます。ましてやマラソンなど……。しかし、そんな過酷な状況下で、日本代表選手として日の丸をつけ、メダル獲得を目指してマラソンを走るためには「何をどうするのか?」。

パリパラマラソンまであと2ヵ月。しっかりと取り組んでいきます。

2024夏を走る・6

【2024夏を走る・6】7月3日から北海道北見市で強化合宿を実施しております。毎年のことながら、北見市の皆様をはじめとする多くの方々のご理解とご支援により、今年も強化合宿を実施することができました。あらためて、厚く御礼申し上げます。

また、今回の強化合宿はパリパラマラソンに向けた最重点合宿のひとつでもあり、特に日本代表に選考された選手たちは、メダル獲得を目標に意欲的に走り込んでいます。具体的には、本日までの合宿前半で、40k走を2本。そして、ホクレンディスタンス北見大会の5000mに出場。

さて、今回のパリパラマラソン代表枠を獲得するための基準が、WPAの不手際により最後まで迷走しました。そのため、東京パラマラソンで金メダルを獲得した女子の道下選手と銅メダルを獲得した男子の堀越選手(他の選手も)は、パリパラマラソンの代表枠獲得のため、4月の「かすみがうらマラソン」も走らざるを得ない状況に追い込まれました。

大会当日は、想定どおりの暑さが選手たちを苦しめ、消耗戦となる激しいレースになりました。しかし、両選手ともパリパラマラソン日本代表につながる記録でフィニッシュ。ところが、懸念していたとおりのダメージが身体にも残り……。

結局6月から開始したパリパラマラソンに向けた走り込みにもその影響を引きずっていました。しかし、前述した3回のポイント練習は何とか無事に消化することができました。特に、パリパラマラソン代表に選考された選手たちは、パラマラソンの経験もあり、ここまで多くの困難を乗り越えてきた実績があります。

そのパラマラソンは、いわゆる夏マラソンであり、速さよりも強さが求められます。そして、その強さの裏付けは経験になります。その経験は、単に夏マラソンを走ったことだけでなく、その夏マラソンに向けたトレーニングの経験と実績が重要になります。

8月後半から9月前半に開催予定のマラソンを目標にした場合、多くは5月から6月に本格的なマラソントレーニングを開始します。つまり、夏マラソンで戦うためには、気温や湿度がどんどん高くなっていく春から夏に向かって、トレーニングの量と質を上げていく過酷な作業にもなります。

さらに、9月8日に開催予定のパリパラマラソンのコースは、鋭角に曲がる箇所や石畳の路面が多く、そのうえ小刻みなアップダウンが連続する難コース。それらの点を踏まえると、これまでのパラマラソン以上にスタミナ強化がメダル獲得へのカギとなります。

今回の強化合宿後半は、ホクレンディスタンス網走大会で5000mを走り、翌日に3本目の40k走を実施予定です。そして、夏マラソンを攻略する最大のポイントである「ナタの切れ味」を身につけるため、今回の強化合宿から8月14日までの間、さらに走り込む量を増やしていきます。

※写真:選手たちが走っている両端の雑草は我々の練習日程に合わせ、地元の関係者が除草作業など、コース整備を行っているのです(毎年)。感謝です!

2024夏を走る・5

【2024夏を走る・5】今年も半年が過ぎ、来週から7月に入ります。今月から9月8日のパリパラマラソンに向けた本格的な走り込みを開始していますが、ひと月が過ぎました……。また、6月は長野県上田市菅平高原で走り込んできましたが、7月は北海道北見市に場所を移します。

あらためて、オリパラは夏に開催され、どの競技も記録よりも順位が重視されます。したがって、冬マラソンを目指す取り組みとは目標設定の考え方が異なります。もちろん、冬マラソンでも優勝を目標にすることは同じですが……。

まず、冬マラソンと夏マラソンを目標にした場合、どちらも目標タイムの設定が最初になります。しかし、ここで大きく異なる点として、冬マラソンは「自己記録の更新」が最大の目標となり、自己記録の更新がそのまま優勝を狙えるタイムなら、目標設定は「自己新記録で優勝」にもなります。

ところが、夏に開催されるパラマラソンの場合、そもそも夏マラソンで自己記録を更新することはかなり難しく、暑い中で冬マラソンのようなトレーニングを積んでいくこと自体も難しい。したがって、目標タイムは「メダル獲得(入賞)」をターゲットにした設定タイムになります。

もちろん、夏マラソンでも自己記録更新を目標にすることは可能ですが、冬マラソンのような量と質の両面から追い込むトレーニング自体が相当難しい。仮に涼しい場所でトレーニングを消化できても、どこかのタイミングで必ず暑さに慣れる必要があり、そのタイミングの見極めが難しく、直前に暑さで調子を崩すケースは多いのです。

参考までに、2021年9月5日に開催された東京パラマラソンにおいてもメダル獲得ターゲットタイム(※)を計算し、そのタイムを狙える走り込みの量と質を見極めながら取り組みました。ところが、大会数日前の天気予報は当日の天候が雨(低温)……。したがって、最後の全体ミーティングにおいて、男女ともメダル獲得ターゲットタイムを上方修正し、各選手とも共有しました。

具体的には、女子は「3時間00分59秒」を金メダル獲得ターゲットタイムとし、道下選手が「3時間00分50秒」で金メダルを獲得。男子は「2時間28分10秒」をメダル獲得ターゲットタイムとし、堀越選手が「2時間28分1秒」で銅メダルを獲得。

今回のパリパラマラソンに向けたメダル獲得ターゲットタイムはすでに計算しており、そのタイムを目標に走り込みを開始しています。もちろん、前述したとおり、そのタイムは自己記録更新ではありません。つまり、メダル獲得に自己記録更新が必須であるなら、パリパラマラソン(夏マラソン)でのメダル獲得は極めて難しいことになります。

要は、いわゆる冬マラソンと夏マラソンの攻略方法が異なる点をよく理解(経験)していないと、夏マラソンは単に疲労を残すだけのトレーニングに陥ってしまうリスクが高いのです。至極当然のことながら、選手は少しでも良いタイムを出したいので、暑くても寒くても自身を追い込みます。そこをいかにしてコントロールしていけるかが……。

※メダル獲得を確約した設定タイムではありません。

2024夏を走る・4

【2024夏を走る・4】長野県上田市の菅平高原において実施していた強化合宿は終了し、計画どおりに距離走を2回実施。しかし、2回目の距離走はあいにくの雨模様となりました。

一般的には、6月に入ると気温も高くなってくるので、逆に雨の中は走り易いと感じます。ところが、菅平高原のように標高が高い場所では、天候が悪化すると平地以上に気温が下がります。つまり、冬の冷雨に近い状況になることがあります。

今回、2回目の距離走はまさにそんなコンディションとなり、スタート前に懸念していた低体温症に陥る選手もいました。実は、平地の暑さを避け、涼しい高原でしっかりと走り込むことが目的なのに、涼しくなり過ぎて逆に走れなくなることもあるのです。

そして、7月の強化合宿は北海道北見市で実施しますが、やはり同じようなことが過去にありました……。

今や北海道と言っても温暖化の影響でしょうか、日中の気温が30度を超える日は普通です。それどころか、北海道北見市での合宿中に気温が38度に達したこともあり、もはや国内の夏はどこでも平等に暑い。

ところが、天候が崩れて雨になると、気温が極端に下がるときがあります。数年前の北海道北見市での強化合宿中(8月)、天候が雨で気温も10度前後だったことがありました。そして、その日の練習がたまたま距離走。案の定、低体温症に陥る選手がいました。

このように、一般的に涼しいと言われている場所ほど、逆に寒暖の差が激しくなってきているのかもしれません。つまり、体調管理がこれまで以上に難しくなってきているとも言えます。

さて、2021年9月5日に開催された東京パラマラソン当日の天候は雨でした。我々は気温が30度をはるかに超える中での勝負を想定し、暑熱対策に重点を置いて強化してきました。ところが、当日の天候は雨。そして、気温はたったの20度でした……。

今年の9月8日に開催予定のパリパラマラソン当日の天候は誰にもわかりません。もちろん、暑い中での勝負を想定しながら強化していきますが……。真夏の走り込み中に経験した低体温症も決して無駄にならないほど、先の読めない異常気象なのかもしれません……。

2024夏を走る・3

【2024夏を走る・3】今月2回目の菅平合宿(長野県上田市)のため、昨日から現地入りしました。また、今回も実業団チームが各地からここ菅平高原に上がってきており、同地で唯一の陸上競技場においては、チームの垣根をこえたトップ選手同士が切磋琢磨していました。

さて、我々は今回も5泊6日の日程ですが、その間に「42k走」を2本走る計画で、前回の菅平合宿とほぼ同じ内容を繰り返す予定です。そして、最終目標のパリパラマラソンは9月8日なので、そこに調子のピークが合うように調整していきますが、今月はそこに向けた強化合宿の1丁目1番地にあたります。

いわゆるマラソントレーニングで言うところの「脚つくり(土台つくり)」に相当するところです。したがって、じっくりと長い距離を走るトレーニングがメインとなります。また、菅平高原は標高が千メートル以上あるので、平地のような速いスピードで走らなくても心肺には、それなりの負荷もかかります。

しかし、変化の少ない楽なロードコースを走り込んでも強化の目的を達成できないので、42k走は全て起伏の激しいコースで実施します。このコースは2016年リオパラ、2021年東京パラに向けた走り込みでも使用してきたコースなので、パラマラソンのメダル獲得に向けた我々のノウハウがつまっています。

具体的には、片道2kの山岳道路を往復するコースです(1往復で4k)。つまり、40k走の場合は10往復になります。しかし、パリパラマラソンに向けた今月からの強化合宿で、このコースを約10年振りにリニューアルしました。と言っても場所を変更した訳ではありません。折り返し地点(2k)を500m先にのばし、1往復を5kにしただけです。

同コースは、折り返しにしていた2k地点から先はさらに急な下り坂です。そして、その下り切った地点までを計測すると、ちょうど500m。つまり、折り返し地点を500m先にずらすことによって「500mの下り坂と500mの上り坂」をあらたに追加することができます。

実は、パリパラマラソンコースを視察したあと、菅平高原の山岳コースでは物足りないと考えていたので、まさに「灯台下暗し」「目からウロコ」。と言っても走るのは選手たちであり、いたずらにコースを厳しくしていっても、ケガや故障をしては元も子もありません。この点は、どこで合宿を実施しようが、共通の最重要課題になります。まさにマラソントレーニングのコース選定は「命」です。

幸い、今月最初の菅平合宿で実施した同コースでの距離走は、特に大きなトラブルもなく終えることができたので……。もちろん、トラブルの意味はひとつではなく、走ったあとの体へのダメージや設定タイム(強度)が適切だったか否かなど、判断するのは簡単そうにみえますが、確認するポイントは多岐にわたります。

引き続き、緊張感を持ってパリパラマラソンの強化を継続していく所存です。

2024夏を走る・2

【2024夏を走る・2】長野県菅平高原での強化合宿は無事に終了しました。この時期の菅平高原は朝晩の気温はかなり下がり、早朝の気温は連日ひとケタでしたが、体調を崩すような選手を出すこともなく、計画どおりに走り込めたのは何よりでした。このまま、順調に9月のパリパラマラソンまで走り込んでほしいと願うばかりです。

さて、視覚障がいランナーの高齢化については、何度か記載してきましたが、パリパラマラソンの日本代表候補選手たちも例外なく高齢化が進んでおります。もちろん、パラマラソンに年齢制限などは存在しないので、何歳になっても挑戦することは可能です。したがって、自分自身で「もう歳だから……」と勝手に判断し、悲観する必要は全くありません。

そんな中、ある選手の伴走者として弓削田眞理子氏が、我々の強化合宿に参加してくれることに(今回で2回目)……。弓削田氏は、60歳以上女子マラソンの元世界記録保持者(2時間52分13秒)で、65歳を過ぎた現在もバリバリにマラソン(3時間前後で)を走っている方です。

弓削田氏の活躍は多くのメディアなどでも取り上げられています。年齢を重ねてもマラソンに挑戦するポジティブな考え方とその生き方は、個人的にも共感することが多く、是非ともお会いしてみたい方でした。

「負けて悔しくないのか?」「なんでもっと走らないのか?」など、合宿中は選手たちに直球で語りかけていました。特に、女子はベテラン選手が多いのですが、年齢的にも走力的にもその上を行く弓削田氏の問いかけに若い選手も含め、答えるすべもありません。

今、我々にとって最大の課題であり、選手たちに最も欠けている部分を、弓削田氏はひと言で、しかもど真中の直球で様々な指摘をしてくれました。弓削田氏は、私が思っていた以上の方でした……。

あらためて、科学的トレーニングやそれにともなうトレーニング器具や測定器具などは、もの凄いスピードで進化しています(シューズも)。その恩恵もあって、かつては30歳前後で引退する選手が多かったマラソンの選手寿命も確実にのびており、世界のトップで活躍しているキプチョゲ選手やベケレ選手も40歳になります。

一方、若くして燃え尽きる選手は今も確実に量産されており、科学的なトレーニング以上に個々の肉体を制御できるメンタル面の強化が重要視されています。もちろん、メンタルトレーニングも進化していますが、フィジカルトレーニングのような目に見える成果を誰もが得られるかと言えば、そうではないと感じます(強化現場で安田が見てきた感想)。

専門的なことは割愛しますが、今のこんな時代だからこそ、逆に弓削田氏のような方からのひと言は……。

2024夏を走る・1

【2024夏を走る・1】6月に入りました。いよいよこれから本格的な暑さとの戦いに入っていきます。そして、暑くなっていくこのタイミングで、パリパラマラソンで戦うための本格的な走り込みを開始します。まずは、長野県上田市菅平高原での走り込みからです。

また、この菅平高原での強化合宿は、毎年実施しており、特にパラマラソンに向けた本格的な走り込みは、必ずこの菅平高原からスタートしてきました。もちろん、パリパラに向けても同じです。そして、昨日から菅平高原に上がってきましたが、昨日の気温が13度、今朝は7度(手元)でした……。

今月はこの菅平高原で、強化合宿を2回実施します。起伏の激しいコースでの距離走がメインになります。特に、パリパラマラソンのコースが厳しいコースであることは、既に確認しているので、そこで勝負するための脚力強化になります。

さて、マラソン(長距離全般)は、いわゆる「厚底カーボン(バネ)入りシューズ」が登場してからは、記録が一変しました。それまでは、修行僧のような摂生と走り込みを繰り返し、強靭なスタミナと精神力を身につけることが活躍するための条件でしたが、そのシューズが登場してからは、マラソンがスマートなイメージに変わってきたと感じます(マラソンは誰でも気楽に走れる)。

ところが、目指すマラソン大会が真夏に開催。そして、そのコースはアップダウンが激しく、路面は荒れた石畳が多く、おまけに鋭角に曲がる箇所も多い……と、なった場合、果たして最新のシューズに頼る戦術で、メダルをかけた勝負をすることは可能なのか否か? 実は、今回のパリパラマラソンコースです(オリはもっと厳しい)。

2021年9月5日、東京パラマラソンが開催されました。そこで、我々は金メダルと銅メダルを獲得する結果を残しました。その東京パラのマラソンコースは、35k以降に上り坂が待っている厳しいコースでした。その対策として、2021年6月から東京パラマラソンに向けた強化合宿を開始し、8月第1週までの間に「40k走を9本」実施しました。

もちろん、出場した選手たちは最新のシューズを履いて、当日は挑みました。しかし、「35k以降の上り坂からペースアップ」の戦術を見事に実戦し、メダルを獲得できたのは苦しい走り込みで身につけた「強靭なスタミナと精神力」のおかげでした。

果たして、パリパラマラソンコースは、東京パラマラソンコースよりもはるかに厳しい。したがって、持ちタイムの「速さ」ではなく、最後までしっかりと粘り倒せるか否かの「強さ」が勝敗を左右する展開が予想されます。

今更ながら、選手が持っている腕時計は走った距離やペースも自動計測できるものや、シューズはカーボン入りなど、最新のテクノロジーがどんどん導入されています。しかし、オリパラのマラソンは真夏に実施され、さらにより厳しいコースを設定するなど、最先端とは真逆のことを意図的に操作している節があります。

思うに、オリパラのマラソンは、「世界で一番タフな男女」を決める目的(責任)があるからなのでしょう。したがって、パリパラマラソンに向けての走り込みは、「東京パラ以上の走り込みを積み上げることで勝負できる」とも言えます。それは、忍耐や我慢する力が試されることにもなり、我々にとっては最も得意とする「泥臭い練習」に他ならない……。

2023夏を走る・11

【2023夏を走る・11】8月4日から北海道北見市において強化合宿を実施しましたが、現地入りした当日から天候は雨が続き、気温も20度を下回る日が続きました。したがって、選手たちは35度を超える猛暑の中で走り込んでいたので、気温が一気に20度近くも下がった環境にさらされることになりました。

もう少し具体的な表現をすると、ウォーミングアップからランシャツ・ランパンで過ごせた環境から、いわゆるウインドヴレーカーを着用していないと、体が温まらない環境です。

このようにコンディションは一気に暑いから寒いへ激変しましたが、「人は楽な方にはすぐ慣れる」とも言います。案の定、合宿2日目に実施した40k走より、後半に実施した32k走の方が個々の動きもタイムも好転しました。もちろん、疲労がたまってきている状態にもかかわらず……。

同じように暑いから寒いへの事例としては、秋からのマラソンや駅伝・ロードレースで戦うための「夏の走り込み」でしょうか。これについては、もはや日本長距離界の慣習ともいえます。要は、あえて夏の暑い季節に走り込みを実施しておくと、涼しくなっていく秋以降に向かって調子は上がっていくサイクルです(詳細は割愛)。

このように、マラソンや長距離の競技特性上、暑いコンディションよりも涼しいコンディションの方がパフォーマンスは確実に向上します。したがって、夏(暑い)から秋・冬(寒い)に向かっていく季節の流れに対しては、確立されたトレーニング理論や方法論が数多く存在します。

一方、目標にした大会などが真夏の場合、そのトレーニング方法などは、いまだ手探りの状態が続いているともいえるでしょうか。その理由はいくつかありますが、まずは選手個々の暑さに対する適応力差が大きいことです。具体例としては、秋冬マラソンの走り込み期における距離走やその設定タイムなどは多くの選手に合致しますが、夏の走り込み期に対してはその法則がほぼあてになりません(私の経験上)。

つまり、選手個々の暑さに対する「強い弱い」が色濃く出るからです。また、昨年の夏は、しっかり走れた選手でも「今年の夏は全く走れない」というように、暑いコンディション下においてはパフォーマンスの再現性も難しいと感じます。

さて、我々が最大の目標にしているパラリンピックは夏に開催されます。前述したとおり、再現性の難しい夏の大会ですが、最も重要な大会です。そして、東京パラ同様、メダル獲得の再現を達成することが目標になります。

まずは、今月27日に開催される夏の北海道マラソンで……。

2023夏を走る・10

【2023夏を走る・10】8月に入りましたが、記録的な猛暑は続いております。また、7月の平均気温(?)は観測史上最高だったようですが、実際に屋外で活動をしている者としては、まさにそう感じました。

と、言いながらランナーたちにとって、夏の走り込みを中止することなど簡単にできません。もちろん、その日のコンディションや体調を重視するので、こちらから無理強いはしませんが……。しかし、目的意識の高いランナーほど、過酷な状況に追い込まれても無理(我慢)をするのは至極当然です。

そのため、練習をサポートしながら「今日はもう限界だな」と、見受けられるランナーに対してはどんなタイミングでも「中止」を伝え、走るのをやめさせます。ところが、そんなランナーほど、その状態からさらに頑張ります。

同様に、休養後(完全休息や軽めの練習)にもかかわらず、うまく走れないランナーも意外に多く見受けます。もちろん「なぜだろう?」と、本人と話をしたり、トレーニング実績などを振り返ります。すると、こちらが把握していないところで、さらに走り込んでいたり、追い込む練習をしているケースがあります(もちろん、個々にその理由は違います)。

「夏の走り込み期」は、どのランナーも秋からのマラソンシーズンに備え、意欲的に走り込みます。その結果、前述したような不調に陥っていくランナーもいます。しかし、自主的に走り込みをするランナーほど、結果を残しているのも違いなく、不調に陥るケースとは紙一重なのも確かです。

そして、その見極めを客観的にすることがサポートしている者の役目ですが、それ以上に本人の意欲が上回っているランナーに対する対応(コーチ)は、いつの時代も本当に難しいと感じます(もちろん、そのレベルに到達しているランナーはそんなに多くない)。

さて、今年の暑くて熱い夏(残暑?)は当面続きそうですが、いろいろな意味でこちらがオーバーヒートしないよう、ランナーたちをサポートしていく所存です。

暑い日々が続きますが、皆様もお体をご自愛くださいませ……。

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